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2020.12.11

「ふろふき大根」のレシピを紹介します。

 第一弾で「白みそシチュー」のレシピを紹介しました。そのレシピの材料の中に「ふろふき大根」がありました。「あっ!ふろふき大根のレシピを先に紹介しなければいけなかった!」と思い慌てて紹介しています。
 そこで、今回は「ふろふき大根」のレシピを紹介しようと思います。

 で、またまた疑問が出てきました。それは「ふろふき」って何?です。そこでいつもの様に調べてみました。

 「ふろふき大根」を漢字で書くと「風呂吹大根」と書くそうです。「風呂?」、「吹く?」。益々わからなくなります。

 さらに調べると、江戸時代に書かれた書物のなかに、伊勢地方では熱い蒸し風呂が好まれており、垢を採るときに、ふうふうと息を吹きかけたそうで、その様子が、熱い大根をふうふうと息を吹きかけて食べるのに似ているということで、「風呂吹大根」と呼ばれるようになったとのことです。

 また他の説には、漆職人が冬になると漆の乾きが悪くなり、困っていました。そこにある僧侶が来て、大根のゆで汁で風呂(作業場)に切りを吹いて乾かすとよいと教えられ、試してみると効果があった。そしてその茹でるときに使った大根を「風呂を吹いた大根」として近所に配り、皆に喜ばれたというのもあるそうです。

 さらに、大根は体に良く、安くてリーズナブルなため、「不老富貴」の意味からとったという説もあるそうです。

 ということで、そろそろレシピを紹介しますね。

「ふろふき大根」

材料(1個分)

淀大根      1
だしパック    1
塩        少々
酒       大さじ2

作り方

  • ①淀大根は皮を厚めにむき水から軟らかくなるまでゆでる。
  • ②だしパックで濃い目のだしを取り①を煮る。

 

献立例

ふろふき大根
赤魚の西京焼き
かぶらとゆずの甘酢漬け
サラダ

管理栄養士さんから一言

淀大根・聖護院大根
京都で生まれた丸い大根で京野菜の1つです。
青首大根に比べて水分が多く肉質は柔らかく・煮崩れしにくいのが特徴で、大根の苦さや臭みがないので生でもおいしいですが煮物によく使われます。
厚くむいた皮もきんぴらにするとおいしいですし、葉は緑黄色野菜です。

2020.12.11

「白みそシチュー」のレシピを紹介します。

 今年も後20日間で終わってしまいます。12月に入ってさらに月日の経つのが早くなった感じがします。
 来週に入るとグッと冷え込む予報です。温かくして過ごしていきたいと思います。
 寒い時に食べたくなるのがお鍋です。野菜も摂れ、肛門科的にも便の調子が良くなるのでいいなあと思います。
 1月のレシピは管理栄養士さんがいろんなお鍋のレシピを考えて下さいました。1月のレシピのテーマは「あったかお鍋」で紹介していきますね。

 管理栄養士さんからこんなメールをいただきました。

「この時期になってもクリスマスソングもイルミネーションも少なく2週間後にはクリスマス、3週間ちょっとでお正月とは思えない今年の師走です。
 いつもと違うけれどできること・違うからこそできることを見つけて楽しみたいと思います。
 今回は『お鍋』にしました。
 年末年始で外出も控えると冬のおうちごはん=お鍋の登場回数も増えるかと思います。 おせちのアレンジからでも作れるもの、白みそで洋風にしたもの、包丁も使わず作れるもの、ぜんざい・小豆粥で定番のあずきをおかずにしたものなど含めて和やかな食卓が囲めればと願いを込めました。
 恒例の百貨店の福袋もネット販売が主流になるようでお鍋の中で福袋を作っています。
「笑う門には福来る」笑うことで免疫も上がるし、楽しく食べることで栄養の吸収もよくなるそうです。こんな時だからこそ笑って過ごしたいと思います。」

ということで、そろそろレシピを紹介しますね。
 まず第一弾は「白みそシチュー」です。

「白みそシチュー」

エネルギー 約400kcal たんぱく質  25g 食物繊維   11g
シチューのみ
エネルギー 約300kcal たんぱく質  20g 食物繊維   4.5g

  • ●白みそシチュー
  • ●ブロッコリーと小豆のサラダ

*ブロッコリー・ゆで小豆・玉ねぎをフレンチドレッシングで和えます。

白みそシチュー(2人分)

材料

★鶏モモ肉     1
★里芋       2個
★ふろふき大根   2
★マッシュルーム  2個      
白みそ     大さじ2
牛乳      50cc
小麦粉     小さじ2
だし汁 

作り方

  • ①だし汁で★を軟らかく煮る。
  • ②軟らかくなれば白みそを溶き、牛乳で溶いた小麦粉でとろみをつける。

*好みでアスパラガスなどをのせる。

管理栄養士さんから一言

白みそ
 お雑煮でお馴染みの白味噌ですが、乳製品とも相性がよく洋風にも使えます。 発酵食品で乳酸菌を豊富に含んでおり、たんぱく質・ビタミンB6CD・鉄・カルシウム・マグネシウムのほかアミノ酸(GABA)なども含まれています。
 GABAは神経伝達物質として脳細胞の代謝機能を高める働きも期待されています。

