裂肛患者に対する側方皮下内肛門括約筋切開術術前と局所麻酔後の最大肛門静止圧の年齢、性別による検討(第62回日本大腸肛門病学会)
裂肛は排便時に便が硬かったり、反対に下痢だったり、また、柔らかいけれども頑張らないと便が出なかったり、便の状態が悪い時に排便時に肛門に傷がつく病気です。
最初は、転んで怪我をするのと似ています。転んだら怪我をする。でも転ばなければ怪我は治っていく。と同じように、便の状態が悪くて肛門に傷がつく。この傷のことを裂肛と呼んでいるだけで、便の状態が良ければ傷、裂肛は治っていきます。ただ、切れたり治ったりを繰り返していくうちに、裂肛が治りにくくなったり、傷つきやすくなってしまいます。この原因が肛門の緊張。内肛門括約筋の緊張があります。痛いと肛門が閉まる。痛いと閉まるということを繰り返していくうちに、内肛門括約筋の緊張が強くなっていきます。内肛門括約筋の緊張が強くなって、肛門のしまりが強くなっていくと、柔らかい便であっても排便時に痛みがでて、さらに肛門のしまりが強くなる。と言ったように悪循環に陥ってしまいます。
したがって、裂肛の治療は、この強くなってしまった、緊張が強くなった内肛門括約筋の緊張をとって、元の状態に戻すことで良くなります。言ってみれば柔軟体操のような感じです。裂肛の手術もこの緊張の強くなった内肛門括約筋の緊張をとることが目的です。内肛門括約筋の緊張をとり、正常に戻すことで裂肛は治っていきます。
今回紹介する発表内容は、この肛門のしまり具合、内肛門括約筋の緊張の程度を比較してみました。
最大肛門静止圧は内肛門括約筋の緊張をみるために測定します。最大肛門静止圧が高ければ、内肛門括約筋の緊張が強く、低ければ、内肛門括約筋の緊張が弱いということになります。
発表内容
裂肛の原因の一つに内肛門括約筋の過度な緊張があります。今回我々は、裂肛に対して側方皮下内肛門括約筋切開術、以下LSISを施行した症例に関して、術前と局所麻酔後の最大肛門静止圧を測定することで、裂肛患者における内肛門括約筋の緊張の程度を年齢や性別によって比較検討しました。
対象は、平成10年9月から平成19年4月までにLSISを施行した症例で、術前及び局所麻酔後に最大肛門静止圧を測定した512例、男性174例、女性338例としました。
方法は、症例を30歳以下、40歳以下、50歳以下、60歳以下、70歳以下、71歳以上の6群に分類しました。
最大肛門静止圧は術前及び局所麻酔後に測定しました。いずれも左側臥位で測定しました。また、局所麻酔は1%塩酸プロカインを用いて施行した。
また、局所麻酔後の最大肛門静止圧の低下率を、各年齢間及び男女間で比較検討しました。
年齢別患者数を男女間で比較してみると、女性では、20歳代が最も多く、年齢と共に減少していくのに対して、男性では、40歳代にピークがあり、それ以降年齢と共に低下していく傾向があり患者数のピークに男女差を認めました。
男性で術前の最大肛門静止圧と局所麻酔後の低下率を年齢別に比較してみました。術前の最大肛門静止圧は、年齢間に有意な圧の差は認めませんでした。これに対して、局所麻酔後の低下率は、有意差は認めませんでしたが、年齢と共に低下率が小さくなる傾向が認められました。
女性でも同様に術前の最大肛門静止圧と局所麻酔後の低下率を年齢別に比較してみました。
術前の最大肛門静止圧は男性同様に、各年齢間に有意な圧の差は認めませんでした。これに対して、局所麻酔後の低下率は、女性の場合は年齢と共に有意に小さくなりました。
男女間で術前の最大肛門静止圧と局所麻酔後の低下率を比較してみました。
術前の最大肛門静止圧は男性のほうが高い傾向にありました。これに対して、局所麻酔後の低下率に関しては、女性において低下率が大きい傾向にありました。
以上より、男女とも若年者では術前の最大肛門静止圧は高いにもかかわらず、局所麻酔後の低下率が大きいことを考えると、局所麻酔を行うことで内肛門括約筋の緊張が十分にとれることになり、若年者の場合、裂肛の原因には内肛門括約筋の緊張が大きく影響しているのではないかと考えます。これに対して、年齢と共に術前の最大肛門静止圧には有意な差が認められないにもかかわらず、局所麻酔後の低下率が年齢と共に小さくなっていくことから、年齢と共に内肛門括約筋の緊張だけでなく、瘢痕形成などのほかの要因も裂肛の原因に加わってくるのではないかと考えます。
以上のことをふまえて、裂肛に対して施行する手術術式の選択の際に、年齢や最大肛門静止圧の低下の程度などを考慮することも必要であると思います。
抄録を紹介します。
抄録
内肛門括約筋の緊張が裂肛の一因とされている。今回我々は、裂肛に対し側方皮下内肛門括約筋切開術(以下LSIS)を施行した症例に関して、内肛門括約筋の緊張の程度を年齢や性別によって比較検討した。
【対象】H10年9月から平成19年4月までに、LSISを施行した症例で、術前及び局所麻酔後に最大肛門静止圧(以下MARP)を測定した男性174例、女性338例を対象とした。
【方法】症例を年齢別に30歳以下、40歳以下、50歳以下、60歳以下、70歳以下、71歳以上の6群に分けた。術前及び局所麻酔後にMARPを測定、
MARPの低下率(100-術前MARP-局所麻酔後MARP×100)を算出し、各年齢群間及び男女間で比較検討した。なお、局所麻酔は1%塩酸プロカインを使用した。
【結果】男性は30歳以下が19例、40歳以下38例、50歳以下41例、60歳以下36例、70歳以下26例、71歳以上14例であった。低下率はそれぞれ75.9±11.1%、72.9±13.3%、69.7±17.2%、68.1±10.7%、68.0±14.0%、64.0±21.6%であり、30歳以下の群と60歳以下、71歳以上の群との間および40歳以下の群と60歳以下の群で有意差(P<0.05)を認め、その他の各群間では有意差を認めなかった。女性は、30歳以下が133例、40歳以下72例、50歳以下58例、60歳以下41例、70歳以下20例、71歳以上14例であった。低下率はそれぞれ83.8±9.9%、77.5±16.6%、77.9±11.1%、72.9±16.7%、70.8±10.2%、71.4±12.0%であり、30歳以下の群は他の群より有意に高値であった(P<0.05)。また、 40歳以下の群も70歳以下、71歳以上の群より低下率が高値であり(P<0.05)、 年齢とともに低下率が低くなる傾向を認めた。男女の低下率の比較では、70歳以下と71歳以上の群以外で女性の方が有意に高値を示した(P<0.05)。
