患者さんにとって辛い術後出血

今回は術後の出血に関してお話します。
手術をする際にどうしても避けて通れないのが術後の出血です。術後の出血があった場合はどうしてももう一度麻酔をして止血処置をしなければなりません。
簡単に止血できる場合もあれば、出血している場所によっては止血処置が難渋する場合もあります。でも、肛門の手術を行うにあたって、術後の出血は起きることがあり、それに対して十分に対応できるようにしておかなければなりません。
術後の出血は患者さんだけでなく、私のとっても辛いことです。できればあって欲しくない。でも起きたときにはしっかりと対処しなければならない。そんな思いが常に手術をしているときにはあります。
患者さんにとって、術後の出血に対して止血処置をすることはとても辛いことだと思います。
例えばこれまで悩んできた肛門の病気をしっかり治そうするときは、「今回の手術で内痔核をしっかり治してしまおう!」「治すからには麻酔や手術は頑張ろう!」「手術をしたらスッキリ治るんだ!」などの思いを胸に、手術して治すということに納得して、決心して麻酔や手術を受けられます。このように覚悟の上での手術です。ですから手術が頑張れるのだと思います。
その覚悟に対して私たちも、痛みが少ない、そして術後の出血などがない手術をしっかり行わなければならないと思っています。
でも術後の出血はどうでしょう。患者さんには術後の出血があって止血処置をしなければならないことがあることや、痛みもそうですが、出血が一番困ることであることはお話します。でも術後の出血に対して止血処置をするところまで決心して覚悟している患者さんはいないと思います。ですから痔核根治術など、最初の手術は決心の上での手術。でも術後の出血に対しての止血処置は思ってもいなかったことになってしまうと思います。そうすると、自分の決心のなかになかったことをもう一度しなければならないことになります。
このことはとても辛いことです。「手術が終わったのに、もう一度手術!」「また麻酔をしなければならないの!」「また痛いことをしなければならないの?」「出血は治まるの?」など一気に不安が押し寄せてくると思います。
そういった時には冷静に、どこから出血しているのか、出血の具合はどうなのか、どうして出血したのか、止血処置が必要なのか、どうやって止血するのか、止血にかかる時間はどの程度か、また今回止血処置をしたら次に出血することはないのか、など患者さんにしっかりとお話することが大切だと思っています。
さて、このように出血に対してどのようにしているかです。
まずは手術が終わって1時間後に傷の具合を診ます。出血していないかどうか。また痛みの具合はどうかを診ます。1時間後に出血していなくても次は術後3時間後に傷の具合を診ます。止血処置をした後は処置後1時間後にもう一度傷の具合を診ます。そして、術後3時間後に診察をして出血がなければまずはその後の出血はありません。特に痔瘻や裂肛の手術の場合は手術の際に動脈を縛る部分がないので、動脈を縛ったところからの痔核根治術のような晩期出血はありません。内痔核の場合は、この動脈を縛ったところから術後7~10日後に1%ですが晩期出血が起きることがあります。このことを術後しっかりと術後の傷を診ながら患者さんにお話していくことが大事だと思います。
術後の出血は起きて欲しくありません。でもどうしても避けては通れないことです。出血があった場合しっかりそのことを患者さんに話、そしてしっかりと止血処置ができるようにいつも心がけていくことが大切だといつも思っています。
7月になって思うこと。

7月になりました。いよいよ下半期。上半期は、新型コロナウイルスの感染拡大で、大変な日々があっという間に過ぎていきました。
何があっても時は止まらず、私たちのことなどお構いなしで、どんどん進んでいきます。新型コロナウイルスの感染が拡大し、まだまだ収束が見えない中、時間だけは確実に、そして容赦なく過ぎていきます。自粛要塞などのなかで、仕事や生活が困難になっている中、なかなか支援策も届かない。支援策があってもどうしても時間がかかってします。そんな中、時間だけは進んでいきます。
時間が進むとで、同時に様々なお金が出ていきます。税金であったり、支払いであったり。また日々の生活に必要なお金だったり。必要な支出はどんどん出て行ってしまいます。少し時間が止まって、十分な支援が届くまで、少しは余裕ができるまで時間が止まって欲しいと思うのは私だけでしょうか?
