Q&A質問コーナーPart2

台風14号の影響はどうでしたか?京都市内はあまり影響はなかったようです。午前中に雨も上がりました。明日に運動会が延期になったところもあると思います。明日はいい天気と思います。楽しいひと時を過ごしてくださいね。
明日は私は「こどもの不登校・行きしぶりとどう向き合うか~コロナ禍を超えて」というシンポジウムに出席してきます。
さて今回は前回のQ&AのPart2をお話したと思います。
「痔の痛みがなければ、このまま様子見でいいですか?」
まず一つ目は「痔の痛みがなければ、このまま様子見でいいですか?」という質問です。
この答えは少し難しいです。というのも、肛門の病気には痛みが出る病気と、痛みの出ない病気があります。
痛みの出ない病気には内痔核があります。内痔核は痛みなく悪化していきます。ですから痛みがないため、そのまま放置している人もいます。でも内痔核の場合は痛み以外の症状があります。例えば排便に痛みなく出血したり、排便時に内痔核が出てくるという症状です。ですから、内痔核の場合は、痛み以外の症状が出ますのでその症状がどの程度のものかで肛門科を受診した方がいいと思います。出血が頻回になるとか、出血の量が増えるなど、必ず内痔核が悪化するとそれに伴って、症状が強くなります。なかなか症状が治らないときは肛門科を受診して下さいね。
また痛みのないものに皮垂(スキンタグ)があります。裂肛や内痔核などによって肛門の外側に皮膚のたるみ、しわが出来ることがあります。これは痛みや出血などしません。気にならないようでしたら、そのままでいいと思います。ただ、皮垂がいつも気になって「ないほうがいいなあ。」と思うのでしたら、切除をお勧めします。以前お話したことがありますが「補完雄人はこの皮垂どうされますか?」と聞かれることがあります。皮垂に関しては他の人と比べる必要はありません。自分がどうしたいかで切除するかしないかを決めたらいいと思います。
さて痛みの出る病気には、血栓性外痔核や裂肛、そして肛門周囲膿瘍があります。
肛門周囲膿瘍の場合は化膿して膿がどんどん広がっていくので、痛みが強くなることは有っても楽になることは有りません。膿瘍が自壊して破けた場合は痛みが楽になりますが、この時はやはり肛門科を受診して下さい。
さて、血栓性外痔核と裂肛に関してですが、痛みが楽になってきたということは、治ってきているということです。
血栓性外痔核は血栓が詰まって腫れて痛みが出ます。でも時間が経つにつれて腫れが引いてくると痛みは羅気になっていきます。これは血栓性外痔核が治ってきているということです。この場合は様子見でいいと思います。
また裂肛も排便の状態で肛門上皮に傷がついて痛みが出る病気です。でも便の状態が良ければ自然に治っていきます。裂肛に関しても、痛みが軽くなり、また痛みがなくなったということは裂肛が治ったということです。この場合は肛門科を受診する必要はありません。いつまでたっても排便時の痛みが続く、または痛みが強くなっていくなど、症状が強くなるようでしたら肛門科を受診して下さい。
「たまに切れる程度ですが、病院に行った方がいいですか?」
二つ目の「たまに切れる程度ですが、病院にいったほうがいいですか?」に関しては、先ほどお話したように、排便時に痛みがなければ裂肛は治っているということです。排便時の痛みが強くなる。また、排便時だけではなく、排便後も痛みが持続する。その時間が長くなるなど、痛みが強くなるようでしたら肛門科を受診して下さいね。
「たまに痒いことがあります。痔の前兆ですか?」
さて三つめの「たまに痒いことがあります。痔の前兆ですか?」ですが、これもたまに痒くなるようでしたら肛門科を受診する必要はないと思います。でも痒みが強くなってきたり、痛みが出るようでしたら受診してみて下さい。
肛囲皮膚炎の場合、痒みが出ます。原因としては入浴時に石鹸で一生懸命肛門をゴシゴシ洗ったり、排便後トイレットペーパーでゴシゴシ拭いたりすると細かな傷がついて皮膚炎になり、痒くなっていきます。また、最近多いのが、洗浄便座の洗浄で強く洗いすぎると肛門に傷がついたり、皮膚炎になったりして痒くなります。また洗浄の水が肛門に強く当たると、直腸の中に水が入っていってしまいます。直腸に入った水はどうなるかというと、後から出てきます。そのことでかえって肛門が汚れたり、ただれたりして痒くなることがあります。洗浄も軽く洗ってトイレットペーパーで軽く拭く程度にして下さいね。
また、内痔核が腫れてくるときに、初期の症状で「ムズムズする。」、「違和感がある。」などの症状が出ることがあります。症状が強くなったり、いつまでも続くようでしたら肛門科を受診して下さいね。
まだまだいろんな質問があると思います。Twitterでの相談も受けています。「自分の不安、心配はみんなの不安、心配。」です。何かあれば遠慮なくTwitterでの相談してくださいね。
渡邉医院公式Twitter
@dr_watanabe_arc
Q&A質問コーナーPart1

