「パプリカのピクルス」のレシピを紹介します。
今回は「パプリカのピクルス」のレシピを紹介します。
ピクルスって少し酸っぱくて、その酸っぱさが美味しいですよね。いろんな野菜がピクルスになりますよね、時々寄せていただくお店には、大根、ニンジン、ヤングコーン、きゅうり等々いろんな野菜をピクルスにして出して下さいます。その中でも、みょうがのピクルスが結構気に入っています。ピクルスをつまみにお酒を飲む。会いますよ!
今回は、パプリカのピクルスのレシピを紹介します。
「パプリカのピクルス」
材料(作りやすい量)
1瓶 130kcal 食物繊維 4.5g
・玉ねぎ 1/2個
・赤パプリカ 1/2個
・黄パプリカ 1/2個
・塩 小さじ1/2
・砂糖 大さじ1
・ 酢 大さじ2
・粒マスタード 小さじ2(お好みで)
作り方
① みじん切りにし、塩でもんで絞る。
② 鍋に調味料を入れ、煮立ったら①を入れる。
③ 再び沸騰したら火を止めて清潔なビンに入れる。
管理栄養士さんからひと言
ちぎっただけのレタス・焼いた魚や肉の上にのせるだけで華やかになります。
タルタルソースも茹で卵とマヨネーズを混ぜるとすぐにできます。
作っておくと便利ですよ。
★塩分が気になる方に★
酸味や香辛料を上手に使うと塩分が少なくてもおいしく召し上がれます
「きゅうり2種」のレシピを紹介します。
今日は「きゅうり2種」のレシピを紹介します。
きゅうりの旬の時期は、6月から8月の夏です。
先日、母と一緒に近くの居酒屋さん行ったとき、サラダに入っていたきゅうりが、ポリポリ、パリパリ美味しく、また、ご主人が出して下さったきゅうりのお漬物がおいしく、ついついきゅうりの気分になってしまいました。そこで、明太マヨQを頼みました。明太子とマヨネーズを合わせたものを生のきゅうりにつけて食べるのですが、やっぱり旬のきゅうり。ポリポリ、パリパリ美味しかったです。
さて、今回は「たたききゅうり」と「きゅうりとハムの炒め物」のきゅうり2種のレシピを紹介します。簡単にすぐに作れるので試してみてくださいね!
「たたききゅうり」
材料(2人分)1人分 10kcal 食物繊維 0.8g
・きゅうり 1本
・ 梅昆布茶 小さじ1/2杯
作り方
① きゅうりをたたいて割り、ひと口大に切る。
② 梅昆布茶で和える。
「きゅうりとハムの炒め物」
材料(2人分)1人分 40kcal 食物繊維 0.8g
・きゅうり 1本
・ロースハム 2枚
・オリーブオイル、塩コショウ
作り方
① きゅうりを縦半分に切って斜めに切る。ハムは短冊切り。
② 塩コショウ、オリーブオイルで炒める。
管理栄養士さんからひと言
★きゅうり★
夏にたくさん出回るきゅうりはほとんどが水分で低カロリーの野菜です。
生で食べることが多いですが、炒め物のほか煮物にしてもおいしいです。
手術を受けた患者さんアンケートPart3
手術を受けた患者さんアンケートの最後の検討は、術後の患者さんの不安についての検討です。
[5]術後の患者の不安について。
最後に術後の患者の不安についてのアンケートの結果を紹介します。回答は、「出血と痛み。」などと複数回答もありますが、やはり術後の一番の不安は「術後の出血」で28.1%でした。次が「痛み」で26.7%、次いで「排便がうまくでるか」が19.4%でした。「不安がない」という人も16.0%あり、これらで全体の90.2%でした。残りの9.8%は、「術後再発しないか?」、「術後どの程度でよくなるのか」、「術後どの程度入院が必要なのか」、「術後経過よく治っていくか」、「肛門が正常に機能するか」など、術後の傷が順調に治っていくかどうかを心配する人が多かったようです。
術後の痛みについては、今まで述べてきた痛みに関するアンケートの結果を示してあげればいいと思いますが、術後の出血に関しては、完全に創が治ってしまえば別ですが、「何月何日以降は、出血しません。」と断言できないところがつらいところです。また、出血に対しては医者側の心配する出血と、患者さんの心配する出血とは多少異なっています。
医者にとっては、出血に対して止血術をおこなったり何らかの外科的処置をしなくてはならない早期出血や、晩期出血に神経をつかいます。
一方患者さんにとっては、早期出血や、晩期出血も心配なことですが(術前にこれらの出血について説明することも要因と思いますが)、創部にあててある綿花についている出血や、排便の際の出血が心配だったり、これらがいつまで続くのかに気をまわしたりします。
当然といえば当然ですが、医者が特に心配していない出血が患者さんにとってはとても重大なことになります。
アンケートの中には、「どの程度の出血が心配でなくほっておいていいのか、どのくらい出血したら困った出血なのかわからない。」と答えたものもありました。
当院では、出血についての説明を次のようにしています。当院での術後の早期出血はほとんどが術後3時間以内におきています。そこで患者には術直後に「術後1時間目と3時間目に術後の傷を見ます。うちでは術後早期の出血は3時間以内にほとんどがおきています。3時間目に出血していなければ、今日は困った出血はおきません。」とまず説明します。
術後3時間目に診察したときには、「困った出血はありません。ただ傷はあるので、あててある綿花に血がついていたり、排便のときにポタポタ落ちる程度の出血がありますが、これは心配ありません。便がしたくなったら迷わずしっかり出して下さい。」と説明しています。
術後1日目に手術についてや、今後の傷の治りについてのだいたいの予定を説明しますが、晩期出血については、「術後7〜10日目ごろにおきる出血のことを晩期出血といいます。これは、内痔核の根元を縛った糸がはずれるころに、糸がはずれたということだけが原因でなく、周囲の壊死組織が炎症をおこしたりすることなどでおきる出血のことです。」と説明します。