新型コロナウイルスの感染拡大が収束したわけではありません。第一波がまだ治まらず引き続いているのか?ある程度落ち着いて第二波が始まろうとしているのか。なかなか判断が付きません。でも第一波の時に経験したことはしっかり検証して、給付や支援が速やかに行うことが出来なかった原因、自粛要請が正しかったのか?また新型コロナウイルス感染拡大に対しての医療提供体制がこれまでの政策方針でよかったのかなど速やかに考えていかなければ、第二波が訪れた時、また同じように後手後手になってしまうのではないかと思います。
また第一波の時は十分とは言えませんが、支援や給付金、補助金が支出されました。第二波、第三波が来た時に同じように財源を支出できるのか?できないのであれば、新型コロナウイルス感染拡大を抑えることと、経済活動を両立させるにはどうしたらいいのかを考えていかなければなりません。
全く未知の社会、生活に私たちは当面向き合っていかなければなりません。
今日の新聞で、新型コロナウイルス感染拡大によって3万人もの方が解雇されたという報道が掲載されていました。
私たちの生活をどう守るのか?解雇された方々をどう支援していくのか?また、学生さんたちの教育を受ける権利をどう守っていくのか?などなど検討し、早く解決しなければならないことが山積しています。
こういった時こそ、様々な人たちの意見を聞き、それを透明化して、より良い方向に進めていかなければならないのだと思います。
改めて、医療に関して新型コロナウイルス感染拡大後の問題点や改善しなければならないとは何かを私が思うところを紹介したいと思います。
私の母は認知症が進んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大で世の中大変なことになっているなど全くわかりません。でもいつも笑顔で私を見てくれています。このような状況のなか、母の笑顔を見ると、ホッとします。そしてとても癒されます。私たちが大切に思う人たちを守り、笑顔でい続けてもらえるように、今私たちにできることは何かをしっかり考え、迷うことなく、そしてぶれることなく進んでいかなければならないと思います。
診断が難しい外痔核

6月も終わり、明日から7月になります。新型コロナウイルスの感染拡大で、私たちは今までの経験したことのない生活を送ってきました。社会の在り方がガラッと変わってしまうような状況の中、早くも半年が過ぎました。
今年残された6か月、まだまだ私たちにとって予測がつかない日々が続くと思いますが、毎日の生活をしっかりと過ごしていきたいと思います。
今回は、診断しにくい外痔核に関してお話したいと思います。
外痔核と聞くと、直ぐに頭に浮かぶのは血栓性外痔核です。肛門の外側の静脈叢に血栓が詰まり、急に腫れて痛みが出る病気です。
血栓性外痔核の場合は、肛門の外側に血栓ができて、腫れて痛い状態で医療機関を受診されるので、一見しただけで直ぐに血栓性外痔核とわかります。また、肛門上皮に血栓が詰まって痛みが出ることもあります。この場合はパッと見ただけでは血栓性外痔核とはわかりません。でも肛門指診をすると、肛門内の肛門上皮に硬く血栓が詰まっているのを触知することが出来ます。また肛門鏡で観察することで、肛門の外側に血栓が詰まって居間くても診断は容易にできます。
血栓性外痔核の場合は血栓が詰まって腫れて痛いので、消炎鎮痛剤の座薬を使い腫れを取ると痛みは軽減されてきます。そして、詰まった血栓は時間がかかっても自然に溶けて体に吸収されて治っていきます。詰まった血栓が大きかったり、痛みが強い場合は、血栓を摘出することで痛みはスッと楽になります。でも血栓性外痔核は基本的には手術をしなくても痛みをとることで自然に治っていきます。
ただ、外痔核にはこのように血栓が詰まって腫れて痛い外痔核だけではありません。
肛門の外側の静脈叢が、排便の時などにグッと力を入れて力んだ時に、静脈瘤の様に腫れてくることがあります。この場合は血栓性外痔核と違って血栓が詰まっていないので、視診や肛門鏡での観察、そして触診では外痔核がわからないことが多いです。
患者さんの訴えとしては、「排便時に何か出てきて押し込んでいます。腫れていると痛みがあります。」という症状です。そして出血はなく、腫れて出てくるという症状です。
これだけを聞くと一見、内痔核があって排便時に内痔核が脱出してきて、その内痔核を押し込んでいるんだろうと考えます。でも肛門鏡で肛門内を観察しても明らかな内痔核の腫脹は認めません。
渡邉医院では、初診の患者さんは微温湯による浣腸をしてトイレでその入れた微温を出してきてもらい、グッと頑張った後の肛門の腫れ具合、内痔核の腫れ具合などを診るようにしています。
でも微温湯の浣腸でも内痔核の腫脹はなく、出ても来ないことがあります。こういった場合は、まず軟膏を使って様子を診てもらいます。それでも患者さんの症状が改善されないときは、もう一度浣腸をして頑張った後の肛門の具合を見せてもらいます。そうすると、1回では診断できなかった肛門の外側の静脈叢が腫れてくる静脈瘤性の外痔核を認め、診断がつくことがあります。
血栓が詰まったわけではないので、ただただ視診、触診、肛門鏡での観察では診断がつきません。また外痔核ですが、指で押し込むと鬱血して腫れた外痔核がへこんで治まります。患者さんの訴える症状だけでは内痔核の症状ですが、本当の病名は静脈瘤としての外痔核です。なかなか診断が難しいです。
こういった排便時などに頑張った時に、静脈瘤としての外痔核が出来る場合は、スッキリ治すには腫れてくる外痔核部分を切除する必要があります。内痔核の手術と違って、外側の静脈瘤の切除ですので、術後の痛みは内痔核の手術より楽です。また内痔核の様に根部の動脈を結紮することはないので、入院ではなく、外来での手術が可能です。
一端、静脈瘤としての外痔核だと診断がつくと、後の治療は決まりスッキリ治すことが出来ます。
このように内痔核と違って、外痔核は血栓性外痔核以外に静脈瘤としての外痔核があり、この場合診断が難しいことがあります。患者さんが「排便時に出てきて押し込んでいる。」という症状を訴えていても、明らかな内痔核の腫脹がない場合、患者さんの訴えと自分が診察した際の内痔核の状態とが一致しない場合は、静脈瘤としての外痔核がないかどうかをもう一度診察する必要があると思います。
新型コロナウイルスの影響で学会等が中止延期に

もうすぐ6月も終わり7月。いよいよ夏本番に入っていきますね。
新型コロナウイルスの感染拡大。少しは落ち着いてきたのかなあと思いますが、まだまだ東京などでは感染者が出ています。日ごろの手洗いやうがいなど、基本的な感染予防対策はしっかり行っていかなければならないと思います。
さて、この新型コロナウイルスの感染拡大の影響で様々な学会や研究会が中止になっています。私たちが関係する肛門科の研究会も同様に中止せざるを得ない状況になっています。
6月においても、年3回大阪で開催されている近畿肛門疾患懇談会が6月13日に予定されていましたが中止。また、今日6月28日は本来なら、東京の御茶ノ水にあるソラシティで第14回内痔核治療法研究会総会が開催が予定されていましたが、これも中止になっています。11月に開催される日本大腸肛門病学会総会は今のところ開催予定になっていますが、今後の新型コロナウイルス感染の状況によっては中止が余儀なくなる可能性もあります。
このように私たち肛門科医にとって、情報を収集する大切な学会、研究会が中止になっています。日々新しい治療法に関しての情報や今まで行ってきた治療について、多くの医師が集まり検討する機会がなくなってしまうのはとても残念です。早く新型コロナウイルスの感染拡大が収束して、肛門科の医師が熱く議論する場所が戻てくることを願うばかりです。
さて、本来今日は第14回内痔核治療法研究会総会が開催されていて、そこで私は発表する予定でした。そして、総会の後は東京で仕事をしている息子や娘に久しぶりに会って、食事をしながら親子、そして仲間として楽しい、そして有意義な話をする予定でした。これも中止。寂しい気持ちです。
さて今回の総会のテーマは、ALTA療法(単独療法、併用療法)を施行する際のインフォームドコンセントとし、
- 1)ALTA療法選択のインフォームドコンセント(適応、手技、成績など)
ALTA療法をどのように説明して行っているか?