10月に入って急に涼しくなってきました。特に今日は朝夕寒いぐらいで、上着を着たほうが良かったなあと感じるぐらいになりました。世の中がコロナ禍の中で停滞していても、季節は確実に進んでいくんですね。
今回はいくつかの質問に答えようと思います。
「鮮血がありますが病院に行った方がいいですか?」
一つ目の質問は、「鮮血がありますが病院に行った方がいいですか?」
出血があって、病院に行った方がいいですか?と聞かれると、やはり医療機関を受診して下さいという答えになります。
ただ、質問にあるように、「鮮血」の場合は肛門の出口に近いところからの出血の可能性が高いです。というのも、例えば大腸がんや憩室炎による出血、また、虚血性大腸炎やクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患などの大腸の疾患での出血の場合は排便時の鮮血というよりは、ある程度の塊となった凝血塊が出てきたり、下痢状の血便が出ることが多いです。
また、出血した血液は時間が経つと血液中の鉄成分が酸化され黒くなっていきます。ですから鮮血というよりはドロッとした血の塊が出てきたり、下痢状の出血が出てきます。
排便時の鮮血はやはり肛門の病気のことが多く、裂肛や内痔核の場合が多いです。
ただ、潰瘍性大腸炎やクローン病などで直腸炎を起こした場合は排便時に鮮血が出ることがあります。でもこういった炎症性腸新患の場合は渋り腹などのお腹の症状が出て、やはり常に便が行きたくなって、いくたびに下痢状に出血するといった症状が出ます。
裂肛や内痔核からの出血は便が出たときに、便がこすれることで出血します。常に裂肛や内痔核から出血しているわけではありません。ですから下痢状の頻回の出血にはなりません。
また、排便時に痛みがあって出血する場合は裂肛、排便時に痛みなく出血するときは内痔核です。こういった予備知識のもとで、やはり出血している原因を確定するために医療機関は受診した方がいいです。
「肛門に何かできています。悪い病気ではないでしょうか?」
二つ目の質問は、「肛門に何かできています。悪い病気ではないでしょうか?」
これもやはり診察してみないとわからないというのが答えになります。それでは質問の答えにはなりませんので、もう少し踏み込んでお答えします。肛門の外側にできるもの。触ることが出来るものとしては、血栓性外痔核、皮垂(スキンタグ)、脱出したままの内痔核。後は疣贅(いぼ)、尖圭コンジロームなどがあると思います。また肛門ポリープが肛門外に出たままになることもあります。
尖圭コンジロームはヒトパピローマウイルスによる感染症なので、早急に治療をする必要がありますが、それ以外は悪い病気ではありません。急いで治す必要はありません。尖圭コンジロームの治療ですが性感染症のことがあります。パートナーに感染していないかどうかを確認する必要があります。もしもパートナーにも尖圭コンジロームがあるのなら、一緒に治療する必要があります。治療としては以前は切除したり、レーザーで焼却したり、また液体窒素で治療をしていました。でも今はベセルナクリームという外用薬を塗ることで治すことが出来るようになってきました。
さて、血栓性外痔核は大抵に場合は血栓が詰まって腫れて痛い病気です。急に出来ます。ただ血栓が詰まっても腫れない場合もあり、この時は痛みがありません。いずれにしても手術をしなくても治っていきます。
皮垂(スキンタグ)に関しては内痔核や裂肛などが原因でできた皮膚のたるみ、シワです。悪いものではないので、必ず手術をして切除しなければならないわけではありません。でも気になるようでしたら、いつも悩んでいるのもよくないので、切除をした方がいいと思います。このことに関しては、自分がどうしたいかで決めたらいいと思います。
内痔核が出たままになっている場合は、やはりスッキリ治すというと痔核根治術が必要になります。
疣贅はイボのことです。悪いものではありません。これも気になれば切除するでいいと思います。
ただ、肛門癌という病気があります。これは肛門に腫瘍が出来たり、潰瘍が出来たりします。とても痛い病気です。この場合は直ぐに治す必要があります。肛門癌の場合は外科的切除というよりは放射線治療が有効なことが多いです。
今回はこの二つの質問で終わりますね、次回は「痔の痛みがなければ、このまま様子見でいいですか?」と「たまに切れる程度ですが、病院にいったほうがいいですか?」と「たまに痒いことがあります。痔の前兆ですか?」の質問にお答えしようと思います。
「待つ」ということ。

10月11日に、「こどもの不登校・行きしぶりとどう向き合うか~コロナ禍を超えて」というシンポジウムが開催されます。
『「こどもの不登校・行きしぶり」が起こった時、驚いたり、「なんで?」と責めたくなったり、見通しがもてなくて、 どうしたらいいのか分からくなりますよね。こどもたちがどんな環境にあるのか、どんなことを思っているのか…私たち はどう向き合ったらいいのか、みなさんとともに考えてみたいと思います。』という内容です。
そこでの開会の挨拶を依頼されました。今、どんな話をしようかととても悩んでいます。
