新着情報

2020.07.26

妊娠中も大抵の治療が可能です

 7月も今週で終わります。京都は728日の火曜日頃に梅雨明け、そして本格的な夏を迎えます。
 今年の夏は、新型コロナウイルスの影響で、これまでとは違う夏を過ごすことになると思います。五山の送り火も縮小され、また各地の花火大会も中止。海水浴場の海の家などもなくなるところもあるようです。これまで過ごしてきた「夏」ではない「夏」を経験することになります。子供たちが楽しみにしている海水浴やプール。どうなるのかなあと思います。

 また夏と言えばビヤガーデン。今年はどうなるんだろう。密を避けながらのビヤガーデンになるんでしょうか。仲間たちと一緒に楽しくビールを飲む。今年は少し趣を変えた方法で夏のビールを楽しむことになるのでしょうね。
 でも、ある程度気分転換して、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込むこともしなければ、ストレスばかり溜まってしまいます。なかなか難しいですが、新型コロナウイルスの感染に注意をしながらストレスも上手く解消していかなければなりませんね。

 さて、7月に二人の妊婦さんの手術をしました。妊娠中は何も治療ができないと思っている方が多いと思います。そんなことは有りません。肛門の病気では、たいていの治療を受けることが出来ます。
 軟膏などの治療はおなかの赤ちゃんには影響はありません。またどうしても妊娠中は便秘傾向になります。そういった場合には緩下剤で便の調整をすることもできます。渡邉医院では便秘の際はまずは酸化マグネシウムを内服してもらっています。この酸化マグネシウムもおなかの赤ちゃんには影響はありません。どうしても妊娠中は便秘傾向になり、これが原因で裂肛(切れ痔)や内痔核(いぼ痔)になります。これらの病気は緩下剤などで便の調整をして、軟膏をつけることで大抵の場合は良くなっていきます。

 また、内痔核が悪くなり、排便時の出血が多くなってきたり、排便時に少し内痔核が肛門外に出てくるようになっても、パオスクレー(5%フェノール・アーモンドオイル)による痔核硬化療法で、出血は治まりますし、第Ⅱ度程度の排便時に肛門の外に内痔核が出る場合も出なくなります。このようにパオスクレーによる痔核硬化療法も妊娠中でも可能です。
 ただ、第Ⅲ度以上の内痔核の治療に使うジオンという痔核硬化剤は妊娠中には使うことはできません。
 さて、妊娠中に急にお尻の具合が悪くなり痛みが出てくることがあります。一つは血栓性外痔核と言って、血栓(血豆)が肛門の外側に急に詰まって腫れて痛みが出る病気です。
 もう一つは内痔核に血栓が詰まって急に痛くなることがあります。そして血栓が詰まった内痔核が肛門の外に出たままの状態、嵌頓痔核になることもあります。
 そしてもう一つ痛みが出る病気に肛門周囲膿瘍があります。

 どうしても妊娠中は血栓ができやすくなるのかなあと思います。血栓が詰まって腫れると痛みが出ます。でも血栓性外痔核は基本的には自然に腫れが引いて痛みが楽になり、血栓は自然に体に吸収され治っていきます。でもあまり痛みが強い場合は局所麻酔をして血栓を摘出するとスッと楽になります。
 また内痔核に血栓が詰まってしまった場合も、血栓は自然に吸収されていくので、血栓が詰まった前の状態にまでは徐々に戻っていきます。ただ、内痔核に血栓が詰まって肛門の外に出たままになった嵌頓痔核はやはり痛みが強いです。この場合も局所麻酔で痔核根治術をすることがあります。
 また、血栓が詰まってはいなくても、排便時に内痔核が出てきて戻しにくくなったり、場合によっては出たままの状態になってしまうこともあります。この場合も痔核根治術をすることがあります。

 さて、肛門周囲膿瘍の場合は、そのままだと膿がどんどん広がり、痛みが強くなて行きます。肛門周囲膿瘍の場合は直ぐに局所麻酔をして切開して膿を出すとすぐにスッと楽になります。

 このように妊娠中も病気の種類や病状によっては局所麻酔で手術をして治すことが可能です。
 痛みが強く、それをずっと我慢している。そのストレスもお腹の赤ちゃんには悪い影響を与えてしまう可能性があるのではないかと思います。痛みの強い場合はしっかり手術をして治す方がいいと思います。
 また渡邉医院では手術の際に使う局所麻酔は塩酸プロカインです。手術に使う麻酔の量はそれほど多いものではありません。局所麻酔がお腹の赤ちゃんに与える影響はまずないと思って下さいね。また痛み止めも妊娠中に使える内服薬もあります。そのお薬を術後痛い時に内服してもらっています。
 ただ、手術をすることで、今ある痛みが取れてくれます。内痔核の手術の場合は術後排便時の痛みはありますが、その排便時の痛みも1週間ほどするとスッと楽になります。

 どうしても妊娠中は何の治療もできない。ただ我慢するだけしかないと思っている方が多いかなあと思います。そんなことは有りません。心配なこと、不安なことがあれば遠慮なくそうだんして下さいね。