【まとめ】裂肛患者におけるLSIS施行前及び局所麻酔後のMARPについて検討したが、女性では年齢とともにMARPの低下率が有意に低下し、男性でも有意差は認めないものの同様の傾向を認めた。このことから、若年者では内肛門括約筋の緊張が裂肛の病態に関与し、高齢になるにしたがい瘢痕形成などの他の要素も関連してくると考えられた。
微温湯浣腸後の排出時間の検討(第63回日本大腸肛門病学会)
肛門の病気を診察する際に、ただ単に指診をしたり、肛門鏡で観察してもなかなか肛門の病気の状態の全体像をしっかりと確認し、診断することは難しいです。
排便する際には、便意が起きたら腹圧をかけて頑張る(このことを怒責といいます。)。この際に肛門の出口から2~3cm奥に肛門上皮といって皮膚の部分がありますが、この肛門上皮が肛門の外側に出るような感じになって便が出てきます。ただただ肛門が広がって便が出てくるわけではありません。このように便意を感じて怒責する。祖に際に肛門上皮が外側に出るような感じで便を排出するといった一連の肛門の動きがあります。
この怒責した際に起きる肛門の状態を診ることがとても大切です。
そこで、渡邉医院では、新患の患者さんを診察する際には、指診をした後、微温湯による浣腸をして、その微温湯を怒責して出してもらった後の肛門の状態を診察しています。指診や肛門鏡での観察だけではわからなかったことが、この怒責してもらうことでわかってきます。内痔核などの場合は、排便時に肛門の外に出てくる脱出といった症状や脱出時の状態を診断できます。
内痔核の原因の多くが、この怒責の強さや、怒責している時間が関係すると考えています。必要以上に怒責したり、怒責している時間が長いことが、内痔核の原因となると考えています。
今回は、便秘の有無や内痔核の程度によって怒責している時間に違いがあるのかを検討した発表を紹介します。
発表内容
当院では肛門の診察をする際に50mlの微温湯による浣腸をおこない、これを排出してもらうことで怒責診を行っています。この際、微温湯を排出する時間がそれぞれの患者さんの間で長かったり、短かったり、差があることを経験します。
今回、排出時間が便秘の有無に関連があるのか、また、肛門疾患やその程度に関連があるかを検討しました。
対象は平成20年1月から3月までに当院を受診した患者で、排出時間が測定できた138例、男性60例、女性78例、平均年令53.3歳としました。
疾患は内痔核が多く、全体の53%でした。
方法は50mlの微温湯を浣腸し、排出するまでの時間を測定しました。
検討項目は、男女別、年齢別の排出時間。また、便秘の有無による排出時間。そして疾患で多かった内痔核に関してGoligher分類の第1度、第2度、第3度以上との間で排出時間を比較検討しました。
まず、男女間での排出時間の検討ですが、男女間では排出時間には有意差は認めませんでした。
次に年齢による排出時間ですが、男性では年齢による排出時間には有意差は認めませんでした。
女性においても、年齢による排出時間の差は認めませんでした。
年齢とともに排出時間は長くなるのではと考えていましたが、今回の検討では年齢による排出時間の差は認めませんでした。
次に便秘の有無での排出時間の比較です。便秘有りが61例、便秘無しが77例でした。
便秘有りの群の排出時間は、便秘無しの群と比較して排出時間が長く、有意差を認めました。
便秘有りの群でも排出時間が短い症例や長い症例があり、この差がどこにあるのか?例えば、排出時間の短い便秘群は直腸にある便を柔らかくするだけで具合良く便がでるようになるのか?また、排出時間の長い群は便の性状だけでなく、機能的になんらかの原因で排出が困難になっているのか、また、便秘無しの群でも排出時間が長い症例は便秘の予備軍になるのかも今後検討していく必要があると思います。
次に、内痔核の程度による排出時間の比較です。第1度が33例、第2度が12例、第3度以上が27例でした。
それぞれの間に排出時間の有意な差は認めませんでしたが、内痔核の程度がすすむにつれて排出時間は長くなる傾向を認めました。
このことは、怒責する時間が長いことで内痔核を増悪させる要因になったり、また逆に内痔核自体が残便感の原因となって怒責する時間が長くなったりするのではないかと思います。
内痔核の術前と治癒時との間で排出時間に差がでるかなど、今後、検討していく必要があると思います。
まとめです。
今後の課題ですが、便秘に関しては、便秘有りの群でも排出時間が短い症例と長い症例との差がどこにあるのか?直腸内の便の性状だけなのか、機能的な原因があるのかなど、微温湯を排出する時間や怒責排出した後、直腸内に残っている微温湯の量などを観察することで、ある程度、排便障害の治療の目安にならないか、また、便秘無しの群でも排出時間の長い症例は便秘の予備軍になるのかなど今後検討が必要だと思います。
また、内痔核に関しては、怒責して排出する時間が長いことも内痔核の増悪因子になると思いますが、内痔核を治療することで排出時間が短くなるのかなど今後検討していきたいと思います。
抄録を紹介します。
抄録
当院では肛門の診察をする際に50mlの微温湯による浣腸を施行し、これを排出することで怒責診を行っている。この際、微温湯を排出する時間(以後排出時間)が個々の患者に差があることを経験している。排出時間が便秘の有無、肛門疾患やその程度に関連があるか検討した。
【対象】H20年1月から3月までに来院した患者で、排出時間が測定できた138例(男性60例、女性78例、平均年齢53.3歳。)を対象とした。疾患は、内痔核73例、裂肛35例、痔瘻5例、肛門周囲膿瘍1例、外痔核15例、肛囲皮膚炎6例、直腸脱1例、その他2例であった。
