今、コロナ禍で命の選別はされていないか?

私には88歳になる母がいます。認知症もかなり進んでいます。3回目の新型コロナウイルスワクチン接種も終わりましたが、やはり今一番気になるのが母の感染です。感染をしたとしても重症化しないか、必要あればすぐに入院できるだろうか。認知症であっても、感染した際の苦しさ、不安は誰も同じだと思います。どんな状況になっていても、全ての人がみんな変わることなく必要な医療を直ぐに受けたいと思うはずです。
災害時にトリアージが必要となることがあります。限られた医療材料、治療薬の中で、治療の優先順位を考えなければならないことがあります。しかし、トリアージが必用なのは、災害の場合は一度に多くの重症者に対応しなければならない状況に置かれるからです。
それに対して、新型コロナウイルス感染症の場合は、感染して療養中に症状が悪化、重症化していきます。しかも重症化リスクはわかっています。早期に医療につなげ治療することで、死亡者をなくすことができるのではないかと思います。
今、京都府内に2万人超の自宅療養者がいらっしゃいます。また、特別養護老人ホームなど医療体制が十分でない施設で療養している方もいらっしゃいます。
60 歳以上で基礎疾患のある方の場合は死亡率が12.8%にも及びます。第6波では全死亡者のうち 70 歳以上の死亡者が 90%を超えました。第5波の時より20%以上回っています。しかし今、病床逼迫の中にあって、高齢者の方に十分な医療が提供されているだろうかと思います。
私たちは今一度、できていないことはなにか?何をすれば死亡者0にできるかを考えて、命の選別をしない医療体制を確立しなければならないと思います。
このように、今コロナ禍で、命の選別が行われていないか、とても心配になります。そこで次のような要請を京都府、京都市に行いました。
高齢・高リスク者の入所先への放置を解消し必要な医療を保障すること
現在、京都府内には 20,000 人を超える自宅療養者がおり、中には特別養護老人ホー ムをはじめとして医療体制が十分でない施設に入所する方も多数存在している。 高齢者であることは「独立した重症化リスク因子」であり、60 歳以上で基礎疾患のある場合は死亡率が 12.8%にも及ぶ。第6波では全死亡者のうち70 歳以上の死亡者が90%を超えており、第5波のそれを20%以上回っている。したがって、中等症以上の高齢者の場合には入院治療が必要である。しかし、今日の病床ひっ迫によって、こうした高齢者施設入所者が救急搬送を依頼しても搬入先が見つからず施設に帰らざるを得ない事例が発生している。さらに、施設の現場からは、酸素マスクを装着しても SpO2 が 91%までしか上がらず食事が摂れない、 保健所の対応が間に合わず往診の依頼に対応されない、連絡があった時にはすでに亡 くなられていた、など悲痛な声が寄せられている。
オミクロン株による急速な感染拡大によって 、府の入院医療コントロールセンターや各保健所の機能が困難な状況にあることは理解できる。しかし、入院待機センターの活用状況、介護施設の感染状況の把握など、改善できることは少なくない。何よりも3回目のワクチン接種率のスピードを大幅に引き上げることが必要である。
生命を守る砦である地方自治体として、医療や介護の現場からの声をしっかり聴くなどして現状把握に努め、対策を一層強化するよう最善を尽くしていただきたい。
一両日中に対策をとることを強く求めるものである。
〈緊急要請項目〉
- 1.高齢者施設において、在宅酸素濃縮器等、必要な医療資機材を用意し、重症化防止のため抗ウイルス薬や中和抗体役が時機を失せず使用できる条件を整えること。
施設の配置医師だけでなく、訪問診療実施医療機関の協力も得てこれらの措置が スムースに取れるようにすること
2. 高齢者施設において入所者が感染した場合に、外来や入院について相談ができる専用の窓口を入院医療コントロールセンターに設置すること
3. 島津アリーナに設置した入院待機ステーションの稼働状況を公表し、フル稼働する
収容可能数を増やす、医療スタッフを確保する等、体制を強化すること
4. 宿泊療養施設の医療機能を強化し、ハイリスク患者を受け入れ可能とすること
5. 高齢者、ハイリスク者などの 3 回目ワクチン接種を加速すること
以 上
「今後の渡邉医院の展望は?」と取材をうけて。

3月になって、少し寒さが和らいできたなあと思います。今日は一日天気はあまり良くなかったようですが、外に出ると、今までの寒さとは違った空気がそこにはありました。ようやく春の気配がでてきました。
さて、今日は、以前取材を受けた方に再度取材を受けることになりました。その時の内容や私の想いをお話しします。
まず、その方の質問は、「以前先生にお話を聞いた時には、目の前にいる患者さんを一人一人しっかり治していくことがモットーだと伺いましたが、今はどうですか?」と言うものでした。今もそのモットーは大切にしています。私の父が、私が京都に帰って来たばかりに私に話してくれたことです。この基本は今も全く揺るぐことなく実現していきたいと思っています。そのうえでさらに何か?
