ワクチン接種が始まる中で
風薫る季節。今年は桜も早く咲き、すでにもう葉桜となりました。
今年も、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、みんなで桜を楽しむことなく散ってしまいました。本来であれば、4月は別れや新しい出会いのある大切な季節であるのに。
桜が終わり、でもそれに代わって、周りの木々たちの若葉は茂り、光り輝き目に眩しく飛び込んできます。その若葉の輝きに、私たちの心はざわめき、明日への希望を見出すことができます。
毎年毎年同じことが繰り返されていきます。でもそんな日々を暮らす中で、私たちはこの自然の営みの中で生きているのだと思い知らされます。
新型コロナウイルスの感染が再拡大し、今、第4波が始まりつつあります。
医療の逼迫、医療の崩壊が心配されます。新型コロナウイルス感染者の人たちの治療だけでなく、それ以外の病気に罹患している人たちの治療、手術もできない状況になりつつあります。本来なら、助けることができる命を助けることができない状況になってしまいます。このことは絶対に避けなければなりません。そのために私たち医療にかかわる人たちは力を合わせていかなければなりません。
収束がみえず、自粛自粛が続く中、日々の生活に希望が持てなくなってしまっている人も多いことだと思います。ワクチン接種という希望の光も見えては来ていますが、まだまだワクチンの供給量も少なく、全ての人たちにすぐにワクチン接種ができる状況にはありません。
ようやく医療従事者へのワクチン接種が今週から始まります。同時に高齢者へのワクチン接種も始まります。医療従事者へのワクチン接種は、1週間の間に、最大でも1診療所にワクチンは2V しか供給されません。いつになったらすべての人たちにワクチンを接種できるか、まだまだわからない現状です。
少ないワクチンをどう有効に、効率よく、そして無駄なくワクチン接種を希望する人たちに接種していくのか。国や自治体、そして私たち医療従事者に任されています。市民の命を守るために、国、自治体、そして私たち医療従事者がともに手を取り合ってしっかり新型コロナウイルス感染に対しての対策を取り組んでいかなければなりません。
今、新型コロナ禍において、私たちの本質が、自然の営みの中で試されているときだと感じます。来年の桜、心からみんな笑顔で楽しむことができる、そんな春を迎えるために今、私たちにできることを最大限頑張らなければならないと思います。
歩いているとき思うこと。
最近、朝は認知症の母のところに行ってから仕事に行っているので車での通勤が多くなっています。ショートステイで朝、母のところに行かなくてもいい日は地下鉄と徒歩の通勤を吸いることもあります。ですからあまり歩くこともなくなり、ちょっと運動不足だなあと反省しているところです。
昨日今日は少し肌寒いですが、これからは気候のいい季節になります。風薫る季節。木々たちの眩しいばかりに光輝く新緑を感じ、心地よい風を感じて歩くのもいいと思います。日々のストレスも発散できると思います。
地下鉄・徒歩の通勤をしているときは、この時間が私にとってはとても有意義な時間でした。車での通勤ですと、あまり空を見たり、周りの自然を見ることがあまりありません。たまに空を見上げ、流れる雲を見ると、「久しぶりに空を見たなあ。」と感じます。そんな時ついつい写真を撮ってしまいます。
以前、地下鉄と徒歩で診療所まで通勤していた頃は、地下鉄の駅から診療所までは約15分程度で、なかなか良い運動でした。寒い日も、診療所につく頃は、体がポカポカしてきます。運動不足の解消と思って歩いていましたが、しばらく歩くようになると、1日歩かないだけで、なにか物足りないような、気持ちが悪く感じるようになってしまいました。習慣というものは不思議なものです。今では、楽な車での通勤へと、ちょっと気持ちが甘えてしまっています。そろそろ歩かなければと思います。
