「深部痔瘻の手術」に関して。ー近畿肛門疾患懇談会を終えてー
今日は晴れているのかなあと思ったらいきなり雨が降ってきたり、不安定な天気でしたね。もうそろそろ梅雨入りでしょうか?朝は涼しくて過ごしやすいですが、日中は蒸し暑い日が続いています。
今回は先週の土曜日に開催された近畿肛門疾患懇談会を終えての報告をしたいと思います。
6月15日に開催された第115回近畿肛門疾患懇談会の主題は「深部痔瘻の手術」でした。演題は全部で5題でした。それぞれの演題名をまずは紹介します。
1. 深部痔瘻(隅越分類Ⅲ、Ⅳ型)に対する治療
2. 深部痔瘻の手術~筋縫合術・筋充填術は流行らないのでしょうか?
3. 当院における坐骨直腸窩痔瘻の手術
4. 骨盤直腸窩痔瘻の病態とそれに応じた3つのテクニック
5. 深部痔瘻の手術に対しする考え方
の5つの演題でした。
痔瘻に対する手術に関して意見交換をする際に、一番の議論の論点になるのが、肛門の機能の温存と手術の根治性です。痔瘻は二次口からの排膿が続いたり、腫れたり治まったりすることがとても不愉快な病気です。また痔瘻になる前の肛門周囲膿瘍はとても痛い病気です。できれば患者さんにとっては1回の手術でスッキリ治したい病気です。ですから手術は根治性を要求されます。ただ、痔瘻の手術の場合、瘻管が筋肉の中を貫いていますので、括約筋などの肛門の筋肉の損傷を伴います。根治性を求めるばかりに括約筋などの筋肉の損傷が大きくなると、術後の肛門の機能に障害が出てきます。したがって肛門の機能の温存に対しても検討しなければなりません。
この肛門の機能の温存と根治性の相反する事柄に対してどう対応して手術をしていくかが私たち医師には課せられた課題となります。とても難しい課題です。
特に今回の主題は深部の痔瘻です。機能の温存と根治性をどう考えるかが強く求められるところです。
さて、深部痔瘻についてお話しする前に、肛門の解剖、特に筋肉の解剖について少しお話しておかなければならないと思います。
図に示すように皮下外肛門括約筋、その奥に浅外肛門括約筋、さらにその奥に深外肛門括約筋それに続いて肛門挙筋が続きます。また、外肛門括約筋の内側に内肛門括約筋があります。図に示すように、痔瘻はその瘻管がどの筋肉をどう貫いているかで分類されていきます。
深部痔瘻はさらに3つに分類されます。1.高位筋間痔瘻2.坐骨直腸窩痔瘻3.骨盤直腸窩痔瘻の3つです。
1. 高位筋間痔瘻
高位筋間痔瘻は、内肛門括約筋と外肛門括約筋との間を上の方へと瘻管が伸びて、二次口が無いため排膿がないタイプの痔瘻です。痔瘻の約1割弱に認められるとのことです。
2. 坐骨直腸窩痔瘻
坐骨直腸窩痔瘻は、外肛門括約筋を超えて肛門挙筋の下の方まで瘻管が伸び、肛門の後方を複雑に瘻管が走行するタイプの痔瘻です。痔瘻の約3割を占めると言われています。
3. 骨盤直腸窩痔瘻
骨盤直腸窩痔瘻は、肛門挙筋の上まで瘻管が伸びていくタイプの痔瘻です。極まれにみられるとされています。
これらの深部痔瘻で痔瘻全体の4割程度を占めることになります。それ以外の約6割は低位筋間痔瘻です。このように深部痔瘻は決して少ない割合ではありません。
痔瘻の手術の基本は原発口、原発巣、瘻管の処置をしっかり行うことです。機能を温存するには括約筋の損傷をできるだけ最小限にとどめることです。したがって、瘻管を二次口から原発巣そして原発口まで瘻管をくりぬくことで損傷は少なくなります。ただ、くりぬいた後の原発口の部分をどう処置するか。原発口を切除した部分を糸で縫合するか、筋肉や直腸粘膜でその原発口を切除した部分を覆いかぶせるように縫合するか。など、様々な方法が考えられています。ただ、この縫合した部分の縫合不全を起こすと再開通して、痔瘻になってしまいいます。どう原発口を処置した部分を処理するか。ここが重要な課題となります。深部痔瘻には様々な方法が試みられています。二次口から原発巣までしっかり処理をして、括約筋間の瘻管は残しておく、原発巣を掻把するだけで原発口を閉鎖する、ある程度瘻管をくりぬいた後、輪ゴムによるseton法を行う、また、輪ゴムによるseton法だけで時間をかけて治していくなど、まだまだこれが一番いいという標準的な術式はまだ確立されていないと思います。