【方法】50mlの微温湯を浣腸後、排出するまでの時間を測定。男女別、年齢別に排出時間を比較した。また、便秘の有無による排出時間を比較した。疾患で多かった内痔核に関して第1度、第2度、第3度以上との間で排出時間を比較検討した。疾患間では内痔核と裂肛とを比較検討した。
【結果】男女間の比較では男性の排出時間は385.7±220.3秒、女性338.6±186.7秒で有意差は認めなかった。年齢と排出時間は男女とも有意差は認めなかった。便秘の有無では、「便秘有り」が61例、排出時間は391.5±194.6秒、「便秘無し」が77例、排出時間は333.5±206.3秒と便秘有りの群で有意に排出時間が長かった(p=0.0029)。内痔核では、第1度は33例、排出時間307.2±126.1秒、第2度は12例、379.9±193.2秒、第3度以上は27例、391.5±244.3秒と、内痔核の程度がすすむにつれ排出時間は長くなる傾向にあった。内痔核と裂肛との間には有意差は認めなかった。
【まとめ】「便秘有り」では有意に排出時間が長く、直腸内の内容物を怒責して排出し難かったり、怒責することが習慣になったりしていると考えられる。また内痔核の程度がすすむにつれて排出時間が長くなる傾向があり、怒責して排出する時間が内痔核の増悪因子になる可能性がある。
輪ゴム結紮法という手術方法を紹介します。
今回は、輪ゴム結紮法という内痔核に対して行う手術方法を紹介します。
輪ゴム結紮法は内痔核(いぼ痔)に対して行う治療方法です。
内痔核の根元に輪ゴムをかけて内痔核にいく血液の流れを断って、内痔核を腐らせて取り除く(壊死脱落)手術方法です。
肛門鏡を使って内痔核をよく観察しながら内痔核の根元に輪ゴムをかけていきます。麻酔をしなくても行うことができることが多く、入院ではなく外来での手術となります。肛門鏡を入れ、輪ゴムをかけるだけの手術です。輪ゴム1個だけかけただけではすぐに取れてしまっては困るので、通常1か所の内痔核に2個の輪ゴムを掛けます。それでもほんの数分で終わります。内痔核は痛みの感じない部分にできる病気なので、内痔核にうまく輪ゴムをかけると、痛みなく治療することができます。また、傷ができませんので、当日から普段通りの生活ができ、入浴も可能です。
ただ、輪ゴム結紮で治療可能かどうかの診断、適応を診間違ったり、適切に輪ゴムをかけなければ、内痔核が治らないばかりか、輪ゴムをかけた瞬間から強い痛みが出て、輪ゴムをかけた肛門の外側が腫れてしまうことがあります。
輪ゴム結紮法は内痔核を治す治療方法です。内痔核がどうかを診断する必要があります。
内痔核は肛門の出口から約2~3cm奥の粘膜の部分にできる静脈の瘤、静脈瘤です。この部分は粘膜ですので、痛みは感じません。内痔核の症状には、排便時に出血する。排便時に内痔核が肛門の外に出てくる(脱出する)。また肛門に違和感を感じるなどの症状があります。
内痔核の症状によって内痔核の病気の程度が、第1度から第4度の4つに分けられています。
第1度:排便時に出血する。なにか挟まったような違和感がある。
第2度:排便時に出血する。排便時に内痔核が肛門の外に出てくる(脱出)が自然に戻る。
第3度:排便時に出血する。排便時に内痔核が肛門の外に出てくる(脱出)が自然に戻らず、
指で押し込む。
第4度:常に内痔核が肛門の外に出ていて押し込むことができない。
の四段階に分けられています。ただ、内痔核だけですと、この間痛みはありません。
輪ゴム結紮法はこの内痔核の第2度以上の内痔核に対して行います。
ただ、すべての内痔核が輪ゴム結紮法の適応になりません。内痔核の性状で輪ゴム結紮法の適応が決まります。適応の条件としては、
1)輪ゴム結紮器のドラムといって輪ゴムをかける輪っかの中に内痔核が入る程度の大きさでなければできません。
2)内痔核は粘膜の部分にできますが、この粘膜の部分の脱出が主な内痔核が適応になります。
肛門上皮といって、肛門の出口から約2~3cmまでに皮膚の部分があります。この部分が腫れてくる肛門の病気を外痔核といいます。この肛門上皮の部分の腫れが強いタイプの内痔核は適応になりません。肛門上皮、皮膚の部分に輪ゴムがかかると、輪ゴムをかけた瞬間から強い痛みがでてきます。
また輪ゴムをかけた外側が腫れてしまうことがあります。
このように輪ゴム結紮で治すことができる内痔核は限定されます。輪ゴム結紮法は万能ではありません。
しっかり内痔核の性状を診断して、輪ゴム結紮法で痛みなく十分に治すことができるかどうか判断することが一番大切です。
また輪ゴム結紮法も内痔核の根元に輪ゴムをかけるので、内痔核が壊死脱落するときに、内痔核に流れる動脈から、動脈性の出血を起こして止血処置が必要な場合もあります。渡邉医院では今のところそういった出血はまだ経験していません。その理由の一つには内痔核の大きさがあるのかなとも考えています。ただ、そういった出血が起きた場合は必ず連絡してもらい、止血処置が必要かどうか診察する必要があります。
輪ゴム結紮法は適応をしっかり見極め、適切に輪ゴムを掛けることで脱出してくる内痔核を治すことができます。痛みもなく、通常の生活を送りながら治せます。こういった手術方法も内痔核の治療の一つにあります。
内痔核でお悩みの方は一度診察を受けられ、どういった方法で治すことができる内痔核かを診断して治療を進めていっていただければと思います。
「かぼちゃコロッケ」のレシピを紹介します。
今回は、「かぼちゃコロッケ」を紹介します。
コロッケも好きな食べ物の一つです。母も今年85歳になるのですが、一緒に母と食事をすることが多くなりました。食事をすると言っても、飲むことが多いのですが(笑)。そんなとき、必ずと言っていいほどコロッケをたのみます。クリームコロッケだったり、ジャガイモたっぷりのコロッケだったり。またポテトサラダでつくったコロッケだったり。お店によっていろんなコロッケがあります。
でも、私にとって「コロッケ」というと、母がつくる俵型のジャガイモたっぷり、お肉の入ったコロッケが、大皿いっぱいに積み上げられたコロッケを思い出します。
ところで、コロッケに何をかけて食べますか?