また出血のしかたについても、「7〜10日間のあいだに傷がある程度治っているので、傷口から流れ出てくるような出血はありません。内痔核の根元を縛ったところからの出血なので、直腸のなかにだんだん血がたまり、便意を感じます。排便してみると血の塊がゼリー状にでてきます。これが頻回におき、下痢のようになります。」
いつのまにか出血するということはなく、下痢のように出血するので、患者さん本人が必ずわかるということも教えてあげる必要があると思います。ただ手術をした人皆が出血するのではないので、「内痔核の手術をしている病院の全国の平均で約0.5%の人にこういう出血がおきます。」と説明しています。
この説明だけで十分かどうかはわかりませんが、参考にして下さい。このように、出血一つをとっても必ず医者と患者とのギャップはあります。このギャップを理解して、これをうめるように医者は努力していかなければならないと思います。
最後に前にも述べましたが、最近Day Surgery (日帰り手術)が注目されています。ただこれをおこなうにあたって、誰のためのDay Surgery なのかをしっかり考えなければなりません。医者側の立場だけでおこなって、手術はしたものの毎日救急車で通院しているなど困ったことになりかねません。本当に外来手術でできるのか?術後の処置が患者さん本人でできるのか?術後の不安が十分とれているか?など患者側の立場で考えていかなければなりません。これが私たち医者が忘れてはならないことだと強く感じます。私の感じていことがわかっていただければと思います。
手術を受けた患者さんアンケートPart2
今回は、手術中の痛みと手術後の痛みの関係や、麻酔の際の痛みと手術後の痛みについて患者さんのアンケートを基に検討しました。
[4]術中の痛みと術後の痛みの関係
術中の痛みが楽な人ほど術後の痛みが少ない印象があったので、実際にアンケートではどうかをみてみました。自分が思っていた痛みを100%ととして、実際感じた痛みを表した結果は次のようです。
術中の痛み 術後の痛み 麻酔の痛み
10%以下(106例)27.3% 33.9%
11〜20%(40例) 38.8% 34.3%
21〜30%(62例) 46.1% 47.5%
31〜40%(9例) 32.8% 52.2%
41〜50%(45例) 54.1% 57.0%
51〜60%(9例) 61.1% 66.7%
61〜70%(8例) 62.5% 63.8%
71〜80%(9例) 52.9% 78.7%
81〜90%(5例) 88.0% 92.0%
91〜100%(6例) 61.7% 76.7%
100%以上(1例) 120% 60%
術中の痛みが強くなるにしたがって術後の痛みは強い傾向にあります。また、麻酔の痛みも同様にだんだん痛くなるようです。ただ術中の痛みも自分の思っていた痛みと比較して、50%以下だと答えた人が全体の87%を占めていますし、術中の痛みが50%以下の人の術後の痛みは、平均39.8%でした。
術中の痛みを50%以下の人に限定して、麻酔の痛みと術後の痛みについてさらにみてみるとつぎのようになります。
術中の痛み 麻酔の痛み 術後の痛み
50%以下 10〜19%(31例) 22.9%
50%以下 20〜29%(36例) 27.2%
50%以下 30〜39%(60例) 37.2%
50%以下 40〜49%(10例) 41.0%
50%以下 50〜59%(51例) 43.5%
50%以下 60〜69%(16例) 55.6%
50%以下 70〜79% (20例) 52.3%
50%以下 80〜89% (7例) 50.0%
50%以下 90以上 (22例) 51.8%
麻酔の痛みが自分の思っていた50%以下の人では、痛みが軽い人の方が、術後の痛みがも軽度ですが、麻酔の痛みが50%以上になると、麻酔の痛みにかかわらず術後の痛みはほぼ一定になっています。したがって、麻酔の痛みが強くても術後の痛みとすぐに結びつくものではないと考えていいのではないかと思います。
以上のことから、術中の痛みと術後の痛みは関連があり、麻酔の痛みと術後の痛みとはすぐに結びつかないことを考えると、麻酔の時の痛みに弱いから、痛がりだからといってそれが術後の痛みに関係してくるのではなく、術中の操作など余計な痛み感じさせずに手術をすることが術後の疼痛を和らげる一つの方法と考えます。また麻酔の痛みに関しては、術後出血をきたして、再度麻酔をして止血する際、最初の痔核根治術を施行したときより同じことをしているのですが麻酔の痛みが強く感じることがあります。これは最初の手術はある程度覚悟をして麻酔・手術を受けているのに対して、止血術は突然で、予期していなかったことです。これだけのことでも痛みの感じ方がちがってくるものだと思っています。このことからも、手術をうける患者さんに十分説明し、納得してもらえれば手術に対する不安が取り除け、術前からある程度、術後の疼痛をとってあげれるといっても言い過ぎではないと思います。
手術を受けた患者さんアンケートの検討Part1
渡邉医院では、手術を受けられて入院された患者さんにアンケートをとっています。ほとんどの患者さんがこのアンケートに答えてくださっています。
患者さんの生の実際に感じた声を聞くことができ、とても参考になります。渡邉医院をよりよくするために、このアンケートの患者さんの声は大切だと感じています。
以前、このアンケートの結果をまとめ、検討したものがあります。今回はこのアンケートの検討について3回に分けて紹介します。