いかに機能を損傷することなく、痔瘻を根治させるか。この難しい課題に、しっかり取り組んでいかなければなりません。またその手術が限られたごく一部の人にしかできないものではなく、だれにでもできる標準的な手術術式にならなければなりません。
「患者さんアンケート」は私たちにとってとても大切な宝物
渡邉医院では、手術をして入院された患者さんにアンケートをお願いしたいます。手術を決める際に悩んだこと、不安に感じたこと。また、麻酔の痛みや、手術中の痛み。術後の痛み、や排便時の痛みなどの項目に答えていただいています。またアンケートには自由記載欄もあり、手術、入院、そして渡邉医院の提供している医療内容、また改善欲しい点など自由に書いていただいています。これらのアンケートの結果を集計して、患者さんが感じている局所麻酔の時の痛み、手術中の痛み、そして手術後の痛みについてや、いつ手術後何日目頃から排便時の痛みは取れてくるのかのデータをとって、これらの患者さんのアンケートをもとに、これから手術を決める患者さんや、手術後の患者さんの不安を取り除く大切な資料として使わせてもらっています。
以前に術後な痛みのアンケート結果を紹介しました。またご覧いただければと思いますが、これらの患者さんのアンケートはとても大切な資料となります。
またアンケートは患者さんのためだけでなく、私たちとってもとても勉強になるものです。
私自身が気が付かなかったことを指摘して下さる患者さんもいます。
例えば、内痔核の治療に関して、治療方法をしっかり説明して、手術で治す方法、痔核硬化療法で治す方法など選択肢を示しているつもりでしたが、「結果的にこの治療法にしてよかったが、治療方法の選択が出来なかった。」というアンケートがありました。どうしても内痔核の性状などで、ジオンによる四段階注射法の適応でない内痔核の場合は痔核根治術が必要ですし、ジオンによる治療が可能な内痔核であれば、痔核根治術と違い、傷もできずに痛みが少なく楽に治していけるので、どうしてもそちらの治療へと誘導してしまう傾向があるなと思っています。特にジオンによる四段階注射法でも痔核根治術でもどちらでも治すことができる内痔核の場合は、しっかりと選択肢を示して、患者さんに選択してもらうようにしていく必要があると感じます。ただ、この際、患者さんと私たち医師との間では、絶対的な内痔核の治療に関しての知識量が違います。私たち医師は、やはり、患者さんにとって一番適した最善の治療方法を示して提供していかなければならない面が強いと思います。
ただ、私たちがしっかり考えなければならないのは、私が最善と思っている治療方法ではない治療方法を患者さんが選んだ時です。そうした場合は、患者さんが選んだ治療方法で改善する部分と、改善しない部分をしっかり説明したうえで、納得してもらって患者さんが選んだ治療方法を提供しなければならないと思います。
例えば、内痔核の場合、外痔核成分の多い内痔核であったり、皮垂を伴った内痔核や、器質化して硬くなった内痔核などは、やはりジオンによる四段階注射法の適応にはなりません。そういった場合、ジオンによる痔核硬化療法で、内痔核部分は良くなりますが、皮垂は残りますし、外痔核成分も一時的には良くなることもありますが、どうしてもその外痔核部分の腫脹が出てくる可能性が高いです。そういったことをしっかり話して、皮垂が気になるようでしたら、改めて切除したり、外痔核部分の腫脹が残ったり、外痔核部分が再発した場合など手術で切除する必要がおきることがあるということをしっかり納得してもらってからの治療が必要になると思います。患者さんの中には、「とりあえず出血が多いので、その出血を今は何とかしてほしい。」とか、「皮垂は気にならないので、内痔核が脱出してこないようにして欲しい。」と望まれる方もいます。そのことは患者さんにとってはとても大事なことだと思います。そういった患者さんの思いをしっかり受け止め、その後に起きるであろうことや、起きたときにどのように対処したらいいのかをしっかり説明して納得してもらってから治療を進めていくことが大切だと思います。どうしても、医師は自分の考えている方へ患者さんを誘導してしまう傾向があると思います。患者さんとって最良の、そして正しい方向への誘導は良しとしても、間違ったほうへの誘導にならないように、日々、診察、診断、治療の技術を学び、進化させていかなければなりません。