そのまま?ウースターソース?醤油?マヨネーズっていうのもありますね。お店ではデミグラスソース。意外とマヨネーズ+醤油も結構いけますよ。
さて、今回はかぼちゃのコロッケのレシピを紹介します。
「かぼちゃコロッケ」
材料4人分 1人分:381kcal 食物繊維 4.5g
かぼちゃ 1/4個 |
作り方 |
お好みでケチャップやソースをつけてお召し上がり下さい♪
内痔核に対して結紮切除術施行後の術後及び排便時の疼痛に関してーアンケート結果よりー(第64回日本大腸肛門病学会)
今回は、「内痔核に対して結紮切除術施行後の術後及び排便時の疼痛に関してーアンケート結果よりー」という内容の学会発表を紹介します。
肛門の手術を受ける患者さんにとってさまざまな不安があると思います。手術はどうするんだろうか?手術中は痛いんだろうか?手術をしてしっかり治るのかな?手術の後はちゃんと便が出るのだろうか?などなど、数えればいくつもの不安が出てくると思います。そのような中で、不安の中で最も大きなものの一つが手術後の痛みだと思います。
渡邉医院を受診された患者さんで、内痔核に対して手術の必要な方に術後の痛みについてお話しするときは、次のようにお話しています。
1)傷はどんな傷でも擦ると痛いですよね。肛門の手術の後も一緒です。手術をしたからと言って、1日中痛いわけではありません。普段は痛くなく、傷を擦るとき、排便するときに痛みがあります。でも、この排便時の痛みも手術して7~10日過ぎると96.5%の人が急にスッと痛みが取れます。
2)手術後、排便時の痛みは手術した傷の数、内痔核を切除した数に関係します。1か所の手術の方は2か所、3か所の手術が必要な方と比べて痛みは楽です。2か所と3か所の方の間では、痛みに差がありません。1か所か2か所以上かで痛みに差が出ます。
このようなことをお話ししています。その根拠となったのが、手術を受けた患者さんのアンケートです。渡邉医院では、手術した患者さん皆さんにアンケートを取っています。このアンケートをもとに、これから手術する患者さんに必要な情報を提供しています。
今回は内痔核のに対して痔核根治術を行った患者さんに、手術後の痛みについてのアンケートをとった結果を報告した発表内容を紹介します。
発表内容
内痔核に対して結紮切除術を施行する際に患者さんが一番不安に感じるのは、手術後の痛みや排便時の痛みです。
今回、内痔核に対して結紮切除術を施行した後の術後の痛みと、排便時の痛みに関してのアンケートをおこない、その結果を集計したので報告します。
平成13年12月から平成21年3月までに内痔核に対して結紮切除術を施行して、術後及び排便時の痛みに関してアンケートに答えていただいた1011例、男性481例、女性530例を対象としました。
方法は、術後及び排便時の疼痛を最小0から最大10までの11段階で評価しました。
1)内痔核の切除個数、2)年齢別、3)男女別について比較検討しました。
年齢はA群30歳未満からF群70歳以上まで6群に分類しました。
人数分布ですが、男女とも50~60歳代にピークを認めました。女性では男性と比較して30歳代がやや多い傾向がありました。
術後の疼痛ですが、男性では平均1箇所が3.2、2箇所が4.2、3箇所以上が4.8と切除個数は増えるにしたがって痛みは強くなる傾向がありました。
女性でも1箇所が2.8、2箇所が4.1、3箇所以上が4.8と同様の傾向を認めました。
術後の疼痛に関して年齢別では、1箇所切除では男女とも各群間にあまり差は認めませんでした。
切除が2箇所以上になると年齢とともに術後の疼痛が軽度になっていく傾向がありました。
排便時の疼痛ですが、男性では平均1箇所が3.6、2箇所が4.9、3箇所以上が5.9と術後の疼痛と同様に切除個数が増えるとともに痛みが強くなる傾向がありました。
女性でも1箇所が3.1、2箇所が4.7、3箇所以上が5.3と同様の傾向を認めました。
年齢による排便時の疼痛に関しても術後と同様に、1箇所切除では男女ともに各群間に差は認めませんでした。
切除が2箇所以上になると男女とも年齢とともに排便時の疼痛が軽度になる傾向を認めました。
この術後の疼痛と排便時の疼痛の年齢による変化と、以前発表した年齢別の最大肛門静止圧の変化とを重ねてみますと、術後の疼痛では年齢による疼痛の変化と最大肛門静止圧の変化は同様の傾向を認めました。
また、排便時の疼痛でも同様に年齢による疼痛の変化と最大肛門静止圧の変化は同様の傾向を示しました。
このことから術後及び排便時の疼痛の強さと最大肛門静止圧との間には関連があるのではないかと思います。
まとめです。
1)1箇所切除では比較的術後及び排便時の疼痛は軽度で、年齢による差も認めませんでした。
2)術後及び排便時の疼痛は切除個数が増えるにしたがって強くなりました。
3)2箇所以上切除では、術後及び排便時の疼痛は年齢とともに軽度になる傾向を認めました。この疼痛の変化は最大肛門静止圧が年齢とともに低下していくのと同じ傾向であり、術後及び排便時の疼痛と最大肛門静止圧との間には関連性があると考えます。
このことから、術後及び排便時の疼痛を緩和し、患者さんの不安を軽減するためにも、最大肛門静止圧に影響をおよぼす、内肛門括約筋が術後に過度な緊張を起こさないようにすることが大事ではないかと考えます。
抄録を紹介します。
抄録
内痔核に対して結紮切除術を施行後の術後及び排便時の疼痛に関してアンケート調査をしたので報告する。
【対象】H13年12月からH21年3月までに内痔核に対して結紮切除術を施行し、術後及び排便時の疼痛に関してアンケートに回答した1011例(男性481例、女性530例)を対象とした。
【方法】術後及び排便時の疼痛の程度を最小0から最大10の11段階で評価し、内痔核の切除個数、年齢別に比較検討した。年齢は30歳未満A群、30歳代B群、40歳代C群、50歳代D群、60歳代E群、70歳以上F群と分類した。
【結果】①術後疼痛:男性ではA群は1箇所切除4.3、2箇所切除6.7、3箇所以上切除5.3、以下同様にB群2.9、4.7、6.1、C群3.5、3.4、5.5、D群3.6、3.9、4.7、E群2.5、3.2、3.9、F群2.4、3.4、3.2であった。女性ではA群3.2、5.6、5.1、B群3.4、4.6、5.9、C群2.7、4.3、5.3、D群2.6、3.9、4.0、E群2.5、3.3、4.3、F群2.3、3.0、4.4であった。②排便後疼痛:同様に男性ではA群4.6、8.1、8.1、B群4.3、5.2、6.7、C群3.7、3.9、6.2、D群3.2、4.5、6.0、E群2.9、4.0、5.4、F群2.9、3.7、3.2であった。女性はA群4.1、6.7、6.4、B群3.5、5.2、6.4、C群2.8、4.2、5.6、D群3.0、4.3、5.0、E群2.9、3.5、4.5、F群2.2、4.1、4.1であった。術後疼痛は各群男女とも切除個数が増えると疼痛が強くなり、各群間の比較では男女とも年齢とともに痛みが軽度になる傾向があり、有意差を認めるものもあった。排便後疼痛も術後疼痛と同様の結果であった。術後疼痛では女性では1箇所切除では各群間に有意差を認めず、また排便後疼痛では男性で1箇所切除では各群間に有意差は認めなかった。
