マイナ改定法成立に抗議する! 健康保険証廃止の撤回を求める!

皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。
今日マイナンバー法等改正案成立してしまいました。まだまだ問題が山積する中、保険証の廃止も決まりました。
そもそも任意で申請するマイナンバーカードに、皆が必ず加入しなければならない健康保険。それに伴う健康保険証を廃止してマイナンバーカードに紐づけする。このことがそもそも憲法等に違反していないかどうかも問題です。
このまま保険証を廃止してしまうと、必ず今以上に無保険の方が増えてしまいます。国はすべての国民の命と健康、そして生活を守る義務があります。今回のマイナンバーに保険証を紐ずけして、これまでの保険証を廃止する。このことは国民の受療権、医療を受ける権利を奪い、自己責任に押し付けることになります。このことは絶対に許すことはできません。
国を守ることは防衛費を増やすことではありません。国民の命、健康、そして生活を守ることです。そのことを完全に放棄してしまったとしか言いようがありません。
今日のマイナンバー法等改正案に対して強く抗議します。
[抗議談話]
健康保険証廃止を含むマイナンバー制度関連法案が6月2日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立しました。別人の情報がマイナ保険証に紐づけられるなど情報漏洩や誤登録のトラブルが相次いで発覚するなか、その実態解明も行わないまま成立させてしまいました。このことは、国民が安心して医療を受ける権利を著しく阻害するもので、到底看過できるものではありません。改めて健康保険証の廃止について撤回を強く求めます。
私たちは、健康保険証の廃止することは、が国民皆保険制度における受療権の著しい後退であると批判してきました。なぜならば、保険証を廃止することで、マイナンバーカードを保険証として使用するときも、またその代わりとなる「資格確認書」の交付を受ける時にも本人が申請することが必要となり。これは、被保険者証を全被保険者へ無差別・無条件に各保険者を通じて交付してきた国が行わなければならない社会保障責務の大幅な後退であす。また、国保等の短期被保険者証の廃止が盛り込まれていることも看過できないところです。1年以上保険料滞納により機械的に特別療養費の支給(10割負担)に移行させないように、保険料を滞納している人たちに対して、市町村が支払えない事情の把握や相談などを通じて、短期被保険者証を発行することが一定の歯止めとなってきていました。そうしたこれまで自治体が行ってきた裁量が制限されてしまいます。そのことで保険料を払えないことが、ダイレクトに「医療にかかれない」ことに繋がることになってしまいます。
全国保険医団体連合会の全国医療機関調査(5月31日発表分)では、マイナ保険証による資格確認のトラブルは6割以上とされています。そして資格情報が確認できずに窓口で医療費が全額負担となったケースも393件に上ると報告されています。すでに全国の医療の現場では混乱が多発しています。このまま突き進めば、患者、医療機関ともに更なる混乱と被害が拡大することになってしまいます。
国が保険証を廃止してまでマイナンバーカード普及を急ぐのは、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の名の下に、マイナンバーでは法律上できない、マイナンバーカードとマイナポータルサイトによる健康情報などの機微な情報を含む様々な個人情報の収集、紐づけ、そしてビジネスにおける情報の利活用にあります。医療DXは、大量の個人情報を収集・集積できるだけでなく、社会保障給付抑制に利用したり、国民を監視する社会システムの構築へつなげることも可能になります。ですから国民の機微な情報を守る体制を構築すること、そしてその透明性の確保が不可欠になります。国は「デジタル社会」のメリットしか語りません。 私たちが懸念していることに関しては一切耳を傾けようとせず強引に進めています。このようなことで本当にいいのでしょうか?