2020.07.25

学会のもう一つの楽しみ

 去年の日本大腸肛門病学会は、台風の影響で途中で中止になってしまいました。発表を予定していたのですが、発表することなく、学会は終わってしまいました。そして、今年は今のところ、11月に横浜で開催が予定されていますが、新型コロナウイルスの感染が再度拡大している中、開催できるかどうか心配されるところです。
 学会では、多くの先生の研究成果や経験等、日々の診療にとても役に立つ発表を聞くことができ、とても有意義な時間を持つことが出来ます。そして実際、学会で学んだことを日々の診療に応用して生かしていったり、また学会で得たことをヒントに、さらなるステップアップに必要な研究や調査に関してのデザインを作ることが出来ます。
 このように日々の診療に役立ち、今後の進歩のために大事な勉強の場です。そして、もう一つ学会で面白いのは、医師以外の方々の講演会が企画されることです。
 前回10年前の学会の内容を紹介しましたが、この浜松で開催された学会では、スズキ自動車のスズキ株式会社代表取締役会長兼社長の鈴木修氏の特別講演がありました。「俺は、中小企業のおやじ」という題での講演でした。この時の内容が面白かったので、紹介しますね。
 10年前に私が書いた記事を一部転記しているので、鈴木氏の年齢等はその当時の時として読んで下さい。

 鈴木氏は1930130日生まれで、80歳。壇上に立たれた鈴木氏は80歳とは思えない若々しさを感じました。70歳で会長に就任された際に、「かつては人生50年といっていたが、いまの平均寿命は70歳超。ならば年齢も7掛けで考えるべきではないか。70歳といっても7掛けすれば49歳。だから退くのではなく昇格した。まだまだ現役でバリバリやっていく。(2000年)」と著書に書かれたそうです。こんなこともあって、講演会の紹介では80歳に7掛けをして56歳と紹介されました。講演の内容は如何にして経費を削減して経営を立て直すかを面白く講演されました。少し内容を紹介します。

 まずは「三歩で歩くところを二歩にする努力をする。」でした。部品を取り付けているときは仕事をしているとき。部品をとりにいている間は仕事をしているのではない。部品を取りにいく時間を短縮することで増収につながる。

 また、筆記用具を赤と黒のボールペン二本にして、鉛筆や消しゴムを使わないようにしたという。消しゴムを使うのは鉛筆を使うからだ。それならいっそ両方ともやめて報告書などすべてボールペンで書くようにした。部下から「ボールペンで間違ったらどうしましょう?」の問いに、「二本線を引いて修正印をおしなさい。」と。さらに「そんなことをしたら報告書がきたなくなります。」に対して、「きたない報告書を書くようなやつは、まとめる能力が疑われる。」と。こんなやりとりがあって、鉛筆や消しゴムの経費が節約でいた以外に、報告書もきれいになったとのことでした。

 他にもいろいろ話をされました。政治家が「検討します。」は「何もしない。」ということ。「前向きに検討し善処します。」は「少し時間をおいて何もしない。」ということ。政治がなにもしてくれないのなら、自分たちで頑張るしかないとも力強く話してられました。

 やはり大きな企業になるとちょとしたことが経費の削減になり、またそのために苦労、努力しているのだなと感心しました。

 企業の経費節減の方法がすべて医療にあてはまるとは思いません。でも参考にできるところは参考にしながらやっていこうと感じました。

 今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの学会や研究会、懇談会が中止になっています。今年の日本大腸肛門病学会は1113日、14日の2日間。横浜のパシフィコ横浜ノースで開催が予定されています。今年のテーマは「挑戦と検証(Challenge and Inspection)です。

 無事開催されることを期待しています。

2020.07.25

便が漏れる、下着が汚れる

  いつの間にか便が出てしまっていて、下着を汚してしまったり、我慢しきれずに漏れてしまったりするということで受診される患者さんが多くなってきたような気がします。とても嫌な症状なのに誰にも相談できない。家族の人にも相談できず一人で悩でいる。そんな患者さんがいらっしゃいます。
 「外出した時に勝手に出てしまったらどうしよう。」とか、「間に合わなかったらどうしよう。」などを心配され、外出することもできずに身体的だけでなく、精神的にも大きな負担になってしまっている患者さんがいます。
 肛門の病気もなかなか敷居が高くて受診しにくいなか、いつの間にか便が出てしまう、下着が汚れてしまうといった症状は、なかなか診察にも来にくいと思います。でも同じ症状で悩んでいる患者さんは多いと思います。

 こういったいつの間にか便が出てしまう、下着が汚れてしまうといった便失禁には大きく二つの要因があります。

便秘の場合

 一つ目は、直腸に便が残ったままになっている場合です。
 直腸の中に便が残ったままになっていてスッキリ出ず、腹圧がかかったときに知らないうちに便が漏れてきたり、硬い便が直腸に残ったままになってしまい、その硬い便の隙間をどろどろの便が通り漏れ出てくるといった、便秘が原因の場合です。