【まとめ】1箇所切除では比較的術後及び排便時の疼痛が軽度であった。術後疼痛及び排便後疼痛は切除個数が増えるにしたがって強くなり、年齢とともに軽度となった。これは、最大肛門静止圧が年齢とともに低下していくのと同じ傾向を認めた。
当院(有床診療所)の過去12年間の診療実績と今後の展望(第65回日本大腸肛門病学会)
今回は、平成10年から平成21年までの12年間の渡邉医院の診療実績と今後の展望という内容の学会発表を紹介します。
渡邉医院は19床のベットを持つ入院施設のある有床診療所です。
今、全国的に年々有床診療所は減少してきています。その原因の一つには、有床診療所の入院基本料が低いため、なかなか経営が成り立っていかないこと。また有床診療所を継承してくれる人が見つからないなどの継承問題。などなど、有床診療所を取り巻く現状はとても厳しいものがあります。でも有床診療所のいいところは、地域に密着して受診しやすい環境があること。また入院と外来の診療を同じ医師が担当すること。外来から入院まで同じ医師が診察、治療にあたるので、患者さんにとってはとても安心感のあることだと思います。また、大きな病院と違って、いろんなことにすぐに対応できる、フットワークがいいことも有床診療所のいいところだと思います。
渡邉医院は肛門科に特化した有床診療所です。渡邉医院が肛門科に特化できるのも、周囲に多くの医療機関があって、肛門疾患に集中して診療ができるといった、医療環境があるからだと思っています。肛門科に特化した診療を続けていくためにも、周囲の医療機関としっかりと連携していく必要があると思います。
有床診療所は地域の医療を守るため、また専門の医療を提供する役割を今も担っています。これから先も、有床診療所の持っている意義をしっかり発信して、有床診療所を守っていきたいと思います。
さて、学会での発表内容を紹介します。
発表内容
当院は京都市の西陣にある肛門疾患のみに特化した19床の有床診療所です。
医師1名、看護職員7名、事務員2名、当直5名の計15名で診療しています。
入院は良性の肛門疾患の手術後の患者さんのみで、重度の合併症等のある患者さんは術後連携病院に入院または連携病院で手術を施行しています。
当院は京都市の上京区に位置しています。御所の少し西側の西陣にあり、周りには多くの診療所や病院があり、こういった環境も肛門疾患だけに特化して診療できる要因だと思います。
今回は平成10年から平成21年までの12年間の診療実績に関して、
年間の総患者数の推移、診療報酬の総点数及び外来・入院別の点数、各健康保険別の総点数、外来・入院の点数の推移、平均入院日数の推移、内痔核の入院治療の推移に関して検討しました。
診療報酬の総点数及び外来・入院別総点数の推移ですが、総点数は平成12年をピークに減少し、15年以降はほぼ横這い、入院は平成12年をピークに減少、平成17年に一端増加するも以後は減少、外来は平成17年より減少するも平成20年から増加傾向です。
年間の患者数の推移は、新患、再診患者とも平成16年から増加傾向です。
健康保険別入院総点数の推移は国民健康保険が社会保険より多い傾向があります。
外来総点数も入院と同様に国民健康保険が社会保険より多い傾向にあります。
平均入院日数の推移は平成14年より減少傾向で、内痔核の入院日数もALTA療法の出現と係り無く減少傾向にあります。これは短期入院の社会的な傾向だと思います。
年間手術件数は平成17年から外来手術が減少し、入院手術が増加し、平成17年から手術件数はほぼ横這いです。平成17年からは最低限1泊2日の入院治療をするようになったのが原因です。
内痔核の手術件数の推移は平成17年から内痔核の入院手術は増加し、以後微増。平成17年からLEが減少し、ALTA療法が増加、平成21年からはALTA療法がLEを上回るようになりました。内痔核の入院治療が増加している要因に、ALTA療法の出現で手術に踏み切れなかった患者の需要がふえたのだと思います。
まず外来に関して検討します。平成17年からの外来点数の減少は外来手術の減少の影響が大きく、平成20年からの増加は肛門鏡検査が算定できるようになったことと、患者数が増加していることからだと思います。
入院に関しては、平成17年に増加したのはこの年から最低1泊2かの入院による治療を行うようになり、入院手術が増えたこと。平成18年からの減少はALTA療法の導入と、ALTA療法の件数が増加したことが影響したと思います。
さらに、平成20年の診療報酬の改定で、有床診療所の入院基本料に加算できる。加算100点が算定できず、入院基本料が大幅に減少したことが大きく影響しています。また内痔核の入院手術と比較してみると、やはり平成17年からLEの減少とALTA療法の増加が影響していると考えます。ただ、内痔核の入院治療が増加している要因に、ALTA療法によってこれまで手術に踏み切れなかった患者さんの需要が増えてきていることがあり、ALTA療法の点数も増加したことから、今後のポイントとなると考えます。
さらに平均入院期間の短縮も入院点数の減少の原因と思われます。この傾向は今後も変わらないと思います。
まとめです。
京都市の西陣という立地環境が肛門疾患単科での開業を可能にしている。
小規模有床診療所の経営を維持するには新患数の増加と手術件数の増加が必要である。
肛門科単科での外来の一人当たりの診療報酬の単価が低いので入院治療も収入に大きな影響を与える。また技術料の変化で大きく診療報酬の点数がかわってくる。
ALTA療法の出現だけではなく、時代の流れが短期入院の方向になっており、平均入院日数が短くなる傾向は今後も変わらない。
ALTA療法の出現で、手術に踏み切れなかった患者の需要を増やしていると考える。この点も今後のポイントとなってくると考えます。
抄録を紹介します。
抄録
当院における過去12年間の診療実績を検討した。
【当院の概要】
当院は京都市の西陣にある肛門疾患のみに特化した有床診療所(19床)である。現在、常勤医師1名、看護職員6名、事務員2名、当直(看護要員)5名の計14名で構成。入院は肛門疾患の術後の患者のみで、重度の合併症等のある患者は、術後に連携病院に入院又は連携病院で手術を施行している。手術は全例局所麻酔で行っている。
【検討項目】
H10年からH21年までの12年間について以下の5項目を検討。1)年間総患者数及び年間総新患数の推移。2)診療報酬の総点数及び外来入院別点数。3)国民健康保険及び社会保険の年間の総点数、入院点数、外来点数の推移。4)平均入院日数の推移。5)ALTA療法の出現で、治療法に大きな変化のあった内痔核の入院治療の推移。
【結果】
1)年間総患者数は2430人から3252人へ、年間総新患数も2165人から2816人へと徐々に増加。年間総患者数―年間総新患数も265名から436名と増加傾向にある。