肛門の病気や術後は必ず症状がある
肛門の病気や肛門の手術をした後など、必ず自分が感じる症状、自覚症状が出ます。
内科の病気は、自分が気が付かないうちに少しづつ病気が進んで、自覚症状が出て、「何かおかしい。」と思って医療機関を受診して診察を受けたときに、「血圧が高くなっていますね。」とか、「肝臓の具合が悪くなっていますね。」という風に、自分が気が付かないうちに病気が進んでいる場合があります。自覚症状がでて、自分が気が付いた時にはある程度病気が進んでいることがあります。
でも肛門の病気は違います。出血するとか、痛みがある。また肛門が腫れてくる。違和感がある。など必ず自分が感じる症状、自覚症状が出ます。肛門の病気は悪くなる時も、出血した。そして出血が頻回になる。また出血の量が増えてくる。痛みがでた。痛みがだんだん強くなる。など、症状が出て、病状が進むと必ず、その症状が強くなってきます。このように、必ず肛門の病気は症状がでて、病状の悪化とともに、症状が強くなってきます。なんの症状もなく、気が付いたらいつの間にか肛門の病気が悪くなっているということはありません。ですから、出血や痛みなどの症状がない時は、肛門の病気は治っているということです。
また肛門の病気に対して手術をした際も、必ず症状が出ます。出血するとか、出血しなくなっても浸出液が出る。また、痛みがあるなど、手術をした後も必ず症状が出ます。ですから、出血もなく、浸出液や汚れもなくなり、痛みがなくなったら、手術した後の傷は治ったということです。スッキリ治っていない場合は必ず何らかの自覚症状があります。
時々、「あなたの病気は内痔核ですよ。」と言われると、何の症状がなくても「自分は内痔核を持っているんだ。」と思っている方がいらっしゃいます。また、「あなたは裂肛ですよ。」と言われると、排便時の痛みや出血がなくても「自分は裂肛を持っているんだ。自分が持っている裂肛が、排便時に痛かったり痛くなかったり、出血したりしなかったりするんだ。」と思っている方がいます。
また、女性の方で出産の時に肛門が腫れて痛くなって「痔になった。」とおっしゃる方で、なんの症状もないけど、出産後ずっと「痔」を持っているんだ。一度「痔」になったら治らないんだと思っておられる方がいらっしゃいます。
そんなことは、ありません。必ず肛門の病気は症状がでます。何の症状もなく、いきなり悪くなっていることはありません。ですから、肛門に何の症状もなく、肛門のことが気にならない時は、「自分は治っているんだ。」と思ってください。
例えば、裂肛を例にあげてみます。
裂肛は、排便の際に便が硬かったり、反対に下痢だった時に肛門に傷がついて、痛みや出血する病気です。
「あなたは裂肛ですね。」と言われると、痛みや出血がなくても、「自分はいつも裂肛を持っているんだ。持っている裂肛が排便時に痛かったり痛くなかったり、出血したりしなかったりするんだ。」と思っている方がいます。でも違います。排便時に痛みや出血があった時に裂肛になったということです。排便の状態が良くなり、排便しても痛みもなく、出血もないときは、裂肛はすでに治っているということです。解りやすく言うと、「あなたは怪我をしていますね。」と似ています。転んで怪我をして痛みがでて、出血もします。でも転ばなければ傷は治っていきます。これと似ていて、排便時に痛みや出血があった時に裂肛です。排便時に痛みや出血がなければ裂肛は治っているということです。
裂肛になると必ず痛みや出血などの自覚症状がでます。なんの症状もなく、裂肛が悪くなっていくことはありません。裂肛が悪くなる場合は、排便時の痛みが出た。その痛みが段々強くなっていく。また排便時の痛みだけだったのが、排便後も痛みが持続する。そしてその痔核時間が長くなっていく。など症状がでて、その症状が段々強くなっていきます。痛みや出血などの自覚症状がなくなった場合は、裂肛は治ってしまっているということです。