下痢の場合

 二つ目は、下痢が我慢できない場合です。
 大腸の動きが過敏になりすぎ下痢状の便が我慢できずに出てしまう場合があります。

治療方法はそれぞれで違う。

 それぞれで治療方法は違ってきます。
 前者の場合は、緩下剤などを使ってスッキリ便が出るようにして、直腸内に便が残らないようにすることで症状が改善されます。また、下剤が正しく使われていない場合も起きることがあります。例えば、いつもダラダラ便が始終出てきてしまうと、便秘ではなく下痢だと思ってしまって、下痢止めを飲んでしまっている患者さんもいます。そうするとますます症状は悪化していってしまいます。
 また、直腸に便が詰まったままの状態ですとそれだけで肛門が痛くなってしまい、便が出せなくなってしまいます。スッキリ便が出るようにする必要があります。
 反対に、また便が詰まってしまったら苦しいから詰まらないようにしようと、下剤をたくさん飲んで、本当に下痢をしている患者さんもいます。気持ちはとてもわかるのですが、下痢も肛門にはよくありません。また下痢でも我慢できずに、勝手に出てきてしまうこともあります。やはり形があって柔らかな便がスッと出るように緩下剤を調整して正しく内服する必要があります。
 さて、後者の場合は、激しく大腸が動くことで下痢になってしまうことがあります。その時は、大腸の動きを整えたり、便の性状を柔らかく形のある便にする薬で改善することができます。また、脳と大腸には密接な関係があって、「また便が漏れたらどうしよう。」とか「我慢できなかったらどうしよう。」と思うことで大腸の動きが激しくなって、下痢が悪化してしまうことがあります。生活にリズムが狂ったり、ストレスによって大腸が激しく動くことで下痢になってしまいます。こういった場合は、内服薬を飲みながら、「具合よく便が出た。」、「いい便になってきた。」、「最近は便が漏れることが少なくなってきた。」といったポジティブな経験をすることでも大腸の動きが良くなり、便の状態が良くなっていくことがあります。

 また、肛門の筋肉を鍛える運動もあります。
 肛門を締める運動をするのですが、肛門をキュッ、キュッ、キュッと細かく絞めてもあまり鍛えられません。しばらくギュッと絞めたまま5秒ほど持続して緩める。またギュッと5秒ほど絞めては緩めるといった具合に、しばらくの間、持続して絞めるように10回ほどを繰り返し、2週間ほどすると段々肛門を締める筋肉は鍛えられます。
 こういった、いろんな治療法を組み合わせることで症状を改善することができます。なかなか受診しにくい悩みですが、意外と多くの方が悩まれている症状です。一度思い切って診察を受けることをお勧めします。悩みを話すことでも気持ちが楽になると思います。

 

2020.07.25

肛門科の苦悩とあるべき姿

 新型コロナウイルスの感染がまた拡大しつつあります。このような状況の中で、患者さんも医療機関を受診すると、そこで感染するのではないかという不安もあり。受診を控えている患者さんもいます。必要な医療は必要な時に受けることが大事だと思います。
 各医療機関も新型コロナウイルスに対して、感染しないように様々な感染対策をしてきています。また、患者さんの意識も変わり、皆さんマスクを着用して受診されます。このような中さらに安心して治療に専念できるように、今以上に対策を行っていかなければならないと思います。
 さて、各医療機関は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経営的にも苦しい状態になっています。今年の34月のような状況がもう一度訪れると、経営が成り立たなくなる医療機関が多く出てくるのではないかと心配しています。そのような中で、ふと今まで書いた原稿をみていると、今から10年前の2010年に浜松で開催された日本大腸肛門病学会の原稿が目に留まりました。この内容を紹介したいと思います。
 この時点でもすでに肛門科では経営面などの問題点が揚げられていました。

 浜松で開催された学会の特別企画で「肛門科:クリニックの診療・経営戦略」というセクションがありそこで発表してきました。

 近年、肛門疾患の診断や治療法は様々な技術的な進歩によって、以前と比べて比較的容易に治療に関しての満足が得られるようになってきました。その反面、標準的な治療を蔑ろにする傾向もみられ、学会等においても様々な問題が惹起されています。また、肛門科の診療所では診療の内容の問題だけでなく、医療経済的にも苦悩しているのが現状です。

 肛門科の診療の形態には①無床で全ての手術を日帰り手術で行っている施設。②無床でも連携病院をもち、必要に応じて連携病院で手術して入院手術を行う施設。③有床で、入院手術を行う施設の三つの形態があります。

 また、医師も一人あるいは二人以上の体制があります。そんな様々な診療形態のなかで、日常の診療をどのようにしているのか、他の医療機関との連携や地域医療との関わり方などを示して、今後の肛門科の診療の問題点を明確にすること。また、患者さんの満足度、安全性、治療成績を向上させる工夫や経営戦略などやその苦悩について考えることを特別企画の目的としていました。私を含め13名の先生方がそれぞれの診療所、病院での取り組みや問題点などをシンポジウム形式で討論しました。

 渡邉医院は有床診療所で、診療の形態としては先ほどの三つの形態のなかでは、三番目の自院で入院手術を行い、肛門疾患専門での診療を行っています。この形態がとれる一番の要因は京都の西陣という地区での開業で、周りには多くの診療所や病院があり、肛門疾患だけを診察できるという環境があるます。地方の診療所や病院では、やはり周りの地域医療も支えていかなければならないため、肛門疾患以外の病気に関しても診療していかなければなりません。

 以前、私の大学のときの後輩が、肛門科で開業したいとのことで、当院に研修にきていました。自分の実家である山形県で開業をしたのですが、やはり地域医療にも携わらなければならないため、肛門疾患だけに特化した診療所の形態ではなく、さまざまな病気に対応せざるをえない環境のようです。

 こういった診療所の立地条件も大きく診療所の形態に影響してきます。渡邉医院が肛門疾患だけに特化して診療していけるのは、周りの診療所や病院の支えがあるからで、こういったことからも、病院と診療所、診療所と診療所の連携を今以上に強くしていくことが必要です。

 また、シンポジウムの中で、どのようにして患者さんにきてもらうかということについても討論になりました。

 私と同じように親子での医院の継承をした先生(この先生も私の大学のときの後輩で、一時当院に研修にこられていました。)が、医院を継承した後、患者さんが激減して40%減になったときの対応について話されました。このとき、「ひとりひとりをきっちりと診る。来た人が安心し、納得され、明るく元気になる。医療的な満足は当然として、治らない病気でも癒すことができる。」という理念をもって診療に努めることで患者さんが増えてきたと話されました。