このアンケートをまとめたものは、「渡邉肛門科標準術式」という本を出すときに検討した内容です。この本も、当初は、自分のやっていることを、後輩に残せればいいなという思いで企画したものでした。
ではアンケートの検討についてご紹介します。
「アンケートの検討」
術前・術中・術後の管理など医者側からの考えをまとめたものは多くみられますが、患者側の立場で書いてあるものは少ないと思います。たとえば、出血ということについては、医者の立場では早期出血や晩期出血など、止血術を行わなければならなかったり、止血術を行わないまでも厳重に観察していかなければならない出血が問題となります。またこういう出血が医者を悩ませストレスを感じることです。
患者側に立つと、このような出血も問題にはなりますが、排便時にポタポタと落ちる程度の出血や、創部にあててある綿花に付く出血がとても気になり、排便時の出血の有無に一喜一憂し、これが患者側のストレスになります。
このように出血ということだけでも医者の考えていることと患者さんの考えていることでは大きな違いがあります。したがって治療する立場の医者としては、患者さんがどのようなことに不安をもっているのかは十分理解する必要があると思います。
最近 Day Surgery (日帰り手術)が注目され、今後さらに適応が広がっていくと思いますが、これも医者側の思惑だけの Day Surgery では成り立たず、患者さん不在の治療になってしまいます。やはり術前から十分に手術の内容や方法を患者に説明するだけでなく、麻酔の際や、術中、術後の痛みがどの程度のものなのか、術後何かトラブルが起きた際にどのように対処したらいいのかなど、より具体的に説明して、患者さんの不安を取り除いてあげる必要があると思います。
当院を受診される患者も、周りの人から「痔の手術はすごく痛いよ。手術の後はウンウンうなっているよ。」などと、おどかされて来る人もいれば、そうでなくても「肛門疾患の手術=とても痛い!」とゆう方程式を即座に頭に思い浮かべる人が多いと思います。実際に、手術をするのに迷った人の63%が手術中、手術後の痛みが不安であり、迷う原因だったとアンケートに答えています。実際の患者さんの声をとどけ、十分に患者さんの不安を取り除いてあげるのに次のアンケートの結果が役に立てばと思います。
アンケートは手術を施行した420名の入院患者におこないました。回収率は100%でした。アンケートの内容は、麻酔の痛み、手術中の痛み、それと手術後の痛みについてそれぞれ1)思っていたほど痛くなかった。2)思っていたとおり痛かった。3)思っていた以上に痛かった。の三つに分けて簡単に回答してもらいました。また回答できる人には、痛みについて自分が思っていた痛みを100%として実際に感じた痛みを%でも表してもらいました。全ての項目について%で評価してくださったのは300名で、全体の71%でした。
[1]麻酔の痛みについて。
当院では麻酔は全て局所麻酔です。このため肛門の周囲に何回か注射針を刺さなければならないため、どうしても痛いのですが、結果は、
「1)思っていたほど痛くなかった。」が80.1%、「2)思っていたとおり痛かった。」が14.5%、「思っていた以上に痛かった。」が5.4%でした。また%で表してもらった平均の麻酔の痛みは48.9%でした。
局所麻酔ということで、術前そうとう麻酔は痛いと覚悟されてきたのか、実際に局所麻酔をうけてみると、自分の思っていた痛みの半分以下で、想像していたほどではなかったと言うことでしょう。「最初の数回は痛みを感じたが、途中から痛みは感じなくなった。」という回答が多かったです。肛門の周囲を何周も麻酔するため、表面の1週と、括約筋への最初の1週の痛みを我慢してもらえば、後は麻酔をした部分にさらに麻酔をしていくので、途中から痛みを感じなくなるのは当然ですが、このことを十分患者に説明しておくと、局所麻酔の恐怖を取り除いてあげられますし、あとどのくらい頑張ればいいのかのの目安にもなると思います。
[2]手術中の痛みについて。
手術中の痛みについては、「1)思っていたほど痛くなかった。」が93.1%、「2)思っていたとおり痛かった。」が4.1%、「3)思っていた以上にいたかった。」が2.6%でした。また%で表してもらった平均の術中の痛みは31.5%で、想像していた痛みの3割程度の痛みだったとの結果でした。痛みを感じたときで一番多いのが、痔核根治術の場合は、根部を結紮するときに痛みを感じることが多いようです。
これは内痔核が十分に剥離できてなく、つっぱりが残った状態で根部結紮をし、粘膜と静脈瘤だけを結紮するのではなく、一部筋組織を含めて結紮をしてしまったときにでる痛みだと考えています。また根部まで十分麻酔薬が浸潤していないこともあると思います。これは局所麻酔を追加したり、術中の操作で十分取り除くことができる痛みですし、これがまた術後の疼痛ともかかわってくると考えています。根部を結紮するときの痛みは、局所麻酔だからこそわかる痛みで、腰椎麻酔や仙骨硬膜外麻酔の際は、同じような操作をして、知らず知らずのうちに、術後の疼痛の原因をつくっていることもあると思います。この点については私たち医者側が十分気をつける必要があります。また痛みを感じたと回答した人のなかには、術中引っ張られたような感じがしたとか、手術中肛門鏡を挿入して、肛門を広げることがありますが、この時の違和感が強いとか、便が出そうになる感覚がつらかった、と答える人もいました。術中の痛みと術後の痛みの関係については後で述べますが、局所麻酔後に痛みなく十分肛門が広がる人や、術中の痛みが少ないほど術後の痛みが軽い傾向にあります。術中の痛みはできる限り少なくなるように心掛ける必要があると思います。