さて、この片道約15分の時間が私にとって今はとても大切な時間となっていました。歩くということは脳に刺激を与えるのか、いろんなことが頭のなかに次から次へと浮かんできます。
以前大学病院にいたとき、担当の患者さんの手術を執刀するときには、いつも先輩から「お前今日の手術までに、何回頭の中で手術をしてきた?」と聞かれていました。消毒から始まって、皮膚の切開、患部に到達するまでの組織をどう剥離していくか、そして患部の切除、切除後の再建、最後に縫合して傷を閉鎖するまでのイメージを何回も頭のなかで思い描いて手術に望んでいました。
この診療所まで歩いている15分間に、その日の手術のイメージを頭に描きながら右手はハサミで組織を剥離している感覚を感じながら歩いています。
もう一つこの歩いているときに、以前救命救急センターに勤務していたときに救命できなかった患者さんのことが急に頭に蘇ってきます。もう、京都に帰ってきて26年ほどたってもです。今は、日常の診療のなかで、気になる患者さんのことや、予定通りに治っていかなかった患者さんのことなどが急に思い浮かんできます。
診療所からの帰り道は、その日の患者さんのことで、気になる患者さんのことが頭の中をぐるぐる駆け巡ります。どうしてあげたらよかったのか、どうしてあげたらいいのかなど考えることがよくあります。
このように、大抵の場合、うまくいったことはあまり頭に浮かんできません。悔しい思いやつらい思いをしたことばかりが浮かんできます。きっと私だけでなく、医療に係っておられる方は皆同じ経験をされているのではないでしょうか。
そんな気持ちを癒してくれるのが、やはり、元気になって治っていかれる患者さんたちの笑顔だと思います。その笑顔に医療に従事している人は皆さん救われるのだと思います。
いつもいつもこんなことを考えながら歩いているわけではありません。すがすがしい朝は鼻歌交じりで、気持ち浮き浮きしながら歩くこともあります。でも突然「あ~っ」とか「う~ん」とか声をあげているところを目撃されても変な目でみないで下さいね。よろしくお願いいたします。
「三つ葉のわさび和え」のレシピを紹介します。
5月のレシピは「風薫る季節」をテーマに紹介しています。
今回は、「三つ葉のワサビ和え」のレシピを紹介します。
三つ葉はよくお吸い物に香りづけでなど、彩りに使われたりします。三つ葉にはいろいろ種類があるようです。その種類によって、風味や硬さなどが違って料理によって使い分けるようです。
三つ葉には三種類あるようです。
一つが「根三つ葉」。ごぼうのような根が付いていて、春から夏にかけて旬を迎えるようです。揚げ物や香りの強い食材を使う料理にお勧めだそうです。
二つ目が「切り三つ葉」。茎が太目でセロリに似ているそうです。やわらかい食感を楽しむことができるようです。生で食べたり、茶碗蒸しやお吸い物にするのがお勧めだそうです。
三つめが「糸三つ葉」。ハウスで水耕栽培されているそうです。スポンジの床ごとスーパーなどで販売されているそうです。この三つ葉は1年中楽しむことができるようです。
私にはよくわかりませんが、料理に合わせていろんな三つ葉を使い分け、三つ葉を添える料理や、三つ葉そのものを楽しむのですね。
三つ葉にもいろいろ栄養素があって、体に良さそうです。後ほど管理栄養士さんの一言で紹介しますね。
では、そろそろレシピを紹介したいと思います。
「三つ葉のわさび和え」
(1人分)エネルギー 約65kcal たんぱく質 7g 食物繊維 2g
材料(2人分)
三つ葉 2束
ささみ 1本
めんつゆ 小さじ1
わさび(チューブ)2cm
サラダ油 少々
作り方
- ①ささみはラップでくるみ電子レンジで加熱して冷めるまでそのまま置いておく。
- ②三つ葉はさっとゆで3cmの長さに切る。
- ③②を分量以外のめんつゆ少量で軽くもみ、しっかり水気を絞る。