そんな時にフッと私が小さい頃のことを思い出しました。今回のシンポジウムとはあまり関わりがないのですが、少し思い出したことをお話しようかなあと思います。
私がまだ小学生のころ、3年生か4年生だったと思います。その頃、美術(当時は図画・工作だったかなあとも思いますが・・・)の授業は2時限続けての授業でした。その日は2時限かけて何かの絵を描く授業でした。でも私は2時限、何も絵を描かずに、白紙のまま提出しました。そのことについて後日、母が先生に呼ばれて、「2時限あったのに、賢治君は何も描かずに、白紙で提出しました。家庭での情操教育が良くないのではないですか?」という風な先生からの指摘だったようです。その指摘に母は、「気が向かなかったのではないですか?描きたくなかったんですよ。」と答えて帰ってきました。家に帰ってきた母が私に言ったのは、「どうして2時間もあるのに絵を描かなかったの?」のような私を責める言葉ではなく、こんな言葉でした。「失礼してしまうわ。情操教育が良くないのではないですか?ですって。絵は気が向かなかったら描けないわよね。」と言う風な言葉でした。
小学生の頃は、バス通学でした。バスの中は私たち小学生でいっぱい。小学生が集まればどうしても声が大きくなってしまいます。一緒に乗っていた先生が、学校のバス停で降りると、声を大きくしゃべっていた私たちの定期券を取り上げ、「明日からあなたたちは、バスを使わず、歩いて通学しなさい。」と。私たちも、はしゃいでいたのは悪かったなあと感じました。
でも私たちにとって、定期券を取り上げられ、歩いての通学はバス通学以上にとても楽しいものでした。私が一番学校から遠かったのですが、仲間と待ち合わせをしながら歩いて学校。とても楽しい登校でした。
また学校が終わって帰るときも、寄り道しながら、そして友達の家によって遊びながら楽しく帰宅。途中で田んぼにいるカエルを採ったりして、家に着くのは夕方。返ってきた父親と一緒に、かわいそうですが、採ってきたカエル一匹が犠牲になって解剖。動いている心臓を生理食塩水につけ、しばらく動いている心臓を観察したり、足に繋がる神経を刺激すると足の筋肉が収縮。いつもと違った生活。先生に悪いのですが、定期券を取り上げられたことで、いろんな経験が出来て、楽しい日々でした。
先生から定期券を返してもらう日。先生は、「バスに乗れないと大変でしょう!これからはバスの中では静かにして乗りましょうね。」と。私達は「ハイ!」と返事をしましたが、定期券がない時、とても楽しかったとは言えません。
子供が感じることと、大人が感じることにはやっぱり違いがあるのだなあと思います。子供は、自分の置かれている環境で楽しく過ごすことが出来るようになっているのではないかと思います。無理やり大人が押し付けることは無いんだなあと思います。
また、私の記憶では、両親に「早く〇〇しなさい!」とか、「勉強しなさい!」。また「大学はどこを受験するの?」などあまり言われた記憶がありません。きっと親はやきもきしていたに違いありません。でも、私を根気よくずっと待っていてくれたのだと思います。
「待つ」ということはとても難しいことだと思います。何もせずにずっと待っている。口出しするのをグッとこらえる。大変だと思います。でも子供にとっては親が「待つ」ということをしてくれることは、とても大切なことなのかなあと思います。
内痔核の第Ⅱ度と第Ⅲ度の違いはどこに?

10月になって、半袖から長袖へと衣替えをしました。本当にグッと涼しくなりました。先日の中秋の名月。綺麗な月を見ることもできました。季節は確実に進んでいます。いよいよ秋ですね。
新型コロナウイルスの感染は収束を見せていません。でもどう付き合っていったらいいのかを段々皆さんわかってきたような気もします。まだまだ正しい情報が発信されていません。でも必要以上に恐れることは無くなってきたのかなあと思います。適切な感染予防をすることでこれから流行期が来るインフルエンザと一緒に新型コロナウイルス感染防止に対して基本的な感染予防策はとっていきましょう。
さて今日は内痔核の第Ⅱ度と第Ⅲ度の違いについてお話したいと思います。
内痔核の分類にGoligher分類があります。第Ⅰ度から第Ⅳ度までの四段階に分類されています。
第Ⅰ度は排便時に出血する。でも内痔核は脱出してこない。
第Ⅱ度は排便時に出血し、脱出してくる。でも自然に内痔核は戻る。
第Ⅲ度は排便時に内痔核が脱出してきて、脱出したままになるので、指で押し込む。
第Ⅳ度は内痔核は脱出したままで、押し込もうと思っても入らない。
それぞれの程度はこのような症状で分類されています。そして内痔核が手術になるかどうかの境目が第Ⅱ度であるか、第Ⅲ度であるかです。
第Ⅲ度以上になるとやはり、痔核根治術やジオンによる四段階注射法での痔核硬化療法(ALTA療法)が必要になります。では第Ⅱ度と第Ⅲ度ではどこが違うのかをお話します。症状では、第Ⅱ度までは排便時に内痔核が脱出しても自然に戻ります。でも第Ⅲ度以上になると、脱出したままになるため指で押し込まなければ戻りません。では組織学的にはどうなっているかです。ここに手術になるかならないかの理由があります。