今、私はFacebookやTwitter、そして最近YouTubeにも肛門の病気のことなどを利用して発信しています。
肛門科の敷居は昔と比べて随分敷居は低くなってきていると思います。でもまだまだ、気楽に受診することができる診療科ではないのかなあと思います。
やはり、なかなか肛門の病気を誰に、そしてどこに相談していいのかわからない。また、身近な人にも肛門の病気に関して相談するのはちょっと・・・という方がまだまだ多いと思います。そんな時、自分の病気のことなどが知りたくて、インターネットなどで検索する方が多いと思います。そんな時に、怖い話が目に飛び込んでくる。このことでますます不安になり、心配になってきます。また実際、正しい情報だけがネット上に示されているわけではありません。自分で選択して情報を得なければなりません。このことはとても大変な作業です。
また、医療機関のホームページを検索しても、肛門の病気のことや治療のことは書いてありますが、一般的なことだけが掲載されていることが多いことがあります。自分が本当に知りたいことが載っていないということも多いと思います。
そこで、正しい情報や、患者さんが心配になったり、不安に感じると思うことをこれまでの私の経験をもとに解説したり、患者さんからの質問に関して詳しく解説したものをブログにあげたりしていました。最近は、動画での解説もわかりやすいかなあと思いYouTubeにも動画をアップするようになりました。
また、誰に相談したらいいのかわからない患者さんが気軽に相談できるように、Twitterでの相談もおこなっています。 Twitterの相談のきっかけは、当初はコロナ禍にあってなかなか医療機関に受診できない方が気軽に相談できるようになればいいなあと思ったことから始めました。今では時々相談が入ってきます。内容は、一人でとても悩んでおられるんだろうなあという相談が多いです。
少し長くなりましたが、目の前にいる患者さんはもちろんですが、肛門の病気で悩んでいる方が、肛門科を受診するきっかけになればいいなあという思いがあります。ですから、目の前にいる患者さんだけでなく、その後ろで悩んでいる方へも、何らかのアプローチができ、「治そう!」と思ってもらえるようになりたいと思っています。
もう一つの質問に「今後の渡邉医院の展望は?」がありました。なかなか難しい質問ですが、大きな展望としては「肛門科専門の有床診療所、専門であることの責任を果していかなければならない。」ということです。
今コロナ禍において、私自身が感染する可能性や濃厚接触者になる可能性があります。そんな時に入院している患者さん、手術を受けたばかりの患者さん、そしてこれから手術を予定されている患者さんにどう対応するかです。
やはり一人医師の診療所、何かあった時の連携がとても大切だと思います。京都市内や近隣の市町村の肛門科の先生方と、連携を取り患者さんに対応していかなければならないと思います。また、それぞれの医療機関との交流を行い、肛門疾患に関してのさらなる診断、治療の技術を互いに高めていく必要があります。そういったことができればと思います。
また、在宅で療養されている患者さんで、肛門の具合が悪くてもなかなか医療機関に受診できない患者さんも多くいらっしゃると思います。そういった患者さんに対して、在宅での診察、治療ができればいいなあとも思っています。今、一人で診療している中、なかなか難しいかなあと思いますが、一つの展望です。
これ以外にもいろんなお話を取材の方とお話ししました。結論はまだまだこれから私自身、そして渡邉医院のやらなければならないことが、まだまだ沢山あるなあと感じた取材でした。
ロシアのウクライナ侵攻に抗議する

【談 話】
ロシアのウクライナ侵攻に抗議する
プーチン大統領は何故ウクライナに対して侵略戦争を開始したのか。
ウクライナに居住するロシア人保護を理由とした今回の侵攻は、1939年にヒトラーがドイツ人保護という名のもと行ったポーランド侵略に酷似している。
ロシア軍によるウクライナ侵攻は、独立国家の主権と領土に対する明白な侵略であり、国連憲章と国際法を踏みにじる暴挙である。