2020.12.09

妊娠中の痛い肛門の病気と手術

 12月も2週目に入りました。ひょんなことから医療指導を引き受けた、佐々木蔵之介さんが町医者の役として主演する「ミヤコが京都にやって来た!」の撮影もクランクアップ。ホッとしているところです。1月からの放映を楽しみにしています。

 さて、今日は妊娠中の肛門の病気にに関してお話したいと思います。

 まず最初に、妊娠中は何も治療できないと思っている方が多いと思いますが、妊娠中も大抵の治療が出来ます。外用薬だけでなく、手術も可能です。その時の肛門の病状などによって、妊娠中もしっかり治療することが出来ます。まずはこの点は安心してくださいね。

 妊娠中に急に痛くなる病気があります。大きく三つです。それは、血栓性外痔核と内痔核に血栓が詰まって脱出したままになる嵌頓痔核、そして裂肛です。

 裂肛に関しては、やはり妊娠中はどうしても便秘になりやすい傾向にあります。お腹の中の赤ちゃんが大きくなって腸管などを圧迫することや、妊娠中の女性ホルモンの関係などが原因で便秘傾向になります。これに関しては以前お話したので、そちらを参考にしていただければと思います。裂肛の原因はやはり便秘になって、便が硬くなることにあります。これに対しては酸化マグネシウムなどの緩下剤を内服して柔らかく便が出るように調整すると裂肛は良くなっていきます。緩下剤も妊娠中は飲まない方がいい下剤もありますが、酸化マグネシウムは、妊娠中も問題なく内服することが出来ます。心配することなく酸化マグネシウムを内服して便を柔らかくすることで裂肛は良くなります。

 血栓性外痔核と嵌頓痔核ですが、妊娠中はどうしても血栓ができやすくなります。これも女性ホルモンの影響もあります。出産時の出血に対して血が止まりやすいように体が対応していきます。血が止まりやすいようになるということは、血小板がくっ付き易くなって血栓ができやすくなるということに繋がります。また妊娠中は便秘傾向になりやすいというこの二つの要因が重なって血栓性外痔核や嵌頓痔核になりやすくなります。というのも、血栓ができやすい状態の中、便秘で強く排便時に頑張る。このことで血栓が詰まりやすくなります。肛門の外側の静脈叢に血栓が詰まると血栓性外痔核に、内痔核に血栓が詰まると嵌頓痔核になります。いずれも急に痛みがでる病気です。

 ただ、血栓性外痔核も嵌頓痔核も妊娠中も手術が可能です。ただ、嵌頓痔核の場合は基本的には内痔核の手術です。内痔核の根部の動脈を縛って切除しなければなりません。ここから動脈の出血を起こすことが嵌頓痔核の場合はあります。そのことをしっかり認識しておく必要があります。

 血栓性外痔核の場合は詰まっている血栓を取り除くだけです。したがって動脈を縛る部分がありません。ですから、手術中にしっかり止血処置を行っておけば、術後の出血はまずありません。もし出血があったとしても、血栓性外痔核の手術でできる傷のほとんどは肛門の外側にできます。ですから、内痔核の手術の術後に起きることがある動脈からの出血はありません。また術後は1時間程度病室で休んでもらってからもう一度傷を診てから帰宅してもらっています。
 この1時間後の出血が無ければ、まずは術後止血処置が必要な出血はしません。こういった意味から血栓性外痔核は妊娠中でも手術が可能です。
 嵌頓痔核の場合は内痔核の根元の動脈からの出血があります。これまで渡邉医院で痔核根治術をした際役1%ですが動脈からの出血があり、止血術をしています。ただ、これまで妊娠中に痔核根治術を行った患者さんの中には、この1%の動脈からの出血は起きたことは有りません。
 この理由として考えられるのは、まずは妊娠中ということで血が止まりやすい状態になっているということが考えられます。血小板がくっ付き易くなって血栓ができやすくなるということはやはり術後の出血も抑えてくれるのだと思います。また血栓がつまり炎症を起こしているため、より止血しやすい状態になっている。このようなことが内痔核の根部を縛った動脈からの出血が無い要因だと考えています。
 でも動脈からの出血が起きる可能性もあります。そのことを患者さんにもしっかり理解してしていただき、出血があった場合は早急に連絡してもらい診察できる体制をとってもらうようにしています。私を含め、スタッフは皆このことを理解しています。内痔核の手術を行っている以上、何時動脈からの出血が起きるかわかりません。常にその場合に対応できる体制をとっています。その点は安心していただければと思います。

 血栓性外痔核や嵌頓痔核。急に痛みが出るとても辛い病気です。妊娠中も我慢することなく、受診して下さい。そしてその時の状況に応じて手術などをしてしっかり治していきましょう。

2020.12.06

新型コロナウイルス感染拡大で見直しが迫られる医療政策 Part5

 今回で5回目、最終回になります。

 皆保険体制、フリーアクセス保障の大切さ

  コロナ以前の医師政策は国が医師コントロールの手段を握り、医師数や医師の働き方さえ構造改革政治に従属させることをねらったものでした。外来医師の開業規制と並行して国が着々と準備してきたのが「かかりつけ医登録制」です。あらかじめ患者をかかりつけ医に登録させ、専門科受診や入院はかかりつけ医を通して行わせる仕組みであり、フリーアクセスと自由開業の制限を兼ね合わせるものでした。
 また厚生労働省は少なくとも、2020年2月18 日の医療計画の見直しに関する検討会時点では、地域医療構想と同様の発想で外来医療機関を「かかりつけ医」と「医療資源を重点的に活用する医療機関」に二分し、各々の必要数を定める制度創設に着手していました。それらの前提にもフリーアクセスの制限や包括払い化の意図がありました。