[3]手術後の痛みについて。
手術後の痛みについては、「1)思っていたほど痛くなかった。」が82.4%、「2)思っていたとうり痛かった。」が12.0%、「3)思っていた以上に痛かった。」が5.1%でした。また%で表してもらった平均の術後の痛みは44.3%で、想像していた痛みの半分以下だったとの結果です。想像していた痛みが20%以下だった人が全体の50%を占めていました。たいていの人が、「この程度の痛みだったらもっと早く手術をしたほうがよかった。」と答える人が多かったです。手術をするのを迷った人の63%が手術中、手術後の痛みがその理由になっていることを考えると、術後の痛みについて十分説明してあげる必要があります。
術当日の肛門痛は、あったとしても術直後と術後3時間目の消炎鎮痛剤の座薬の投与に加え、後は内服の消炎鎮痛剤でおさえることができます。術後1日目からは、排便時以外の普段の痛みは軽いのですが、排便時及び排便後の痛みがあります。次に排便時の痛みの消失期間について示します。これについては351人(84%)の方が回答しています。消失期間はつぎの様な割合です。
消失期間(日) (人) (%) 合計%
0 1 0.3 0.3
1 37 10.5 10.8
2 53 15.1 25.9
3 39 11.1 37.0
4 33 9.4 46.4
5 44 12.5 58.9
6 35 10.0 68.9
7 44 12.5 81.4
8 31 8.8 90.2
9 11 3.2 93.4
10 19 5.4 98.8
11 1 0.3 99.1
12 1 0.3 99.4
13 1 0.3 99.7
14 1 0.3 100
排便時の痛みが消失する平均期間は、4.9日でした。順調にいくと、術後7日目から10日目の間で全体の99%の人が、排便時の痛みが消失又はすごく楽になってくるようです。
痛みのとれかたもだんだん楽になるというよりは、この時期に急に痛みがとれ楽になるようです。
たまに冗談で、「本当に痛みが取れるのだろうか?先生は嘘をついているんじゃないか?と疑い始めたころに痛みは取れますよ。」(お互いに笑い)などといったりしています。術後の創もこの時期になるとおちついてきます。排便の際の痛みもこれにほぼ一致しています。患者の中には、完全に傷が治るまで排便時の痛みが続くものだと思っている人が多いようです。「傷が完全に治らなくても痛みはとれてきます、それも7〜10日間の間です。」と説明するといいと思います。
ただいつまでたっても排便時の痛みがとれないときは、特にドレナージの傷が完全に治っているにもかかわらず、排便時及び排便後の痛みが続く時は、肛門上皮の部分の傷が裂肛様に取り残されていることが多いです。このような場合は、いつまでもだらだら外用薬を投与していると、慢性の裂肛のようになって患者さんにとっては苦痛が長引くだけです。なかなか患者さんには言いにくいことかもしれませんが、ドレナージ創をもう一度作り直すなり、なにか外科的な処置をしてあげたほうが患者さんにとっては早く治りいいと思いますし、是非そうして欲しいです。
側方内肛門括約筋切開術施行前後の最大肛門静止圧の経時的変化について(日本大腸肛門病学会雑誌 第58巻 第3号 2005)
今回は、「側方皮下内肛門括約筋切開術施行前後の最大肛門静止圧の経時的変化について」の論文を紹介します。
裂肛は便秘や下痢などで排便時に肛門に傷がつく病気です。初期の場合は、排便の状態を良くして原因を取り除くことで裂肛は軽快していきます。
転んだ時の怪我と一緒で、排便の状態が良ければ治っていきます。でも切れたり治ったりを繰り返すことでだんだん慢性の裂肛になっていきます。この慢性化していく原因は、排便時の痛みを繰り返すことで、内肛門括約筋の緊張が強くなっていくことで、内肛門括約筋の緊張をとり、正常にすることで裂肛は治っていきます。裂肛を外科的に治す手術方法の一つが、側方皮下内肛門括約筋切開術です。
字が示すとおりに、肛門の横に約5mm程度(メスが挿入できる程度の傷)の皮膚切開を入れ、そこからメスを挿入して、緊張の強くなった筋肉を切開して、正常の緊張に戻す手術です。この側方皮下内肛門括約筋切開術を施行することで、内肛門括約筋の緊張の程度がどう変化していくかを、内肛門括約筋の緊張の程度を反映する最大肛門静止圧を測定し検討した論文です。
「側方皮下内肛門括約筋切開術施行前後の最大肛門静止圧の経時的変化について」
日本大腸肛門病学会雑誌 第58巻 第3号 164-168 2005
抄録
裂肛に対して術前の最大肛門静止圧(以下MARP)の違いで、側方皮下内肛門括約筋切開術(以下LSIS)がどのようにMARPの低下に影響を与えるか検討した。対象:対象は、H10年9月〜H15年3月までにLSISを施行した154例(男性50例、女性104例、平均年令41.8才)。方法:術前、局所麻酔後、LSIS施行直後、治癒時にMARPを測定。術前のMARPでA群(100mmHg未満)、B群(100-150mmHg未満)、C群(150-200mmHg未満)、D群(200mmHg以上)の4群に分類。局所麻酔後、LSIS施行直後、治癒時の低下度について比較検討した。結果:局所麻酔後の低下度はA群で有意に小さく、LSIS施行直後の低下度は各群間に有意差は認めなかった。治癒時の低下度は、術前のMARPが高いほど有意に大きかった。まとめ:術前のMARPが高いほど治癒時の圧が有意に低下し、また、MARPの術前、術中の経時的変化をみることが、LSISを施行する際に重要であると考える。