 私も同様の経験をしました。私の父が病気で倒れ、京都に戻ってきたとき、もう26年前のことですが、私が診療を始めて1週間もすると患者さんが来られなくなり、いつも12時を待って午前の診療を終わる日が続きました。このときは、このままで診療をつづけていけるのかととても焦りました。患者さんが来なくなったとき、ねっとわーく京都という雑誌に「一代目他界、二代目闘病中、三代目奮闘中。渡邉医院を救うのはあなただ。」なんていう広告もだしました。今から思うと、なんという広告を出したかと思います。

 こんなとき、焦っている私に対して父が「何を焦っているんだ。診察に来られた患者さんを一人ひとりしっかり診察して治していけばいいんだ。」といいました。やはり患者さんも私の焦っている気持ちを感じられるのだと思います。
 満足度調査をした先生の報告があり、そのなかでもやはり患者さんは自分の訴えをしっかり聞いてくれて、病状をしっかり説明してともに治療し治してくれる医師に共感を持ち、信頼して病気を治すことに専念できる。こういった姿勢で医師は診療にあたらなければならないのだと確信しました。

 4年ほど前に肛門科不況がありました。肛門科を受診する患者さんがめっきり減った時期がありました。これは渡邉医院だけでなく、全国的な傾向でした。
 そんななか、様々なことを考えました。その中で一番感じたことが、診療だけでなく、肛門の病気やその治療方法などに関して、しっかりと正しい情報を発信できているかということでした。そしてそのことに対して、肛門の病気で悩んでられる多くの患者さんに正しく、そしてわかりやすく伝えていこうと、ホームページをつくり治しました。今後も患者さんが何を悩んでいるのか、そしてそれを解決するにはどういった治療があるのかなど、発信していきたいと思います。

2020.07.23

古典的治療法から新しい治療法へ。そのベストミックス!

 医学の世界は日進月歩で、どんどん新しい技術や治療方法、そして手術方法などが開発され、またそのことが一般的な技術や治療法、また手術方法になっていっています。

 でもこの新しい技術、治療方法、手術方法は、いきなり出てくるものではありません。古典的な治療方法を元に、歴史と共に進歩していきます。やはり、私たちはその進歩の歴史も勉強することが必要だと思います。そして、古典的な治療法と最新の治療法方が上手くミックスされることで、より良い治療を患者さんに提供できるのだと思います。
 また、新しい手術方法や治療方法があっても、そのもとになった基礎的な手術手技や治療方法はしっかりマスターして、何かの時には行えるようにしておく必要もあると思います。

 新型コロナウイルスの感染拡大で学会や研究会などが軒並み中止や延期になっています。肛門科の分野も同じです。私が京都に帰ってきて、一番勉強になり、大切に思っているのが年3回開催される近畿肛門疾患懇談会です。そこで、古典的な治療法を学ばれ、実践しておられる先生に初めてお会いしました。

 最初のお出会いしたきっかけは、今は亡き父と一緒に近畿肛門疾患懇談会に初めて出席したときだったと思います。その後も、何かと声をかけていただき、いつも顔を合わすと、「しっかり勉強しろよ。しないと親父さんに言いつけるぞ」とはっぱをかけてくださっていました。また、「自分だけでなく、これから肛門科を目指そうとする人のためにも勉強して、そのことをしっかり教えなければならない使命があるんだぞ。」とも言われました。

 さて、この先生は、古典的な治療法を勉強されている先生で、華岡青洲の時代の治療法などを調べ、実際に現在の医療に使えるようにしています。ちなみに華岡青洲は麻酔薬「通仙散(つうせんさん)」を発明し、世界で初めての全身麻酔による乳癌摘出手術に成功した外科医です。

 たとえば、文献をもとに様々な軟膏を調合したり、内痔核の手術では分離結紮法といって、内痔核を糸で縛って治していく方法を紹介し、実際この方法を使って治療されています。また痔瘻の治療でも、いまでは学会等で一般的になっていますが、シートン法といって、痔瘻の瘻管に輪ゴムを通して治していく方法ですが、もとは薬のついた糸(薬線)を痔瘻の瘻管に通して、痔瘻に状態に合わせてアルカリや酸の薬を糸にしみこませ痔瘻を治していく方法など、古典的な治療を紹介しています。
 痔瘻に関して、日本でも1823年文政6年に「要術知新」で杉田玄白と親交のあった大槻玄澤の子、玄幹が痔瘻を切開する痔漏刀の使い方を説明しています。この時代から、痔瘻の病態を知り、治療する手術道具が作られていました。

 以前に紹介した内痔核の治療法でジオンという痔核硬化剤を用いて四段階注射法という方法で治していく痔核硬化療法も画期的な新しい治療法というわけではありません。
 痔核硬化療法という治療法は私の祖父の時代からもうすでにあり、少なくても80年以上前から実際に行われてきた治療法です。
 また、ジオンという硬化剤も、もともと消痔霊という薬剤があり、これが内痔核の治療によく効くので、どういった成分がどのように効いて治っていくのか、副作用はなど臨床の試験をうけてできた薬剤です。もともとの薬剤があったのです。
 渡邉医院にも以前は第二リン酸カルシウムグリセリン懸濁液という痔核硬化剤がありました。主に内痔核からの出血を抑えるために使っていたようです。この薬剤も父が言うには、以前は卵の殻を磨り潰して粉にしたものをグリセリンに混ぜて使っていたのをヒントに祖父がつくったとのことでした。昔から代々肛門科の治療をしているところには、それぞれ秘伝の門外不出の薬があったようです。