2)診療報酬総点数は12年間ほぼ横ばい状態である。入院点数と外来点数は、H17年から19年の3年間のみ入院点数が多い以外は外来点数が上回った。H12年からH16年まで徐々に入院点数が減少傾向にあり、この間外来点数の増加を認めた。
3)国民健康保険と社会保険との比較では、いずれの年も国民健康保険が上回っている。
4)平均入院日数は全疾患ではH12年の8.5日をピークに減少しH21年は3.4日と60%減となった。
5)内痔核の入院治療はH15年16年と減少し、H17年以降平均307件と横ばいである。H18年からALTA療法の導入でLEは減少しH21年で116例と62%減となった。ALTA療法導入後これに合わせて平均入院日数も減少しH13年の9.9日からH21年は2.8日へと72%減となった。
【今後の展望】
基本的であるが小規模有床診療所の経営を維持するには、新患数を増加させ手術件数を増やす工夫がさらに重要になってくる。またALTA療法の出現で平均入院日数が短くなり、この傾向は今後かわらないと思われる。有床診療所の経営には入院治療での収入も大きな影響を与えるため、外来だけでなく入院治療を今後も継続し充実させていく必要がある。
「ドライカレー」のレシピを紹介します。
今回は「ドライカレー」のレシピを紹介します。
「ドライカレー」で思い出すのは、私が大学、そして大学の附属病院に勤務していたころのことです。
私は、日本大学の医学部の出身です。大学は板橋区にあって、私は大学の近くの大山というところに住んでしました。
大学に続く道に「Dino」というお店があって、そこのドライカレーがとても好きで時々食べにいっていました。皮ジャンをきて大型バイクに乗る。そんな感じのご夫婦がしているお店でした。
一人暮らしをしているころ、カレーは作ったことがありましたが、ドライカレーは作ったことがありませんでした。
刺激物は肛門に悪い。辛いものはお尻に悪いと思っている方がいらっしゃると思いますが、そんなことはありません。寒い時期も暑い時期も、チョット辛めのカレー、美味しいですよね。
一度作ってみて下さい。
「ドライカレー」
材料(2~3人分) |
合びき肉 120g 玉ねぎ 1/2個 茄子 1本 ニンニク 1/2片 オリーブ油 小さじ2 塩、コショウ 少々 カレー粉 大さじ1~1.5 トマト缶 1/2缶 コンソメ(キューブ) 1個 ウスターソース 大さじ1 ハチミツ 小さじ2 |
パセリ 適量
作り方 ① 玉ねぎ、茄子、ニンニクはみじん切りにする。 ② フライパンにオリーブ油、ニンニクを入れ、弱火で香りが立つまで じっくりと加熱する。 ③ ひき肉、玉ねぎ、茄子を炒め、しんなりとしたら塩、コショウ、 カレー粉を加えてさらに炒める。 ④ ★の調味料を加えて汁気が無くなるまで煮詰める。 ⑤ 器に盛り、刻んだパセリを散らしたら出来上がり☆ |
サラダや焼き野菜を盛ると、ワンプレートランチにぴったりです♪
ALTA療法施行に際しての痛みの検討(第66回日本大腸肛門病学会)
今回はALTA療法(ジオンによる四段階注射法による痔核硬化療法)を行った際に痛みを感じることがあります。
痔核硬化療法は痛みの感じない内痔核に硬化剤を注射する治療法です。ですから、痔核硬化療法を行う場合は、どんな硬化剤を使っても痛みを感じないことが原則です。ただ、ALTA療法を施行した際に痛みを感じることがあり、今回はこのALTA療法施行時の痛みに関して検討しました。
その内容を紹介します。
「ALTA療法施行時に際しての痛みの検討」に関して。
発表内容
内痔核に対して、適応を見極めることでALTA療法でも根治的な治療が可能になりました。しかし、ALTA療法を施行する際に不適切な部位にALTAを投与すると、痛みを伴い、副作用を生じることがあります。痛みを伴わないように施行することが重要です。
今回、ALTA療法の施行時及び、施行後の痛みに関して検討しました。
平成18年6月から平成22年7月までにALTA療法を施行した687例、男性489例、女性198例、平均年齢56.6歳を対象としました。
ALTA療法は、全例左側臥位で、1%塩酸プロカインによる局所麻酔下に施行しました。
方法はALTA療法施行時、及び施行後の痛みに対して診察と問診による聞き取りと、患者アンケート調査での痛みをそれぞれ検討しました。
診察問診では、痛みの程度を「痛くない」、「少し痛い」、「痛い」、「すごく痛い」の四段階で、 また患者アンケートでは「全く痛くない」を0%、「痛い」を100%としてA~D群の四段階に分けて検討しました。
まず、診察問診による痛みですが、ALTA療法施行時の痛みは、「痛くない」が96.1%、で1時間後では56%、3時間後では74.8%でした。
1時間後に消炎鎮痛剤の内服は44.5%、3時間後に消炎鎮痛剤の坐薬を使用したのは3.5%でした。翌日にも消炎鎮痛剤の坐薬を使用したのは0.4%でした。
1時間後に何らかの痛みを認めたのは44%ありますが、この原因の一つには、局所麻酔がきれていく際の肛門の収縮も一因になるのではないかと思います。
また、3時間後の痛みは、局所麻酔を施行する際に何回も穿刺するので、この痛みもあるのではないかと思います。
消炎鎮痛剤の投与まで必要だった症例は3時間後で3.5%、翌日で0.4%でしたが、この原因としてはALTAが投与する際に一部が歯状線を越えて肛門側まで拡散したり、粘膜下層を超えて拡散した可能性もあると考えます。
痛みに関するアンケートの結果です。アンケート回答数は366人、53.3%、男性262人、女性104人、平均年齢59.5歳でした。痛みの程度を0%から100%までを、A群からD群までの4段階に分けて検討しました。
アンケートの結果ですが、ALTA療法施行中の痛みは、B群以上が60%、施行後の痛みもB群以上は52.1%でした。
排便時の痛みもB群以上は23.2%ありました。ALTA療法施行後の排便時の痛みが消失した期間は2.3日でした。
診察、問診による痛みと、患者アンケートでの痛みの程度をみてみると、ALTA療法施行時の痛みに関しては、診察、問診では「痛くない」が96.1%であるのに対して、アンケートではA群が40.0%とかなりの痛みに関する結果の乖離がみられます。
ALTA施行後の痛みに関しても診察、問診では1時間後、3時間後で「痛くない」がそれぞれ56%、74.8%であるのに対して、アンケートではA群は47.9%と施行後の痛みにかんしてもそれぞれの間でかなりの乖離を認めます。
この痛みの程度の乖離の要因はなんであるかはなかなか難しい問題だと思います。診察、問診での痛みは、実際は痛かったのに痛くないと患者側が答えているのか?またアンケートでの痛みの中には、ALTA療法を施行中、施行後の違和感なども含まれているのか今後の検討は必要と思います。会場の先生方のご意見がいただければと思います。
ALTA療法を施行するにあたって極力副作用を出さないように施行していかなければなりません。特にALTAを局注する際の痛みに関しては注意していかなければなりません。
