13作目「北山通の風景」を水彩で描いてみました。ー動画ー
8月になりました。現在の私の状況報告です。
皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。
今日から8月になりました。月日が経つのがとても早く感じられます。
その一方、京都でも新型コロナウイルスの新規感染者が連日5000人を超える状況が続いています。第7波の渦中にあります。夏休みやお盆がありますが、基本的な感染防止策を取りながら、楽しい休み、思い出を作って下さいね。そして早く第7波が治まって欲しいものです。
それに加えこの暑さ。熱中症にも注意してくださいね。
さて、現在の私の現状をご報告します。
現在、地固療法の2クール目の最中で入院しています。1クール目の時に十分な造血幹細胞が採取できたので、今回は地固療法のみとなります。
抗がん剤、キロサイド(シタラビン)の投与はすでに終わり、これから骨髄抑制が来て白血球や血小板が減少してきます。その骨髄が回復して、白血球が増えてきたら今回一連の地固量法は終了です。
1クール目の経験からすると、今週の木曜日、金曜日あたりが白血球の最低値になると思います。その際はG-CSFを皮下注射して白血球を増やしていきます。また血小板が1万以下になった場合は血小板輸血を行います。
予測では週末から来週頭にかけて白血球も増えてくると思います。そうしたら一旦退院となります。お盆前には退院できそうです。
さて、今後の予定ですが、2週間ほど間をあけて最終目標の「自家血幹移植」を行います。
主治医から話ですと、自家血幹移植は約1か月程度の入院が必要とのことです。
当初は9月から完治して回復して、渡邉医院を再開する気持ちでしたが、少し遅れてしまうことになりました。
おそらく11月もしくは年内の渡邉医院の再開ができればと思います。
皆様には診察が必要なときに診察できず、本当に申し訳なく思っています。
今後の経過や渡邉医院の再開に関しては、随時ホームページにアップしていくのでよろしくお願いいたします。
診察や治療はできませんが、TwitterやYouTubeでの相談は現在も行っています。お尻の具合の悪い方や、何か心配なこと、不安なことがあれば遠慮なく相談して下さいね。相談を受けることで、患者さんと繋がっている感じがして、私にとってとても支えになりますし、力にもなります。よろしくお願いいたします。
ここまでつまずくことなく、本当に順調に治療が進んでいます。これも皆様のおかげだと思っています。ありがとうございます。ではまた。
R4年8月1日
渡邉医院 渡邉賢治
抗がん剤投与、浮腫、体重増を推察する。
皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。
現在、地固療法の2クール目を行っています。抗がん剤のキロサイドの投与はすでに終わり、後は骨髄抑制が来て、それが回復するのを「待つ」のみです。治療の方はとても順調です。今回の治療が終わると、いよいよ最後の「自家血幹移植」を行うのみとなりました。
皆さんにはご迷惑をおかけしていますが、もう一息。完治して復帰して、渡邉医院を再開したいと思います。
今回は、私が体験していることを少し推察してみました。何かご意見や、「いやこっちが正しい。」と言うことがあれば教えていただきたいなあとも思います。よろしくお願いいたします。
前回から気が付いたことですが、抗がん剤を投与したり、造血幹細胞を採取する際に、体重が増える言うことです。両足の足の甲の浮腫みもあるのでそのためなのかなあと思っていました。また前回の治療中から、血圧の最高血圧が90mmHg前後と低くなりました。これらのことをどう考えるか推察してみました。
まず抗がん剤投与と造血幹細胞採取と体重に関しての経過を図と一緒に示します。
1回目の地固療法でキロサイドを投与する前は73.4㎏だったのが2日間のキロサイド投与で、75.2㎏と1.8㎏の増加。また造血幹細胞を採取する前は73.5㎏だったのが、採取後は76.6㎏と、ここでは3.1㎏の増加でした。両下肢の候に浮腫は認めましたが、浮腫はそこだけで顔や手などの浮腫は認めませんでした。このころから、通常最高血圧が110mmHg~120mmHgであったものが、90mmHgと低くなってきました。