*こうすることで水分が出て水っぽくなるのを防げます。
④ボールにめんつゆとわさびを混ぜ③と①を裂いて合わせ、仕上げに油をかける。
管理栄養士さんから一言
三つ葉
三つ葉は緑黄色野菜でβカロテンを豊富に含み、油と一緒に取ることでさらに吸収がよくなります。他にもカリウムが豊富でビタミンEやカリウム・カルシウム・鉄・食物繊維なども多く含まれます。
また、独特の香り成分はクリプトテーネンやミツバエンで、鎮静作用や食欲増進効果があるそうです。免疫力アップ・高血圧予防・貧血予防・不眠症改善にも効果が期待できます。
「新玉ねぎとめかぶの和え物」のレシピを紹介します。
先日、公園を散歩しました。木々には若葉が光輝いていて、眩しく目に飛び込んできました。自然の力、命の力を感じます。木の下には花が咲き誇っていました。毎年毎年同じことの繰り返しです。でもそのことがとても大切に感じ、命の息吹を感じさせてくれます。そのことが私たちに明日への夢、希望を与えてくれるんだんあと思います。
今回は、「新玉ねぎとめかぶの和え物」のレシピを紹介します。
「めかぶ」ねばねばして美味しいですよね。ねばねばのオクラと一緒に混ぜて白ご飯と一緒に食べる美味しいですよね。また、めかぶのお味噌汁も美味しいですよね。
「めかぶ」は「ワカメの根元の部分」です。めかぶわワカメの生殖細胞が集まった部分です。上のひらひらした部分がワカメで、下の生殖細胞が雌株です。生のめかぶは濃い茶色をしています。茹でると鮮やかな緑色に変わっていきます。めかぶの旬は3~4月の1か月間だそうです。ですから今が旬ですね。
ねばねばした感じが健康に良さそうで、私は好きです。めかぶでご飯美味しいです。
管理栄養士さんの一言で紹介しますが、めかぶもいろいろ栄養があるようです。
ではレシピを紹介しますね。
「新玉ねぎとめかぶの和え物」
(1人分)
エネルギー 約25kcal たんぱく質 1g 食物繊維 2g
材料(2人分)
新玉ねぎ 1/2個
なめこ 50g
めかぶ 50g
ポン酢 小さじ2
作り方
- ①なめこをゆでる。
- ②新玉ねぎを薄切りにする。
- ③①にポン酢を混ぜてすべての材料を器に盛る。
*食べる時はよく混ぜてください。
管理栄養士さんから一言
めかぶ
めかぶに含まれる水溶性食物繊維にアルギン酸やフコダインなどがあります。
またカルシウム・マグネシウム・ヨウ素・ビタミンも多く含まれ、免疫力アップ・便秘解消・糖の吸収をゆっくりにする・高血圧予防などいろいろな効果が期待され、低エネルギーで何とでも合わせやすい食材です。
味付きの市販品もありますので手軽に取り入れます。塩分が気になる方はドレッシングとして使うこともおすすめです。
「人参葉のかき揚げ」のレシピを紹介します。
5月のレシピは、「風薫る季節」をテーマに紹介しています。
桜はもう散って葉桜になっています。まだ、朝夕は冷え込んでいますが、日中は本当に暖かくなりました。花粉症の方もそろそろ収まってきたころかなあと思います。季節もこれマラ過ごしやすいとてもいい季節になります。木々の緑も眩しく、本当に「風薫る季節」になってきました。
木々の輝く緑の葉を見ると、気持ちもウキウキしてきます。なかなか大勢の人と一緒に楽しむことはできませんが、これからの季節楽しみたいと思います。
さて、今回のレシピは「人参葉のかき揚げ」です。
人参はオレンジ色の根っこを食べるだけではないんですね。人参の葉っぱも食べれるんですね。あとから管理栄養士さんの一言で紹介しますが、人参の葉にもいろんな栄養素が含まれているんですね。
そういえば、私の家でも人参の葉を細かく切ってごま油で少しピリ辛にして、白い熱々ご飯のお供にすることがあります。いくらでもご飯が進んでしまいます。
今回はかき揚げ。パリッと上げてサクッと食べる。食感もいいですよね。天つゆで食べてもお塩で食べてもいいですよね。人参の葉のかき揚げ丼も美味しいかもしれませんね。