 当時、 日本医師会の横倉義武会長は 428 日、日本が諸外国に比べて感染者や死亡者数が少ない理由を、医療従事者の努力に加え、国民皆保険制度ならではの医療へのアクセスの良さ、人口 1000 人当たりの急性期病床数の多さがあると述べました。
 この指摘どおり、日本の皆保険体制は単にすべての人が公的な医療保険制度に加入しているだけでなく、皆医療保障、すなわち、必要なとき、必要なだけの医療を保障する仕組みであり、そのことが新型コロナウイルス感染症拡大防止に有効に機能しているものと考えられます。
 即ち感染症拡大を前に、フリーアクセスを前提とした日本の国民皆保険制度の優位性・有効性はあらためて明らかにされたと考えられます。

 厚生労働省も国民健康保険制度における資格証明書が交付された被保険者についても、帰国者・接触者外来においては現物給付を認める旨を通知しました。それ自体は不十分ですが、感染症防止にとっての医療へのアクセスを保障することの重要性を国自身が認めたものといえます。

  新型コロナウイルス感染症を経ても変わらない国政策

 今後、フリーアクセスを認めているから感染症拡大において医療機関が混乱するとか、あるいは公に任せているから PCR検査が進まない。保健所の仕事を民間企業に委託すれば良い、といったような主張が遅かれ早かれ出されないとも限りません。国の政策動向を注視する必要があります。

 この間、新型コロナウイルス感染症の拡大下において、国から放たれた改革方針のうち、経済財政運営と改革の基本方針 2020(骨太方針 2020)には既にその傾向が見てとれます。 骨太方針では、新型コロナウイルス感染症に対応する入院医療や検査体制の強化を打ち出す一方、コロナ以前に策定した 20182019年の骨太方針のうち、とりわけ社会保障分野について「着実に進める」と述べ、これまでの医療政策に変更はないとの立場を表明しています。その上で、「新たな日常」や「新しい生活様式」という言葉を頻用し、新型コロナウイルス感染症を梃に従来からの政策目標の実現が目指されています。

  このように、社会保障分野においては2018年、2019年の骨太方針を着実に進めるといっていることから考えると、2020年の骨太方針に医療提供体制の強化とあるが、新型コロナウイルス感染拡大に対しての強化であり、国が、これまでの医療提供体制改革を新型コロナウイルスの感染拡大を経験して、もう一度見直し強化するものではないとみれます。
 病床・人材の確保とありますが、新たに病床を増やしたり、医師数を増やすのではなく、今ある病床や医師をやりくりして強化するというものではないかと考えます。今後国の打ち出してくる具体的な内容に対して注視が必要です。

 私たちはこのような状況の中にいるからこそ、コロナ後の医療・社会保障制度の在り方の基盤として、公的な社会保障でこの国に暮らすすべての人の生命と健康を守る国、新しい福祉国家をつくる構想が極めて重要となっています。
 協会と心ある研究者の方々によって作り上げた「社会保障基本法 2011」は、健康に生きる権利は人間の尊厳に値する生活保障の基本であり、「国は医療保障の他、公衆衛生、食の安全、就業環境の安全、居住環境の整備・保全などへの十分な責務を果たさねばならない」と明確に謳っています。
 コロナ後の世界と日本の国の姿を見据え、私たち医師団体が問われている課題は大きいと言えます。

防疫だけでなく多様な視点から政策を考える必要性

 コロナ禍は人々の心を脅かし、その思想・行動にも負の影響を与えています。「自粛警察」と呼ばれる恫喝行為が拡大する様は、関東大震災時の自警団をも想起させます。一方、 感染者に対する誹謗・中傷、県境をまたいで従事する人たちやその子どもたちへの差別、医療従事者への差別等はウイルス感染同様、あるいはそれ以上の社会的脅威と言わなければなりません。
 コロナ以前から日本では差別や優生思想の台頭が問題となってきました。生活保護バッシング、終末期医療の否定、障害者差別、とりわけ在日コリアや中国系の人たちに対する排外主義の高まりが社会問題化する中で、日本はコロナ禍に見舞われました。
 社会的不安が増大すると排外主義が強まるのは歴史の常であり、これからも続く新興感染症とのたたかいはこうした潮流との闘いでもあります。

 コロナ対策を「防疫の観点から捉えるだけでなく、政治的・経済的・思想的・文化的な視点から同時並行で捉えること」が、国や自治体のみならず、私たち自身にも求められています。

 今私たちは、新型コロナウイルスの感染拡大の中、私たち自身の本質、生き方が問われています。国や自治体も同様です。国や自治体が出してくる政策に、国や自治体の本質が問われています。私たちがまわりの人々を優しさで包み込む、思いやりを持ち続けて生きていけるかが問われています。
 新型コロナウイルス感染拡大以上に私たちの心の中に潜む「人々の心を蝕むウイルス」の感染拡大が広がっている中、新型コロナウイルス、「人々の心を蝕むウイルス」のいずれに対しても打ち勝たなければなりません。