今回2クール目のキロサイド投与前、自宅で測定した体重が73.3kgで、キロサイド投与後76.1kgまで2.8kg増加しました。キロサイド投与後2日目の体重が75.9kgであったのが、今日3日目は74.7kgと1.2kg減少していました。血圧も最高血圧が110mmHgと上昇しました。昨晩から夜中にかけて尿量も増えた気がします。
こんな経過です。
さて、少し話は変わりますが、「侵襲」という言葉があります。「侵襲」を調べると「外科的手術や処置、薬剤投与などによって生体内に何らかの変化をもたらす行為。」と書いてあります。ですから手術をしたり、体に傷をつけることだけでなく、抗がん剤などの薬物投与も「侵襲」となります。
外科的手術で侵襲を受けると、血管透過性が亢進します。血管透過性が亢進すると水分は血管外に漏出していきます。細胞内でも血管内でもない場所に溜まっていきます。この場所をサードスペースと言います。手術侵襲後は2~3日で炎症反応が治まってくるので、このサードスペースに溜まった水分が血管内に戻ってきます。このことをリフィリング減少と言うそうです。
やはり血管内の水分としてのボリュームが減ると血圧も下がります。
こういったことを考えると、やはり抗がん剤投与は外科的手術に匹敵する侵襲を体に与えるのだと思います。
そこで、今回の私の推察ですが、
抗がん剤、キロサイドの投与による侵襲によって血管透過性が亢進して、その結果、血管外に水分が漏出。そのために血圧低下や浮腫が生じ体重が増加した。投与後2日間が経ち、血管透過性も正常に戻りつつあり、漏出していた水分が血管内に戻り血圧が上昇し、尿量の増加、そして1.2kgの体重減少となった。
こんな感じかなあと推察しています。
ちなみに、浮腫の時、正常なときの5~10%以上の水分の貯留があるそうです。
体重が75.9kgだった時、浮腫による体重増だとすると、その分を計算すると、5%で3.6kg、10%で6.9kgの水分が溜まっていたということになります。
昨日から今日にかけてそのうち1.2kgの水分が体の外に出たことになりますね。
水彩画「様々なことを教え、気づかせてくれる賀茂川。」ー動画ー
便秘フォーラム「CKD患者の便秘治療の最前線」に参加して。
皆さんこんにちは。
いよいよ地固療法の最終クールが始まりました。7月26日、27日と2日に分けて12時間毎にキロサイドを投与します。後はどうしても前回同様に骨髄抑制が来るので、G-CSFを投与しながら、白血球が増加してくるのを「待つ」ことになります。この間の感染症には気を付けなければなりません。これが終わると残すは最後、「自家血幹移植」を待つのみです。もう一息のところまで来ています。最終コーナー、気を引き締めて頑張っていきたいと思います。
さて今回は、「便秘フォーラム」にWEBで参加しました。その時の内容を紹介しますね。
今回のテーマは「CKD(慢性腎臓病)患者の便秘治療の最前線」でした。
まずはCKDとは何かです。
CKD(慢性腎臓病)とは、腎臓の働きGFRが健康な人の60%以上低下するか、タンパク尿が出るといった腎臓の以上が続く状態のことで、難しくなりますが、定義にはこう記されていました。
①蛋白尿(微量アルブミン尿を含む)などの尿異常。画像診断や血液検査、病理所見で腎障害が明らかである状態。
②血清クレアチニン値をもとに推算した糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73ml未満の状態。
このいずれか、または両方が3カ月以上続いている様態。
をCKDと定義されています。
やはり、年齢と共に腎機能が低下していくため、高齢者になるほどCKDが多くなっています。また、CKDの患者さんはどうしても透析に移行しやすいことになります。
今回のテーマ「CDK患者の便秘治療の最前線」とあるように、どうしてもCKDの患者さんや透析をされている患者さんは便秘になりやすいです。
さて、透析患者さんの現状の報告もありました。やはり、糖尿病性腎症の患者さんが透析患者さんの一番を占めています。次が腎硬化症の患者さんが増加して二番目に多くなってきています。いずれも高齢化によっておきるので、いずれの疾患からの透析に移行される患者さんも高齢者に多くなって来ています。現在、透析患者さんは35万人。そのうち70歳以上の方が55.6%となっています。日本の透析の寿命は世界一だそうです。でも透析患者さんの健康寿命の延長を考える必要があるとのことでした。健康な方の健康寿命と同じです。