また、内科の病気、例えば高血圧症の場合は、何の自覚症状がなくても血圧が上がらないように、毎日、降圧剤を内服しなければなりません。肛門の病気はそうではありません。なんの症状もなくなった時はすでに肛門の病気は治ったということです。ですから症状がなくなったら、軟膏や座薬ななどの治療は必要ないということです。
どうしても、一度肛門の病気になると、何の自覚症状がなくても「自分はお尻の具合が悪いんだ。」「症状がなくても痔を持っているんだ。」と思いがちです。そんなことはありません。自分の感じる自覚症状がない場合は、お尻の病気は治っているんだと安心してくださいね。
「渡邉医院の絶対に変えない方針・ポリーシーはなんですか?」という質問を受けて
「渡邉医院の絶対に変えない方針・ポリーシーはなんですか?」という質問を受けました。
そういきなり聞かれて何だろうと考え、一番最初に頭に浮かんだのが「目の前にいる患者さん一人一人をしっかり治していくこと。そのことが多くの患者さんを救うことになる。」という言葉です。この言葉は、父が急に倒れ、私が急遽京都に帰ってきて、渡邉医院の診療を引き継いだ時の父の言葉です。急に京都に帰ってきて、診療に焦りを感じている私の姿を見て、父が私に言った言葉です。今もこの言葉は大切にしています。
この言葉以外に頭に浮かんできたものを頭に浮かんだ順にあげてみます。
「渡邉医院の絶対に変えない方針・ポリシー」
・目の前にいる患者さん一人一人をしっかりと治していくこと。
・患者さんが、今何を悩んでいるのか?何を治したいのか?をしっかり聞く。
・診察、診断した後に、今の病気の状態を解りやすく説明する。
・今の症状を良くするにはどんな治療が必要なのかを説明する。
・患者さんにとって最善の治療方法を提供する。
・今起きていることを誠実に患者さんにお話しする。
・患者さんと一緒に病気を治していく。
・なかなか受診しにくい診療科なので、受診する際には相当の決心を持って受診される。そのような状態の患者さんに対して優しく対応する。
・決して「もっと早く受診してほうがよかったのに」とは言わない。受診して治そうと決心した時が治療する一番の時であること。
・患者さんが笑顔になること。
・術後など、患者さんが心配する項目はこれまでの経験上わかっているので、患者さんが不安になる前に、不安になるであろう項目を先手先手に話をしてあげる。
・患者さんの診察、診断、治療を通じて、さらなる技術を進化させていく。患者さんがいろんなことを教えてくれる。
・常に妥協せず治療法等の改善をしていく。
と言ったことが一気に頭に浮かんできました。
「医療を提供する立場で大切にしていること」
この中で、医療を提供するといった立場から言うと、やはり、患者さんの症状を聴き、診察し、正しく診断を下す。そして、その病気の状態や、患者さんの状況を考え、患者さんにとって最善の治療方法を提供する。その際には、患者さんに解りやすい言葉で、そして患者さんが納得できるように説明をすること。そしてその際は、ゆっくりと話す。このことが重要だと思います。また、肛門疾患に関しては患者さん自身が一番良く解ります。肛門の病気は例えば、出血するとか痛みがある。また、腫れてくるなど、必ず患者さんが感じる自覚症状があります。そして病気が悪化すると、その症状が段々強くなってきます。出血が頻繁になって、量が増えてくる。痛みがだんだん強くなるなど、必ず患者さんが感じる症状があります。なんの症状もなく気が付いたら悪くなっているということはありません。治療に関しても、具合よく治っていかなければ患者さんが感じる症状はとれません。嘘やごまかしは通じない診療科です。そういったことからも、今の患者さんの状態、今起きていることを誠実に話をしていくことが求められます。
「患者さんを笑顔に」
そして、私が一番大切にしていることは、患者さんを笑顔にしてあげることです。
肛門の病気はなかなか、相談することもできずに一人で悩んでいる患者さんも少なくありません。肛門科に罹りたくても、なかなか勇気をもって受診することが出来ない。診察を受けに来られる患者さんの中には表情がとても暗く、眉間にしわを寄せている患者さんもいます。そういった患者さんを診察し、治療をしていくことで、笑顔になって帰っていかれる。このことを私は大切にしています。
「渡邉医院の歴史が方針・ポリシーを支える」