 新しい治療法、新しい手術方法などどうしても目が行きがちですが、西洋医学だけでなく、東洋の、そして日本の古来からある古典的な治療法も、もっと見直していくことも大事だと思います。場合によっては、昔の医療のレベルで行っていて、現在にも応用できるものであれば、より安全な治療法かもしれません。

 こんなことを書いているうちに、少し思い出したことがあります。それは、蟻の顎を使って傷を縫合するという話です。以前に医学系の新聞で読んだことがあるのですが、とても面白く、昔の人はよく考えたなと感心しました。
 ちょっと調べてみると、この蟻の顎で傷を縫合する方法は、世界的に古くから行われていたようです。
 切った傷をぴったりと合わせて、合わせた傷にそって蟻に咬ませます。蟻は一端咬みついたら死んでも離さないので、咬ませた後、蟻の胴体をもぎ取って咬みついた頭だけにし、傷が治るのをまったようです。
 記録では紀元前1千年ごろから行われていて、ごく最近までアジア、アフリカ、南米の一部で実際に行われていたようです。実に面白い発想だと思います。
 この発想は今では皮膚縫合用ステープラといって医療用のホッチキスで傷を縫合する際に実際に応用されています。また皮膚の縫合だけでなく、腸と腸を吻合したり、切除した胃と腸を吻合したりする際に用いられている自動吻合器にも応用されています。私が大学病院にいたころ、17年前ではまだ手縫いでも縫合していましたが、いまではおそらく自動吻合器が主流だと思います。昔も今も発想は同じなんだなと感心します。
 でも、やはり機械は壊れたりしますし、具合よくできるとは限りません。
 大学にいた時、ずいぶん前ですが、胃癌の手術をする際に中山式ペッツといって、胃を切除する際に使う約30㎝程度の大きなホッチキスのような機械があります。これを使って胃を切除したときに、ステープラ(ホッチキスの針のようなもの)がうまく装着されていなく、使えなかった時があります。この時は切除した胃を全て手縫いで縫合していきました。

 やはり、何らかのトラブルがあった場合にもそれに適切に対応できる手技はしっかりと身に付けるという基本的なところはしっかりおさえておかなければなりません。このことは全てのことに言えると思います。

 昔からの方法、歴史をしっかり学び、そのうえで新しい方法を使い開発していく。また昔ながらの方法でも今に生かせるものがあれば生かしていくことが必要だと感じます。

 

2020.07.22

100%の手術⁉

 7月も後半を迎え、明日からは4連休になります。新型コロナウイルスの感染が再拡大をしている中、今日からGo Toキャンペーンが始まりました。それぞれの立場で、色々戸惑いがあると思います。でも今私たちが一番に考えなければならないのは、新型コロナウイルスの感染をこれ以上拡大させないことだと思います。それに向けた行動をしっかりしていかなければならないと思います。

 さて、こんな質問がありました。「内痔核は100%切除できますか?」という質問です。

 この質問はおそらく、「今ある嫌な症状を、手術することでスッキリ取り除くことが出来ますか?」だと思います。

 手術をしなければならないということは、これまで長い間お尻の具合が悪いのを我慢していた。そして具合の悪いのをずっと悩んでおられたのだと思います。
 治そうと決心した時、やはり手術をすることで、これまで悩んでいた嫌な症状がスッキリなくなって欲しい。もう悩まなくて済むようになりたい。こんな思いで「100%切除することができますか?」という質問になるのだと思います。

 でもこの「100%」の手術が100%できるか。このことはとても難しい投げかけです。
 患者さんは100%治して欲しい。そして私たち肛門科医も100%治したい。そんな強い気持ちで治療に臨みます。
 手術で治す。人の体にメスを入れて治していく。そこにはいろんなことが起こってきます。例えば、術前の診察以外に症状が加わる。内痔核であれば術前の診察した時以上に手術時に麻酔をかけたら腫れてくる。また、術前では腫れてこなかったところが少し腫れてくる。また麻酔をかけることで、予定していた部分以外にも少し腫れが出てくる。など、手術をする前にしっかり診断しておかなければならないのですが、どうしても手術をする際に術前の診察での診断とは違った状態が目の前に現れることがあります。
 このような場合、麻酔をかけたために腫れてきただけで、その部分は切除しなくてもいいものなのか、またはこの部分もしっかりと切除しなければならないのか。そこを判断しなければなりません。とても難しい判断になります。
 肛門の手術の場合、悪いところを取り除くを一番に優先してしまうと、手術の後の肛門の機能に影響が出てきます。毎日、気持ちよく排便できるというとても大切な機能を保つように手術をしなければなりません。できれば肛門にあまり大きな侵襲を加えることなく治していきたいという気持ちと、スッキリ取り除きたいという気持ち、この矛盾する二つのことを両立させなければいけない。ここに肛門の手術の難しさがあります。これにはやはり経験がものを言ってきます。
 やはり、十分に肛門の機能を残し、柔らかく肛門が治っていくようにすることを心がけながら、患者さんのこれまで悩んでこられた嫌な症状をしっかり治す。このことを考えて手術をしていきます。