内痔核の成因に肛門上皮滑脱説(The sliding anal lining theory)というものがあります。 これは、連合縦走筋から内肛門括約筋を貫く線維と内肛門括約筋からおこる線維によって形成される肛門管粘膜下の平滑筋組織があります。この滑筋組織が肛門管内の痔静脈叢を支えて、肛門上皮の滑脱(出てくること)を防ぐ役割を果たしているという説です。
もう少し詳しく言うと、肛門の粘膜下組織は一定の厚みを持った組織が連続的に形成されているのではなく、非連続的なクッション (肛門クッション)であり,3 つの主要な肛門クッ ションは左側方,右前方,右後方に位置するとしています。この肥厚した肛門クッション部のそれぞれの粘膜下層は血管と弾性結合組織,平滑筋線維からなります。この平滑筋線維が粘膜および粘膜下組織をその下にある内括約筋へ固定し,粘膜下の血管を支持する重要な役割を果たしています。この肛門クッションの肛門の外側への滑り出しが痔核の成因であるとしています。
すなわち排便時の怒責が肛門クッションのうっ血を引きおこして肛門クッションを滑脱させ、滑脱が繰り返されることによって粘膜下の平滑筋線維は繰り返しひきのばされ線維組織の断裂を生じさらに滑脱 しやすくなるとする考えです。
例えば、針金を曲げたり伸ばしたりを繰り返していくと、針金がポキット折れてしまうのと似ています。排便時に強く怒責することを繰り返すことで、痔静脈叢を支えている平滑筋線維が断裂し、痔静脈叢を固定できなくなることで内痔核が脱出したままになってしまうということで。この平滑筋線維の断裂の有無が内痔核の治療に影響してきます。
第Ⅱ度の内痔核はまだこの平滑筋線維が断裂していません。まだしっかり痔静脈叢を支えているので、内痔核を消退させることで内痔核は脱出してこなくなり治っていきます。ですから手術まですることはなく、パオスクレーなどの痔核硬化剤での痔核硬化療法で内痔核を治していくことが出来ます。
でも平滑筋線維が断裂してしまうと、内痔核だけに痔核硬化療法をしても、やはり内痔核部分の粘膜が排便時にどうしても脱出してきます。ですから第Ⅲ度以上になると痔核根治術が必要になります。
ただ、第Ⅲ度以上になっても内痔核の性状によっては、ALTA療法で治すことが出来ます。これは、ジオンという痔核硬化剤は、内痔核を消退させるだけでなく、粘膜や粘膜下層を括約筋に固定する作用があります。ですからALTA療法は確実に四段階注射法で痔核硬化療法を行うことで、内痔核の消退だけでなく、粘膜や粘膜下層を括約筋に固定することで脱出してこなくなるということです。
このように第Ⅱ度と第Ⅲ度では組織学的に違いがあります。そのことが内痔核の治療方法に影響を与えます。
「私のお尻のメッセー痔」発売‼ ヴェルヘルムⅢ世著

10月になりました。今年も残すところあと3ヶ月。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、コロナ、コロナであっという間に月日が経ってしまった感じです。
今日、夕方少し外に出てみると、とても涼しい。過ごしやすくなってきました。
さて今日は中秋の名月。天気も大丈夫そうなので、美しい中秋の名月を見ることができると思います。中秋の名月を見ながら皆さんはお団子ですか?それともお酒ですが?いずれにしても、美しい月を見ながら、ゆっくりとして時間を持ちたいものですね。
今日は漫画の紹介をします。ヴェルヘルムⅢ世さんというペンネームで漫画を描いてられる方の漫画です。書籍名は「私のお尻のメッセー痔」です。渡邉医院にぴったりです。
ヴェルヘルムⅢ世さんも痔で悩んでられて、手術をして治されました。その時の実体験をもとに描かれた漫画です。はじめはInstagramでの漫画投稿でしたが、フォローワーもどんどん増え、それが出版社の目に留まり書籍として出版されることになったようです。この本について次のような紹介がありました。
『痔主の共感度200%のインスタコミックエッセイが書籍化!Diに革命を!Diにもっと市民権を‼(※Di=痔)
日本人の3人に1人は痔を患っていると言います。
著者(30代女性)も痔主のひとり。痔という病の辛さを共有したいと思い立ち、2018年3月にインスタグラムをスタート。痔のマイナスイメージを払拭するため“痔”を“Di(ディーアイ)”という呼称にした「Diの悲劇」というタイトルの闘病マンガを投稿し続けたところ、徐々に「いいね」が増加。わずか半年後には3000を超える「いいね」が付くほど、多くの痔主たちからの賛同を得ました。
本書では、インスタで描かれた闘病物語に加え、書籍限定となる痔にまつわるQ&A、中国で痔になった友人の話を描き下ろし。読み応え抜群の200ページに。
中でも、あまりの痛みに舞い降りたほとばしる短歌は必読です。
誰にも言えずに落ち込んでいる痔主へ
ヴェルヘルムIII世が悩めるすべての痔主に送るメッセー痔!