でもこういった医療を提供できるのも、渡邉医院が肛門科一筋ぶれることなく90年続けてきたことにあると思います。この歴史が様々な診察方法や診断技術、そして手術などの技術を進化させてきたきたのだと思います。ですから、肛門疾患に対しての様々な治療法を渡邉医院は持っています。治療の選択肢がたくさんあります。患者さんの病気の状況、状態、そして患者さんの今置かれている状況などを考えて、患者さんにとって今一番良い、最良の治療法を提供できるのだと思っています。また、術後の患者さんのデータも豊富に積み重ねています。そのデーターから、患者さんが、術後などにいつ、どんな不安を抱かれるのか。そしてそれにどう対応してあげればいいのかなどのノウハウもあります。患者さんが不安を抱く前に先手先手でその不安を取り除いてあげる。このこともとても大切だと思います。先取鎮痛というのがあります。痛みが出る前に先手先手で痛みを照っていくことで、治癒も早まるというものです。このことは患者さんの感じる不安にも通じるものがあると思います。
患者さんはいろんなことを私に教えてくださいます。そのことを大切にして、「目の前にいる患者さん一人一人をしっかり治していく。」ことで、今以上の診察、診断、そして治療の技術を高め、進化させていきたいと思います。
開業医として
開業して、勤務医時代と違うところは何かというテーマでの原稿を依頼されました。今回はいいきっかけかなあと思い、開業して勤務医時代とで大きく違ったところを考えたことをお話します。
京都に帰ってくる前は、大学病院の救命救急センターに勤務していました。医師、看護師、検査・レントゲン技師など様々な職種の人達と一緒に、そして密接に連携しながら、一つのチームとなって有機的に救急救命センターに搬送されてきた1人の患者の命を救っていく。人の生死の狭間でみんなの力を結集して戦っていく。そんな医療をしてきました。
そのような医療の中で、どうしても人の死ということを真摯に受け止めなければならず、そして、人の死から決して逃げることが出来ない、そんな立場にいました。とても大事な、そして、やりがいのある仕事でした。
そのような中、父が急に病気で倒れ、京都に帰ってくることになりました。父の後を継ぎ、肛門科を継承しました。肛門科という診療科上、人の死に直面することはなくなりました。ただ、麻酔をして患者さんの体にメスを入れるという医療行為は行わなければなりません。ある意味、患者さんの命に係わる行為は今でも行っていることは自覚しています。
でも救命救急センターにいたころの様に、人の死を診療で感じることは少なくなりました。しかし反対に、これから生きて行く中で、いかに快適に、生活の質を良くしていくかということを追求していくことになります。このこともとても大切なことで、やりがいのある仕事です。
また患者さんが治療の良し悪しを自覚することができる診療科です。病気もそうですし、手術や治療を行った後、必ず症状が出ます。痛いとか出血するとか、必ず患者さん自身が感じる症状がでます。治療の良し悪しがしっかり現れる診療科です。そういった意味でもやりがいのある仕事だと感じています。
さて、開業して勤務医時代との一番の違いは何かを考えてみました。おそらく一番の違いは、患者さんとの距離が勤務医時代と比べて、すごく近くなることではないかと思います。
大学病院での勤務医時代は、外来、病棟と役割分担があります。入院患者さんも病棟担当のグループに分けてチームでみる。外来から入院、そして手術。手術が終わって退院した後の外来通院。勤務医時代ではこの一連の経過を一貫して診ることはできませんでした。病棟にいたときは患者さんが入院して手術をして、そして退院までの期間での患者さんとのつながりです。
しかし、開業すると、ガラッとこの体制が変わります。外来にきた患者を診察し、診断し、自ら治療方針をたてる。手術が必要な場合は入院してもらい手術をする。このように、一人の患者さんを一貫して自分自身が診ていくことができます。このことは患者さんにとっても、とても安心感につながると思います。
また自分の理想とする医療のビジョンを持ちそれに向かって自らの力で進むことができます。そしてさらにそのために、勉強もし技術を高めていく。そういったことを通じて患者との関係、そして地域とのつながりを感じることができる。ここに勤務医時代とは違った喜びを見出すことができるのだと思います。