医師や看護師の診察や問診での痛みと、実際に感じている患者の痛みには乖離がある事を十分に認識してALTA療法を施行し経過を診ていく必要があると考えます。
抄録も紹介します。
Goligher分類のⅢ度以上の内痔核に対しても、適応をしっかり見極めることで、硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸注射液(以下ALTA)による四段階注射法による痔核硬化療法(以下ALTA療法)でも根治的な治療が可能になった。
ただ、ALTA療法を施行する際に副作用もあり、その対策が重要となる。特に痔核硬化療法を施行する際には、筋層にALTAを投与すると痛みを伴い、副作用を生じることがある。痛みを伴わないように施行することが重要となる。
今回、我々は、ALTA療法施行時及び施行後の痛みに関して検討した。対象:H18年6月~H22年7月までにALTA療法を施行した687例、男性489例、女性198例、平均年齢56.6歳を対象とした。ALTA療法は左側臥で、全例1%塩酸プロカインによる局所麻酔下に四段階注射法を遵守して施行した。
方法:ALTA療法施行時及び施行後の痛みに関して、診察及び問診による聞き取りと、患者アンケート調査での痛みをそれぞれ比較検討した。アンケート回答数は366人(53.3%)で、男性262人、女性104人、平均年齢59.5歳であった。診察・問診では「痛くない」、「少し痛い」、「痛い」、「すごく痛む」の四段階で検討し、アンケート調査では痛みの程度をA群~D群の4群に分けて検討した。また、消炎鎮痛剤の投与状況についても検討した。
結果:診察・問診での痛みに関しては、ALTA施行時、1時間後、3時間後は「痛くない」96.1%、56.0%、74.8%「少し痛い」3.6%、26.2%、22.7%、「痛い」0.3%、17.5%、2.5%、「すごく痛む」0%、0.3%、0%であった。アンケートではALTA施行時、施行後の痛みはA群40.0%、47.9%、B群43.8%、34.0%、C群1.7%、6.4%、D群14.5%、11.7%であった。ALTA療法施行後1時間後に消炎鎮痛剤の内服は306例44.5%、3時間後に消炎鎮痛剤坐薬挿入24例3.5%、翌日坐薬使用は3例0.4%であった。
まとめ:痔核硬化療法を施行する際、筋層まで投与することで、疼痛が生じ、直腸潰瘍等の合併症の原因となる。したがって、痛みを伴わずに痔核硬化療法を施行する必要がある。今回、ALTA施行時、施行後に診察・問診及びアンケートで何らかの痛みを認めた症例があり、ALTA療法は、四段階注射法を遵守し、経過を通じ常に疼痛に関しては十分注意することが重要である。
裂肛及び便秘における男女差の検討(第67回日本大腸肛門病学会)
今回は、裂肛と便秘について発表した内容を紹介します。
裂肛(切れ痔)の原因は便秘や下痢などの排便の状態が悪いことが原因となります。特に便秘によって排便時のい肛門に傷がついて痛みが出る病気を裂肛(切れ痔)といいます。裂肛は転んで怪我をするのによく似ています。便の状態で肛門に傷がつき、痛みが出る。それを繰り返すことによってだんだん慢性の裂肛になっていきます。やはり裂肛の治療は、裂肛そのものを治すことも重要ですが、裂肛の原因となる排便の状態を良くすることが重要になります。
今回はその裂肛と便秘について紹介します。
発表内容
裂肛の原因の一つに便秘があります。そこで、当院における便秘症例と裂肛に関して、男女の差を比較検討しました。
平成7年12月から平成24年4月までに受診した総患者数は25928人、男性13163人、女性12765人、平均年齢は51.9歳。そのうち、カルテに便秘症という診断名がついた患者は3196例、男性1093例、女性2103例、平均年齢56.9歳。裂肛は4823例、男性1919例、女性2904例、平均年齢43.1歳。裂肛手術症例は1480例、男性549例、女性1480例、平均年齢42.1歳で、これらを対象としました。
方法は、対象をA群からI群まで10歳間隔に9群に分け、便秘症、裂肛症例、裂肛手術症例に関して男女の差を比較検討しました。
患者総数に関しては、男性対女性は1:1と差は認めず、さらに各群とも男女差は認めませんでした。 便秘症例では、男性対女性は1対1.9と女性は男性のほぼ2倍でした。また、男性では年齢とともに増加しH群でピークであったのに対して、女性では、二峰性となり、C、D群20代30代でまず最初のピークを認め、それ以降は男性と同様に年齢とともに増加し、H群で二つ目のピークを認めました。
裂肛症例では男性対女性は1対1.5と女性に多く認めました。男女ともほぼ同じ傾向を認め、男性ではD群、30歳代にピークを認め、女性ではC群、20歳代にピークを認めました。
裂肛手術症例では男性対女性は1対2.7と女性に多く認めました。裂肛症例と同様にC群、20歳代にピークがあり、年齢とともに漸減しました。男性では、E群40歳代にピークを認め、年齢と共に漸減しました。
裂肛症例と手術症例を比較すると、女性では裂肛症例と手術症例のピークは一致して20歳代にピークがあるのに対して、男性では手術症例がE群40歳代とピークがややずれる傾向を認めました。
便秘症例と裂肛症例及び手術症例を比較してみると、女性ではC、D群で便秘症例、裂肛症例、手術症例が一致するものの、それ以外では、男女とも年齢とともに便秘症例が増加するものの、裂肛症例、手術症例と一致しませんでした。
まとめです。
便秘に関しては、女性のC群、D群を除くと男女とも年齢とともに便秘症例は増加しました。このことは、加齢とともに腸管の蠕動運動の低下や、食事の摂取量、運動量の減少など、男女ともに共通した原因によるものと思われ、女性のC群、D群での便秘症のピークを認めるのは、女性特有の原因だと考えます。黄体ホルモンなどによる原因や、出産、子育てなどの社会的な影響もあると考えます。
また便秘と裂肛の関係をみると、女性のC群、D群を除いて、年齢とともに便秘症例は増加していくのに対して、裂肛症例、手術症例は増加せず一致しません。このことは、裂肛の原因を考えるうえで、便秘だけでなく内肛門括約筋の緊張の強さなどの要因も含めて考えていく必要があると考えます。
抄録も紹介します。
抄録
当院における便秘と裂肛に関して、男女の差を比較検討した。