論文
はじめに
裂肛は、肛門疾患の中で頻度が多く肛門の3大疾患の一つとされている。1)裂肛の治療は、とくに急性期においては排便のコントロールなどの原因の除去や外用薬などによる保存的療法である。しかし、保存的療法でも効果が得られないものや、再発をくりかえすもの、また疼痛が原因で内肛門括約筋の緊張が強くなったり、内肛門括約筋の炎症によって線維化が生じ、肛門管の進展性が失われて器質的な肛門狭窄をきたしたものに対しては外科的処置が行われている。1)治療のポイントは、内肛門括約筋のspasmの除去と、線維化によって失われた肛門管の進展性を取り戻し、排便をスムーズにすることにあるとされている。2)
裂肛の外科的治療の第一選択として現在、側方皮下内肛門括約筋切開術(以下LSISとする)が主におこなわれている。1)LSISは、内肛門括約筋の緊張をとり、最大肛門静止圧(以下MARPとする)を下げることを目的としている。裂肛の治療方針を立て、LSISの適応を決めるのに肛門内圧測定が有用であり、内圧の高い症例においてLSISが有効であるとの報告がある。3)われわれは、MARPの測定はLSISの適応を決めるだけでなく、MARPの術前、術中の経時的変化をみていくこともLSISを施行する際の括約筋の切開の程度を判断する一つの方法になるのではないかと考えた。そこで、術前のMARPの値の違いによって、局所麻酔後やLSIS施行直後、さらに治癒時のMARPが経時的にどのように変化していくか測定し、局所麻酔やLSISがMARPに及ぼす影響について検討した。
対象
対象は、平成10年9月から平成15年までに保存的療法で軽快しなかったり、肛門ポリープなどを合併した慢性裂肛に対してLSISを施行し、1)術前(LSIS施行前)、2)局所麻酔後、3)LSIS施行直後、4)治癒時のそれぞれのMARPを測定した154例、男性50例、女性104例、平均年令41.8才とした。裂肛の箇所は、1箇所が109例、2箇所が36例、3箇所が9例であった。また、裂肛の部位は大きく前後左右の4方向で分けると、1箇所裂肛では前方24例、後方84例、右側1例であった。2箇所裂肛では、前・後方30例、後・後方4例、右側・後方2例であった。3箇所裂肛では、前・後・右側が7例、前・後・後方が1例、左・右・後方が1例であった。
なお、現在のところ全例治癒しており、再手術を要した症例は認めなかった。LSIS施行直後とは、術中にLSISを施行した直後であり、治癒時は、排便時の出血や疼痛がなく、自覚症状がなくなった時点とした。
最大肛門静止圧の正常値は各施設によって多少異なるが、正常値の上限が100mmHg以下が多く、4~6)当院でも100mmHgを正常の上限としている。
方法
術前(LSIS施行前)、局所麻酔後、LSIS施行直後、治癒時のMARPを測定。術前のMARPから154例を、A群(100mmHg未満)、B群(100mmHg以上150mmHg未満)、C群(150 mmHg以上200mmHg未満)、D群(200mmHg以上)の4群に分類した。次に、術前のMARPと比較して、局所麻酔をすることで術前のMARPの何%になったかを局所麻酔後の低下度として、局所麻酔後の低下度:局所麻酔後MARP/術前MARP×100と定義した。同様に、LSIS施行直後の低下度:LSIS施行直後MARP/局所麻酔後MARP×100、治癒時の低下度:治癒時MARP/術前MARP×100とそれぞれを定義して、A、B、C、D群間で比較検討した。
肛門内圧検査にはコニスバーグ社のカテーテル型圧力トランスデューサー(Model No.P31)を用い、被験者を左側臥位にしてトランスデューサーを挿入し、引き抜きで内圧を測定した。
手術の際の体位も左側臥位で行い、全例局所麻酔下で手術を施行した。局所麻酔薬は1%塩酸プロカインを用いて、まず肛門縁にそって皮下に全周にわたり浸潤麻酔を行い、次に内肛門括約筋に対して6時の方向から1mlづつ全周に局所麻酔を施行し、計20 ~30 ml局注する。局所麻酔後に全例にストレッチングを施行した。方法は、用指で前後左右にストレッチングを施行し、さらにアイゼンハンマー氏型肛門鏡を挿入して、3~4回ストレッチングを行う。またアイゼンハンマー氏型肛門鏡が挿入出来ない程度の狭窄がある場合には、用指のみのストレッチングとした。LSISはNotaras法で行った。肛門鏡を内肛門括約筋が索状に触れられるまで拡張し、肛門の3時の方向からNo10の円刃メスを内肛門括約筋に平行にして肛門上皮下に歯状線の手前まで挿入する。メスの刃を外側に向けて内肛門括約筋を切開する。切開の深さは、示指で切開部を圧迫して段差が感じられるまで切開した。LSIS施行後、二横指が柔らかく肛門内に挿入出来る程度に緊張をとった。術者およびMARPの測定者は、全例同一術者、測定者である。
統計学的な検討は、A、B、C、D群の4群間における分散分析を行ったうえで、各2群間の比較にはポストホック・テストで行い、p<0.05をもって有意差ありとした。
結果
A群24例、B群70例、C群41例、D群19例であった。治癒までの期間は、A群22.8±6.0日、B群25.3±8.9日、C群23.8±9.7日、D群25.3±8.1日で、各群間に有意差は認めなかった。
1)4群のそれぞれのMARP
局所麻酔後のMARPは術前のMARPが高いほど高く、D群では41.1±29.5mmHgとC群以外で有意にMARPが高かった。LSIS施行直後のMARPはB群とD群との間のみで有意差を認めた。(p=0.0073)治癒時のMARPはA群が他の群と比較して有意に低かった。