ただ開業するとやはり経営のこと、そしてスタッフの生活のこと、自分の家族のことを考えると、決して楽しいことばかりではありません。結構辛いことの方が多いかなぁって思います。でも、その大変さも勉強になり、そのことも楽しさの一つになるかなとも思います。
勤務医の頃、決して責任がなかったとは言いませんが、患者さんのこと、医療のことだけを考えていました。
開業すると、どうしても、患者さんや医療のことだけを見て、そして考えていけばいいとはなかなかいきません。患者さんや医療のことだけでなく、全てのことに責任を持たなければなりません。でも、この責任も楽しさの一つになるのかなあと思います。
また、先ほども描きましたが、自分自身がしっかりした、ビジョンを立て、自分がしたい事は何か、何を求めて開業したのかを持たなければなりませんし、それを実現していく過程が、とても大切で楽しいんだと思います。
どのような医療を提供していても、その意義をしっかり受け止め、常に今以上の医療を提供していくことを目指すことを、そのことを私達医師には求められ、そのことに私達の存在意義を感じ、生き甲斐としている。このことを決して忘れてはいけないのだと感じます。
「6月の献立」を紹介します。
5月が終わって6月になりました。ゴールデンウイーク、随分昔のことの様に思えます。私にとっては本当に長い5月でした。やっと5月が終わったといった感じです。
季節外れの暑さが続きましたが、ここ数日は暑さも少しましかなあと思います。そして、今度は梅雨の時期になりますね。
渡邉医院の中庭のツツジが今ほぼ満開です。いつも少し遅れて花が咲きます。今年は例年より花がたくさん咲いたように思えます。ようやくなじんできたのでしょうか?
通り庭の木々も青々と葉が茂っています。少し茂りすぎかな(笑)とも思います。
今出川通りから少し入っただけでとても静かで、通り庭の井戸から流れる水の音を聴きながら、今この記事を書いています。
さて、今回は6月のレシピを使った献立を紹介します。新じゃが肉じゃが、トマトのはさみ焼、ズッキーニの浅漬、モロヘイヤのお澄まし、ご飯、冬瓜のあんみつ(加賀太きゅうり)全6品での献立です。モロヘイヤのお澄ましのレシピを追加しますね。6月の献立は、1人分 約750kcal、たんぱく質 25g、食物繊維 13g です。
モロヘイヤのおすまし
(材料)
モロヘイヤ 1袋
めんつゆ
(作り方)
1. モロヘイヤは軸の硬いところを輪ゴムでとめ、茹でて、水に取る。
2. 葉先から細かく切る(軸が硬くなるまで)
3. めんつゆでおすましを作り2を一煮立ちする。
管理栄養士さんからの一言
モロヘイヤの栄養
「クレオパトラが食べていた」「エジプトの王様が病気の時にスープとして飲んだ」など
古くから栄養のある野菜として知られています。
食物繊維が多く粘りがあります。βカロテンはビタミンAとなり皮膚や粘膜に作用し美肌や
免疫力アップで風邪予防などの効果があります。他にも、ビタミンB2やカルシウム(ほうれん草の9倍)、
マグネシウム、カリウムも豊富に含まれています。
「新じゃが肉じゃが」のレシピを紹介します。
6月のレシピの最後は、「新じゃが肉じゃが」のレシピです。
今回のレシピは、純和風の肉じゃがです。ゴロっと新じゃがと、舞茸も入っていて美味しそうです。
後で管理栄養士さんの一言で紹介しますが、新じゃがは皮ごと食べることができて、皮の近くにいろんな栄養素が含まれているそうです。皮ごとっていいようです。サツマイモも皮と実の間に便の調子良くしてくれる成分があって、皮ごと食べるのがいいようです。みかんも皮をむいて、袋ごと、白いもろもろを取らずに食べると便秘にいいです。りんごも皮ごとがいいようですが、りんごは皮を剥いて食べたいなって思います。
肉じゃがは以前にも肉じゃがを使ってのカレーのレシピを紹介しました。肉じゃがとしてだけでなく、余った分をカレーにしたり食べることもできて、いろいろ使うことが出来ますよね。
今回紹介する「新じゃが肉じゃが」には舞茸も入っています。肉じゃがにキノコ類もきっとあいますね!