では、レシピを紹介したいと思います。
「人参葉のかき揚げ」
(1人分)エネルギー 約200kcal たんぱく質 3g 食物繊維 1g
材料(2人分)
人参葉 1/2袋
新玉ねぎ 1/2個
あさり(むき身) 1本
小麦粉 大さじ5
炭酸水 100ml
サラダ油 適量
作り方
- ①人参葉は3cmの長さに切り、玉ねぎは薄切りにする。
- ②ボールに材料を全部入れ混ぜる。
- ③油でカラッと揚げる。
*炭酸水で衣を作ることによりさっくり軽い衣になります。
*あさりの塩分でそのままでもおいしいです。
管理栄養士さんから一言
葉にんじん
人参は葉にも栄養が豊富に含まれています。普段食べている根の部分よりも多く、
ビタミンAは2倍以上、カルシウムは5倍も含まれています。
最近は水耕栽培で年中出回っており、軟らかく生でも食べられ、セリに似た風味があります。
油溶性のビタミンを含むので油と一緒の調理がおすすめです。
「さわらの山椒焼き」のレシピを紹介します。
5月のレシピは「風薫る季節」をテーマに「たけのこづくし」のレシピを紹介しています。
さて、「風薫る」はもとは漢語の「薫風」(くんぷう)を訓読みして和語化したものだそうです。「新緑の季節に、青々と茂った木々の間を風が吹き抜けていく様を表現したものだそうです。
4月になって、桜の花は散ってきましたが、ほかの木々たちは若葉が生き生きとしてきています。まだまだ深い緑ではなく、黄緑色した若々しい若葉、その眩しさが目に飛び込んできます。5月になると木々たちの若葉はさらに成長し、生い茂っていきます。その木々の間を吹き抜けてくる風。木々たちの薫りを私たちに運んできてくれます。その自然の力に私たちは癒されます。
また、今の時期、眩しいぐらいの若葉の輝き。また私たちの目だけでなく、体に、そして感性にもその自然が持つ力強さがしみ込んできます。何か、ウキウキしたような、未来への希望のような、そんなものを感じさせてくれます。
今、私たちはとても暗く、落ち込んだ社会に浸ってしまっています。自然の力を感じ、受け止め、明日への希望にしていきたいものです。
5月のレシピは「たけのこづくし」。今回第二弾は「さわらの山椒焼き」です。
さわらの西京漬けですが、お弁当にも美味しいですよね。暖かくても、冷めても美味しい。私はそう思います。また「さわら」は「鰆」と書きます。魚へんに春。字だけも春を感じます。
ではそろそろレシピを紹介しますね。
「さわらの山椒焼き」
(1人分)エネルギー 約250kcal たんぱく質 21g
材料(2人分)
さわらの西京漬け 2切
たけのこ煮 4切
粉山椒 適宜
作り方
- ①さわらは味噌をふき取って粉山椒をかけ、電子レンジで1分温める。
- ②①とたけのこ煮を魚焼きグリルで焼く(オーブントースターでも可)。
*先に電子レンジにかけることでこげやすい味噌漬けも綺麗に焼けます。
管理栄養士さんからの一言
さわら
魚へんに春と書くさわらの旬は春と思われますが、関西ではよく獲れる春を旬とし、関東では脂ののった冬を旬とするそうです。
産卵後の夏以外は1年を通して出回る魚ですがそれぞれの時期で味を比べるのもよいと思います。
さわらはサバ科の魚でDHAやEPAが豊富で、たんぱく質・カリウム・ビタミンB2も多く含まれていて、動脈硬化予防・高血圧予防・免疫力アップが期待できます。
「若竹煮と姫皮のメンマ風」のレシピを紹介します。
4月に入った最初は暖かかったですが、昨日今日とまた冷え込んでいます。
4月になり、桜の花は散り、葉桜になってきています。桜の花は散ってきましたが、そのほかの木々たちの若葉は、眩しいぐらい輝いています。渡邉医院の中庭の木々たちの若葉も本当に生き生きと輝き、力強い命を感じます。
5月のレシピは「風薫る季節」をテーマに管理栄養士さんは「たけのこづくし」でレシピを考えてくださいました。