2)局所麻酔後の低下度
A群33.8±18.1%、B群22.7±12.8%、C群22.0±11.5%、D群17.9±12.6%であった。A群と比較してB群、C群、D群でそれぞれ有意に低下度が大きかった。(p=0.0006、p=0.0009、p=0.0002)
3)LSIS施行直後の低下度
A群62.0±31.3%、B群58.2±33.2%、C群53.2±25.2%、D群69.6±36.1%であり、それぞれの群の間で有意差は認めなかった。
4)治癒時の低下度
A群106.2±34.9%、B群81.9±25.8%、C群64.5±21.3%、D群52.9±21.6%であった。A群B群間、B群C群間、B群D群間でそれぞれ有意差を認め、(p=0.0001、p=0.0008、p<0.0001)C群D群間のみ有意差を認めなかった。
考察
裂肛に対する外科的治療の第一選択として現在、主に行われているのはLSISである。1)LSISを施行する際の要となるのが括約筋の切開の程度である。全長にわたる切開は避けるべきで内括約筋下端1/3〜1/2を目的とする1)との意見もある。しかしながら、どの程度までの内括約筋切開を行うべきかやMARPとの詳細な関連性については確立されていない。今回はNotaras法で同程度の切開を行った上で、MARPの詳細、つまり術前、局所麻酔後、LSIS施行直後および治癒時のMARPを測定しLSISとMARPの変化について検討した。
今回の結果では、術前のMARPが高い群で治癒時の圧の低下が有意に大きかった。これに対して、LSIS施行直後のMARPの低下については、各群間に有意差は認めなかった。術前のMARPが高い症例では、疼痛によって内肛門括約筋のspasmが生じ、内肛門括約筋の緊張が亢進した状態に加え、内肛門括約筋の炎症によって線維化が生じ、肛門管の進展性が失われ器質的な狭窄をきたした状態であると考える。これに対して術前のMARPが低い症例では、内肛門括約筋の緊張は亢進した状態であるものの、まだ内肛門括約筋の線維化がすすんでなく、器質的な狭窄がおきていない、まだ柔らかい状態であるのではないかと推察する。このことは、組織学的に、裂肛の初期の段階では表皮の脱落、潰瘍底の出血、間質の強い浮腫、好中球を中心とする炎症性細胞浸潤、小静脈の鬱血、血栓形成などの亜急性潰瘍の所見であるのに対して、慢性化してくると、周囲の静脈叢内の鬱血、血栓形成、間質内の円形細胞浸潤、さらに線維性の増殖、皮下組織の肥厚、瘢痕形成の像が著明になってくる7)ことに一致していると思われる。また、肛門管の静止圧には、肛門括約筋のうち内肛門括約筋が80%の影響を与えているとされている。3)LSISを施行する際に局所麻酔を施行した後も局所麻酔後のMARPは術前のMARPが高い群で高値であった。このことは、最大肛門静止圧の圧の高さには内肛門括約筋の緊張以外にも内圧に影響を与える因子があるのではないかと考える。線維化や瘢痕形成などもその要因になるか今後検討が必要だと考えるが、裂肛の治療には内肛門括約筋の緊張以外の要因も取り除く必要があると考える。したがって、術前のMARPが高い症例ではLSISで内肛門括約筋の緊張の亢進した状態をとりのぞき、線維化をおこし器質化した内肛門括約筋を切開することもMARPを下げることに強く影響を与えたと考える。LSIS施行直後のMARPの低下度に各群間に有意差を認めなかったのは、LSISを施行することで、内肛門括約筋の緊張が亢進した状態をとりのぞいたことだけがMARPに反映されたのではないかと推察する。以上より、MARPの術前、術中の経時的変化をみていくこともLSISを施行する際の括約筋の切開の程度を判断する一つの方法となると考える。
今回の検討では、LSISを施行した全例が治癒しており、再手術を要した症例は今のところ認めていない。また治癒までの期間についても4群間に有意差を認めなかった。しかしながら、D群では治癒時のMARPが120.9±46.8mmHgと当院で正常の上限としている100mmHg以上である。このことから、治癒時のMARPを正常の上限としている100mmHg以下にしなければ再発の可能性が大きくなるのか、また正常値の上限以下にしなくても治癒していくのならば、術前のMARPの何%までMARPを下げれば治癒するのか、今後各群間での再発の有無、またその再発の頻度に差がでてこないかフォローアップしながら、さらに検討していく必要があると考える。
文献
1)岩垂純一:裂肛の病態と、その治療:最近の知見を中心に. 日本大腸肛門病会誌 50:1089-1095, 1997
2)住江正治, 石田 裕, 坂田寛人ほか:裂肛の手術療法. 日本大腸肛門病会誌 30: 410-414, 1977
3)長谷川信吾:裂肛治療に対する肛門内圧測定の意義–側方皮下内括約筋切開術の適応について-. 日本大腸肛門病会誌 46:48-53, 1993
4)河 一京:直腸肛門内圧同調 Videodefecography による排便障害の検討ー Rectoceleを中心に.日本大腸肛門病会誌 48:289ー300,1995
5)Jen-Kou Lin:Anal Manometric Studies in Hemorrhoids and Anal Fissures.Dis Colon Rectum 32 :839-842,1989
6)M.Pescatori,G.Maria,G.Anastasio,et al:Anal Manometry Improves the Outocome of Surgery For Fistula-in-Ano.Dis Colon Rectum 32:588-592, 1989