痔ではない人もちょっぴり覗いてみたいDiの世界をぜひこの機会にご覧ください。』
実体験に基づいた話は、やはり相手に伝える力は強いです。漫画だとなおさらかなあと思います。
辛かったことをとても面白おかしく描かれています。あっという間に読めてしまいます。
お尻の具合の悪い方や、悩んでいる方の応援、そして肛門科への受診の後押しになってくれればいいなあと思います。「Diにもっと市民権を‼」なかなかいいキャッチコピーだと思います。
実は、この本の中のQ&Aコーナーに私が参加しています。よかったら読んでみて下さいね。
厚生労働省が通知した「インフルエンザ流行期に備え新たな新型コロナの体制整備」を考える

厚生労働省が、「インフルエンザ流行に備え新たな新型コロナの体制整備」を通知しました。またその体制をとるために「新型コロナウイルス感染症に対応した医療機関等へのさらなる支援」を打ち出しました。インフルエンザ流行期への備えに対して、発熱外来診療体制支援というものです。予算額としては2170億円です。
今回は、この内容について少し考えてみたいと思います。
厚生労働省が示している「発熱等の症状のある方の相談・受診の流れ」は三つのパターンがあります。
一つ目は、患者さんが「かかりつけ医等」に電話相談し、相談した同一医療機関に受診するパターン①。
二つ目は、患者さんが「かかりつけ医等」に電話相談し、相談した別の「診療・検査医療機関」に受診するパターン②
三つ目は、患者さんが「受診・相談センター」に電話して相談し、「診療・検査医療機関」に受診するパターン③。
この三つのパターンが示されています。
そして、補助金等の支援があるパターンは一つ目の相談した同一の医療機関、「診療・検査医療機関」受診のパターンの医療機関と、三つめの「受診・相談センター」の補助的機関として、夜間・土日祝日等に電話相談に応じる医療機関のみです。
それぞれのパターンをもう少し詳しくお話します。
基本的にはまず発熱した患者さんは医療機関や「受診・相談センター」に電話連絡するところから始まります。そして医療機関は一般の医療機関と、「診療・検査医療機関」、そして「受診・相談センター」の補助的医療機関に三つに分けられます。「診療・検査医療機関」と「受診・相談センター」の補助的医療機関は、都道府県が指定します。
- 1.パターン①:「診療・検査医療機関」に電話した場合。
電話して相談した医療機関が「診療・検査医療機関」であるので、電話相談した医療機関の指示に従って、受診する日にちや時間帯にその医療機関を受診する。
この「診療・検査医療機関」は都道府県の指定があります。国への報告の締め切りの第1回目は10月12日です。そしてこの医療機関には国からの補助金が出ます。
- 2.パターン②:「かかりつけ医等身近な医療機関として電話相談に応じる」の場合
発熱した患者さんは自分がいつもかかっている「かかりつけ医等」の医療機関に電話をします。相談した医療機関が「診療・検査医療機関」であれば、電話した医療機関の指示された日にちや時間帯にその医療機関を受診することになります。電話相談した医療機関が「診療・検査医療機関」出ない場合は、電話相談した医療機関が「診療・検査医療機関」を紹介してくれるので、その医療機関に連絡して、その医療機関の指示で指定された日にちや時間帯にその紹介された医療機関を受診する。こういった流れです。
この場合は、最初に電話した医療機関は「診療・検査医療機関」ではないので、都道府県の指定はありません。そしてくにからの補助金もありません。
- 3.パターン③には二つあります。一つは、「受診・相談センター」に電話をして医療機関を紹介してもらうパターンです。「受診・相談センター」はこれまでの「帰国者・接触者相談センター」等が担当します。二つ目が、「受診・相談センター」が休む、夜間や土日祝日に補助機関として電話相談に応じる医療機関です。この医療機関も都道府県が指定し、国からの補助金があります。
こういった体制を厚生労働省は考えています。
ただ、この体制にはいろいろ問題があるのではないかと思います。
まず一つ目は、「診療・検査医療機関」は自治体のホームページ上に公開されます。対応可能な日時や時間帯などが公表されます。おそらく一般の市民の方もこのホームページにアクセス可能だと思います。そうした際に、二つのことが危惧されます。一つ目はPCRなどの検査等をして欲しいという患者さんが殺到する可能性があります。また反対に、新型コロナウイルス感染患者が受診する医療機関だということで、その医療機関に受診することを控えたり、医療機関や、そこに従事している医師や職員に対しての誹謗中傷や風評被害が広がるのではないかという問題です。国や自治体が、しっかりとしたリスクコミュニケーションが出来ていない中、必ずこの問題は出てくると思います。
またどの程度の電話相談がくるか不明です。電話対応に終始して、本来の診療が出来なくなってしまい、その結果、地域医療が診療所などの開業医から崩壊していく可能性も秘めています。
また、一般の医療機関もそうですが、「診療・検査医療機関」に対して、もしそこで従事する医師やスタッフが新型コロナウイルスに感染した場合の補償がなにもありません。またお金は出すが、診療に当たって感染防止のためのマスクやガウンなどの防御資材の安定した供給の補償もありません。こういった基本的なところがしっかり整っていない中で10月中の体制整備は難しいのではないかと思います。時間的に余裕はありません。インフルエンザの流行期が迫る中、早急に体制を整えなければなりませんが、見切り発車では医療現場が混乱してしまいます。それではいけないと思います。