- 2)ALTA療法有害事象のインフォームドコンセント
ALTA療法の周術期に生じる有害事象をどのように説明しているか?
この2つの主題で検討する予定でした。
私はこの2番目のALTA療法有害事象のインフォームドコンセントでの発表の予定でした。
今回はその発表に関しての抄録を紹介します。これまでもブログの方で、ALTA療法に関してその注射手技や成績、そして有害事象などお話してきました。詳しい内容はそちらの方を参考にして下さいね。
では、抄録を紹介します。
演題名:ALTA療法有害事象に対してのインフォームドコンセントの内容とそのタイミング
抄録
ALTA療法の出現までは、第Ⅲ度以上の内痔核に対して切除という方法で治療を行ってきた。したがって、患者に外科的侵襲を加え傷ができることによる排便時の出血や痛みのなどの苦痛はどうしても取り除くことが出来ない。そのため、いかに出血しないように、また術後の痛みを最小限にするか工夫がなされてきた。ALTA療法の出現で、内痔核の治療は一変した。ALTA療法は、適応をしっかりと見極め、四段階注射法という注射手技をマスターすることで比較的簡便で、しかも治療効果を得ることができる。そしてALTA療法の一番のメリットは患者が痛みを感じることなく治療できることにある。そのため、渡邉医院ではALTA単独療法を基本に治療を勧めている。さて、ALTA療法は低侵襲の治療方法だと言われている。しかし、ALTAを局注した部分では激しい反応がおきており、患者が痛みを感じないということでALTA療法が低侵襲の治療法と言っていいのかは疑問である。ALTA療法によって脱出や出血が早期に取り除かれ、患者のQOLは比較的早期に改善される。そして早期に社会復帰できる。しかしこのことが、ALTA療法を施行する医師、また受ける患者もALTA療法を安易に考える危険性がある。ALTA療法に伴う局所での反応は激しく、それによる有害事象が発生する可能性もある。このことをしっかりと患者に説明して同意してもらうことが必要である。渡邉医院ではALTA単独療法で血圧低下や徐脈の発生頻度は約1%、熱発の発生頻度は約4%である。また症状が無くても潰瘍形成など発生することもある。こういった有害事象をどの時点でどの範囲まで患者に説明するかは難しい問題である。一時に全てのことを患者に説明しても、患者がそのことを完全に理解することは望めない。必要な時に必要な説明をしていく。また患者が不安に思うであろう症状を先手先手で説明していくことが必要と考える。渡邉医院でのALTA療法やそれに伴う有害事象の患者への説明時期とその内容を報告する。
このような内容での発表予定でした。
やはり私たち医師は学会や研究会、また、論文等によってこれまで行ってきた治療法が正しいのか。また新しい工夫をしたがそれが適切なものなのか等、様々な多くの医師によって熱い議論をして検討して、スタンダードな治療方法にしていかなければなりません。独りよがりの診察、治療はとても危険です。こういった機会をフルに利用して自分を研鑽していかなければなりません。早く何の心配もなく持て、多くの医師が熱く語る機会が持てるように新型コロナウイルスの感染拡大が収束することを願います。
肛門ポリープって?