ではなぜ透析患者さんに便秘の方が多いかです。
一つは透析することで、体から水分が引かれていきます。このため、便意行く水分量が減って便秘になる。
もう一つは、透析の患者さんの食事の摂取量が少ないとのことです。このことによって、食物繊維の摂取量も減ってしまいます。やはり、透析を行った日の食事が十分に摂れないとのとのことでした。
私も、前回のクールで造血幹細胞の接種を行いました。透析の患者さんと要領は同じです。私の場合は、右鼠径部の太い静脈から血液を取り出し(脱血)、造血幹細胞採取器を通って左の肘の静脈に血液を返す(返血)を行いました。とてもしんどく感じ、透析の患者さんは、これと同じことを週3回しているんだと思うと、大変なことをされているんだなあと思いました。
また、どうしても透析の患者さんは運動不足になってしまいます。特に透析日には短くなります。
内服薬にも便秘になりやすいお薬を飲まなければなりません。例えば、リン吸着薬です。その中でも特にポリマー系の内服薬が便秘になりやすいとのことです。
また、残薬の多いのが便秘薬だそうです。透析中に排便したくなることが気になるからだそうです。これも良くわかります。
私は排尿でした。4時間~5時間の間採取していました。どうしてもトイレに行きたくなったので、一旦回路を外してもらってトイレに行き排尿しました。
このようにいろんな原因で便秘になりやすくなっています。
さて、便秘に関してお話がありました。
年齢別の便秘の傾向としては、便秘は若い女性に多く、高齢になると男性も女性も同じ割合になるとのことでした。これは渡邉医院の統計とも同じ傾向です。渡邉医院でも、男性では年齢と共に便秘の患者さんが増える傾向があります。女性に関しては、若い世代、20代から40代に一つのピークがあり、その後は男性と同じように年齢と共に便秘の患者さんが増える傾向にあります。
便秘の原因は次のようにお話しされました。
原因としては、食物繊維の摂取量が少ないことをまず挙げておられました。穀物や野菜の摂取量が少なくなり、日本人の食物繊維の平均摂取量は14.2gと少なく、欧米人よりも少ないとのことでした。
もう一つの原因に高脂肪職を上げておられました。エネルギー源として、炭水化物から脂肪へと変わっていく。こういった日本人の食生活の変化がべんぴの増加ではないかと話されていました。
さて、透析の患者さんが便秘の原因は、まずは透析による体からの除水です。
どうしても体の中の水分が減ると便に行く水分量も減り、便が硬くなってしまいます。
また、透析に移行する患者さんの基礎疾患として一番多いのが糖尿病性腎症です。糖尿によって末梢神経の麻痺が起きます。このことによって腸管の蠕動運動が悪くなり便秘になります。
また、透析中の排便の我慢。これも便秘の原因になるともお話しされていました。本来ならば、直腸に便が来てスッキリ出してしまうことが大切です。我慢して残ったままにしておくと、直腸で便が硬くなってでなくなってしまうだけでなく、大腸全体に便がたまってしまいます。
また、食事接種の低下も便秘の要因に挙げていました。
糖尿病性腎症にも関係がありますが、腸管の動脈硬化が起きることでも腸管の動きが悪くなり便秘になります。
さて、便秘は生命予後にも影響があるとお話しされました。これは便秘が循環器系の疾患やCKDの発症にも影響を与えるからです。
私も初めて聞きましたが「腸腎関連」と言う言葉があるそうです。
これは便秘になることで、腸内の尿毒素が増加し、そのことによって腎機能を悪化させる。そして腎機能が悪くなることでさらに便秘になるといった悪循環を生み出します。このことを、「腸腎関連」と言うそうです。したがって便秘を改善することで大腸由来の尿毒素を減らすことで腎機能の改善の可能性があるとのことでした。
さて、治療に関してです。
便秘に関しての第一選択は酸化マグネシウムなどの浸透性下剤です。
しかし腎機能が悪い方は酸化マグネシウムの長期服用で血液の中にマグネシウムが蓄積されていき、高マグネシウム血症を起こしてしまうことがあります。
そこで腎機能の悪い方や透析患者さんには胆汁酸トランスポーター阻害剤、製材名ではエロビキシバット水和物、総称名はグーフィスです。
これに関しては以前ブログで紹介しているので参考にして下さいね。