では、レシピを紹介しますね。
「新じゃが肉じゃが」
1人分 約320kcal、たんぱく質15g 食物繊維 5g
材料(2人分)
じゃがいも 3~6個
豚肉(こま切れ) 80g
*めんつゆ 小さじ2
*小麦粉 大さじ1
人参 5cm位
新玉ねぎ 1/2個
舞茸 1/2パック
サラダ油 大さじ1
しょうゆ 小さじ2
みりん 小さじ2
作り方
① 新じゃがはたわしなどでこすって洗い、皮ごと使う(大きけれは半分に切る)
② フライパンに①を皮のほうから焼き付ける。
③ 豚肉にめんつゆをもみ、小麦粉をまぶして、ひと口大にまとめる。
④ ②のフライパンの空いているところに③を並べて一緒に焼く。
⑤ 焼き目がつけば、人参、舞茸、新玉ねぎ、水、調味料を入れ煮からめる。
*最後に煮るので②④は焼き目がつけば中に火を通さなくていいです。
管理栄養士さんから一言
新じゃが
新じゃがは皮ごと食べられるので、皮の近くに多い栄養成分を効率よくとれます。
ビタミンB1、カリウム、ナイアシンなど、特にビタミンCは加熱にも強く、
保存期間が短いためほかの時期より含有量が多くなります。
「トマトのはさみ焼き・ズッキーニの浅漬け」のレシピを紹介します。
今回は、「トマトのはさみ焼き」と「ズッキーニの浅漬け」のレシピを紹介します。
前回はチリコンカンを紹介しました。メキシカン、アメリカンのレシピでした。今回はイタリアン?かなって思います。
トマトとチーズとなるとやっぱりイタリアンかな。ピザやパスタ、ラザニアなど、トマトとチーズがバッチリあいますよね。挟むのがうすあげ。こちらは和風。イタリアンと和風のコラボかなって思います。
浅漬けもキュウリでなくてズッキーニ。和風っぽいイタリアン?
うすあげと言えば、そのまま焼いて、生姜醤油でシンプルに食べるのも美味しいですよね。私も好きで、私としては白ご飯のおかずになります。お餅を挟んで焼いたり揚げたり、また、おでんにしてもいいですよね。
うすあげにチーズとトマト。なんとなく味は想像できますが、どんな感じになるのか試してみて下さいね。
ズッキーニの浅漬け。白ご飯にあうのかな。こちらも試してみて下さいね。どちらもお酒のつまみにもなりそうですね。どちらも厚い季節にもってこいだと思います。
ではレシピを紹介しますね。
「トマトのはさみ焼き」
1人分80kcal、たんぱく質4.3g
材料(2人分)
うす揚げ 1枚
トマト 1/2個
とろけるチーズ 1枚
青じそ
お好みでポン酢
作り方
① うすあげ長辺を片方切りとり、あげを押さえて箸を転がして袋状にする。
② トマトは1cm厚さの半月切りにする。
③ ①に②とチーズをはさみ、フライパンかオーブントースターで焼く。
④ 青じその千切りをのせ、好みでポン酢をかける。
「ズッキーニの浅漬け」
25kcal、食物繊維 2g
材料(作りやすい量)
ズッキーニ 1本
塩
りんご黒酢 ひたひた
作り方
ズッキーニを輪切りにし、塩もみしてりんご黒酢につける。
「チリコンカン」のレシピを紹介します。
今日は、「チリコンカン」のレシピを紹介します。
チリコンカンは日本語の別表記でチリコンカルネとか、チリコンカーンとも呼ばれるようです。
私はチリコンカルネと言っています。それは、昔、「マリアッチ」というメキシコ料理屋さんに時々家族と一緒にいっていました。その時、父がこのチリコンカルネがとても好きで、いつも必ず注文していました。
チリコンカルネと聞くと、父のことがフッと思い浮かびます。父がまだ健在だったころ、たくさんの父のファンの方々と一緒に、「マリアッチ」で父の誕生日会をしたことを思い出します。美味しいメキシコ料理を食べながら、生の演奏や歌があり、皆で歌ったり、マラカスやタンバリンなどでリズムをとったりして、とても楽しいひと時を過ごしました。また、みんなで楽しむ、そういった会ができればいいなと思います。
チリコンカルネはバケットと一緒に食べても美味しいですし、トルティーヤにはさんでタコスとして食べても美味しいです。ホットドッグの様にパンにはさんでもいいですよね。ちょっとピリ辛で夏の暑いときなんかは食が進みます。とろけるチーズなどを入れても美味しいですよね。やっぱり豆料理、美味しいですよね。
チリコンカンを少し調べてみました。チリコンカンの名称はスペイン語で「肉入り唐辛子」を意味するそうです。その起源ははっきりしないそうですが、肉を唐辛子、ハーブ、香辛料と煮込んだテハーノの料理が起源とか、カウボーイのぺミカンに似た保存食が起源とか言われているようです。そういえば、ウエスタンの映画で、カウボーイが食べているシーンがあったような。
さて、「チリコンカン」のレシピを紹介しますね!