管理栄養士さんからのメッセージを5月のレシピの最初に紹介したいと思います。
管理栄養士さんからのメッセージ
今回は5月としながら「たけのこづくし」にしました。今年のたけのこがいつまで出回るかは少し不安です。
生のたけのこは一時期しか出ず、出ると「食べなくちゃ」と思ってしまう食材です。
生からゆでるのは面倒くさい・難しい印象があるかもしれませんが火にかけて軟らかくなったら放っておくだけです。
もし、えぐみが抜けなければ、鮮度が落ちていたかもしれません。もう一度、ゆでる・冷ますを行ってください。
きっと今しか味わえない味に出会えること思います。
今回のレシピはゆでたたけのこを全部薄味で煮て、それから料理をしたものです。
もちろん市販のゆでたけのこを使っても同様に作れます。先に下味をつけておくことで汎用性が広がります。
もっと簡単に、市販のたけのこ煮をつかうこともできます。
その時の気分で選んでいただければと思います。
たけのこはたくさんの栄養成分も含んでいます。
まずは食物繊維、グルタミン酸、チロシン、アスパラギン酸などのアミノ酸、カリウム、亜鉛、パントテン酸などが多く、低脂質で低エネルギーの食材です。
便秘解消・疲労回復・高血圧予防・細胞の生成・味覚の正常化・ストレス軽減などいろいろな効能が期待できます。
ただし、食べ過ぎには注意が必要です。食物繊維もとり過ぎは不調をきたしますし、 えぐみの素であるシュウ酸やチロシンから生成されるメラニンなど体にとって害になる恐れもあります。
食品はどれも有用な面と不用な面の両方を持っているので同じものを大量にとらず、いろいろなものをとることが大切になります。
では5月のレシピのまず第一弾は「若竹煮・姫皮のメンマ風」です。
「若竹煮」
1人分 約50kcal たんぱく質 5g 食物繊維 5g
材料(2人分)
たけのこ煮 120g
カットわかめ 3g
カットわかめを水で戻し、たけのこ煮に入れて軽く温める。
たけのこ煮(生のたけのこから)
作り方
- ①たけのこの土をおとし先端を斜めに切って縦に半分くらいの切り込みを入れる。
- ②たっぷりの水にぬか(米のとぎ汁)と①を入れて軟らかくなるまでゆでる。
- ③冷めるまでそのままつけておく。
- ④皮を取り、姫皮を外してきれいに洗う。
- ⑤昆布とかつおでだしを取り、塩・しょうゆ・みりんで味付けし④を煮る。
- ⑥だしパックにかつお節を入れ、⑤に入れて一煮立ちさせそのまま冷ます。
姫皮のメンマ風
姫皮 めんつゆ ごま油
①茹でた姫皮を千切りにしめんつゆとごま油で和える。
「明暗」の痔瘻
今、夏目漱石の「明暗」を読んでいます。どうしてかというと、明暗に出てくる「津田」という人が、肛門の診察を受け、痔瘻と診断され根治術が必要だといしゃから言われるシーンから「明暗」は始まるからです。
夏目漱石も漱石日記の中に、医者の所に行き、「痔の中を開けて疎通を良くしたら五分の深さと思ったものがまだ一寸程ある、・・・・」という記事があるそうです。夏目漱石もの治療に通い、一週間程度入院したこともあったようです。「痔の中を開けて」はおそらく肛門周囲膿瘍に対して切開排膿をしたことを指すのでしょう。また深さが一寸あるというのも、一寸は約3㎝であることから、肛門の出口から2~3㎝ほど奥にある肛門腺が原因ということだったのだと思います。
「明暗」冒頭に、「医者は探りを入れた後で、手術台の上から津田を下した。」とあります。そして疎通を良くするためにがりがり掻き落としてみたとあります。おそらく膿が出てくる瘻管の中をえいひ等で掻破したのだと思います。でもジオ労は瘻管の中を掻破するだけでは根本的には治りません。そこで医者は「根本的の手術を一思いに遣るより外に仕方がありませんね。」と痔瘻根治術を進めたということです。読んでみると今と昔、手術の基本は同じです。切開して瘻管を開放創にする、そういった手術を説明しています。術後については、「すると天然自然割かれた面の両側が癒着して来ますから、まあ本式に癒るようになるんです。」と。切開した開放創が自然に肉が盛り上がり治癒していくということを話していることになります。