2020.12.06

新型コロナウイルス感染拡大で見直しが迫られる医療政策Part4

 今回は4回目です。

無効化した地域医療構想と医療計画における基準病床数

 2019 年秋、医療界を騒然とさせたのは厚生労働省による再編・統合を求める 424の公立・公的医療機関名の公表問題でした。これは全都道府県が策定した地域医療構想 (2016 年)の達成に向け、まずは公がコントロールしやすい公立・公的病院に「身の振り方」を決めさせようとするものでした。
 このことに対して、医療界や自治体は厳しく批判しました。しかし、それにもかかわらず、国は今日に至るまで方針撤回することは有りませんでした。それどころか、2020 1 17日に「公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」という通知を都道府県知事宛に発出しました。。精査した再編統合を求める公立・公的医療機関リストと民間医療機関リストまで添えて、都道府県に対し、対象医療機関に対する再編・統合への働きかけを迫りました。
 しかし、地域医療構想における「必要病床数」は、国が過去のレセプトデータから取り出した数字を使い、一律の計算式で弾き出した「医療需要推計」に基づくものに過ぎません。即ちパンデミックを想定しない病床数です。コロナ以後の世界において、もはや地域医療構想は無効化したといえます。さらに地域医療構想の本体である都道府県が6年に一度策定する医療計画も見直しが必要です。
 全国一律の計算式で算出させられる基準病床数においては、感染症病床についても人口比に応じて、一律に病床数が定められています。
 京都府の感染症病床は38 床、結核と合わせても188 床に過ぎません。一方の感染症法は、指定感染症に感染した患者の例外なき隔離を定めています。
 そのため不足は当然起こるべくして起こりました。その結果、本来は感染症患者の受け入れを想定していなかった一般病床における患者受け入れがなし崩し的に行われました。 今や、コロナ以前の医療需要推計、必要病床数、基準病床数はすべて無効になったと指摘しなければなりません。少なくとも医療計画上の感染症病床の配置基準や一般病床の指定基準の見直しは急務です。

  医療提供者改革も白紙にすべき

  医師政策も同様です。国は全都道府県に医師確保計画を策定させました。 同計画は医師偏在指標、診療所医師については外来医師偏在指標を用いて、全ての都道府県と二次医療圏を「医師多数区域」「医師少数区域」「どちらでもない区域」に色分けし、多数区域における他区域からの医師確保や開業の規制を行うことで、地域間の医師数を「フラット化」し、一人当たり医療費の地域差を解消する仕組みづくりです。
 医師の数が多いから医療費がかさむという発想です。しかし、偏在指標に使われた医療需要も地域医療構想と同様の手法で導き出されており、その点だけでも無効であると言えます。 新型コロナウイルス感染症は医療現場のマンパワー不足を露呈させました。
 感染拡大で危惧される「医療崩壊」とは、陽性者の増加に対し、受け入れる病院・病床、そして医師・看護師ら医療スタッフが不足し、対応不能となる事態を指します。 新興感染症の危機と隣あわせであるにもかかわらず、それが現実となったときの備えがなされていなかった。そればかりか効率性だけを重視し、一貫して病床数・医療スタッフ数を抑制し続けてきたことの結果が医療崩壊の危機をもたらしました。
 感染症病床を持たない病院でも、勤務医やスタッフが未知の診療に従事してきました。地域の開業医も防御する具体的手段を何ら与えられることもないまま、新型コロナウイルス感染症疑いの患者を受け入れ、PCR 検査につなぐ役割を担ってきました。その一方で通常の入院・外来患者が激減して、経営危機がおこりました。
 2020年上半期(1月~6月)までの医療機関の倒産件数は12件です。2011年以降の10年間では2016年上半期の11件に次ぐ少なさです。ただ、これに関しては医療機関に対しての国からの支援金等で何とか持ちこたえているにすぎず、いよいよ病院など医療機関のコロナ倒産が大量に起きる可能性が高まっていると言われています。
 これまでの診療報酬の改定、医療制度改革などによって、医療機関はこれまでぎりぎりの状態で経営をしてきました。そこに今回の新型コロナウイルス感染拡大。これまでの国の政策でボディーブローを受け続けている中での今回の新型コロナウイルス感染症の一撃。医療機関には厳しい状況。いつ倒れてもおかしくない現状です。
 病院を始め医療機関の経営破綻は地域医療の崩壊に直結してしまいます。

 国が想定していなかった感染症の流行は傲慢な医療需要推計に基づく医師数抑制策の過ちを告発するものとなりました。

2020.12.06

新型コロナウイルス感染拡大で見直しが迫られる医療政策Part3

今回は第3回目です。

新興感染症に対峙できる公衆衛生政策の実現へ

 新型コロナウイルス感染症は日本の感染症対策の弱点と限界を明らかにしました。 日本においては保健所が感染症対策の中核に位置付けられています。根拠法は地域保健法ならびに感染症法です。保健所は「公衆衛生に精通した医師」を司令塔に、パンデミックに際しては、疫学調査・防疫措置、住民への情報提供、保健指導の最前線に立つとしています。ただこのことに関しては、公衆衛生の充実を求めるために、「公衆衛生行政の充実を求める京都実行委員会」を立ち上げましたが、その実行委員会において、京都市の職員に聞く限りでは、医師を司令塔にして保健所が機能しているかは疑問があります。