自分自身の保身のためだけなのか、大義名分もなく行ったこの犯罪行為は、世界の人々が願う平和な世界に対する重大な挑戦である。
さらに、プーチン大統領はこの侵略戦争開始の際に、ロシアが核兵器を持つ大国であることを誇示し、「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つだ」「最新兵器でも優位性がある」「我が国が攻撃すれば、壊滅し悲惨な結果になることは疑いない」などと、核兵器による世界への威嚇を行っている。
核兵器は、広島・長崎の悲惨な経験が示すように、大量破壊と非人道的な結末しかもたらさない。核兵器禁止条約が発効して1年。世界の人々は核兵器廃絶に向けて進んでいる中、それに逆行する行為である。
コロナ禍において、全ての人々が新型コロナウィルスと戦っている中、ロシアは多くの人命が犠牲となる軍事行動をただちに中止し、ウクライナから軍隊を撤退するよう強く求める。
また、日本を始め全世界各国の長たるものは、自国民のみならずウクライナに住むすべての住民の命を守るために毅然とした態度をロシアに示すべきである。
そして私たち医師は、人々の生命と健康を守る立場から、あらゆる戦争に反対し、地域から声をあげていきたい。
2022年3月1日
渡邉医院 渡邉賢治
62歳になって。

2月19日で私は62歳になりました。本当に1年1年が早く進んでいきます。ついに還暦が来た!と思ってもう2年が経つ。信じられない速さです。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まって、2年。私の60歳代の始まりは、新型コロナウイルスの感染拡大に始まりました。絶対に忘れないタイミングですね。
この忘れられないタイミングは父の死も同じです。
ちょうど今頃2月の後半でしょうか?父が、「今年も桜が見たいな。楽しみだ!」と言っていました。そんな中、桜の咲く前の3月8日に突然逝ってしまいました。母と二人で楽しく夕食を摂り、母と父の愛車ローバーミニを駐車場に止め、母が先に家の鍵を開けに行きました。その後、いくら待っても帰ってこないので、ほんの数分のところなのに。気になって勝手口を開けると、すぐ目の前の道端で父は倒れていました。
近くにいた方が救急車を呼んでくださったのですが、救急車が到着した時にはすでに心肺停止の状態。病院に運ばれ、蘇生を試みていただいたのですが、死亡が確認されました。
母から連絡があって病院に私が駆け付けると、母は茫然として私に発した言葉は、「元治さん、死んじゃったの。」でした。その時の母の姿は今でも覚えています。忘れることはできません。
お葬式が終わり、しばらくすると桜。ちょうど今年と同じように京都府知事選挙の年でした。毎年春が来て桜が咲くときには亡くなった父とその時の母の姿を思い浮かべます。
母も、「元治さんもずるいわよね。桜の時期、必ず元治さんのことを思い出すはよね。」と。
母は、認知症も進み、今年の桜を見るときに何を想うのだろうかと思います。もう後一ヶ月ほどたつと桜の花が咲くころ。今年はどう過ごそうかと思います。
この2年間、新型コロナの感染拡大で、桜の花見にも行けていません。新型コロナウイルスの感染拡大、人々の生活を脅かし、暮らしを奪うだけでなく、人々の想い出もゆっくり楽しませてくれません。早く収束して欲しいと思います。
何かちょっと変な方向に進んでしまいました。62歳になったことへの想いを書こうかなあと思ってたのに。
1年1年、自分としては何も変わっていないような気がします。毎日毎日同じことの繰り返し。でもその中にきっと大切なものが繰り込まれているのだろうなあと思います。
毎日毎日を悔いの無いように生きろと良く言われますが、なかなかそうはいきません。何も考えずにぼーっとした一日もあります。でもそれでいいのかなあと思います。無理せず、できることをしっかりやっていく。その中に新しいものが生まれ、そのことで自分自身も進化していくのかなあと思います。ふと気が付いて、これまでの自分の歩みを振り返ってみた時に、自分が大きく成長し、素晴らしい人間になってきていたことに気づく。そんな感じでこの1年間過ごしていきたいと思います。
「今できること、できないこと」を明確に府民へ届けて!