制度の根幹を揺るがす足元の危機を解消し、国民の不信を払拭することを最優先することが大前提です。
6月になりました。

こんにちは。渡邉医院の渡邉です。
今日から6月。梅雨の時期に入りました。これからは雨の日が多くなるのでしょう。梅雨の合間の晴れの日は、楽しく過ごしたいものですね。
私も5月のはじめ、体調を崩してまた入院か?と不安とショックを受けた時期がありました。でも何とかこの5月危機を乗り越えることが出来ました。
体調が悪かった時に、血液培養検査をしました。4本培養した中の1本だけ、しかも5日間培養の最後の日にキャンピロバクタ―が検出されました。生の鶏肉などを食べた時に発症することがある最近です。これまで、食事に関しては気を付けていたのですが。
やはり、免疫力が落ちているのでしょう。チョットしたことでいろんなものに感染してしまうのだなあと、再認識しました。日々の診察、生活今以上に気をつけなければいけないんだなあと思いました。
さて、これから夏へと向かっていきます。去年は、入院していたので私は夏を経験していません。今年の夏を無事に乗り切れれば、私の病状や体調も落ち着くのでは思います。
無理せずに頑張っていこうと思います。
まだまだ皆さんにご迷惑をおかけすることが多いと思います。よろしくお願いいたします。
前向きになるように!

こんにちは。渡邉医院の渡邉です。
午前中は雨でしたが、昼からは雨も上がり、移動が楽になりました。
今日は、私の血液内科と眼科の診察日。今、診察に来ています。2週間前は、体調が悪く血液検査で炎症の度合を示すCRPが23とめちゃくちゃ高かったです。4月に渡邉医院を再開してまたかー!とショックを受けましたが、なんとかこの5月危機を乗り切れた感じがします。
今日も血液検査をしましたが、きっと良くなっている気がします。
採血の際の看護師さんと私との会話。
看護師さん、「血管が太くて採血しやすいですね。」
私、「やっぱり、元気になると血管も太くなりますね。」
私、「前回2週間前は体調も悪く、血液検査もとても悪かったです。今日はきっと血液検査の結果、いいと思います。」
看護師さん、「血液検査の結果をみないとわかりませんが、良くなっていると言う気持ち、とても大切ですね。前向きな気持ち、病気を治すのに、とても大事ですね。頑張って下さいね。」
この言葉に、さらに頑張ろうと思う。
やっぱり、私だけでなく病気と闘っている人たちは、日常のちょっとした事に一喜一憂してしまいます。なかなか、病気が治っていく過程での変化と考えることが難しい。でも私のこれまでの経過をみると、山あり谷ありですが、確実に良くなってきていると思います。
病気に対して、前向きになっている時、看護師さんの何気ない一言、私の周りにいて、いつも私を支え見守ってくれている人の一言、さらに私の背中を押してくれる。本当に感謝!
私も、渡邉医院での日々の診療、患者さんが前向きに治療に臨めるよう、前向きになった患者さんの背中をしっかり押してあげて、支えてあげられるようにしたい。今日は、気持ち新たになりました。
2回目は辛い!

皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。
久しぶりのブログのアップです。
いよいよ5月が終わり、梅雨入り6月です。季節の変わり目、皆さん体調を崩されていませんか?
私は、5月8日に38℃代の熱発、次の日には平熱まで解熱していましたが、またその夕の土曜日、5月13日に再度38℃代の熱発。また頻回の下痢が続くようになりました。
5月16日の血液内科の診察の際、血液検査でCRPが23と炎症反応が強く現れました。また、その影響か腎機能、肝機能も悪化してしまいました。
4月1日に渡邉医院を再開して約1か月、前回も1月に再開して約1か月で再入院。又この二の舞になるのかとショックと不安がありましたが、何とか体調も戻ってきました。鬼門の1か月何とか乗り切れそうな感じです。まだまだ体調は安定しないんだなあと感じています。今年の夏を乗り越えられたら、安定するのかなあと期待しています。
新型コロナウイルスが5類になり、社会はマスク着用は自己判断になるなど、感染対策が緩和されてきました。ただ、私のように免疫力が落ちている基礎疾患を持っている方や、高齢者の方はまだまだ新型コロナウイルスに感染することを脅威に思って生活をしています。
さて、私も1回目の入院は悪性リンパ腫をしっかり治してしまおうというモチベーションで治療に臨みました。目の前にある治療をしっかり行っていく。それを目標にしていました。ですから、常に前向きな姿勢で治療を受けることが出来ました。ただ、2回目の入院は、「どうして!」、「再発してしまったのか?」、「案内頑張ったのにどうして!」といった気持ちがでて、1回目の入院治療よりネガティブな感情をもっての治療でした。
やはり1回目より、2回目の方が辛いと思います。
このことは、肛門の手術をした患者さんにとっても同じことです。