フォーラムの最後にこんな質問がありました。
「透析の患者さんは、どのタイミングで内服したらいいのか?」です。
その回答は、「内服してから約5時間後に効いてくるので、透析日は透析の後に内服。透析をしない日(非透析日)は朝食後に内服。」との回答でした。
もう一つの質問は、「センナなどの刺激性下剤をどのように止めていったらいいのか?」の質問に対しては、「長期に刺激性下剤を内服していた方は、突然辞めないで、いつも内服している刺激性の下剤を継続して飲みながら、グーフィスを内服し、徐々に刺激性下剤を減量、そして止めていくようにしています。」でした。
今回は、「CKD患者の便秘治療の最前線」というテーマでしたが、参考になることが多かったと思います。また、勉強会等に参加したら、その内容を報告しますね。
入院中は「文系」、退院中は「体育会系」
さて、いよいよ地固療法も今回の2クール目で終了となります。
1クール目は、地固療法だけでなく、もう一つ目的がありました。抗がん剤によって骨髄抑制が来て、その骨髄が回復してくるときに末梢に造血幹細胞が漏れ出てきます。この漏れ出た造血幹細胞を最終的に行う「自家血幹細胞移植」に使うために採取するといった目的です。
そのため、1クール目は、造血幹細胞採取のタイミングを計らなければならなかったので、入院してからキロサイドという抗がん剤投与まで、8日と言う期間を「待つ」ことが必要になりました。この1クール目で「待つ」ことの大切さ必要性を学びました。
1クール目で「自家血幹移植」に必要な造血幹細胞が十分すぎる量が採取できたので、今回2クール目は地固療法のみを行うことになります。もし前回、十分な量の造血幹細胞が採取することができていなければ、2クール目も採取するために「待つ」が必用でした。でも今回は、今日入院して、さっそく明日から治療を開始することができました。
前回一度経験しているので、どの時点で骨髄抑制が来て白血球や血小板が減少し、最低値になるかも予測できます。明日、明後日の2日間の投与で、前回投与後10日目で最低値になったので、今回は、8月4日(木曜日)、5日(金曜日)頃最低値となり、その後骨髄が回復し増加に転じると予測されます。
これまで、つまずくことなく順調に進んでいます。今回も問題なく順調に進み、採取目標の「自家血移植」に繋げていければと思います。
さて、悪性リンパ腫発症後から「寛解」に向けた5クール、そして「地固療法」の2クール。いずれの時も、入院しているときは、絵を描いたり、ブログを書いたりしている「文系」の期間。退院してからは、入院している際に落ちた体力アップを図るために散歩などトレーニングする「体育会系」にと、完全に二分されています。
どうしても病棟内でのため、できる運動などが限られています。
でも、入院治療中に落ちた体力を退院している約1週間である程度回復させていく、そしてまた治療によって体力が落ちて、同じように約1週間の間に回復させていく。同じことの繰り返しがとても大切だと思います。ただ、いつも退院した日は、「また体力が落ちた。」と、とても悔しい思いを毎回しています。
いつも入院した日に、看護師さんが「入院治療計画書」をもってこられます。その時に今回入院の目標をどうするか、看護師さんと話をして決めていきます。「寛解」までの5クールでは、「大量メソトレキセートの尿中への排泄を十分に行うために、点滴だけでなく、十分に垂便を接種して尿量を確保する。」と言うことを目標にしました。また、地固療法と造血幹細胞接種を行った前回は、「抗がん剤投与による骨髄抑制で白血球が減少するため、感染症に注意する。」と言ったことを目標にしました。今回は、治療が第一ですが、「入院中の体力をできるだけ維持して、入院時と退院時の体力の差をできるだけ小さくする。」といった目標を立ててみました。
さて、限られた空間での体力の維持。どういったトレーニングのメニューにしたらいいかを考えてみました。そこで作ったメニューが、
- ①とりあえず、トイレに行ったり、病室を離れるときは、必ず病棟を2週以上歩くこと。
- ②その際に、手すりを使って無理のない程度でスクワットを25回する。
- ③さらにその時に、これを手すりを使って無理のない程度に腕立てを50回する。
- ④できれば「三戦」の型の練習をする。
この4つのメニューを作りました。