 保健所に関しては1994 年の保健所法改正、地域保健法への移行を境に、保健所数は減少の一途をたどってきました。これは保健所設置の基準が人口10 万人に1カ所から、二次医療圏単位に1カ所となったことによります。

 保健所の数を減らす政策が採られた理由として、大きく2つのことが挙げられます。
 1つは保健所の役割の変更です。地域保健法には新たに市町村保健センターが位置付けられました。それ以降、保健所が企画・調整業務、そして保健センターが身近な対人援助を中心とした保健サービスを担うこととなりました。

  2つめは地方分権改革です。1996 年、地方分権推進委員会は3月の中間報告において、必置規制を解除する対象例に「保健所・児童相談所・福祉事務所」を挙げていました。さらに保健所長の要件から医師資格を外すことも提言していました。その結果、必置規制は残りましたが、保健所の数は減少、保健所長の医師資格要件は「原則」化されました。

 しかし指定感染症に関する行政検査に保健所が関与することは必須です。保健所設置数・人員数ともに大きく減らされた状況は、PCR 検査実施の足枷となっています。 政令市である京都市は保健所が必置ですが、かつて行政区に1カ所設置していた保健所を一カ所に統合し、地域密着で地区医師会とともに住民の生命・健康を守ってきた機能を後退させてきました。その結果、住民への保健指導どころか、帰国者・接触者相談 センター(それすら民間企業委託である)に電話すらつながらないという問題を引き起 こしていました。
 
 このように、国は永きにわたり保健所の役割を過小評価してきました。それは新興感染症の脅威に対する過小評価でもありました。もとより保健所は、感染症以外にも高齢者、精神、難病、食中毒等、様々な役割を担う機関であり、求められているのは府市民に寄り添い、アウトリーチで健康課題の解決を図る機能です。今後も新興感染症流行が予想されるにもかかわらず、感染症対策を都道府県・保健所にまる投げし、国が何の責任も負わない現状のままで良いとは考えられません。協会は国立感染症研究所や地方衛生研究所の在り方も含め、国が責任を持つ感染症対策の在り方を提言すべく準備中です。

 

2020.12.06

「新型コロナウイルス感染拡大で見直しが迫られる医療政策Part2

 前回の続きを紹介します。

 感染症対策における公の役割を問う提言

 これまでに京都府保険医協会は感染症対策における公の役割を問う4つの提言を出してきました。
1次提言
 第1次提言は325日に出しました。主に入院医療に関しての提言でした。
 第1次提言では、まず、「COVID-19に対する医療提供体制確立の目的は、死亡者を減らすこと、同時に人々の不安感を軽減することを1番に掲げました。そして、「感染症対策加算Ⅰ」という施設基準を届けている33入院医療機関を中心にネットワークを構築して空床確保など、新型コロナウイルス感染に対応していくものとしました。また、重症者以外の入院は急性期病床、地域包括ケア病床など病態に応じた適切な施設で対応することも上げました。また対応する医療機関や施設に対して、国や自治体の経済的なバックアップや施設基準の弾力的な運用等も求めました。また、医療者の健康を保護し、モチベーションを維持し、医療提供体制を維持し、守るために、マスクや、消毒液などの感染防護装備の緊急確保を求めました。そして、ワクチンや治療薬の早急な開発、供給を求めました。さらに最後に、第1次提言から、感染症拡大の中で起こりうる差別や人権侵害の防止のための施策を求めました。

 2次提言

 第2次提言は416日に出しました。第2次提言では外来機能に関しての提言が主で、特に公的な責任で発熱外来を設置することを求めました。
 提言の中でまず一番に国に求めたことは、「コロナ以前」からの政策検討は一旦ストップし、COVID19 対策に注力するよう求めた。コロナ禍において、国民や市民の命と健康、そして生活を守るために必要な課題が明らかになってきた。しかし、国はこのような中、以前として、コロナ以前の医療政策、社会保障計画を進めている。一端立ち止まり、本当に今まで進めてきた政策が正しかったのかをしっかり検証する必要がある。そして新たな政策を打ち出す必要がある。このことをまず求めました。
 そして、京都府に求めたことは、
①医療機関が COVID-19 対応に注力できる支援を
②新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる入院医療体制の強化を
③緊急に PCR・抗体検査にも対応する発熱外来設置、保健所機能の活用・拡充を④地域医療を支える医療機関を守る取組を
⑤府民の生命を守るガイドラインの整備を

 特に協会が求めているのは公的な責任で発熱外来を設置することでした。
 そこには、京都府、京都市の本庁内に、医師等専門職を含めた対策検討チームを常設し、同様のものを地域の保健所にも設置する必要があること。
 そして、保健所には、その敷地内に発熱外来を臨時で設置し、地区医師会の協力を得て開 業医・病院勤務医による輪番診療にしてはどうか。なお、京都府は、帰国者・接触者外来を30カ所から5月中旬までに40カ所に拡充する方針を示していましたが、当会としては帰国者・接触者外来を上記の発熱外来に切り替え、ここを拠点にPCRや抗体検査などによって新型コロナ感染の可否を判別して通常の医療提供体制につなげるべきであると考える。
といった提言でした。

 3次提言

 第3次提言は、430日に出しました。
 第3次提言は、京都府が、PCR検査の迅速化・拡大に向けて「京都検査センター」の設置を決め、これに対しての意見でした。京都府は「京都検査センター」を府内に5か所設置するとしましたが、協会としては京都市内は行政区単位、そのほかは二次医療圏単位での設置を求め、再度公的な発熱外来の設置についても求めました。