例えば内痔核の手術をする。1回目の手術では、「今まで悩んでいた嫌な症状が、手術を頑張ればよくなるんだ!」、「手術をしてスッキリするんだ!」、「よーし。そのためには頑張ろう!」といったポジティブな気持ちで手術を受けることが出来ます。さして、このポジティブな考えが、やっぱり術後の傷の治りを良くしてくれます。病は気からという言葉がありますが、やっぱりその言葉通り、「治そう!」という気持ちが傷の治りを良くしてくれます。
そんな時、術後の出血を起こし、止血処置が必要になった時、「どうして?」、「また手術?」といった気持ちになります。また、内痔核の術後、肛門狭窄を起こしてしまうことがあります。そんな時は、「頑張って手術をしたのに、また肛門の狭窄を解除しなければならないんだ。」、「また術後痛いんだろうなあ。」といったネガティブな考えになってしまいます。これは当然なことだと思います。
そんな時、私たち医師は1回目の手術がどうだったのか、どうしてもう一度手術をしなければならないのかを、しっかり患者さんに伝える必要があります。また2回目以降の手術を行うとどのようになるのかも伝えることが大事になります。
1回目の手術より2回目以降の手術の方が患者さんにとっても医師にとってもとても辛いことです。ですから、しっかり患者さんと話をして、患者さんの気持ちをポジティブなるよう努めることが私たち医師に課せられた責務だと思います。
新型コロナウイルスが5類になって。

皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。
急に寒くなったり、朝夕の寒暖差が大きかったり体調を崩しそうですが、皆さんは大丈夫ですか?
私は新型コロナウイルスが5類になった5月8日に、いきなり仕事帰りに寒気がして、家に帰って体温を測ると38.5℃!またコロナ感染か!また休診か~!とショックを受けましたが、コロナは陰性でした。その時だけ38.5℃で、日にちが変わった午前2時以降は平熱に解熱。その後は一切熱は出ません。あの熱はいったい何だったんだろうお思います。
4月1日に再開して1か月少し、疲れが出たのかなあと思っています。
さて新型コロナウイルス。5類になりました。新型コロナウイルスが収束したかのように国は広報しています。でも、まだまだ新型コロナウイルスがなくなったわけではありません。今後も基本的な感染対策はしていかなければなりません。
新型コロナウイルス感染者は減っています。また少しずつ増えてきているのかなあとも思います。
でもこの新型コロナウイルス感染症が減った理由は、医療提供体制が充実したわけでも、保健所機能、公衆衛生行政が拡充したわけではありません。ワクチン接種が進み、また感染された方が増えて多くの人が抗体を持つようになったからだと思います。やはり、今の現状をみて、これまでの医療提供体制や保健所機能、公衆衛生行政のどこに不備があったのか、何が足らなかったのかを検証しない限り、未来を語ることはできません。
実際、5類になったことでどこで感染するかどうかわからなくなります。健康な方はそれでもまだ大丈夫ですが、基礎疾患がある方や高齢の方にとってはこれまで以上に感染に恐怖を感じています。
私も今、悪性リンパ腫の治療をしています。抗がん剤も内服しています。その影響もあって免疫に関するIgGがとても低いです。γグロブリンを点滴しても正常値には程遠いです。新型コロナウイルス以外の感染症に簡単に感染してしまう状況です。ですから、今週月曜日の発熱はとてもショックでした。
このように私と同じような状況の方が沢山おられると思います。高齢者の方も同じです。やはり免疫力は落ちています。こういった人たちが沢山いるんだということを私たちはしっかり認識しなければならないと思います。
さて、新型コロナウイルスが5類になったことで、国は発熱患者を診察する医療機関を増やすと言っています。これに関してもなかなか難しいと思います。
これまでの地域の医療機関、かかりつけ医の先生方は献身的に発熱外来で患者さんを診察してこられました。何もしていなかったわけではありません。5類になったからと言って国が考えているほど簡単に発熱患者診察医療機関が増えるとは思えません。
発熱患者さんとそうでない患者さんとの導線を別にする。そういったことが物理的に不可能な医療機関も多いと思います。時間による導線の分離に関しても、スタッフの確保がはり難しい。
また、医療機関にかかる患者さんは基礎疾患を持っている人ばかりです。こういった基礎疾患を持っている患者さんと一緒にコロナ感染者を診ていかなければなりません。
5類になったとしても、医療機関としてはこれまでと全く変わらない状況です。場合によってはこれまで以上の対応をしていく必要があります。それにも関わらず国は、これまで新型コロナウイルス感染症を診察している医療機関に対しての支援を止めようとしています。
こんなことでは、第9波や新たな新興感染症に対応できません。今一度今回の新型コロナウイルス感染症パンデミックを検証して、医療提供体制、保健所を始め公衆衛生の充実、拡充を国は考えていかなければならないと思います。
保険証が廃止されると渡邉医院は廃業する!

皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。
4月1日に渡邉医院を再開して1か月チョット経ちました。5月8日の月曜日にいきなり仕事から帰る途中に寒気がして、自宅に帰って体温を測ると38.5℃の発熱。新型コロナウイルス感染症が5類になったばかりの日に熱発。咳や喉の痛みなど全く自覚症状はありませんでした。去年の10月に新型コロナウイルスに感染して、重症化はしなかったですが1週間寝たきり。「今回もかあ!再開して1か月チョット。また休診かあ!」とショックを受けて、医療機関を受診して検査をすると、新型コロナウイルスは陰性でした。解熱剤を1回内服して、9日の午前2時以降スッと熱も下がり、前日の38.5℃の熱は一体何だったのかと思います。やはりこの1か月間の疲れが出たのかなあと思います。前回も1月19日に再開して、3月4日に入院。やはりまだまだ「あまり頑張りすぎるな!」のメッセージだったのかなあと思います。
さて今日は「保険証が廃止されたら渡邉医院が廃業する。」のかについてお話ししたいと思います。
前回のブログでお話ししたように、私たちが医療機関にかかるとき、月に一回は健康保険証を提示しています。 これは私たちの「保険資格」、つまり「どの公的な医療保険に加入している患者なのか」を確認するためです。 今回の保険証廃止につながった「オンライン資格確認」とは、医療機関での 「資格確認」を健康保険証ではなく、「マイナンバーカード」に埋め込まれた「IC チップ」を使って確認するものです。
そうすると、保険証が廃止されると、医療にかかる時にはマイナンバーカードを用いたオンライン資格確認が基本となります。
でも、このマイナンバーカードは自分自身が申請しなければなりません。そうするとマイナンバーカードを自分自身が申請できない方が出てきます。たとえば、高齢者施設や障害のある人の施設に入所している人は、マイナンバーカードの発 行手続き自体が難しいケースが多いと思います。それだけでなく「紛失」することもあります。そこでマイナンバーカードが申請しない、しない人たちには国は「資格確認書」を準備するとしています。 「資格確認書」は被保険者がオンライン資格確認を受けることができないとき、「求めに応じて」交付されるもので、氏名、生年月日、被保険者記号・番号、 保険者資格を確認できる内容の他、自己負担割合も記載される予定です。 有効期限は1年なので、1年ごとの更新になります。
マイナンバーカードの取得・保持は任意です。でも保険証は誰もが皆持っていなければならないもの、必ず発行しなければならないものです。それを紐づけることそのものに問題があります。保険証廃止自体、 国民皆保険体制における私たちが医療を受ける権利、受療権の著しい後退につながります。
さて、ではなぜ保険証が廃止されると渡邉医院が廃院になるのかです。
現在、渡邉医院は紙レセプト、紙カルテで診療を行っています。オンライン顔認証システムやレセプトコンピューター、電子カルテなどは導入していません。そうすると保険証が廃止されるとどうなるかですが、マイナンバーカードでの本人確認ができない状況になります。本院確認が出来なければ、渡邉医院で行った診療に対しての保健医療をおこなった診療報酬を算定することはできません。そうすると、渡邉医院を受診できる患者さんは、マイナンバーカードを持っていなくて、「資格確認書」を持っている方か、もしくは受けた医療行為に対して10割負担を払ってもいいという方だけしか診察できなくなります。マイナンバーカードだけの方は、渡邉医院での診療を受けることが出来なくなります。
そうすると渡邉医院としては、全てを自費診療にするか、廃業するかのいずれかの選択を迫られることになります。
では、オンライン顔認証システムやレセプトコンピューターを導入すればいいのではとなります。ただ、その導入は300万円ほどの初期費用や、その後のランニングコストが必要となります。