 また、内痔核の場合、思い通りにスッキリ切除できたと思っても、術後に肛門の外側の外痔核部分が腫れてしまい、この腫れが治まった後に皮垂が出来て、その皮垂がまた患者さんの嫌な症状となり悩みの種にしてしまうことがあります。以前にもブログで紹介しましたが、手術後の皮垂が起きないように、術後の腫れを起こさないように手術をするのですがそれでもどうしても術後の腫れから皮垂になることは避けられません。その時は再度皮垂を切除することもあります。

 このように人の体にメスを入れて治すということする以上、やはり様々なことが起きてきます。そういったことを考えると、「100%切除できますか?」という質問に明確に「100%切除することが出来ます。」と答えられないところがあります。

 少し話は変わりますが、以前大学病院にいた頃先輩にこんなことを言われました。
 「自分の持っている力を100%出してする手術はするな。80%で余裕をもって手術をしろ。そしてその80%でできる手術の質や技術力を高めろ。」と。
 100%で目いっぱいの手術をすると、そこに何か予期せぬことが起きた場合、やはり余裕がなくなってしまいます。少し余力を残しながら、余裕をもって手術に臨むことで、何か起きた場合にも柔軟に対応できる、そんな余裕が生まれます。そして、この余裕をもってできる手術の質や技術を向上させることで、より良い手術ができるようになるんだと思います。そしてそのことが患者さんにとっても、術後に良好な経過や結果をもたらすことになると思います。

2020.07.21

新型コロナウイルス感染拡大に対しての緊急要請

 今日、7月21日は土用の丑の日です。皆さんも鰻を食べているのかなあと思います。
 私は久しぶりに渡邉医院の当直をして、一日の仕事を終えた後、母と一緒に過ごしています。鰻は残念ながら食べれませんでした。まあ、今日ではなくてもいいので、食べたいなあと思います。よく考えると、最近を食べていないなあと思います。
 今日は午後から会議があって、四条付近に行くと祇園祭の時の提灯と和傘が道沿いに飾られていました。今年は祇園祭の山鉾巡行が中止になり、祇園祭の雰囲気を全く味わっていなかったので、提灯と和傘だけですが、祇園祭を感じることができました。

 山鉾巡行は中止になりましたが、疫病退散の神事は進められているようです。
 京都でも新型コロナウイルスの感染がまた拡大しつつあります。早く収束するように、神頼みだけでなく、私たち一人ひとりも新型コロナウイルス感染拡大の収束に向けての取り組みをしっかり行っていきたいと思います。
 今、京都でも新型コロナウイルスの感染拡大が再度進んでいます。このような状況の中、京都社会保障推進協議会は京都府に緊急要請を出しました。その内容を紹介します。

             緊急申し入れ

  京都府と京都市は、7月20日、京都府内の新型コロナウイルス感染症者が過去最多の27人になったと発表しました。

 いうまでもなく、この感染者数と増加のスピードは、対策を講じなければ、数週間で京都府の新型コロナウイルス感染症対策のために用意したとされる431床を超えかねない状況です。府民のいのちを守るために、緊急対策を実行することが必要であると考え、715日に出された「警戒基準到達をふまえた今後の対応について」を前提として、下記の点を要請します。

                  

 1 京都府内の感染拡大状況から、緊急に新型コロナウイルス感染症対策のために用意した431床を直ちに新型コロナウイルス感染症病床として稼働できるようにすること。同様に、軽症・無症状感染者のための療養ホテルについても緊急事態宣言時の部屋数を直ちに確保すること。

2 感染経路が判明している地域・業種に検査を徹底すること。

3 現在でも供給が不十分なマスク・ガウン・手袋などの感染防護資材について、各医療機関・介護施設などが必要とする数量を確保すること。

 4 現在、感染判明者のうち半数近くの染経路が不明である状況をふまえ、無症状の感染者を介した市中での感染拡大の可能性を考慮して、緊急事態宣言時と同等の行動制限や、経路不明感染者の居住地域・職域等に関わる全員検査など、大規模な感染拡大防止策を速やかに講じること。

 5 医療機関・介護施設に対する財政支援を緊急に行うこと。

 6 医療機関・介護施設への風評被害が起こらないように、府民への啓蒙を強めること。

 7 PCR検査の詳細な状況(設置数・稼働能力など)、療養ホテルでの暮らしぶりなど、新型コロナウイルス感染症に関わる情報を府民に丁寧に分かりやすく広報すること。

 8 新型コロナウイルス感染症対策の現在の状況について、国民生活を支え、全国の検査・保健所・医療提供体制を強化する施策について、緊張感を持ち、財政面もふくめた支援を緊急に実施するように政府に求めること。

                 以上

2020.07.19

「手当て」の持つ力

 7月はもう後半。今年は季節感を感じることが無く時間が過ぎていきます。 春は桜がきれいに咲き誇る中、花見は行けず、また、ゴールデンウイークもどこも出かけることなく自宅でのんびり。また京都の三大祭り、5月の「葵祭」7月の「祇園祭り」10月の「時代まつり」それぞれ中止や縮小。祇園祭に関しては、夏本番に向けての一大イベント。

 長刀は疫病邪気を払うものとされていました。長刀鉾は鉾先に大長刀をつけ、山鉾巡行で疫病邪気を鎮める。この山鉾巡行は中止になりましたが、宗教儀式の神事は実施され、今の新型コロナウイルスの感染拡大を抑えてくればと思います。