7)荒川廣太郎:裂肛の成因と病理.日本大腸肛門病会誌 30:391-395, 1977
「サムゲタン風スープ」のレシピを紹介します。
今回は、「サムゲタン風スープ」のレシピを紹介します。
サムゲタンは、私の家でもたまに食べることがあります。美味しく、健康によさそうな感じがします。
サムゲタンを調べてみると、韓国料理の一つで、鶏肉と高麗人参、鹿茸、ファンギなどの漢方ともち米やクルミ、松の実、ニンニクなどを入れて煮込んだ料理です。薬膳料理や滋養食ともされています。
土用の丑の日に食べる鰻のように、「三伏の日に食べると健康に良い」とされているようです。夏バテや疲労回復に食べられているようです。
これから本格的に暑くなってきます。まだ早いかもしれませんが、夏バテの解消や疲労回復にも作ってみて下さい。
「サムゲタン風スープ」
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内痔核患者におけるニトログリセリン軟膏の最大肛門静止圧に対する影響について(日本大腸肛門病学会雑誌 第56巻 第1号 2003)
今回は、ニトログリセリン軟膏の最大肛門静止圧に対する影響についての論文を紹介します。
内痔核に対して痔核根治術を施行する際に、術前に内肛門括約筋の緊張が強い患者さんほど術後の痛みが強いこと。また術後の排便などの痛みで、どうしても内肛門括約筋の緊張が強くなる可能性が高いです。このことも術後の痛みに影響を及ぼします。内肛門括約筋の緊張をとることで、術後の痛みを緩和することができます。
そういった意味で、手術をする際に、麻酔が終わった後、十分にストレッチングをして肛門の緊張を摂ることは大事なことだと考えています。麻酔をした後、指や肛門鏡を使って、十分にストレッチングすることで、手術をする際に肛門の中を観察しやすくなるとともに、術後の痛みの緩和になります。
さて、ニトログリセリンは、この内肛門括約筋の緊張をとる作用があります。現在はニトログリセリン軟膏が製造されていないので、使っていませんが、以前は内肛門括約筋の緊張をとる目的で術前、術後に使用していました。このニトログリセリン軟膏の内肛門括約筋に与える影響を、最大肛門静止圧を測定したのが今回紹介する論文です。
「内痔核患者におけるニトログリセリン軟膏の最大肛門静止圧に対する影響について」
日本大腸肛門病学会雑誌 第56巻 第1号 36-40 2003
論文
はじめに
内痔核に対して痔核根治術を施行する際に問題となることは術後の出血や術後の疼痛管理である。手術術式や術後管理の進歩で、痔核根治術後の疼痛は緩和されてきているが、依然、患者にとって最も不安に感じる一つであり、手術にふみきれない要因でもある。したがって痔核根治術において術後の疼痛という大きなストレスを取り除くことが必要であると思われる。肛門内圧と術後疼痛の関連については、最大肛門静止圧が正常よりも高い症例のなかに術後強度疼痛の発生頻度が高いといわれている1)。我々も術前の最大肛門静止圧が高い症例で有意に術後の疼痛が強いことを報告した。さらに、術前の最大肛門静止圧を100mmHg以上と未満で比較したところ、100mmHg以上の症例で、有意に術後の疼痛が強いことも報告した2)。
ニトログリセリン軟膏は内肛門括約筋の緊張をとるといわれており、裂肛の治療目的で使用することがある 3,4)。さらにニトログリセリン軟膏と痔核根治術後の疼痛緩和の関連について検討した報告もみられる5)。そこで今回我々は、0.5%ニトログリセリン軟膏(以下0.5%GTN軟膏)を投与することが、術前の最大肛門静止圧にどのような影響を与えるか、さらに術後疼痛の緩和に有効な方法となりえるかどうかについて検討した。
対象
対象は、平成12年11月から平成13年4月までに、術前に0.5%GTN軟膏を投与した後痔核根治術を施行した90例(男性51例、女性39例、平均年令52.9才)である。手術は全例Goligher分類のⅢ度以上とした。術前の最大肛門静止圧が100mmHg以上の症例は49例、100mmHg未満の症例は41例であった。
方法
GTN軟膏は、市販されている2%GTN軟膏を0.5%に調整し使用した。投与方法は、6cm×8cmに切った綿花に約0.5%GTN軟膏700mg(ニトログリセリンの量として約3.5mg)を肛門部に塗布した。最大肛門静止圧の測定は、コニスバーグ社のカテーテル型圧力トランスデューサー(Model No.P31)を用いた。被験者を左側臥位にして肛門縁よりトランスデューサーを挿入し、引き抜きで内圧を測定した。測定は、0.5%GTN軟膏投与前と投与後の2回測定した。投与後から測定までの時間は30分とし、内圧を測定後に手術を施行した。投与後から測定までの時間を30分としたのは、一般にGTN軟膏の塗布により、最大肛門静止圧は塗布後5分後に低下し始め、10分後にほぼ安定した状態になると報告されており6)、さらに、本来の循環器疾患に使用する目的で、ニトログリセリン6mgを投与した場合、最高血中濃度到達時間が30分である7)との報告があることからである。