 4次提言

 そして、817日に第4次提言を打ち出しました。
 第4次提言は、今後のさらなる感染拡大を見据え、外来・検査、保健所の在り方、入院等の医療体制の抜本的拡充を提案しています。 外来・検査体制について、秋冬の季節性インフルエンザとの同時流行を視野に、公的な発熱外来を設置し、新型コロナウイルス、季節性インフルエンザのいずれにも対応できる検査可能な体制を整備するよう提案。同時に京都府と契約し、PCR 検査を担う医療機関に対しても、万全の感染防御態勢がとれるよう、医療資機材の確実な提供を求めました。 保健所については、公的発熱外来設置の主体者となるとともに、地区医師会と連携して保健所医師・保健師はじめスタッフが分担する地域の感染防止策、住民の心構え、感染した場合の医療へのアクセス、濃厚接触者となった場合の生活面も含めたフォロー等、正しい情報を提供し、府民の不安に寄り添った取組を求めました。入院医療体制について、感染症病床を持つ基幹病院であっても、院内感染・クラスター発生が起こり得ることを前提に、地域医療構想調整会議の枠組みも活用し、病院群ネットワークを立ち上げ、治療方法も含めた情報の共有、医療提供体制上の役割分担の推進等を、医療機関参加型で組織的に行えるよう求めています。そして、社会問題化している差別、誹謗・中傷の防止に向け、国・自治体が必要な正しい情報を発信するリスクコミュニケーションの強化を、保健所機能の充実と一体的に求めました。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックについて、WHO は「リスクコミュニケーシ ョン及び地域社会への積極的な働きかけの準備とコロナウイルス疾患( COVID-19)への 対応」(2020 年3月 19 日)なる暫定ガイダンスを示しています。ガイダンスは冒頭「公衆衛生上の対応において最も重要かつ効果的な介入の1つは、予見的かつ積極的に情報を伝達することである」こと、そのことが「インフォデミックを防ぐことに役立ち、適切な行動への信頼を構築し、健康に関する助言に従う割合を高める」と述べています。つまり、未曽有のパンデミックの渦中にあって、府民の誰しもが感染拡大予防に努め、なおかつ生きるための日常生活を人間らしく営むためには、常に行政が正しい情報を公開し対話することが必要だということです。
 私たちは、その取組が差別やいじめの根底にある不安と恐怖、その源泉と思しき感染症に対する非科学的な態度や無理解から人々を解放するのに役立つものと考えています。
 今、自分や家族が感染した場合にどのような形で治療を受けるのか、軽症・ 中等症・重症、それぞれの場合、どのような場所に隔離されることを求められるか。濃厚接触者となった場合にどのような生活上のフォローが行政からなされるか。それらのことを正確に説明できる人がどれだけいるでしょうか。未知である、わからない、という不安・恐怖の渦の内に、人々は置き去りにされているのではないでしょうか。したがって今、感染症対策を主導する主体である国・地方自治体に求められている重要な任務の一つとして、リスクコミュニケーション策の意識的・戦略的展開が必要です。

2020.12.06

新型コロナウイルス感染拡大で見直しが迫られる医療政策 Part1

 今回は、先日12月5日の土曜日に日本科学者会議が開催した第23回総合学術研究集会が開催されました。
 その1分科会の中の、A-1 分科会「コロナパンデミックと日本社会」での発表を依頼がありました。zoomでの開催でしたが、私も参加して報告してきました。
 私の演題は「新型コロナウイルス感染拡大で見直しが迫られる医療政策」です。
 約25分間の発表内容なので、少しながくなりますので、数回に分けて紹介しようと思います。

 新型コロナウイルス感染拡大で見直しが迫られる医療政策

 新型コロナウイルス感染症の拡大は日本の医療・福祉政策の脆弱さを露呈させました。 1990 年代以降、歴代政権は経済グローバル化に呼応し、構造改革(新自由主義改革)政治に舵を切っておきながら、経済活動によって世界中を物と人が行き交うことで当然予想すべき新興感染症への備えを怠ってきました。そればかりか 2009年に新型インフルエンザを経験したにもかかわらず、なお、感染症対策は後景に追いやられ続けてきました。今日の保健所の困難や医療崩壊の危機はその結果によるものだと明らかにしています。
 一方、緊急事態宣言時のように「自粛」を求め、感染症の封じ込めのために経済活動を停滞させれば、たちまち生活基盤が切り崩される労働者や自営業者等の存在も明らかとなりました。新型コロナウイルスの感染拡大は雇用分野で大きな影響を与えました。量産されてきた雇用者側にとって便利に「使い捨て」可能な不安定就労層は今回の経済活動の低迷で大きな打撃を正面から受けました。報道によると6万人以上の「コロナ解雇」が起きています。新型コロナウイルスに感染して、治療によって健康が回復したとしても、職を失うことはその後生活への保障がなくなってしまうということです。