去年悪性リンパ腫の治療で入院し休診していた渡邉医院。私の治療費のために貯蓄を使い、去年の課税所得0円となった私にとってはその費用を捻出することが出来ません。また、いつ再発して入院治療が必要になるかも予想できません。そうなりたくはないのですが。そうすると直ぐにマイナンバーカードに対応することが出来ません。
このようなことで「保険証が廃止されると渡邉医院は廃業になる。」ということに繋がっていきます。
おそらく同じような状況にある医療機関は多いと思います。そうすると地域から、これまでかかりつけ医だった身近な医療機関がどんどん廃業していくことになります。
まだまだ保険証廃止に対してはストップをかけることが出来ます。是非皆さんも保険証廃止に関して考えていただき、この法案を廃案にするよう声を上げていただければと思います。よろしくお願いいたします。
P.S.
Twitterをリニューアルしました。又すぐにTwitterが渡邉医院のTwitterを凍結するかもしれませんが、その時はまた考えます。
それまでは利用してくださいね。
【Twitter復活】
【Twitter復活】
お待たせしました!
この度、Twitterアカウントをリニューアルしました!
内容はこれまで通り日頃のつぶやきや相談を受けていきます。
健康保険証廃止の狙いと危険性!

こんにちは渡邉医院の渡邉です。今回は「保険証廃止と医療の「デジタル化」(DX)の危険性についてお話ししたいと思います。
現在来年の秋に保険証の廃止に関して国会で審議しています。衆議院は通過し、今は参議院で審議されています。
私たちはこの保険証の廃止法案を食い止めたいと思っています。
少し長い分ですが、ぜひお読みいただいて保健所廃止の危険性を知っていただきたいと思います。
保険証廃止と医療の「デジタル化」(DX)の危険性
1. 健康保険証廃止の背景にある国策 ―社会のデジタル化―
(1) マイナンバーカード普及のために廃止される健康保険証
健康保険証廃止という衝撃的な企ては、3月7日に国会提出された「行政手 続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を 改正する法律案」(マイナンバー法等改正案)に盛り込まれ、すでに衆議院では可決され、参議院での審議に移っています。
なぜ、政府は健康保険証を廃止しようとしているのか。 それは簡単に言って「マイナンバーカードを普及するため」でしかありません。 ご承知のように菅政権時代の 2021 年、「デジタル庁」が創設されました。 日本を世界最先端のデジタル国家にすることを目標に掲げ、デジタル技術に よって社会の変革を進めることは、文字通り国策として取り組まれています。
マイナンバー法改正とともに国会提出されている「デジタル規制改革推進の 一括法案」はデジタル技術の活用を妨げるすべての「規制」を(ことによっては 法改正もなく)取り払うという乱暴な内容です。取り払われる「規制」は約1 万条項とされています。 中でも注意が必要なのは、社会全体をデジタル化する、というのは単に効率的にする、便利にする、という意味ではないことです。
大きく2つのことが狙われていると考えます。
1つめは、デジタル技術を使い、企業利益を増大させること。つまり「経済成長」です。 2つめは、人々の個人情報を国家が把握し、政策に活用することにあり、はなはだしく「監視」に使うことです。 こうした企てのことを国は「DX」(デジタルトランスフォーメーション)と呼んでいます。 以上の2つに共通するのは人々の情報を大規模に収集・活用することです。 そのために必須となる条件が「マイナンバーカード」を全国民に持たせることにあります。
(2) 医療・社会保障のDX
国は 2022 年 12 月 16 日、「全世代型社会保障構築会議」報告書において「医療・介護分野等におけるDX の推進」を謳い、2つの柱を示しました。
1つは、「医療・介護分野の関連データの積極的な利活用の推進」です。 4月16日現在、76.6%となっています。る(4⽉ 16 ⽇現在)