 今年になってこれまで日々、生活のメリハリなく過ぎてきた様に感じます。早く、四季折々の行事を満喫しながら、これまで通りの生活が送れるようになって欲しいものです。

 さて、今回は「手当て」の力についてお話したいと思います。

 患者さんが医療機関に受診され、どんな診察を受けるんだろうと不安を抱いて診察に臨まれます。また手術を受けるときは、「麻酔は痛いんだろうなあ。」「どのくらい痛いんだろう。」「麻酔しても痛みはあるのかなあ」「どのくらいで終わるんだろう。」といろいろ不安を持って手術を受けられます。この不安や恐怖心も痛みの強さに大きく影響すると思っています。できるだけ不安をや恐怖心を取り除いてあげることが痛みを軽減することが出来ると考えています。
 よく生前父が言っていました。「患者さんの診察をしたり、手術や処置をする際に、患者さんの方などに手を添えてあげるだけで、患者さんの不安は少し軽減できるんだよ。」と。今でも父が言っていたことを続けています。例えば、手術に際は看護師さんが患者さんの背中にまわり、患者さんの背中を子供を癒すようにポンポンと軽くたたいてもらっています。後から患者さんの中には、「背中をポンポンたたいてもらうことで、とても気持ちが落ち着いた。」と言ってくれる方もいます。
 また術後に診察をする際など、患者さんは左を下にして診察を受けてもらっていますが、患者さんの肩に手を添えてお話しています。やはり「手当て」はとても大事で、患者さんの不安を軽くする力になると思います。

少し話は違いますが、こんなことがありました。

 私がまだ大学の医局にいて、出張病院に出張していた頃の話です。
 当直をしていると、腹痛を主訴で女性の方が受診されました。お子さんと一緒でした。診察の時に、お腹の痛みがあるところにそっと手をしばらく添えていました。そのことで痛みが治ったわけではありませんが、少し痛みが楽になったとその患者さんはおっしゃり、処方をした内服薬を持って帰られました。
 ある日、仕事からの帰り道、横断歩道を渡っているときに、左折してきたトラックにはねられました。大きなけがはなかったのですが、大事な右手の舟状骨を骨折してしまいました。しばらくはギブスを巻いて経過を診て、どうしても治らないようだったら手術という診断でした。右手の舟状骨の骨折だけでしたので、できる仕事はしようと、病院での勤務は続けていました。
 そんなギブスをしながらの診察、病院を歩いていた時、先ほどの女性の患者さんがいて、その方のお子さんがこんなことを言っていたと話してくださいました。「お母さん。お母さんのおなかの痛いのを治してくれた先生の魔法の手が壊れてしまった。どうしよう。」と。そして、「早く治してくださいね。」と優しい言葉をかけてもらいました。僕の手が患者さん痛みを治したわけではありません。でも痛みのあるお腹に手を添えたことでお母さんの痛みが楽になった。手を添えることで治してくれたとその子は思ったのでしょう。でもその話を聞いて、私は胸がキュッと嬉しい気持ちになりました。

 最近は電子カルテや様々な検査方法が進歩したり、画像診断もどんどん進化しています。どうしてもパソコンの画面を見る時間が多くなったり、検査データの解析などが中心になってしまい、患者さんの視診、聴診、触診などが十分でないことがあるのではないかと思います。「手当て」というようにやはり患者さんに手を添えて診察する、大切なことだと思います。また「看」も手で見るです。これからもこのことを忘れずに診療にあたろうと思います。

2020.07.18

痔核硬化療法は何回行っても大丈夫か?

 今回は、「痔核硬化療法は何回行っても大丈夫か?」ということについてお話したいと思います。
 結論は、「痔核硬化療法の適応であれば何回行っても大丈夫。」です。

 パオスクレーという痔核硬化剤があります。パオスクレーはアーモンドの油の中に5%の割合でフェノールが含まれている痔核硬化剤です。

 パオスクレーを使っての痔核硬化療法の適応は第Ⅰ度、第Ⅱ度の内痔核です。第Ⅰ度は排便時に出血する内痔核で痔核の脱出はありません。第Ⅱ度は排便時の出血と排便時に脱出しますが直ぐに戻る程度の内痔核です。特に出血している内痔核の出血を治すのに有効です。第Ⅱ度までの内痔核では排便時に脱出してこなくなります。
 第Ⅲ度以上の内痔核は排便時の出血や内痔核が排便時に脱出して押し込まないと中に戻らない程度の内痔核です。第Ⅲ度以上になりますと、パオスクレーによる痔核硬化療法の適応ではありません。やはり第Ⅲ度以上の内痔核に対しては痔核根治術の適応です。ただ、ジオンと言って硫酸アルミニュウム・タンニン酸水溶液による四段階注射法という方法での痔核硬化療法によって今まで痔核根治術の適応であった内痔核もジオンによる痔核硬化療法でも治すことが出来るようになりました。

 ただ、ジオンという痔核硬化剤がなかった時には第Ⅲ度の内痔核にも、手術が出来ない患者さんに対して、パオスクレーによる痔核硬化療法を行っていました。
 第Ⅲ度以上の内痔核に対してパオスクレーでの痔核硬化療法でも出血は治まり、排便時に内痔核が脱出してくるという症状をある程度抑えることが出来ます。ただやはり1年ほどたつの再度出血や脱出という症状が出てきます。ただそのたびに何回かパオスクレーによる痔核硬化療法を繰り返すことで、第Ⅲ度であった内痔核が第Ⅱ度や第Ⅰ度の内痔核にグレードダウンすることもあります。このことから、パオスクレーによる痔核硬化療法もある程度第Ⅲ度以上の内痔核にも症状を軽減するには有効だと思います。