今、渡邉医院ではTwitterで肛門の病気に関しての不安なことや心配なことに対して相談を受けています。やはり、肛門周囲膿瘍であったり血栓性外痔核などの痛みに関しての相談が多いです。
その中で、肛門ポリープについて相談がありました。今回は肛門ポリープに関してお話したいと思います。
肛門ポリープの原因
裂肛が原因の肛門ポリープ
肛門ポリープの原因にはいくつかあります。まずは裂肛が原因での肛門ポリープです。
裂肛は便秘など排便時に肛門上皮に傷がつく病気です。排便時に切れたり治ったりすることで、裂肛の外側に皮垂が出来ることがあります。これと同じ様に裂肛の奥に肛門ポリープが出来てくることがあります。傷がつき炎症を起こすことでポリープが出来てきます。そしてこの肛門ポリープが排便時に肛門の外に出たり入ったりすることで裂肛が悪化したり、また肛門ポリープが大きくなってくることがあります。時々この肛門ポリープが出てきているのを内痔核が出てきていると勘違いする方もいます。
裂肛が原因で肛門ポリープが出来てくると裂肛そのものも慢性裂肛になっていきます。排便時の痛みが強くなってきたり、排便時だけでなく排便後の痛みが持続するようになっていきます。このようになると裂肛の根治術が必要で、裂肛の手術をする時に肛門ポリープも一緒に切除します。
また中には排便の状態が改善され、裂肛は治ったものの肛門ポリープだけが残り、この肛門ポリープが排便時に痛みはないものの肛門の外に出てきてしまうこともあります。この場合は裂肛の手術は行わずに、肛門ポリープだけを切除することがあります。
でもいずれの場合も肛門ポリープは軟膏や座薬で小さくなって治っていくものではありませんので、切除が必要になります。
肛門乳頭の肥大化
もう一つの肛門ポリープのできる原因は肛門乳頭の肥大化です。肛門と直腸の間に歯状線があります。この部分は火だ状になっており、そこに肛門乳頭があります。これが排便によって擦れたりして、炎症を起こして肛門乳頭が肥大化してきて肛門ポリープになることがあります。この場合は肛門ポリープが大きくなってくると排便時に肛門の外に出てくるようになります。この場合は裂肛による肛門ポリープではないので、排便時の痛みはありません。
でも排便時に肛門ポリープが肛門の外に出てくるとやはり痛みがなくても不快な症状になります。軟膏や座薬では小さくならないので、この場合も切除が必要です。
でもいずれの原因でできた肛門ポリープも炎症によってできて、大きくなってきたポリープですので悪性に変化していくことは有りません。排便時に肛門の外に出てきた李、挟まったような感じがあって、スッキリ治してしまおうと思った場合に切除したらいいと思います。ただ裂肛のが原因の場合は、排便時の痛みがあったり、場合によっては排便後の痛みが持続したりする症状が出てきます。この場合は裂肛そのものに対しての裂肛根治術が必要になります。その際に肛門ポリープが出たり入ったりすることで裂肛の治りを悪くするため、裂肛根治術の場合はこの肛門ポリープも一緒に切除します。
肛門ポリープの切除
肛門ポリープのみ切除の場合、渡邉医院では局所麻酔で行います。
肛門ポリープの根部に局所麻酔をして、肛門ポリープの根元を糸で縛って出血しないようにして切除します。肛門ポリープに切除だけでは入院になりません。術後1時間程度病室で安静に休んでもらい出血がないこと、肛門の腫れがないこと、そして完全に麻酔がきれた状態で帰宅してもらっています。
肛門ポリープの根元を縛って切除するだけなので、術後の痛みはほとんどないと言っていいです。また肛門ポリープを切除するだけなので、排便時の痛みもほとんどありません。術後1週間程度たって受診してもらい、痛みもなく、出血もなく具合が良ければ治療は終了となります。
このように肛門ポリープの多くは炎症によってできる炎症性のポリープで悪性化はしません。でも排便時に肛門の外にでてくる肛門ポリープは、軟膏や座薬では治っていかないので手術は必要になります。
肛門ポリープかなあと思った時は相談してみてくださいね。
皮垂(スキンタグ)切除後の皮垂

前回は、肛門の手術を行った後の皮垂(スキンタグ)に関してお話しました。今回はその皮垂を切除したにもかかわらず、もう一度皮垂が出来てしまうことに関してお話したいと思います。
皮垂は痛みが出たり出血したりなどの症状は出ません。皮膚のシワなので悪いものではありません。必ず手術して切除しなければならないわけではありません。でも何か肛門にできていて気持ちが悪い。排便後拭きにくい感じがする。拭きすぎて痒くなってしまう。皮垂があることそのものが気になる。など、悪い病気ではないのですが、皮垂が不快なものと感じることがあります。そういった気になることを我慢することは、精神衛生上もよくないと思っています。ですから皮垂が気になる方は切除をお勧めしています。また、皮垂の切除を希望されて受診される患者さんもいます。
患者さんはこの気になる皮垂を切除しようと決心して受診され、手術を受けられます。それなのに皮垂を切除した後また皮垂が出来てしまう。患者さんにとってはとてもショックなことですし、私自身とても辛いところです。
皮垂を切除した後に再度皮垂が出来ないように気を付けて手術をするのですが、どうしても術後に再度皮垂が出来てしまうことがあります。どんな場合に再度皮垂が出来てしまうのかを私なりに考えてみました。
皮垂のできる原因
皮垂が出来る原因ですが、前回、「肛門の手術後の皮垂(スキンタグ)」でお話しましたが、手術をした後の傷の周囲の腫れが皮垂の原因になります。また外痔核成分の静脈が手術をするという侵襲によって腫れてくることもあります。また手術操作で術後に血栓を形成することもあります。こういったことが皮垂が出来る原因になります。
ですから、皮垂を切除した後、その傷の周囲が腫れてしまったりすると、その腫れが引いた後に皮垂が出来てしまいます。
ではどんな時に皮垂を切除した後に腫れが出てしまうかです。
皮垂を切除する傷の大きさ
一つ目は、皮垂の切除する傷が小さすぎるときです。
傷は小さいほうがいいと思いがちですが、肛門の手術では、術後排便という傷には負担となることがあります。肛門の手術後は、傷を安静にして治すということはできません。どうしても排便ということがあるので、使いながら傷を治していくことになります。ですから小さな皮垂だから小さな傷、大きな皮垂だから大きな傷になるというわけではありません。便が出てもいいように、使いながら具合よく治っていくように傷を作ります。そうすると、皮垂を切除する傷が小さすぎると、術後排便などによって傷の周りが腫れてしまうことがあります。
皮垂を切除する場合はどちらかというと少し大きめの傷で切除する方が具合よく治っていきます。皮垂の切除の場合は、肛門上皮まで大きな傷が出来る訳ではありません。肛門の外側の傷になるので、大きく切除して肛門が狭くなったりはしません。
こういったように、皮垂を切除する際には少し大きめに切除することが術後の腫れを防ぐ一つの手段になります。
皮垂の原因は何か?