 厚生労働省が発表した4月に申請された生活保護の件数は21486件であり、前年同月と比較すると、24.8%の増加でした。また、生活保護の支給を開始した世帯数も19362世帯であり、前年同月に比べ14.8%の増加でした。リーマンショックを超える増加でした。生活保護の審査が厳しくなる一方で受給者数が減少し、本当に必要な人に支給されていない状況のなか、この増加は新型コロナウイルス感染によって仕事を失った人が急増していることを意味しています。
 失業者も毎月増加傾向にあり、完全失業率も2.9%、男性が3.0%女性2.7%です。
 また企業の倒産も2月から9月までの総件数は563件にも及びます。業種別では飲食店が最も多く81件、次いでホテル・旅館が56件となっています。また、実質国内総生産も4月から6月期でー7.9%となっている状況です。

 これらのことは、構造改革政治による雇用破壊の結果であり、かつ最低生活保障の不十分さを示しています。そして、グローバル大企業を支援すべく社会構造を全ての方向から改変・解体してきた構造改革が日本の雇用・生産補償のシステムを著しく弱めてしまったという結果を新型コロナウイルス感染症拡大が明らかにしました。

日本は経済活動が低迷することによって、命までもが奪われる、そんな危険な国になってしまった。このことは感染症を防御できない国であることをも示しています。
 新型コロナウイルス感染症が医療分野にもたらしている困難の背景にも、新自由主義改革があります。構造改革が目指した医療・社会保障制度改革は端的に言って「公的保障のミニマム化と保障の多層化」です。
 即ち公的な給付の抑制と医療・福祉サービスの市場化によって、国による医療・福祉の保障は最低限に、それ以上のサービスは自己責任で市場から購入する。そのような仕組みへの転換が進められてきました。そうした路線によって進められてきたのが介護保険制度や障害者自立支援法の創設であり、医療保険制度の再編であり、今日も強硬に進められている医療提供体制ならびに医療提供「者」改革です。  

 このような、新型コロナウイルス感染症が世界に拡大する中、京都府保険医協会は4次にわたる提言書を京都府に提出、そして国に対しては診療報酬の改善や医療機関への経営支援を訴えてきました。

  3波が訪れている中、まだまだ新型コロナウイルス感染症の収束は見通せません。そればかりか、新興感染症は今後も流行します。今回のパンデミックが発生するまで、私たち医療者自身も新興感染症に対する危機感を持ち得ていたか、その反省も踏まえ、現場医療者から今後の医療・社会保障制度と感染症対策の在り方を発信していく必要があります。

2020.12.05

ドラマの医療指導をすることになって。その2

 前回に引き続いて演出担当の方からの質問と私の回答をお話しますね。

  • ①父親の診療所を継ぐということに関して思うところは?

 父が診療所をしていてそれを継ぐ場合、いつ帰ってくるか、いつ継承するかはとても難しい問題だと思います。
 私の場合は父が脳梗塞で倒れたというきっかけで渡邉医院を継承しました。34歳の時です。まだまだ若く、私としてはまだ大学で勉強しようと思っていた時期です。でも今から思うと、この時期に帰ってきてよかたと思います。
 父の診療所を継ぐ、ということはそれなりの決心がいります。
 私が帰った時、痔の手術の予定が目いっぱいに入っていました。その手術をこれからは父ではなく、私自身がしなければなりません。患者さんにとっては、父に手術をしてもらおうと思っているのに、息子といえども、一度も会ったことのない私に手術される。そこで母は、手術予定の患者さんすべてに、父が倒れて手術が出来なくなったこと、代わりに息子である私が手術をすることになること、場合によっては希望があれば他の肛門科医を紹介する。それでも渡邉医院で手術をされるかどうかを聞きました。全ての患者さんが手術をキャンセルすることなく、私の手術を受けて下さいました。
 このことは、私が評価されたのではなく、祖父や父がこれまで患者さんに行ってきた医療に対しての信頼から来たものだと感じました。そういった信頼をこれからも持っていただけるような医療を提供していかなければならないといった決意が生まれました。

 やはり、父親からの継承する際は、今親がどのような医療を患者さんに提供しているのか、そして自分が継承した場合は、今あるものをさらに同レベルアップしていけるか、などを考えることが必要かなあと思います。そういったことを元に、さらに今まで継承されてきたこと、自分自身がなにがしたいか、どうしていきたいかをしっかり持つことが出来ることで上手く父から子へと診療所が継承されていくのだと思います。

  • ②ドラマの中で父(医者)から受け継いだ物、というのを作る場合、医療道具や普段使われている物の中で当てはまる物はありますか?

 渡邉医院で、初代の祖父の時代から使っているものがあります。カルテ台や器械棚です。また母方の祖父が長年使っていた机も今でも診察室で使っています。

 

 そして、渡邉医院で最も古いものが、「肛門科」の看板です。

 祖父は大阪で肛門科の修行をしていました。京都で開業する際に、修行をしていた診療所の先生に、のれん分けのような感じで頂いた看板です。渡邉医院のこれまでの歴史を見守り続けてきた看板です。これらの家具や看板は渡邉医院の歴史を見守り続けてきたものです。これらに囲まれていることで、渡邉医院の歴史を感じ、気持ちを引き締めてくれます。こういった歴史をこれからも守っていきたいと思います。