市民の命と健康を守るとともに、医療従事者の命と健康を守る。このことをしっかり押さえていかなければならないと思います。
肛門の血管走行と手術、痔核硬化療法(ALTA療法)

前回は、内肛門括約筋と外肛門括約筋の役割の違いについてお話しました。今回は、肛門の血管についてお話しようと思います。
肛門管に行く動脈は、腹大動脈から下腸間膜動脈に枝分かれします。その下腸間膜動脈からさらに左結腸動脈、上直腸動脈に分かれていきます。この上直腸動脈が三本にさらに枝分かれしていきます。通常は左右の2枝にさらに分かれていきます。そして右枝はさらに前後に枝分かれしていきます。右枝は肛門管の7時と11時(右後ろと右前)の方向に、左枝は3時(左)の方向に流れていきます。この3方向に枝分かれしていくので、どんどん血液が流れ込んでくるので、この3時、7時、11時の方向に内痔核ができやすくなります。
また、総腸骨静脈から内腸骨動脈に枝分かれして、内腸骨動脈から分かれた中直腸動脈は肛門挙筋を通り直腸の壁と肛門管の上部を支配します。また、内腸骨動脈から枝分かれした下直腸動脈は坐骨直腸窩を通り肛門管の筋肉や肛門の皮膚に分布します。
医学書院の図が解りやすいので引用させてもらっています。
血管の走行と痔核根治術
内痔核に対して痔核根治術をする場合、肛門の外側から剥離して肛門管内の肛門上皮を剥離していきます。その時、肛門管内に剥離が進んだ時、動脈性の出血をすることがあります。これは下直腸動脈からの動脈の枝からの出血です。ただ、バイポーラという凝固止血器での凝固止血で十分に止血できる程度の出血です。さらに剥離を進めて、内痔核の根部、この根部が上直腸動脈が枝分かれした動脈ですが、この部分はしっかりと糸で結紮して止血する必要があります。この部分は凝固止血では無理な部分です。またこの内痔核に流れ込む上直腸動脈を結紮した部分から術後7~10日目の晩期出血が起きます。術後3時間後までに起きる早期出血の多くは下直腸動脈からの分祀した動脈からの出血で、これに対しては凝固止血で十分に止血可能です。
このように手術の際は血管の走行などをイメージして、確認しながら手術をすることになります。上直腸動脈からの枝分かれした動脈は、指で触ると、その動脈の拍動が触れ、動脈の走行を確認することが出来ます。痔核根治術の方法に、まずはこの動脈の拍動を確認してまずはその動脈を糸で得結紮してから剥離を始める方法もあります。
私はあらかじめ動脈を糸で結紮せず、剥離していき、か直腸動脈の枝分かれした動脈の出血はバイポーラで凝固止血しながら内痔核の根部まで剥離して最後に、根部の上直腸動脈を結紮して内痔核を切除します。
血管の走行とALTA療法
ジオンという痔核硬化剤での四段階注射法による痔核硬化療法(ALTA療法)においても、この動脈の走行が重要になってきます。
ALTA療法の四段階とはまず第一段階では内痔核の上極に注射します。これは上直腸動脈からの血流を遮断する目的があります。第二段階は、中直腸動脈領域の血流を遮断、第四段階は下直腸動脈からの血流を遮断する。そういった意味合いがあります。第三段階は内痔核そのものの静脈瘤に対しての注射です。このようにALTA療法はそれぞれの段階での意味がしっかりあります。したがってALTA療法を行う時はこの四段階注射法を遵守して行う必要があります。
前回の肛門の括約筋などの筋肉の役割、そして肛門に伸びる血管の走行をしっかりイメージすることが、手術や痔核硬化療法には重要となっていきます。
内肛門括約筋と外肛門括約筋の役割の違い

9月ももうすぐ終わります。日中も涼しく、過ごしやすい季節になってきました。朝晩は寒いぐらいです。季節は着実に進んでいます。
今回は、肛門の括約筋に関してお話ししようと思います。
肛門の括約筋には内肛門括約筋と外肛門括約筋があります。それぞれ役割が違います。
括約筋と聞くと皆さんは直ぐに「括約筋は便が漏れないように、締まる筋肉だ。」と思っているかたが多いです。でもそうゆうわけでもありません。簡単にそれぞれの括約筋の役割を話すと、内肛門括約筋は、直腸に便が来たら出しやすいように緩んでくれる筋肉。外肛門括約筋は便がしたくなったら、トイレまで我慢できるように自分の意志で絞めて、便が出ないようにする筋肉という感じです。それぞれの括約筋についてもう少し詳しくお話します。
内肛門括約筋
内肛門括約筋は直腸固有筋層の内輪筋という筋肉に連続している筋肉です。平滑筋という筋肉でできていて肛門管の部分で肥厚して内肛門括約筋を形成します。内肛門括約筋は自律神経で支配されていて、不随意筋です。ですから自分の意志とは関係なく収縮したり弛緩したりします。直腸に便がないときは、肛門管を閉鎖しています。肛門内圧の最大肛門静止圧(安静にしているときの肛門の圧)の約85%を構成しています。
直腸に便などが来て、直腸に圧の刺激を加えると弛緩(緩む)します。
ですから、直腸に便がないときは内肛門括約筋は締まっていて、直腸に便が来るとその刺激で内肛門括約筋は弛緩して、便を出しやすくします。
例えば、直腸に便がない時に100の圧で締まっていたとします。直腸に便が来ると、便を出さなければならないので、50まで圧が下がったとしましょう。そうすると50以上の圧力をかけると便が出ます。直腸の便が全部出てしまうと、直腸は空になるのでまた内肛門括約筋は100まで締まります。