痔瘻の手術も随分進んできています。でも内痔核の治療と違って、基本的なところは今も昔も変わりません。原発口と原発巣を瘻管を含めて摘出したり、開放創にするのが痔瘻の根治術になります。まだまだ痔瘻の治療は変わっていく部分は多いと思います。
さて、話の続きに津田が「もし結核性のものだとすると、・・・」というところがあります。痔瘻と結核?と思われる方もいると思います。昔は、肛門周囲膿瘍やそこからの痔瘻の原因に腸結核が原因で起きることがありました。現在も結核に罹患される方はいますが、痔瘻の原因になることはまずありません。今は大腸菌などの腸内細菌が原因となります。
昔は結核が基礎にある痔瘻は治りにくかったのだと思います。現在、痔瘻で問題となるのは、潰瘍性大腸炎や特にクローン病などの炎症性腸疾患による痔瘻が難治性で問題になります。クローン病では、本来の肛門腺の感染で起きる肛門周囲膿瘍から痔瘻に移行することもありますが、クローンによる直腸の潰瘍などによってそこからの膿瘍形成から痔瘻になる場合があります。ですから、痔瘻となる原発口や原発巣を処置することが難しかったり、痔瘻の手術をすることが体に侵襲をあたえ、もとにあるクローン病や潰瘍性大腸炎の状態が悪くなったりすることがあります。こういった炎症性腸疾患などを基礎に持つ患者さんの痔瘻の手術に関してはクローン病や潰瘍性大腸炎の状態が落ち着いていて、しかも手術に関してもできるだけ体に侵襲のない方法で行う必要があります。
さて、「明暗」が書かれたころの痔瘻の診察や治療も興味ありますが、未完結の小説読み切ろうと思います。
夢の中で手術を?
4月になって、今年は早く開花した桜も、満開から少し散り始めています。明日は雨の天気予報。花散らしの雨になってしまいますね。桜の花を楽しめるのもきょうまででしょうか?
桜の花は散っていきますが、渡邉医院の庭の木々の若葉は眩しく輝いています。毎年同じことの繰り返しですが、自然の力、命を感じることが出来ます。これから木々の葉も茂っていくのでしょう。
先日、庭の草むしりと掃除をしました。本当に運動不足なのか、直ぐに筋肉痛になってしまいました。もう少し運動をしなければとつくづく実感しました。庭の草むしりをしていると、ところどころに小さな花をつけたスミレを見つけました。そういえば母もこの小さなスミレが好きでした。庭師さんがそのスミレを植木鉢に植え替えて、母にプレゼントして下さったことを思い出します。
さて最近、患者さんからこんな話を聞きました。朝、術後の患者さんの病室に行って具合を聞きに行くのですが、その時に患者さんがこんな風な話をされました。「手術の前の日に夢を見ました。先生に手術をされている夢です。リアルな感覚でした。実際に手術を受けるときも、夢と同じ感覚で、なにか安心して手術が受けられました。」と。何か不思議な感じです。「不思議なことがあるんですね。」と二人笑いながら話をしていました。でもよく考えると、その患者さん、夢と現実との2回も手術をされてしまったということですよね。後から考えると少しかわいそうな気がしました。でも夢を見た後の手術が安心して受けられたのならば、それも良かったのかなあと思います。
でも手術の前に手術をされる夢を見る。やはり、患者さんにとって手術は、夢にまで出てくる不安なことなのだと思います。どんなふうに麻酔をするのだろう?手術はどうするのだろう?手術中は痛いのかなあ?手術の後の痛みは?手術をした後具合よく治っていくのかなあ?等、いろんな不安がどんどん溢れ出してくるのだと思います。
そういった不安をどうしたら少しでも解消してあげることが出来るのか?