新型コロナウイルス感染拡大が続き、今第6波の渦中で私たちは不安を抱きながら、日々の生活を送っています。
この土曜日、日曜日は新規感染者の方は2000人を下回っていますが、連日2000人を超す新規感染者がいらっしゃいます。第6波の中、京都府へ要請を出しました。その一番の要請は、今京都府として「何ができないのか、そして何ができるのか。」の明確なメッセージを府民に伝えて欲しいというものです。そのうえで私たち府民は何をしなければならないのかを示して欲しいというものです。この要請の内容に関しては、すでにブログにアップしています。良ければそちらもご覧ください。
そういった中、今回の京都府の要請に関して、取材がありました。その内容を紹介したいと思います。
以下、取材記事の内容です。
新型コロナによる第6波の感染急拡大が続くもと、京都府保険医協会は1月31日、西脇京都府知事に宛てに要請書を提出しました。なぜ、要請書提出となったのか、府民の命を守るために何が必要か、協会副理事長の渡邉賢治さんに聞きました。
ーーなぜ、いまこの時期に要請書提出となったのでしょうー-
オミクロン株による伝播力は強大で、いままでにない状況になっていることです。感染症に対応するすべての機関や専門職のみなさんが、必死になって対策にあたっています。それでも、第5波までに積み上げてきた仕組みでは、対応できない状況に陥っています。
コロナ病床の使用率は5割を超え、コロナ病床だけでなくコロナ以外の疾患の患者さんの受け入れも難しくなっています。自宅療養者の増加で外来を担う医療機関もすでにひっ迫しつつあります。
保健所も大変な事態です。濃厚接触者特定も事業者に委ねられ、家庭内感染でも困難になってきています。
感染症対策の原則は、感染の早期発見と治療です。しかし、迅速な保健所介入がなくその原則が崩され、できなくなっています。多くの府民はどう対応したしたらいいか不安にかかられ、保健所に問い合わせしようにも電話もつながらない。検査キットも不足し検査もできない状態も生まれています。
いまの混乱した事態を解消することが、行政には緊急に求められていす。それを明らかにするための申し入れでした。
ーー申し入れの中心は何だったのでしょう?ー-
自治体首長からの明確なメッセージの発信を求めたことです。各地の保健所・医療機関の状況をリアルに伝え、行政として「できること・できなくなっていること」を明確に説明する。その上で、専門家の助言も受けながら、住民が生命・健康を守るために「今どうしたらよいか」を判断できる強いメッセージを発することです。
自治体首長の責任ある発信なしに、混乱を収めることはできないと考えています。
ーー混乱を引き起こした背景、要因は何でしょう?--
大きな背景の一つには、政府が、「構造改革」、新自由主義のもとで20年来、病床を削減してきたことがあるでしょう。しかも政府は、コロナ禍のもとでも、公的病院の統合や病床削減計画を中止しするとはしていません。公衆衛生の要の保健所の統合、集約化を進めてきたことも大きいと思います。
京都府、京都市は、国の方針に従い、それぞれ保健所を統廃合してきました。府域では12カ所あったのが7カ所に、京都市では11の全行政区にあったのが1カ所に集約化されました。このことが今回の対応に何ら影響がなかったはずがありません。
ーーそもそも論と併せ、少なくとも第6波に備えて行政がやるべきことがあったのではないでしょうか?ー-
そうです。私たち京都府保険医協会では、第5波が一定収まった昨年9月17日、府に要請書を提出しました。そこでは、ワクチン接種の確保や自宅療養中の患者への診療を行う支援の強化などを要請しました。
その中で、第5波の際、今後の学校などでの子どもたちの感染拡大を危惧し、対策の強化を求めたことは大事なことでした。学校や保育所などで必要な検査ができる体制や日常的な感染対策とともに、休校、施設・学級閉鎖の判断が個々の学校・施設や各自治体の担当課任せにならないよう、専門家の知見も踏まえ、適切な助言・支援を可能とする体系的な仕組みを構築することを求めていました。こうした対策がしっかりできていれば、今の学校や保育所などでの現場の苦労は、もう少し回避できたのではないでしょうか。
さらに、要請では、保健所の危機的状況を克服するため、地域住民の生命を守る体制を再構築するよう求めました。
しかし、残念ながらこうしたことが、十分に対応されてはきませんでした。特に、保健所の問題では、西脇知事も門川京都市長も、保健所の統合・集約化が新型コロナ対策に与えた影響に対し、真摯に向き合っているようには思えません。
この姿勢を改め、現状を正しく把握することなしに、とりわけ保健所のひっ迫の緩和は望めないと考えます。
以上が取材の内容です。
私たちは、基本的な感染対策を行いながら、さらに何をしなければならないのかを考えていかなければなりません。そのためにも京都府を始め国は、明確な強いメッセージを私たちに発信しなければならないと思います。