このように内肛門括約筋は便が出やすくするように、直腸に便が来ると緩んでくれる筋肉です。
直腸に着た便が硬いと、内肛門括約筋が緩んでいても頑張っても出ません。反対に下痢だと、括約筋が緩んでいるので、待ったなしで出てしまいます。
よく、「便がいつの間にか出てしまっている。」とか、「いつもダラダラ便が出てきて汚れる。」とい症状で自分は括約筋が緩んでしまったのだと思っている方がいますが、そうではありません。いつも空っぽでなければならない直腸に便が残ったままになっていると、内肛門括約筋は便を出やすくするように緩んでくれています。ですから腹圧がかかった時に直腸に残っている便が勝手に出てきてしまう。内肛門括約筋は便が出るように緩んでくれている、内肛門括約筋はちゃんと機能しているということです。では何が悪いかというと、直腸に便が残っているということが便が勝手に出てしまう原因です。ですから直腸に便が残らないように、直腸にきた便がスッキリ出てしまうように、排便の状態を良くすることで、この嫌な症状は解消されます。
外肛門括約筋
外肛門括約筋は、内肛門括約筋の外側を筒の様に包み込んでいる筋肉です。筋肉の種類は横紋筋で随意筋でです。ですから自分の意志で外肛門括約筋は絞めることが出来ます。神経も自律神経ではなく、体制神経です。
外肛門括約筋は三つに分かれています。深外括約筋+恥骨直腸筋と浅外括約筋、そして皮下外括約筋です。
外肛門括約筋は随意筋なので自分の意志で絞めることが出来ます。ですから、直腸に便が来て、便意を感じると、内肛門括約筋が緩んで便が出やすいようにしてくれます。そしてトイレまで我慢するために自分の意志で外肛門括約筋を絞めるという具合です。
でも肛門は便を出すところです、出るのと我慢するのでは出る方がやはり勝ちます。ですから便がしたくなったら、我慢することなくトイレに行って出すことが大事です。
またいつの間にか便が出る、勝手に便が漏れるといった症状がある方は、直腸に便が残らないようにスッキリ便を出すように排便の調整をすることが大事になります。
裂肛は我慢すればするほど悪くなる。

四連休が終わって、9月もあと1週間。グッと涼しく過ごしやすくなってきました。
四連休はどう過ごされましたか?自粛自粛が都築、多くの人はストレスを抱えての生活だと思います。また、この生活が何時まで続くのかまだまだ予想できない状況です。そんなこともあってか、連休中の旅行などの人出は増えたのかなと思います。皆さん、自分自身の感染対策も随分しっかりできていると思います。今後は新型コロナウイルスとどう付き合っていくかも大事な課題だと思います。収束はあっても終息は難しいのではないかと思います。
私も、連休中はゆっくりさせてもらいました。心身ともにリフレッシュ。今日からに仕事も充実しています。
たまには息抜き、リフレッシュは大切だと思います。うつらない、そして相手にうつさないということをしっかり守って、生活していきたいと思います。
さて、最近裂肛で悩んでおられる方が多いような気がします。今月も、裂肛の状態が悪くなって、手術を決める患者さんも何人かいました。少し裂肛に関してお話したいと思います。
裂肛の辛いところは、痛みを我慢すればするほど、裂肛の状態が悪くなっていくというところです。
普通、怪我をした時などは、痛みを我慢していると傷は段々治っていきます。傷に細菌感染を起こして化膿してしまった場合は別ですが、細菌感染さえ起こしていなければ、傷は時間と共に徐々に治っていきます。また痛みに関しては消炎鎮痛剤の内服薬を内服しながら、傷の手当てをしていけば治っていきます。痛みも徐々に楽になっていきます。
でも裂肛は違います。排便時の痛みを我慢すればするほど、排便時の痛みが強くなっていきます。そして、排便時の痛みだけでなく、排便後の痛みの持続する時間も段々長くなっていきます。「痛みも我慢すれば徐々に楽になっていくのでは。」と期待してもその期待通りにはならず、反対に痛みは強くなっていきます。ですから、裂肛の場合は早く治療することが必要になります。
何故このようになるのか。それは、排便時に痛みがあると、肛門の内肛門括約筋の緊張が段々強くなっていくからです。痛いと無い肛門括約筋の緊張が強くなり、肛門の締まりが強くなります。痛いと締まる、痛いと締まるを繰り返すことで、徐々に裂肛は悪くなっていきます。
排便時に痛みがある。これはとても辛いことです。
さて、裂肛は最初のうちは排便の状態を良くすることで治っていきます。
誰でもいつも具合よく便が出るとは限りません。硬いこともあれば下痢のこともあります。誰もが排便の状態で、排便時に痛みを感じる経験はあると思います。でも排便の状態がいい人は、硬い便が一度あって、裂肛になったとしても、次の日の便が正常であれば裂肛は治療しなくても治っていきます。ですから、裂肛の初期の治療は、裂肛そのものを治すというよりは、裂肛の原因となる便秘や下痢を治す。排便の状態を良くすることで治っていきます。
しかし、排便時の痛みが強くなってきたり、排便時に痛みを感じることが多くなると、裂肛自身の治療が必要になってきます。
裂肛の治療には渡邉医院では軟膏を使っています。
軟膏の塗り方は、裂肛そのものに軟膏をつけるという具合ではなく、痛みによって、締まりが強くなってきている内肛門括約筋の緊張をとるように軟膏を塗ってもらっています。