二つ目は皮垂の原因となった病気の種類で腫れが出る可能性があります。
皮垂の原因となる病気には裂肛や内痔核があります。私のこれまでの経験では裂肛が原因よりは内痔核が原因での皮垂を切除した場合に、術後に腫れる印象があります。
内痔核が原因での皮垂をその皮垂だけを切除するとどうしても腫れが出てくることがあります。ですから内痔核が原因での皮垂を切除する場合は、途中までは内痔核に対しての痔核根治術をするときと同じような感じで皮垂を剥離していきます。そして少し肛門上皮の中まで剥離して切除します。場合によっては、肛門上皮までできた傷は数針縫合することもあります。
このように皮垂だけでなく、痔核根治術の様に肛門上皮まで少し傷がかかるように切除することで術後の腫れが起きる頻度を下げることが出来ます。
裂肛でできた皮垂は、意外とその皮垂だけを形よく切除するだけで、術後の腫れが出ない印象があります。
このように何の病気でできた皮垂かで術後の腫れがでてくる違ってくるようです。そういったことを考えながら皮垂を切除していく必要があります。
皮垂のできる場所
三つめは皮垂のできる場所です。
皮垂が出来る場所の多くに、肛門の前後、時計でいうと6時と12時の方向があります。この前後の皮垂を切除した場合、傷の場所が皮垂の出来ていた場所と同じ真正面、真後ろにすると術後の傷の治りが悪くなったり、腫れたりします。
皮垂の出来ている部分をよく観察して。皮垂を切除する場合、真正面、真後ろに傷が出来ないように左右どちらかにずらして切除することが大事です。
このように皮垂を切除する傷の大きさ、皮垂が出来た元の病気、そして皮垂の出来ている場所が術後の腫脹やその後の皮垂の原因になると思います。こういったことを考えながら皮垂を切除する必要があります。
術後の排便の状態
さて、皮垂の切除後もとても大事なことは術後の排便の状態です。やはりここが一番重要です。術後、具合よく便が出るように排便の調整をしていくことも術後の腫れを侵さず皮垂にならない重要なポイントになると思います。
手術の際は術後の腫れが起きないように気を付けながら手術をするのですが、それでも術後の腫れを生じ、その後その部分が皮垂になってしまうことがあります。これから先もいかに腫れを起こさないようにそしてその後の皮垂が出来ないように注意すべき点は何かを検討していきたいと思います。
肛門の手術後の皮垂(スキンタグ)

今回は、肛門の手術後に起きる皮垂(スキンタグ)についてお話したいと思います。
皮垂の原因
皮垂のできる原因には様々あります。例えば内痔核が腫れたり治まったりして、このために内痔核が出来る外側に皮垂が出来ることがあります。また裂肛でも皮垂が出来ます。排便時に肛門上皮に傷ができるとその傷の外側が腫れます。切れたり治ったりすることで裂肛の外側に皮垂が出来ます。また裂肛があり、皮垂によって便が引っかかることがあります。このことも原因で皮垂が大きくなってくることがあります。また血栓性外痔核と言って肛門の外側の静脈に血栓が詰まって腫れて痛い病気があります。血栓は徐々に溶けて吸収されていくのですが、腫れが治まって血栓が吸収されても皮垂が出来てしまうことがあります。このように様々な肛門の病気で皮垂はできます。いずれの病気でも、皮垂が出来る原因はそれぞれの病気によって排便時に微小な血栓ができ、そのことによって腫れが生じ、その腫れが引くときに皮垂が出来るとされています。
さて今回は肛門の手術後の皮垂です。肛門の手術で皮垂が出来る原因には大きく二つあると思います。
術後の傷の腫れ
一つは、肛門の手術を行った時の傷の周囲の腫れが起きることによってできる皮垂です。特に内痔核の手術を行う時に起きやすいのではないと思います。
手術の際の操作が原因での腫れ
手術をする際に肛門を広げたり、内痔核を引っ張りながら周囲の組織から内痔核を剥離していきます。そして根部まで内痔核を剥離したら根部の動脈を結紮して切除します。
こういった手術を行う時の一連の操作によって術後に腫れを生じることがあります。また内痔核の手術をした後、肛門の外側の外痔核部分が手術操作によって腫れたり、術後に血栓が詰まったりすることがあります。
術直後には腫れてこない
しかし、こういった術後の腫れや血栓形成は、手術を終了した直後には起きてきません。手術を終了した直後にはスッキリ綺麗ないい傷だと思っていても、術後3時間後に傷の状態を観察すると、術直後にはなかった腫れや血栓ができてしまっていることがあります。こういった術後の腫れは、多くの場合が徐々に引き、皮垂とならずに治っていきます。でも場合によっては術後の腫れが引いてもその部分が皮垂となって残ってしまうこともあります。