ここで言われているのは、EBPM2 (証拠に基づく政策立案)の実現、PHR(パーソナルヘルスレコード)など、マイナンバー制度のもとで公共機関が持っている医療・福祉関係のデータと、関係事業者のデータの連携を推進すること、そして健康診断等の結果から、自らの健康・医療情報について自分で管理・活用する ことができるようにすることです。
もう1つは「医療 DX の実装化」です。 ここで書かれているのが、オンライン資格確認等システムのネットワークを拡充し、「予防接種、電子処方箋情報、自治体検診情報、電子カルテ等の医療・ 介護全般にわたる情報について共有・交換できる全国的なプラットホーム=全 国医療情報プラットホーム」を創設することです。
今回の「保険証廃止」は、以上の2つのことと深くつながっています。 そのスタートラインにあるのが「オンライン資格確認」です。
2. オンライン資格確認、電子処方箋、医療機関間の情報共有
(1) スタートラインはオンライン資格確認
私たちが医療機関にかかるとき、現在月に一回は健康保険証を提示しています。 これは私たちの「保険資格」、つまり「どの公的な医療保険に加入している患者なのか」を確認するためです。 今回の保険証廃止につながった「オンライン資格確認」とは、医療機関での 「資格確認」を健康保険証ではなく、「マイナンバーカード」に埋め込まれた「IC チップ」を使って確認するものです。 国は、2023年4月からすべての医療機関に「オンライン資格確認」ができる 機械(カードリーダー)を設置することを義務づけました。ですから医療機関の入口に「顔認証付きカードリーダー」が設置されている医療機関が増えてきました(でも実態が追い付いておらず、京都では一般診療所で 56%、病院が 83.5% ※4月 16 日現在。経過措置もあります)。
マイナンバーカード(に保険証機能を持たせて「マイナ保険証」にしたもの) を持っていれば、保険証を窓口に提示しなくとも、この機械に「ピッ」とやれば、 資格確認が終了する。とっても便利!というわけです(ただし、実はオンライ ン資格確認は健康保険証でも出来ることは指摘しておきます)。 しかし、「便利」なだけではありません。 オンライン資格確認をすると、IC チップに内蔵された「シリアルナンバー」 (電子証明書)と医療 ID(被保険者番号)がつながって、回線の先にある「審査支払機関」(国保連合会、社会保険診療報酬支払基金)のコンピューターにつながって瞬時に「返信」が来て、資格が確認されます。 でも「返信」されるのは「資格」だけでははありません。患者さんが「同意」ボタンを押せば、「審査支払機関」に被保険者ごとに一元的・継続的に履歴が蓄積され、 管理されている①被保険者番号、②資格情報(有効期限、窓口一部負担金割合、 負担限度額情報等)、③診療情報、特定健康診査結果等も医療機関には「返信」されます。 すると医療機関の側は「○×さんは△年に○○の手術を受け、現在は、◇という治療薬を処方されている」という情報を知ることができる。
(2) 医療情報の共有・連携から「全国医療情報プラットホーム」へ
この仕組みを使えば、一人一人の医療の情報を患者と医師だけでなく、他の病院や診療所の医師同士が共有し、確認できる情報のネットワークをつくることができます。 そこで国が考えているのは今後、共有できる情報をもっと拡大して、医療だけでなく介護や自治体が持っている一人一人のデータをみんな共有し、確認できる「全国医療情報プラットホーム」(健康・医療・介護分野を含む情報システ ム)」をつくることにあります。 すでに国は「電子処方箋」(2023 年~)や全医療機関共通の「電子カルテ」(2025 年)の導入を目指しています。 岸田首相が本部長を務める「医療 DX 推進本部」は、この超のつくビッグデータを使って、「誕生から現在までの生涯にわたる保健医療データが自分自身で一 元的に把握可能となり、個人の健康増進に寄与」できるようにする、「全国の医療機関等が必要な診療情報を共有することにより、切れ目なく質の高い医療の受療が可能」になる、「保健医療データを活用した質の高い健康サービスの提供 や二次利用による創薬、治験等の促進を目指す」と言っています。
(3) 集積したビックデータを使った医療費抑制と「産業」での利活用へ