【対象】平成7年12月から平成24年4月までに当院を受診した患者数は25928人(男性13163人、女性12765人、平均年齢51.9歳)で、カルテに便秘症という診断名が付いた患者は3196人(男性1093人、女性2103人、平均年齢56.9歳)、裂肛は4823人(男性1919人、女性2904人、平均年齢43.1歳)、裂肛手術は1480人(男性549人、女性1480人、平均年齢42.1歳)で、これらを対象とした。 【方法】対象を10歳以下(A群)、11~20歳以下(B群)、21~30歳以下(C群)、31~40歳以下(D群)、41~50歳以下(E群)、51~60歳以下(F群)、61~70歳以下(G群)、71~80歳以下(H群)、81歳以上(I群)の9群に分け男女の差を便秘、裂肛、裂肛手術に関して比較検討した。【結果】患者総数には男女差は認めなかった。便秘では、男性では年齢と共に人数は増加し、H群でピークになった。女性は二峰性で、C群、D群で一端ピークを認め、E群以降、男性と同様に年齢と共に増加し、H群でピークとなった。裂肛では男女ともほぼ同じ傾向を認め、男性ではD群に、女性ではC群にピークを認めた。裂肛手術では女性では裂肛同様にC群でピークを認め、年齢と共に減少した。男性では裂肛のピークとはややずれ、E群にピークを認め、年齢と共に減少した。だた、減少の程度は、男性で緩徐であった。
【まとめ】便秘に関しては、女性のC群、D群を除くと、男女とも年齢と共に増加した。このことは、加齢とともに腸管の善導運動の低下や、食事の摂取量、運動量の減少など男女ともに共通した原因があると思われる。また女性のC群、D群の便秘は、女性特有でやはり黄体ホルモンによる腸管運動の抑制などが関与していると思われる。便秘と裂肛の関係をみると、年齢と共に便秘は増加する傾向にあるが、これに一致して裂肛が増えていない。このことは、年齢とともに便秘が増えるのに反して、内肛門括約筋の緊張が低下していくことにもあると思われる。やはり、裂肛の原因を考える際に便秘だけでなく、内肛門括約筋の緊張の強さなど様々な要因を合わせて考え検討する必要がある。
ジオンによる痔核硬化療法(ALTA療法)について紹介します。
これまで、内痔核に対して痔核根治術をしなければ治らなかった内痔核もジオンという痔核硬化剤での痔核硬化療法(ALTA療法)で痛みなく治すことが出来ます。全ての内痔核を治すことはできませんが、ALTA療法で治すことが出来れば、傷もできず、痛みなく治すことが出来ます。
痔核硬化療法を行いう際に使う痔核硬化剤には2種類あります。
痔核硬化療法に使用する痔核硬化剤には前回紹介した、パオスクレ―といってアーモンドのオイルの中に5%の割合でフェノールが入っている痔核硬化剤と、今回紹介するジオンといって硫酸アルミニウムの水溶液の中にタンニン酸が入っている痔核硬化剤の2種類が今、健康保険での保険適応の治療薬になっています。
痔核硬化療法は内痔核の治療薬です。渡邉医院では、内痔核の程度によってそれぞれの痔核硬化剤を使い分けています。
内痔核はその程度で4段階に分類されます。
第1度の内痔核は排便時に出血したり、違和感がありますが、内痔核が肛門の外に出てくる脱出という症状がないもの。
第2度の内痔核は排便の出血だけでなく、排便時に内痔核が肛門の外に出てくる脱出という症状が出てきます。ただ、直ぐに自然に戻る程度の内痔核です。
第3度の内痔核は排便時に出血し、脱出もしてきます。しかも自然に戻らないので、指で押し込む程度の内痔核です。
第4度の内痔核は、常に肛門の外に内痔核が脱出し、戻すことが出来ない程度の内痔核です。
渡邉医院では、第1度、第2度までの内痔核に対しては、パオスクレ―による痔核硬化療法を、第3度の内痔核に対してはジオンによる痔核硬化療法を基本的な治療方針にしています。
パオスクレ―は特に出血を抑えるのに有効で、ジオンは脱出する内痔核の治療に有効です。
さて、今回はジオンによる痔核硬化療法について紹介します。
ジオンという痔核硬化剤で、四段階注射法という方法で痔核硬化療法、注射での治療方法をALTA療法といいます。
ALTAは、ジオンの有効成分である「硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸」の英名ALuminum potassium sulfate hydrate・Tannic Acidの頭文字をとってALTAと略しています。
四段階注射法と呼ぶのは、1カ所の内痔核に対して、四段階に分けて4か所注射していくので、四段階注射法といいます。しっかりと四カ所にジオンを注射していくことがALTA療法では重要です。ですから3箇所内痔核がある場合は全部で12ヶ所注射して治していきます。注射する部位は粘膜や粘膜下層に注射します。この部分は痛みの感じない部分なので、注射しても痛みはありません。したがって、もし痔核硬化療法をしている際に、痛みが出た場合は、注射の針先が少し深く粘膜下層を超えて筋肉の層まで針が刺さって注射をした場合か、肛門の皮膚の部分、肛門上皮に注射した場合です。この痛みの感じる部分に注射してはいけないので、ALTA療法を受けている時に、痛みを感じたらすぐに「痛い」ということが大切です。
さて、ジオンによるALTA療法の一番の特徴は、傷ができないことです。このことがジオンの最大の売りだと思います。この一番の利点を最大限に生かして治療することが大切だと思います。
最近、手術とALTA療法の併用療法が行われています。併用療法を行う場合は、内外痔核といって、肛門の出口から2~3㎝奥の粘膜の部分に内痔核ができますが、この部分が腫れるだけでなく、この2~3㎝の皮膚の部分を肛門上皮と言いますが、この肛門上皮の部分が腫れてくるのを外痔核といいます。この内痔核と外痔核が共に腫れているのを内外痔核といいます。ALTA療法は内痔核には有効ですが、外痔核には効き目が悪いです。どうしても外痔核部分の腫れが強い場合は、この部分がしっかり治らない場合があります。ALTA療法と手術の併用はこの外痔核部分を手術で切除して内痔核部分をALTA療法をするという方法です。
ただ、外痔核部分の腫れがある程度あっても、内痔核部分の腫れが大きいものなど、内外痔核に対してもALTA療法だけで十分に治ることが多いと思います。したがって、内痔核の性状をしっかり観察して、ALTA療法が有効かどうかを的確に判断する必要があります。
また手術との併用ですが、外痔核部分を切除するとやはり、排便に痛みや出血があります。そうすると、ALTA療法の一番の売りである、傷が出来ずに痛みがないといった特徴を生かすことができません。また外痔核部分を切除するのと、内痔核まで手術するのでは手術手技的にもあまり差はありません。
やはりジオンによるALTA療法で治せる内痔核はALTA療法で、外痔核部分の腫れが強く、この部分の切除がどうしても必要と判断した場合は、しっかりと痔核根治術で切除することが大切ではないかと思います。
ジオンによる痔核硬化療法は、全ての内痔核に対応できる、オールマイティの治療方法ではありません。ジオンで治る内痔核には条件があります。内痔核の性状をしっかり観察して、ALTA療法が有効であるかどうかをしっかり見極めることが必要です。
ジオンによるALTA療法は傷が出来ず、痛みがなくとても楽な治療方法です。でも適応を間違えると、治らないばかりか、副作用などがでてしまうこともあります。内痔核の性状によっては、痔核根治術による手術が必要な内痔核もあります。今悩んでいる内痔核をしっかり治すということを考えると、自分の内痔核がどんな内痔核なのかをしっかり診断してもらって、最良の治療方法を決める必要があります。