この皮垂が気にならない患者さんもいらっしゃいますが、内痔核の脱出がなくなっても、やはりその皮垂が気になる患者さんもいらっしゃいます。そんな時は患者さんと相談してその皮垂を切除することがあります。
術後に皮垂を作らないためには
外痔核成分の処置
さて、術後の皮垂を作らないようにするにはどうするかです。
このことはなかなか難しいところです。術直後とてもきれいに手術が出来たと思っていても術後に腫れてしまうことがあります。でもそうならないように気を付けていることがあります。その一つは、内痔核などの手術後に腫れる原因の多くが外痔核部分の腫脹です。ですから内痔核の手術をする際に一番気を付けているところは、この外痔核が出来る部分の静脈がどうなっているかです。
手術をしている際に、この外痔核部分の静脈が少し腫れてくることがあります。こういった場合は、新しく傷を作ってその外痔核部分を切除するのではなく、内痔核の手術をした傷から、術後に腫れるのではないかと思われる外痔核成分の静脈を切除していきます。このことをアンダーマイニングと言います。内痔核が脱出してくる場合は多くは外痔核成分の腫脹も少なからずあります。こういった場合は、内痔核に対して痔核根治術をする際に、この外痔核部分の静脈をしっかりアンダーマイニングすることを心がけています。
皮垂が合併している内痔核の処置
また、内痔核だけでなく、皮垂も合併している場合は、皮垂部分を少し大きめに切除することを心がけています。痔核根治術を施行する場合、この皮垂部分の切除が少ないと、内痔核は治っても、皮垂が残ったり、この部分が術後腫れて皮垂になってしまいます。ですから皮垂を合併している内痔核の場合は、通常の痔核根治術よりも皮垂部分を大きく切除するようにしています。
術後に新たに血栓が詰まる
二つ目の皮垂が出来る原因ですが、術後排便の状態などが悪かったり、血栓性外痔核が出来てしまう要因が重なり、術後に新たに血栓が詰まってしまうことがあります。この場合は血栓性外痔核の後にできる皮垂と同じで多くは血栓が吸収されて皮垂を残さずに治っていきます。ただ一部血栓が吸収された後に皮垂がのころこともあります。ですから、術後に皮垂が出来ないためにも術後の排便の状態を良くすることはとても大切になります。
それでも皮垂はできることがある。
このように術後に皮垂が出来ないように気を付けて手術をしていくのですが、やはりそれでも皮垂が出来てしまうことがあります。
患者さんにとっては内痔核の脱出がなくなったとしても、また新たにできた皮垂が気になることになってしまいます。そんな時は患者さんと話をして、皮垂がやはり気になるときはもう一度その皮垂を切除することになります。私にとってもとても辛いことです。
今後も皮垂のできる要素がないかどうか、もしあればそこもしっかり処置をして1回でスッキリ皮垂を作らずに治していくようにしていきたいと思います。また術後に皮垂が出来てしまう要因などを科学的に検証していきたいと思います。
次回は皮垂を切除した後にできてしまう皮垂に関してお話したいと思います。
「あ行」は発しない!

梅雨の中休みで、今日はそれほど暑くもなく爽やかな日です。こんな日は気晴らしで散歩もいいかもしれませんね。ようやく都道府県間の移動も解禁され、少しずつ少しずつではありますが以前の生活に戻ってきています。
なんの心配もなく、楽しく生活できる日が来るのが楽しみです。そのためにも私たちは、うがいや手洗いなどの基本的な感染対策はしていかなければなりませんね。
今日は、患者さんに不安を与えないために心がけていることを少しお話しようと思います。
私が心がけている一つは、声のトーンは高くなく、そして本当にゆっくり患者さんにお話することです。
声のトーンが高く、そして早口でしゃべると、そのことだけでも患者さんはとても不安になると思います。そして私が伝えたいことが全く伝わらなくなってしまいます。この声のトーンを高くせずゆっくりしゃべることの大切さを知ったのは、ラジオやテレビに出させてもらった時でした。
特にラジオでは、話をしている私の顔は見えずに声だけです。番組の内容は肛門の病気に関しての質問に答えるといった内容でした。私が言いたいこと、伝えたいことがたくさんあって、それを一生懸命に伝えようとすると、どうしても早口になってしまいます。喋っているいるときは自分では全く感じなかったのですが、後から自分の喋っているのを聞いてみると、びっくり。自分が伝えたいことが全く伝わってきません。早口で何を言っているのかわからない。「これじゃあ全然伝えたいことが伝わらない!」と反省。