ビッグデータを活用した「質の高い健康サービスの提供」って、どういうことなのか? ここに医療 DX の大きなねらいが隠されています。 国が考えているのは、民間事業者が個々人のデータを活用して、儲けることがきるようにすることです。 あらためて確認しておくと、マイナンバーカードのIC チップ自体に医療情報が搭載されているわけではありません。実際のところ情報は、医療機関、介護事業者、 自治体、保険者等の各組織それぞれに集積されています。マイナンバーカードはそれらの情報を個人単位で引っ張ってくる「鍵」に過ぎません。 しかし、これらの情報を個人が自分の手元に「ダウンロード」し、一元的に閲覧できる仕組みがあります。それが国の準備した「マイナポータル」(2017 年開設) です。マイナポータルには医療のことだけでなく、税務情報や、年金情報、世帯情報等も管理されていて、その内容はもっと増えていく予定です(銀行の預金口座とか、国家資格とか、あるいは犯罪歴とかも?)。これを閲覧するのに必要なのがマイナンバーの4桁の「パスワード」です。ここにはモノスゴイ情報漏えいリスクがあります。 でも怖いのはそれだけではありません。こうした情報を民間事業者との「同意に基 づいて国民に提供させ、事業者がその情報をAI によってプロファイリングし、 例えば医療分野であれば健康リスクを予測し、その人が必要としそうな(というか食いつきそうな)サービスを案内し、企業の利潤につなげていくことが企まれています。 さらに、マイナポータルが普通に利用されるようになれば、個人それぞれの生活全体が、国家や企業に「プロファイリング」されてしまう危険があります。そうしたら、「その人」に向けたメッセージ(広告・宣伝)が国や企業から届くようになると思います。そのことが個人の行動変容をもたらし、医療費抑制につながることを国は期待しています。 やがてそれは「社会保障個人会計」につながっていくものとも考えられます。
マイナンバーカードを通じて、様々な個人情報の一元管理が進み、これを国家が活用すれば、医療・介護・税金・年金などに関わる個人情報を国は総体的に把握できることになります。すると個人レベルで「負担と給付」も明確になります。小泉 政権時代に提唱された「社会保障個人会計」(負担の範囲に給付を抑える仕組み) の導入も難しくなくなります。そこまでいけば日本の社会保障制度は完全解体してしまいます。
3. 保険証廃止法案の提出
以上のような医療DX推進のために、国民全員にマイナンバーカードを保持させるために、保険証廃止が目指されているのが現時点の状況です。
(1) 資格確認証を交付しても保険証廃止による受療権後退は避けられず
国は最短で 2024 年秋の保険証廃止が目指しています。 保険証が廃止されると、医療にかかる時にはマイナンバーカードを用いたオンライン資格確認が基本となります。
しかし、マイナンバーカードを自分自身が申請して発行できない人は大勢います。たとえば、高齢者施設や障害のある人の施設に入所している人は、マイナンバーカードの発 行手続き自体が難しいケースが多いと思います。それだけでなく「紛失」することもあります。そこでそういった人たちに国は「資格確認書」を準備しています。 「資格確認書」は被保険者がオンライン資格確認を受けることができないとき、「求めに応じて」交付されるもので、氏名、生年月日、被保険者記号・番号、 保険者資格を確認できる内容の他、自己負担割合も記載される予定です。 有効期限は「1年を限度」とされ(要するに毎年申請しないといけない)、各保険者が発行することになります。
マイナンバーカードの取得・保持は任意です。それにもかかわらず健康保険証廃止によって保険医療機関にかかれない人々を生んでしまうことは決して許容されません。 だからこそ資格確認書は準備されるのだろうと思いますが、それでもなお保険証廃止自体、 国民皆保険体制における私たちが医療を受ける権利、受療権の著しい後退につながります。