「チリコンカン」
材料(作りやすい分量) 約1100kcal、たんぱく質 45g食物繊維 30g
ミックスビーンズ 200g
カットトマト 1缶
玉ねぎ 1個
人参 1本
セロリ 1本
ベーコン 100g
にんにく 1かけ
オリーブオイル 大さじ2
チリペッパー お好みで(入れると辛くなります)
チリパウダー お好みで
塩・胡椒 少々
作り方
① にんにくをみじん切りにし鍋にオリーブオイルと入れ火にかけて香りを出す。
② ベーコンを1cm角に、野菜はみじん切りにして①に入れ炒める。
③ すべての材料を入れ煮る。
④ 調味料で味を整える。
管理栄養士さんから一言
「ミックスビーンズ」
豆は食物繊維が豊富で大豆はたんぱく質、いんげん系は炭水化物が豊富です。
また、それぞれの豆にアントシアニン、鉄、銅、カルシウム、カリウム、ビタミンB群、
葉酸なども豊富に含まれています。
煮ることで水溶性の成分も逃がさず摂れるので常備菜にしておくと便利です。
「冬瓜(加賀太きゅうり)のあんみつ」のレシピを紹介します。
6月のレシピの第一弾は「冬瓜(加賀太きゅうり)のあんみつ」のレシピを紹介します。
管理栄養士さんから、「6月のレシピは、これから暑くなったり、梅雨で食欲も落ちやすい時期なので、ちょっと辛味のあるものや、つくりおきのできるもの、するっと食べやすいものを旬の野菜と合わせてみました。」とのことでした。是非作ってみて下さい。
5月のゴールデンウイーク、10連休。あっという間に5月は過ぎてしまうのかなと思っていましたが、6月までもう1週間あります。10連休も随分前のような印象で、なかなか5月が終わらないって感じです。皆さんはどうでしょうか?急に暑くもなって、梅雨を飛び越えていきなり夏!って感じですね。皆さん疲れは出ていませんか?
私はバタバタ忙しかったり、なんとなく疲れたときに甘いものが欲しくなります。チョコレート好きの私は、コンビニでお徳用の直レートを買って、仕事の合間やチョット一休みしているときに食べています。一度食べ始めると、やめられなくなってしまうこともあり、「食べ過ぎてしまった!」と反省することもあります。
そんなチョコレート好きな私がもう一つ好きなのが、あんこです。アンパン、最中、どら焼き。白玉に小豆をのせたのとか、あんこも好きです。疲れたときに甘いものを食べると、スッと力が湧いてきて、元気になった気がします。
6月は4つのレシピと6月の献立を紹介する予定ですが、その中で今一番食べたいのが今日紹介する「冬瓜(加賀太きゅうり)のあんみつ」です。5月の後半、暑さもあって、ちょっと疲れているのかな?甘いものを摂って、あすから頑張ろうと思います。
では、「冬瓜(加賀太きゅうり)のあんみつ」のレシピを紹介しますね。
「冬瓜(加賀太きゅうり)のあんみつ」
材料(2人分)
1人分 約100kcal、食物繊維 2.5g
冬瓜(正味) 100g 今回は加賀太きゅうりを使用
*砂糖 大さじ2
*水 大さじ2
あんみつ 1人分
作り方
① 冬瓜(加賀太きゅうり)は1.5cm角に切り、やわらかくゆでる。
② 砂糖と水を混ぜ①をつけて冷やしておく。
③ ②の汁を切り、市販のみつ豆セットと合わせる。
管理栄養士さんから一言
冬瓜
冬瓜は95%が水分で低カロリー、カリウムとビタミンCを豊富に含みます。だしで煮たり、あんかけすることが多いです。
加賀太きゅうり
加賀伝統野菜のひとつで直径が6~7cmにもなり重さも500g以上もあります。肉厚で、漬物、煮物、炒め物、揚げ物などいろいろな調理法が楽しめます。