また、テレビに出させてもらった時、診療所の方にスタッフの方々が収録に来られました。その時、撮影用のカメラを向けられ、目の前にいるスタッフの方にお話しするようにしゃべったのですが、この時も緊張のせいもあってか、少し早口に。スタッフの方はとても上手で、「よかったですよ。でももう少しゆっくりお話ししてください。その方がしっかり伝わります。じゃあもう一回行きますね。」と。私を傷つけないように配慮して下さりましたが、「良くなりました。ではもう一度行きましょう。」と何回か繰り返して、最後にOKが出ました。
この時も、「こんなにゆっくり話さなければいけないんだ。」と思うほどのゆっくりさ。でも後から収録を観てみると、私が話していることが良くわかり、ちゃんと伝わる。声のトーンに気をつけて、ゆっくりしゃべることの大切さを知りました。このような経験から、患者さんとの会話だけでなく、例えば学会の発表や、いろんな会議での報告をするときなども極力ゆっくりとしゃべることに注意しています。
いくつか気をつけていることは有るのですが、もう一つだけ紹介します。
それは診察しているとき、また手術等処置をしているときには決して「あ行」の言葉を発しないということです。
例えば「あ」ですが、「あっ」とか「あ~」と声を発すると、患者さんは何か具合悪いことが起きたのではないか?何か失敗したのかなあ?予期せぬことが起きたのか?とすごく不安にそして心配になります。「い」や「う」もそうです。「あ」、「い」、「う」はすべて患者さんを不安にさす言葉です。ですからどんなことが起きても私は「あっ」などの声を発しないように自分自身で気を付け訓練しています。ですから大抵のことが起きても大きな「あ」の声は発しない自信があります。
また「え」はその音がなんとなく「否定」をあらわす印象があります。ですから何か聞く時も「え」とは聞かないようにしています。このことは私の父からも言われました。どんな緊急なことが起きても、急いで行わなければならない事態でも、動じることはなく、声のトーンを高めず、ゆっくりと話す。このことで患者さんの安心感を生むことが出来ると思います。またそういった話し方をすることで、周りのスタッフの気持ちも落ち着き、スムーズな対応ができると思います。
ゆっくり喋ること。意外と難しいですが、皆さんも是非やってみて下さい。周りの人たちの安心感を生むことが出来ると思います。
より有効な治療方法にするために必要なこと。

こんな質問を受けたことがあります。
自分で医学雑誌で調べてこられたのですが、こんな感じの内容でした。「パオスクレーによる痔核硬化療法の効果は3ヶ月~1年。」と書かれていた。パオスクレーでの痔核硬化療法をしてもすぐに再発してしまうのではと言った質問です。でもこれだけの内容では、ここに書かれていることが正しいかどうかを判断することはできません。この一文にはパオスクレーによる痔核硬化療法が有効であるかどうかを判断する内容が書かれていません。
まずはどんな内痔核に痔核硬化療法をしたかです。
例えば内痔核の程度が第Ⅰ度なのか第Ⅱ度なのか、または第Ⅲ度以上の内痔核なのかが分かりません。ただパオスクレーによる痔核硬化療法の適応は第Ⅱ度以下なので、ここでの記述に対して痔核硬化療法が第Ⅱ度以下だとしましょう。
でもまだまだ足りません。内痔核がどんな症状だったのかです。例えば出血を主訴とする内痔核だったのか?もしくは排便時に少し脱出してく内痔核だったのか?または両方の症状があったのかなど、どんな症状の内痔核に対して痔核硬化療法をしたのかわかりません。パオスクレーによる痔核硬化療法は出血する内痔核を治すのに一番有効です。第Ⅱ度程度の排便時の脱出にも効きますが、やはり脱出する内痔核より出血が症状の内痔核に有効です。したがって、痔核硬化療法を行った内痔核がどんな内痔核だったのかを明らかにする必要があります。
では第Ⅱ度以下の内痔核で主に出血を主症状とする内痔核に痔核硬化療法を行た結果だとしましょう。でもまだまだ足りません。
というのは痔核硬化療法を行う時にやはりパオスクレーという痔核硬化剤を
1か所の内痔核にどの程度の量を注射したかが問題となってきます。
パオスクレーによる痔核硬化療法の治験をまとめた論文をみてみると、やはり1箇所の内痔核に対して5ml以上注射した場合と5ml未満では注射の効果に大きな違いが出てきます。1箇所の内痔核に対してパオスクレーが5ml未満の場合、その効果は50%を下回ってしまいます。ですからパオスクレーによる痔核硬化療法で有効に治療をするためには1箇所の内痔核に5ml以上のパオスクレーを適切に注射する必要があります。したがって、十分なパオスクレーの量を適切に注射した結果なのかどうかが重要になってきます。
さて、第Ⅱ度以下の出血を主な症状の内痔核に適切に1箇所に対して5ml以上のパオスクレーを注射したとしましょう。その結果だったらこの「パオスクレーによる痔核硬化療法の効果は3ヶ月~1年。」の記述は正しいのでしょうか?