患者さんの抱く不安を全て取り除くことは無理だと思います。でも正しい情報を正しいタイミングで患者さんに提供することで、随分不安は取り除けるのだと思います。全ての情報を一時期に患者さんに話をしても、「手術和しなければならないんだ。」という想いがあるとどうしても医師の話を十分に理解することは難しいと思います。患者さんに伝えたいことは、同じことでも何回も何回もお話することが大切ですし、今、患者さんに必要な情報をしっかり見極めて、お話する。この方が一時に一気にすべてを伝えるよりは十分に伝えたいことを患者さんに伝えることができると思います。
私も、コンピューターの事や、電気機械のことを一気に話をされていてもわからないことが多いです。また、その時は解った気がしても、後になってどうしたらいいのかわからないことも有ります。患者さんにとっても同じことだと思います。
時間をとって何回もお話して、患者さんが聞きたいことは同じことでも何度も繰り返しお話することで、ある程度不安を取り除けるんだと思います。
ですから、何か不安なこと、心配なことがあれば、遠慮なく何回でも質問して下さいね。そのことがお互いに有益なものに繋がっていきます。
〈第5次提言〉新型コロナウイルス感染症による生命と健康の危機を乗り越える 保健医療体制のさらなる改善に向けた提言
コロナ禍を1年経験し、京都府保険医協会は、これまでも様々な要請や提言を出してきました。
この1年の経験を踏まえて、改めて第5次提言を京都府に提出しました。
今回はその内容を紹介します。
〈第5次提言〉新型コロナウイルス感染症による生命と健康の危機を乗り越える
保健医療体制のさらなる改善に向けた提言
- 1.新型コロナウイルス感染症対策にかかる方針決定プロセスと府民への情報公開について
今後の感染拡大に備え、これまで以上に日々の感染状況の把握・分析を強めつつ、感 染症専門家の意見はもちろん、現場医療者や福祉関係者からの意見も踏まえた方針決 定がなされるようにしていただきたい。また常に対応を振り返り、課題を抽出し、それ を踏まえて方針を見直すPDCAサイクルを確立していただきたい。方針決定プロセ スについては京都府民に情報公開していただきたい。
2. 診療・検査医療機関、発熱患者受入医療機関について
(1) 京都府としての診療・検査体制の整備目標の明確化 京都府として、府内全市町村ごとに診療・検査体制の確保目標(人口当たり医療機関数、1日当たり患者受入可能数・抗原検査またはPCR検査実施可能件数等)を立て、実現を目指していただきたい。
(2) 公的発熱外来の設置、地区医師会独自の取組への補助制度の創設
診療・検査医療機関の指定医療機関リストを各指定医療機関の合意を前提に、地区医師会単位で共有できるように提供していただきたい。 診療・検査医療機関、唾液PCR実施の集合契約に参加する医療機関が広がる一方、各地区医師会は自主的な発熱外来や検査センターの設置を進めている。こうした独自の取組に対する財政支援を行っていただきたい。 要請項目(1)で定めた目標に照らし、医療資源が少ないこと等から達成の難しい地域 において、公的発熱外来を設置していただきたい。
(3) 診療所の相談体制構築に対する補助制度の創設
京都府の新型コロナ医療相談センターの機能を充実するとともに、府民の新型コロナウイルス感染症に関する疑問・不安に応え、必要に応じて診療・検査につなぐ役割を果たしている診療所に対し、独自の補助制度を創設していただきたい。