塗り方としては、軟膏を指にとって、それを第1関節ぐらい肛門の中に挿入してもらっています。指を少し入れることで、内肛門括約筋の緊張をとることが目的です。言ってみれば軟膏を潤滑油として緊張をとる柔軟体操をするといった具合です。注入軟膏の場合、肛門に注入軟膏をさして注入するでは裂肛は治っていきません。緊張の強くなった、締まりが強くなった内肛門括約筋の緊張をとる。柔軟体操が必要です。ですから注入軟膏を指にとって、やはり肛門の中にいれ、緊張をとることが大事です。
ただ、内肛門括約筋の緊張がさらに強くなり、また、裂肛が原因での皮垂や肛門ポリープ等が出来ると慢性裂肛になります。そういった場合は裂肛に対しての根治術が必要になります。この場合も裂肛が治らなくなってしまう原因である内肛門括約筋の緊張をとることが目的です。また裂肛が原因での皮垂や肛門ポリープも裂肛が治らない原因になるので切除します。
肛門の手術は術後痛いと思っている方が多いです。でも裂肛に対しての根治術は、排便時の痛みをとることが目的です。ですから、裂肛の根治術をして、内肛門括約筋の緊張をとり、皮垂や肛門ポリープなど、裂肛の治りを悪くしているものを取り除くことで、排便時の痛みはスッと楽になります。
裂肛に対しての裂肛根治術は、排便時の痛みが強ければ強いほど手術を行った後の排便時の痛みは楽になります。
排便時に痛みがある、そして場合によっては排便後も痛みが持続する裂肛。とても辛い病気です。スッキリ治して、毎回の排便時の苦痛を取り除き、快適な排便を取り戻して下さいね。
妊娠中に血栓性外痔核ができやすくなる理由

9月も今週になってようやく涼しくなって、秋の気配がしてきました。空に浮かぶ雲も秋の雲。これから過ごしやすいいい気候になります。本来なら、秋の運動会や、行楽のシーズン。残念ながら、今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、いつもとは違う秋の夜長の過ごし方を考えて、少しでも楽しく、これまでのストレスを解消できればいいなあと思います。
ストレスと言えば、ストレスがかかると、血小板がくっ付き易くなって、血栓ができやすくなります。そして肛門科的には、血栓性外痔核や内痔核に血栓が詰まって痛くなる嵌頓痔核など、血栓による痛いお尻の病気があります。
今週に入って、何人かの妊婦さんがこの血栓性外痔核で受診されました。
血栓性外痔核は基本的には、何もしなくても腫れが引いて痛みがとれ、血栓は溶けて吸収していきます。したがって、手術をして血栓を取らなくても治っていきます。ですから、血栓性外痔核の治療は血栓が詰まって腫れてしまった、その腫れによる痛みをどうとるかが治療になります。
通常の場合は、消炎鎮痛剤の座薬を入れると、腫れが引き痛みがとれ、楽になります。そして血栓は自然に溶けていきます。ただ妊婦さんの場合は、この消炎鎮痛剤の座薬がお腹の中の赤ちゃんに悪影響を及ぼすことがあるので使うとしても注意が必要になります。ですから、妊婦さんにも使うことが出来るカロナールという痛み止めを使ったり、後は軟膏を使って治していきます。また入浴もとてもよく、温めてあげることで、腫れが引いて痛みは楽になっていきます。
でも、痛みが強い場合は局所麻酔をして血栓を取り除く手術も妊娠中でも可能です。痛みが強いのを我慢しているのも、お腹の中の赤ちゃんに悪影響を与えるのではないかと思います。痛みが強い場合は手術をして血栓を取り除くと、スッと痛みは楽になります。また血栓を取るだけでしたら入院にもなりません。
さて、ではどうして妊娠すると血栓ができやすくなるかを調べてみました。この要因には多くく四つあります。
1.血が止まりやすくなる
一つ目は出産に備えて血が止まりやすくなることです。
出産時に約500ml程度の出血があるそうです。この出血からお母さんを守るために、妊娠の好機になると血が止まりやすくなるように、血液の凝固機能が高まっていきます。凝固機能が高まるということは血栓ができやすくなるということです。このように出血からお母さんを守るための体の機能が血栓をできやすくします。
2.静脈の圧迫
二つ目はお腹が大きくなることでの静脈の圧迫です。
妊娠してお腹の赤ちゃんが大きくなっていくと、お腹の中の静脈が圧迫され、そのことによって血液の流れが悪くなります。妊娠中、あおむけに寝ると苦しくなって、あおむけに寝れなくなる一つの理由もここにあります。肛門の血液は内痔核や外痔核が出来る静脈叢から下大静脈を通って肝臓に流れ込んでいきます。この静脈が圧迫され、血液の流れが悪くなることで内痔核が腫れてきたり、外痔核が腫れてきます。こういった血流が悪くなることでも血栓ができやすくなります。
3.エストロゲンの増加
三つめはエストロゲンの分泌が増えることです。
妊娠するとエストロゲンというホルモンが増えていきます。エストロゲンには血液凝固作用を高める作用があります。このことで血栓ができやすくなります。このことと同様に、低用量ピルを服用することで、血中のエストロゲンの濃度がふえ、このことによって血液凝固作用が高まり血栓が出来やすくなります。
4.血液量の増加
四つ目は妊娠すると血液量が増えることによります。
妊娠すると、お母さんの血液量は通常の1.4倍になるそうです。このことで、血液中の血小板や白血球の数が増えていきます。このことで血液が固まりやすくなって、血栓ができやすくなります。
このようなことが妊娠中の血栓ができやすくなる要因になります。
妊娠していると、何も治療ができないと思っている患者さんがいます。そんなことは有りません。局所麻酔での手術も可能です。何かあれば相談してくださいね。