 時々痔核硬化療法は何度も行うことが出来ないと思っている方がいますが、そんなことはありません。一度痔核硬化療法を施行した後も、出血や脱出などの症状が再度出てきた場合は、その内痔核の状態によっては再度痔核硬化療法を施行することが有効なことがあります。その時の内痔核の状態、性状によって何回も痔核硬化療法を行うことが出来ます。

 また、痔核硬化療法を施行すると、痔核根治術が必要になった場合に、手術がし難くなる、内痔核が剥離し難くなるのではないかと心配される方もいます。でも痔核硬化療法を施行した後に、痔核根治術をしなければならなくなっても、通常通りに手術をすることが可能です。決して手術がし難くなることは有りません。

 どうしてかと言うと、内痔核に対して痔核根治術が必要となる場合は、排便時に内痔核が肛門外に出てきて押し込まなければならない、第Ⅲ度以上の内痔核が手術適応です。

 内痔核になる静脈叢は、正常な場合はしっかりした組織で支えられています。しかし、内痔核が腫れたり治まったり、場合によっては第Ⅱ度程度の内痔核になって、出たり戻ったりしているうちに、その支持組織が壊れていきます。そして排便時に内痔核が肛門外に脱出して戻らなくなるということは、こも内痔核になる静脈叢を支えている支持組織が壊れてしまい、内痔核が脱出しても肛門内に戻ることが出来なくなってしまった状態になってしまったということです。
 ですから、痔核硬化療法後に再度内痔核が脱出してくるようになるということは、痔核硬化療法をによって固定された内痔核が強い怒責などの排便の状態が悪い場合、固定できなくなってしまい再度排便時に脱出するようになってしまったということです。したがって、痔核硬化療法で固定されていた部分が再度壊れて内痔核が脱出してくるようになったということですから、手術が必要になったとしても、内痔核が剥離しにくくなることは有りません。
 反対にいうと、内痔核が剥離しにくい、剥離できないということは、しっかり痔核硬化療法で内痔核になってしまう静脈叢が固定されているということですから、再発して内痔核が脱出してくることはないはずです。

 このようなことから、内痔核に対しての痔核硬化療法は、その適応があれば何回行っても大丈夫です。場合によっては何回か繰り返して痔核硬化療法を施行する過程で、内痔核の状態が重度のものから軽度のものへと軽快していくこともあります。また痔核硬化療法を繰り返して行った後、どうしても痔核根治術などの手術が必要になった場合でも、内が剥離できず、手術が困難になるということは有りません。心配しないでくださいね。

2020.07.16

8月の献立「夏の鶏南蛮定食」のレシピを紹介します

 今日は京都では久しぶりに一日雨は降らず暑い一日でした。
 いつもなら祇園祭の宵々山、宵山に繰り出す人たちが浴衣姿で歩いている姿を大勢見かけるのですが、今年はそういった風景を見ることはできません。でも、祇園祭が持つ疫病退散の力で、今の新型コロナウイルスの感染拡大を収束に向けていって欲しいものです。少し神頼み的になっていますが。どんな力を借りてでも収束に向かってほしいと思います。
 渡邉医院も、厳しい6月下旬から、7月上旬にかけてを何とか乗り切れたかなあと思っています。でもでも安心せず、できることをしっかりやっていきたいと思います。また、なかなか新型コロナウイルスの感染拡大で、受診したくても感染が心配で受診できない患者さんが、安心して受診できるようにしていきたいと思います。

 さて、夏の「暑さを乗りくる!」をテーマで8月のレシピを掃海しました。献立の一つは鰻を使ったレシピでした。8月のもう一つの献立は、鶏を使った献立は「夏の鶏南蛮定食」です。

 その中で、「水晶風和え物」のレシピがありました。この「水晶風」って何?管理栄養士さんからの一言でもありますが、本来はサメの軟骨と梅肉を和えた料理ということで、もう少し調べてみました。

 梅水晶は、サメの軟骨を千切りにして、そこに梅肉を加えて和えたものをいいます。なぜ「水晶」というかは、千切りにしたサメの軟骨が水晶の様に見えることや、梅肉によってほんのりとピンク色に染まった色合いがとてもきれいだということから「梅水晶」と名付けられたと言います。これまで私自身は食べたことが無いように思います。

 おそらく食感はコリコリした食感で、梅クラゲに似ているのかなあと思います。

 今回は管理栄養士さんがサメの軟骨の代わりに比較的手に入れやすい鶏のヤゲン軟骨を使ってのレシピを作って下さいました。きっとお酒のつまみにももってこいなのかなあと思います。場合によっては熱い白ご飯にも合うかなあと思います。

ではレシピを紹介しますね。

「夏の鶏南蛮定食」

1人分 約800kcal たんぱく質 45g 食物繊維  1g

8月の献立

8月の献立は「夏の鶏南蛮定食」

・おからで鶏南蛮(夏)・梅水晶風和え物・味噌汁(ナス・しめじ)・ご飯

の4品です。

「梅水晶風和え物」

1人分 約30kcal、たんぱく質 5.5

材料

鶏むねヤゲン軟骨 100g
梅干し       1
昆布茶       少々
青シソ

作り方

①ヤゲン軟骨は細く切ってゆでる。
②梅干しをたたき①と昆布茶で和える。

管理栄養士さんから一言

梅水晶
 本来はサメの軟骨と梅肉を合わせた料理ですが、今回は手に入りやすい
鶏肉のヤゲン軟骨で作りました。

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TEL 075-441-4303

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診療時間 日・祝
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※術後の患者さんも緊急対応いたします。
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