国民皆保険体制の基盤である「国民健康保険法」は第1条(この法律の目的)に「社会保障及び国民保健の向上」を謳っています。社会保障制度である以上、この国に暮らすすべての人に対して普遍的に医療保障がなされるべきです。第5条(被保険者)は「都道府県の区域内に住所を有する者は」「国民健康保険の被保険者とする」と定義しており、国保は強制加入です。健康保険法等の被保険者等 「適用除外」(第6条)対象者でない限り、住所を有する者は被保険者なのです。そして運用上、保険医療機関受診にあたり被保険者証の確認が求められて いる以上、保険証は全被保険者へ無差別・無条件に交付されるのが当然です。 でも健康保険証を廃止すると、マインナンバーカードを保険証として使用するにも、資格確認書の交付を受けるにも本人の「求め」=申請が必要になります。これは受療権の行使に新たな「申請主義」のハードルが持ち込まれることを意味します。極論すれば皆保険体制は希望者にのみ、療養の給付を保障する仕組みへ後退させてしまうことになります。もちろんこれは国家による社会保障責務の大幅な後退です。
(2) 医療 DX による給付と負担の明確化の先駆けとしての短期被保険者証廃止
さらに看過できないのが、保険証廃止に連動した国民健康保険制度と後期高齢者医療制度における「短期被保険者証」「資格証明書」の廃止です。 資格証明書は「特別な事情」がないまま、1年以上保険料を滞納していると被保険者証に代えて交付されます。そうなると療養の給付が「特別療養費払い」(償還払い)に代えられます。すると患者は保険医療機関窓口で一旦全額(10割)を支払わねばなりません。事実上医療にかかれなくなってしまいます。 これは、保険料支払いの有無が「生存権」保障とダイレクトにつながったとんでもない制度です。 そこで住民運動は保険者(地方自治体)に対し、資格証明書を交付させず、せめて短期被保険者証を交付させ、自治体職員が滞納状態に陥った被保険者へ寄り添い、生活全体を把握し、相談しながら滞納解消を目指すように求めてきました。 でもこれも国が資格証明書を廃止し、短期被保険者証も廃止してしまうと、「歯止め」 が本当になくなってしまいます。これまで地域の運動が現場レベルで資格証明書交付を食い止め、「医療にかかれない」事態を防いできました。そのための重要な仕組みが失われてしまいます。地方自治体の国保行政における裁量が制限され、 保険料支払いの状況がよりダイレクトに受療権保障にリンクされる事態が危惧されます。 なお一方の医療機関は、先ほどの「オンライン資格確認」システムにより、患者が特別療養費の対象であるか(保険料滞納者であるか)どうかがわかります。 新たな資格確認書にも特別療養費の対象者である旨が記載されるといいます。 医療 DX は個人単位で「負担と給付」の関係が個人単位で把握され、負担しないものは医療を受けられず、という状態を作り出してしまいます。
4. 医療を守り、人権を守るために
「(将来マイナポータルに)個人に関する情報が収集・蓄積・融合・解析・活用されるサービスが追加されるようになれば、日々の行動によって生まれる未来を予測して、悪い未来を予防するための情報が、プッシュ通知(自動通知)によってマイナポータルに日々届くようになるでしょう。一例として、医療費が高い人の行動が解析されて、未来における医療費抑制を目指して、現在の生活に関する指導がマイナポータルに自動通知されるようになれば、動物とは異なり、人権の基礎に存在する人間が自分の意思で自分らしく生きるという欲求までもが抑圧されるようになるでしょう。人権の歴史に立ち戻った考察が求められています。」(稲葉和正氏)。
社会全体のデジタル化を人権意識の希薄な為政者たちに任せてはなりません。 自己の情報をコントロールする権利の保障なしに、DX の推進はあり得ません。 DX に罪があるわけではなく、DX 推進の動機が問題になっているのです。自身の情報を把握され、「管理」される側である私たちが、あるべき DX の姿を示していく運動が必要です。
この健康保険証の廃止によってどんな影響が出るかを一度考えてもいていただければと思います。
次回は「健康保険証が廃止されれば、渡邉医院は廃業となる!」についてお話しします。