(4) 検査を行わない発熱患者受入医療機関も診療・検査医療機関の指定を
2020年9月4日の国通知は「診療・検査医療機関(仮称)」は、「検査(検体採取)を地域外来・検査センターに依頼することも可能」とされ、9月29日のQ&Aでも「発熱 患者等専用の診察室を設けた上で発熱患者等の診療を行う」医療機関であって、「イン フルエンザの検査及び新型コロナの検査を地域外来・検査センター等に依頼する」場合も、診療・検査医療機関になれることが書かれている。感染再拡大が危惧される現状において、より多数の医療機関による発熱者の受入が可能となるよう、京都府においても国の通知に沿った指定要件に改めていただきたい。
- 3.保健所も参加する地域単位での病院連携・調整会議の設置について
新たな感染拡大を前に、さらなる受入病床の確保が求められている。医療機関相互の協力・支援による受入体制強化の実現を目指し、二次医療圏並びに京都市域の単位に「新型コロナ対応地域医療 連携体制調整会議」(仮称)を京都府の呼びかけで設置 していただきたい。その上で、地域単位で入退院調整の仕組みを構築していただきたい。
〈入院医療機関の連携のあり方・例〉
・新型コロナウイルス感染症患者について、病院機能に応じ、重症・中等症・軽症患 者の受入何れについても受入先を1床でも2床でも確保していただく
・新型コロナウイルス感染症患者の受入が難しい病院は、上記に伴って逼迫する他 の通常の疾患の入院患者についての受入を担っていただく
・重症患者を受け入れる医療機関において、当該患者が重症期を脱した場合には、 他の医療機関へスムーズに転院できるようにする
・医療機関同士の医師・看護師はじめ、医療スタッフの応援派遣を可能にする
4. 自宅療養・入院待機中の医療保障・生活支援について
(1) 自宅療養中・入院待機中の府民への福祉サービスの保障を
自宅療養、入院待機となった方に対する健康観察を実施する際、保健所は福祉事務 所等、他の保健・福祉部門と連携し、福祉サービス事業者から引き続きサービスが提供されるようにしていただきたい。そのために、各事業所への助言、アドバイス、感染防護についての知識の伝達等を行う等の事業者支援も行っていただきたい
(2) 自宅療養中・入院待機中の府民への外来医療の保障を保健所は自宅療養、入院待機となった方の外来医療の必要性を把握し、地域の医療 機関につなぐ役割を果たしていただきたい。同時に、感染拡大時に保健所機能が逼迫することも想定し、保健所のもとめがなくとも往診等を医療機関独自の判断で行う場合の情報共有の方法等をルールとして明示していただきたい
(3) 自宅療養中の生活支援の充実を
自宅療養・入院待機・濃厚接触による自宅待機中の方々の買い物等の支援は、保健所 をハブに役所の他部署と連携して公的に行っていただきたい
(4) 生活支援も含めた包括的な感染症対応の実現を以上の事項を実現するため、京都市においては行政区単位、京都市以外においては 市町村保健センター単位で、個々の住民に対する生活支援も含めた包括的な感染症対 応が可能となるよう、至急、体制を確立していただきたい
5. 変異株への対応、次なる感染拡大を抑えるために感染再拡大の兆候が表れている。京都府においても変異株が確認されており、至急の対策が必要である。変異株に対する徹底した監視体制の強化、積極的疫学調査の徹底とあわせ、保健福祉医療施設の従事者・利用者・入所者や医療機関従事者に対する PCR検査が定期的に行えるようにする等、検査対象を拡大していただきたい
以 上