 ただ、祖父や父から引き継いで、これからも受け継いでいかなければならないと思うのは目に見えるものだけではありません。
 祖父、父が築いてきた医療と患者の信頼感です。そして私が引き継ぐまでに積み上げられてきた医療の技術をさらに発展進歩させることです。父が築いてきた医療のレベル、そこから始める私は、今以上のレベルにしていかなければ、さぼっているということになります。さらなる進化をしていかなければと思っています。
 また、父が私に伝えた言葉も引き継いでいきたいと思います。その言葉には、「目の前にいる一人一人の患者さんをしっかり治していくことが大切だ、そのことの積み重ねで多くの患者さんが救われる。」、「専門に特化し、追及していくということは、幅広い知識が必要だ。深く掘るには、広い入り口が必要だ。」など父が私に伝えた言葉。形はありませんが、しっかり受け継いでいきたいと思います。

 こんな感じで質問をいただき回答しました。

2020.12.05

ドラマの医療指導をすることになって。その1

 ひょんなことから、来年の1月から放映されるドラマの医療指導をすることになりました。「ミヤコが京都にやって来た!」というドラマで、佐々木蔵之介さんが「町医者」役で主演されるドラマです。

 その際に演出担当の方からいくつか質問を受けました。その質問と私の回答を今日は紹介しようと思います。

 質問と私の回答はこんな感じです。

  • ①日常の中で、「職業柄、気になってしまう…」という瞬間はありますか?

 診察をして、患者さんに今の病状を説明して、治療方法などをお話しているときに、患者さんの表情を見ながら話をします。私の言っている内容が本当に伝わっているか、理解されているか表情を見ながら話をします。話をしていても何の反応もないときは、内容が伝わっていないか不安があります。「うんうん」等反応があれば、ある程度理解してもらっているのだと思います。
 ただ、どうしても患者さんはある程度、自分のストーリーを作ってこられます。自分の作ったストーリーと一致した部分だけを聞いて理解するということもあります。言ってみれば都合のいいところのみを聞くという感じです。そういった雰囲気を感じたときはもう一度話をします。
 手術入院の治療が必要な時は、術後の経過などは、同じことを表現を変えたりしたりして何度もお話するようにしています。
 また、患者さんが受診された時の表情、診察が終ってからの患者さんの表情も見ています。暗い顔をして眉間にしわを寄せて、不安な雰囲気で受診した患者さんが、診察が終って笑顔で帰られるときは、私の話がちゃんと伝わったんだなあと感じます。

  • ②お仕事をされる中で、「ああ、この仕事を選んでよかった」と思う瞬間はありますか?

 やはり、肛門科ですので、手術をしてスッキリ治った時にみせる患者さんの嬉しそうな笑顔を見るときに「よかった!」と感じます。また、「お尻の具合が悪くなった時には、絶対に渡邉医院を紹介しますね!」と言って下さったときも嬉しく感じます。

 京都に帰ってくる前は、大学の救命救急センターに勤務していました。その時は生死にかかわる緊迫した状態の患者さんが運ばれてきて、グループで救命に取り組む、緊急の手術を行うこともあります。そうして、運ばれてきた患者さんの命を救い、一般病棟に移られたり、転院された時は「やった」「よかった」と思います。そしてグループのみんなの力で救えたことに喜びを感じます。
 京都に帰ってきて、医療の内容がガラッと変わりました。外来で患者さんを診察して、手術が必要な患者さんは入院して手術をする。退院後は外来で経過を診て、治った時の患者さんの笑顔を見る。最初から最後まで一貫して診ていく。このことに関して、救命救急センターでの勤務とは違ったやりがいを感じます。そして喜びも感じています。

  • ③②の質問とは反対に、仕事をしていて大変な時、また、困ることはありますか?

 365日24時間オンコール状態なので、家族との旅行等できません。この生活はずっとこれまで続いてきました。私も父と一緒に旅行に行った記憶がありません。いつも旅行は母と妹と私の3人でした。でもそんなもんだとずっと思っていたので、私は苦にはなりません。家族はどう思っているかわかりませんが、理解してくれていると思っています。ですから、年末年始だけが家族とゆっくり過ごすことができ、旅行に行くこともありました。

 診療に関しては、やはりいつもいつも具合よく患者さんが治っていくわけではありません。術後も具合よく治らないときもあります。そういった時に、治り難くなっている原因を患者さんにお話して理解していただいて、もう一度具合よく治っていくように手術をします。このような場合はとてもつらい思いをします。でも、そのことをしなければ、患者さんは治っていきません。その方がもっと辛いです。しっかりと患者さんとお話して治療を進めています。

 また術後の出血を起こすこともあります。これは時間関係なく起きます。夜中に起きたり朝だったり。その時は時間関係なく、止血術をします。この時は大変ですし、焦りもします。でも一番不安で心配しているには患者さんです。患者さんが不安にならないように、意識して普段よりもゆっくりと話をして、不安を抱く患者さんが安心できるようにして、止血術をします。

 話は少し違いますが、あ行「あ、い、う、え、お」は決して発しないように心がけています。いずれの言葉も患者さんを不安にさせます。「あ~」「えつ」などは特に不安を抱かせる言葉だと思います。

他にも質問事項がありますが、それは次回に回しますね。

 

 

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TEL 075-441-4303

診療時間

診療時間 日・祝
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※術後の患者さんも緊急対応いたします。
※日曜日・祝日は休診です。
※第3土曜日は休診にさせていただきます。
※完全予約制ですので、必ずお電話して頂き、予約してからの受診をお願いいたします。
予約の電話受付は平日12:00-14:30です。