これでもまだまだ足りません。何が足らないかと言うと、痔核硬化療法で治った患者さんのその後の排便状態はどうだったかです。
というのも内痔核が発症する原因の一番は排便時に強く怒責することです。
例えば便秘だったり、また反対に下痢でも具合悪くなります。便秘でも下痢でも、排便時に強く怒責する、強く力むことで内痔核が発生し、悪化していきます。したがって内痔核の治療で一番大事なことは、内痔核が発症する原因となる排便の状態を改善することです。
ですから、パオスクレーによる痔核硬化療法を施行した後の患者さんの排便の状態がどうであるかはとても大切な要素になります。パオスクレーによる痔核硬化療法で内痔核が治ったとしても、排便の状態が改善されておらず、排便時に強く力むことが続いていればやはりそのことで再発してしまいます。たとえ手術をして治したとしても排便の状態が悪ければ再発してしまいます。
なにも無かったところから排便の状態が悪くて内痔核は発症してきます。一端治ったとしても原因があればまた内痔核が出来てしまいます。このように治療をした後のその後の排便などが改善されているか?その原因に対してしっかり治療をしていたかも大切な要素になります。
したがってパオスクレーによる痔核硬化療法が本当に有効なのか?3ヶ月から1年の効果しかないのかは、こういったいろんな要因を検証していかなければなりません。
例えば第Ⅰ度の内痔核で出血を主な症状の内痔核に対して1箇所の内痔核に適切に5ml以上注射をした。そして内痔核の原因となる排便の状態を改善した結果、再発するかしないか。また再発するのならばそれまでの期間はどうだったのかを検証する必要があります。
このように検証すると、例えば同じように第Ⅰ度の内痔核で出血を主な症状の内痔核に対して1箇所の内痔核に適切に5ml以上注射をした。その後内痔核の原因となる排便の状態が改善されずに、どうしても強く力んで便を出すことが続いた。その場合、再発がどうであったか。再発までの期間はどうだったかを検証すると、治療した後の排便の調整が上手くいった患者さんと上手くいかなかった患者さんを比較することができ、治療後の排便の調整が大事であることが分かります。
こういったように、細かくいろんな場合を検証して、それぞれを比較することでいろんなことが分かってきます。そうしたことを積み重ねていくことで、例えばパオスクレーによる痔核硬化療法を行った後再発しないで治すには何が必要なのかが分かってきます。こういった科学的な検証を治療方法ごとに行い、その検証したことを元に、それを生かしてそれぞれの治療を有効な治療方法にしていく。こういったことがとても大切なのだと思います。ですから「パオスクレーによる痔核硬化療法の効果は3ヶ月~1年。」であればどうして3ヶ月から1年でまた再発してしまうのかを検証して、その原因を見つけ、そのことを改善することでパオスクレーによる痔核硬化療法は今以上に有効な治療方法になっていくのだと思います。全ての治療にこのことは通じると思っています。
ラストコンサート

時々、昔観た映画のことを思い出します。皆さんにもそんな映画があると思います。
私が山梨県の甲府市にいた頃、小学生の時に父と一緒に初めて観た映画が、「007 サンダーボール作戦」でした。プールにサメが泳いでくるのが怖く、お風呂屋さんの冷たいお風呂に入った時、サメが来たらどうしようなど、ありえないのですが怖がっていたことを思い出します。
さて、私が時々思い出すのは、「ラストコンサート」という映画です。イタリアの恋愛映画でイタリアでの作品名は「Dedicato a una stella」で、日本語に訳すと「星に捧ぐ」です。
1976年に公開された映画です。ですから私が16歳の頃、高校1年生の時です。誰と見に行ったのか、どうして観ようと思ったのかはもうすでに忘れてしまっています。でもその時の映画の場面が時々頭に浮かび、その時の音楽が聞こえてきます。
「stella」は映画に出てくる主人公の少女の名前です。そして題名にある「ラストコンサート」で演奏されるのが「ステラに捧ぐ」です。
大体のあらすじと最後のラストシーンと流れる音楽は思い出すのですが、詳しい内容はだいぶ忘れてしまっています。少し調べてみました。
ストーリーはこんな感じです。
人生に挫折し落ちぶれている作曲家、本来は才能を持っているのですが、そんな作曲家リチャードが、ふとした事から一人の少女と出会います。それがステラです。私の記憶では、バスを待っているリチャードに合うところから話が始まった様に思います。そしてリチャードがピアノを弾いている姿、そしてその音色にステラは出会う。こんな風なシーンで物語は始まっていったように思います。
ステラは白血病に侵されていて、残り3ヶ月の命。人生最後の旅をしているときに偶然にリチャードのピアノの音色に合った。そんなステラが懸命に生き抜こうとする姿、そしてステラの愛によって再起に賭ける作曲家リチャード。年齢的には親子ほどの年齢差。それを越えたふたりの心の交流を描いたラブストーリー作品です。
その映像に流れてくるステルヴィオ・チプリアーニの美しいメロディが私の心をつかんだのだと思います。
イタリアの映画ですが、撮影の大部分は、モン・サン=ミシェルやパリなどのフランスで行われたそうです。
私が今でも覚えているラストシーンは、ステラとリチャードは結婚の約束をします。そしてリチャードはステラのためにウエディングドレスを用意します。でも、ステラの体調は悪くなり、医師からはここ数日、もしくはここ数時間の命とリチャードに告げられます。そのような中、リチャードは「Dedicato a una stella」、ステラに捧ぐというシンフォニーのコンサートをパリで開きます。
そしてその演奏をウエディングドレスを着たステラが舞台の袖で聞きながら静かに息を引き取るといったシーンです。この時のシンフォニーと映像が私の記憶に深く残りました。
ステラの「私のために生きてくれる人がいるとしたら、リチャード、あなただわ。勇気を出して音楽家として再起するのよ。」という言葉。そしてその言葉にもう一度リチャードは二人で美しい夢にかけることにしました。
またリチャードがステラに合った時に言った言葉、「Stella is a star in Latin」(ステラはスター「星」のラテン語)と言った言葉。リチャードにとってはステラは自分にとっての夢を叶えてくれる「星」だったのでしょう。何かとても切ないですが、その二人の純粋な心のふれあい、そして美しく感動的な音楽。もう一度観てみたいと思います。今の私が観ても、16歳の頃と同じように感動すると思います。もしかすると、それ以上に涙してしまうかもしれません。