「三戦」とは、空手の剛柔流の型の一つです。力を思いっきり入れ呼吸を整えながらゆっくり行う方です。移動の範囲が少なく、狭い空間でもできます。
以前ブログでお話ししたかもしれませんが、京都に帰ってきて最初に借りたマンションの地下に剛柔流の道場がありしばらくの期間、練習に通っていました。岡崎の武道館に昇段試験を受けに行ったりしました。一応初段をとることができ、黒帯です。
道場が移転して、なかなか仕事場から道場へ通うのが難しくなって、いけなくなってしまいました。でもその時にいろいろ教えていただいた方をなんとなく覚えていて、特に「三戦」は、記憶に残っていました。その記憶をたどりながら、YouTubeで型の確認をしながら、さっそく今日練習してみました。
今回のメニュー、どこまでこなすことができるか、そしてどこまで体力を維持できるか。一度チャレンジしてみますね。
2クール目も、通算12枚目の絵も描いています。また紹介しますね。今回の入院は、文武両道で行ってみますね。
水彩画を描いてみました。「待つ」ことの大切さー動画ー
風林火山
皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。
悪性リンパ腫に対しての治療は、とても順調です。一旦、明日7月16日に退院して、次の治療目的での入院は7月25日になります。約1週間、自宅で静養しながら骨髄の回復を待ちながら、体力アップも図っていきたいと思います。
今回の治療の目的は、「寛解」後の「地固療法」です。寛解しても、もし残っているがん細胞があればそれを叩く治療です。言ってみればとどめを刺す治療です。それと、最終的に行う「自家血幹細胞移植」の時に使う「造血幹細胞」を採取するといった、二つの目的がありました。
今回の治療で学んだことは「待つ」ことの必要性、大切さでした。
シタラビンという抗がん剤を投与して、かなり強い骨髄抑制が来ます。その骨髄が回復してくるときに「造血幹細胞」が末梢へと漏れ出てきます。この漏れ出て来た造血幹細胞を採取することになります。
そうすると、いつシタラビンを投与したらいいのか、骨髄抑制はどの時期からどの程度抑制されるのか。また、骨髄の回復はどのように回復していくのか。このことをあらかじめ予想しなければなりません。例えば、造血幹細胞を採取する時期が、週末にかかってしまうと、施設上採取することができません。連続3日間採取することもあるので、最低でも水曜日の採取が必要となります。
その時期にうまく抑制された骨髄が回復してくるか。綿密なスケジュールが必要です。
今回は主治医の先生の思惑通りに進み、十分すぎる造血幹細胞を採取することができました。主治医の先生は「この施設史上、一番採取できました。19回もの自家血幹移植ができるほど採取できましたと。
本当に良かったと思います。今回の結果は、「寛解」に向けての5クールの抗がん剤治療で、骨髄へのダメージが少なかったこと、また主治医の先生の綿密なスケジュールの調整が今回の結果を生み出したと思います。
今回の入院は、6月22日。シタラビンの投与は6月30日と7月1日の2日間。入院から抗がん剤投与まで、8日間の待ち時間がありました。でもこの「待つ」がとても大切で、今回の治療で一番のポイントとなりました。
このようなことを考えているときに。ふと頭に浮かんだのが、武田信玄の軍旗「風林火山」でした。
私が甲府市にいたということもあると思いますが、今回の治療は全くこの「風林火山」の様だと思いました。
戦国時代、最強と言われた武田信玄の本陣に掲げられた軍旗。(正しくは「孫子の旗」、「四如の旗」と言うそうです。)「風林火山」。軍旗にはこう書かれています
「疾如風 徐如林 侵掠如火 不動如山」です。
「其の疾(はや)きこと風の如(ごと)く 其の徐(しず)かなること林の如く
侵掠すること日の如く 動かざること山の如し」
です。
まさにこの通りの治療だったと思います。しっかりスケジュールを決め、私の体のことを推察し戦略を立てる。騒ぎ立てることもなくじっくり林のように静かにそして山のようにどっしりと構えて待つ。そしていざ造血幹採取のタイミングとなった場合は、迷うことなく実行する。
どうでしょうか。
さて、この「風林火山」は中国の呉の兵法家の孫武が書いたとされています。兵法書は、戦略・戦術を説いたもので、1巻13編からなります。
この「風林火山」の部分は一部です。続きはこうです。
「難知如陰 動如雷震」
知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如く。
意味としては、味方の戦略は暗闇の中のように敵にしられないようにし、兵を動かく時は雷のように激しくなければならない言うことです。
全文を紹介しておきます。
「故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、難知如陰、動如雷震、掠郷分衆、廓地分利、懸權而動。」
最後の部分は
「郷を掠めて衆を分かち、地を廓めて利を分かち、権を懸けて動く。」
です。
今回の治療、この「風林火山」の様だった気がします。
しっかり準備をして待つ。そして、ここぞというタイミングが来たら迷うことなく進む。
このことが大切なんだなあと思いました。
「病室から見える景色」水彩画で描いてみましたー動画ー
第15回内痔核治療法研究会総会を終えてー2-
皆さんこんにちは。今回は前回の続き、第15回内痔核治療法研究会総会の報告をしたいと思います。
前回のパネルディスカッションのテーマは「併用療法の必要性と適応」でした。今回報告するテーマは「併用療法の手術手技と工夫」です。
今回の報告する前に、確認しておかなければならないことがあります。それは治療方法の記載の仕方です。
少し見えにくいですがALTA併用療法の名称記載の写真を張り付けています。
まず
- 1.治療法の部位が異なる併用療法。
それぞれ別の内痔核に結紮切除術とALTA療法を行う方法。
結紮切除術:LE(Ligation & Excision) ALTA療法:A
結紮切除術とALTA療法を行うと、LE+Aと記載します。
- 2.同一部位の内痔核と外痔核の治療方法が異なる併用療法
切除:E(Excision)
①外痔核切除術(E)が先行の場合 E・A
②ALTA療法(A)が先行の場合 A・E
2-2.外痔核切除(E)の分類
E1:外痔核の切除が肛門縁より外側まで
E2:外痔核の切除が歯状線に及ばないもの
E3:外痔核切除・剥離が歯状線を超えるもの(歯状線まで含む)
3 Anal cushion lifting(ACL)との併用
ACL・AまたはA・ACL
4 分離結紮(DL)との併用(行為が分割なので分割結紮と呼ぶのが好ましい)
DLはLとする。
L・AまたはA・L
まずは、これをみていただいて話を進めますね。
午後からのパネルディスカッションの議論の中心は、一つが「Eの切除範囲」。そしてもう一つが「Aが先か、Eが先か」。この二つが焦点でした。
「Eの切除範囲」ですが、やはり外痔核の切除範囲がE1からE2、E3と進むにつれて根治度は高くなっていきますが反対に痛みや出血が増えてきます。また、不必要な外痔核切除はしない方がよいとするパネリストの先生や、根治性を求めるのであればやはりE3まで行った方がいいという先生もいました。なか難しく、今後の検討課題です。でも私としたら、ALTA療法の効果も期待して、E2までにとどめて、後はしっかりALTA療法で治すことでいのではないかと思います。それは、やはりALTA療法の一番の売りは「痛みなく治す」ですから。
もう一つの論点が「Aが先か、Eが先か」です。
これもなかなか難しい問題です。パネリストの先生は7人いらっしゃったのですが、一致した意見はなく、A先行の先生もいれば、E先行の先生もいらっしゃって、これもまた今後の検討課題です。
A先行の先生の理由は、口側から流れ込んでくる血流量を減らすことで、Eの手術の際の出血量を減らすことができるとか、ALTA療法の効果を期待してAから始めるといった先生もいらっしゃいました。
Eが先行の先生の理由は、外痔核部分が大きくて十分に内痔核を観察できずにALTAをしっかり四段階で局注することができないことがある。先に外痔核成分を切除すると視野が良くなり、Aがしやすくなるといった意見や、ALTAの総量を減らすことができるという理由でした。またAを先行すると、注射によって浮須が出て手術がしにくいのではないかと言った意見もありました。
なかなかどちらが良いとは言い難いですが、その時の内痔核や外痔核の状態に合わせて臨機応変に対処したらいいのではないかと、私は思います。
今後はこの「Eの範囲をどこまでにするか」と「Aが先かEが先か」が研究課題となると思います。
以上で第15回内痔核治療法研究会総会の報告を終わります。