我々は、術前の最大肛門静止圧が100mmHg以上の症例で有意に術後の疼痛が強いことを報告した2)。そこで次に、術前の最大肛門静止圧が100mmHg未満の群(以下A群)と100mmHg以上の群(以下B群)に分けて、0.5%GTN軟膏投与後の最大肛門静止圧を比較検討した。また、術後の疼痛に関しては、術後3時間後の疼痛を「痛くない」、「少し痛い」、「痛む」、「とても痛い」の4段階に分類し、A群とB群との間で比較検討した。これは、我々が術前最大肛門静止圧と術後疼痛について報告した2)際と同じである。当院では全例1%プロカインによる局所麻酔下に手術を施行しており、麻酔の影響がなくなった時点で比較する必要があること。また術直後と術後3時間後に疼痛の有無にかかわらず「先取り鎮痛」及び術後の疼痛緩和の目的で全例インドメタシン座薬50mgを挿入している。また鎮痛剤の内服は術後3時間後以降に、疼痛の有無によって内服をしてもらっている。したがって、比較する際に条件を同じにする意味で、術後3時間後の疼痛を比較検討した。
さらに、0.5%GTN軟膏投与時の副作用について①副作用(なし)②副作用(あり)使用可能③副作用(あり)使用不可能に分類、副作用の症状についても検討した。副作用の内容については複数回答も含め検討した。
結果
1)最大肛門静止圧に対する0.5%GTN軟膏の効果。
0.5%GTN軟膏投与前の最大肛門静止圧は110.2±52.2mmHgであるのに対して、投与後の最大肛門静止圧は90.7±41.1mmHgであった。0.5%GTN軟膏を投与することで、最大肛門静止圧は有意に低下した(Wilcoxon signed-ranks test p<0.0001)。
2)A群とB群との間での0.5%GTN軟膏投与後の最大肛門静止圧の比較。
B群の49症例に対して0.5%GTN軟膏を投与し、圧が低下した症例は39例であった。これに対して、A群の41症例では0.5%GTN軟膏投与後、圧が低下した症例は21例、低下しなかった症例は20例であり、B群で最大肛門静止圧の低下する症例の割合が有意に高率であった(χ2検定 p=0.0045)。
次に、 0.5%GTN軟膏投与前後の最大肛門静止圧の変化を検討する目的で、A群とB群との間で比較した。B群では、0.5%GTN軟膏投与後の最大肛門静止圧は、投与前の75.2±20.8%であるのに対して、A群では、投与前の85.7±17.2%までしか低下せず、B群の症例で有意に最大肛門静止圧の低下を認めた(Mann-WhitneyのU検定 p=0.0121)。
3)術後疼痛についての検討
術後3時間後の疼痛の程度はそれぞれ、「痛くない」68例(75.6%)、「少し痛い」8例(8.9%)、「痛む」13例(14.4%)、「とても痛い」1例(1.1%)であった。A群(41例)とB群(49例)とで比較すると、A群では、「痛くない」35例(85.4%)、「少し痛い」3例(7.3%)、「痛む」2例(4.9%)、「とても痛い」1例(2.4%)に対し、B群では、「痛くない」33例(67.3%)、「少し痛い」5例(10.3%)、「痛む」11例(22.4%)、「とても痛い」0例(0%)であり、それぞれの群の間には有意差は認めなかった。(χ2検定、p=0.0677)
4)副作用についての成績
副作用(なし)は76例(84.4%)。副作用(あり)使用可能は9例(10.0%)。副作用(あり)使用不可能は5例(5.6%)であった)。副作用の内容は、頭痛11件
(52.4%)、肩凝り4件(19.0%)頭重感3件(14.3%)、嘔気2件(9.5%)、ボーットした感じ1件(4.8%)であった。
考察
0.5%GTN軟膏を術前に肛門部に塗布することで、術前の最大肛門静止圧が110.2±52.2mmHgであったものが、90.7±41.1mmHgへと有意に最大肛門静止圧の低下がみられた。また、0.5%GTN軟膏投与後の最大肛門静止圧は投与前の79.9±19.8%まで低下した。これは0.5%GTN軟膏を投与して、平均29%の最大肛門静止圧の低下をみたとする報告6)とはぼ同等の成績であった。このことからもニトログリセリン軟膏を投与することで、十分内肛門括約筋を弛緩させ、最大肛門静止圧を下げることができると考える。
次に、術前の最大肛門静止圧が100mmHg以上と未満との間で、0.5%GTN 軟膏投与後の最大肛門静止圧の低下に差があるかをみた。100mmHg以上の群で最大肛門静止圧が低下する症例の割合が有意に高率であった。また、0.5%GTN軟膏を投与することで投与前の最大肛門静止圧がどの程度低下するかを投与前の圧に対する割合(%)として換算して比較すると、100mmHg以上では0.5%GTN軟膏投与前の75.2±20.8%と、100mmHg未満の群と比較して有意に最大肛門静止圧が低下した。開心術後の低心拍出量症候群に対して、血行動態を改善する目的でニトログリセリン軟膏を投与した場合、肺動脈楔入圧の低値群より、高値群でより著明に血行動態の改善を認めたとの報告がある。8)最大肛門静止圧に対しても、より圧の高い症例でニトログリセリン軟膏が有効であると考える。
術後3時間後の疼痛に関しては、「痛くない」と答えた症例が68例(75.6%)であった。以前、0.5%GTN軟膏を使用していなかった時期での術後疼痛を報告した際、術後3時間後の疼痛が「痛くない」と答えた症例は58.2%であった2)。これと比較すると、「痛くない」と答えた症例が増えた印象がある。また、0.5%GTN軟膏を使用していなかった前回の報告では、100mmHg以上で有意に痛みが強かったのに対して、今回は100mmHg以上と未満との間で術後の疼痛に有意差を認めなかった。このことからも0.5%GTN軟膏を投与することで、術後の疼痛をある程度緩和できるのではないかと考える。しかしながら、術後の疼痛を比較する際に術後3時間後の疼痛を比較するだけでは不十分であると考えている。今後さらに精細に術後の疼痛については検討していく必要があると思われる。
また、ニトログリセリンの持つ血管拡張作用からくる頭痛などの副作用が問題となる。痔核根治術後の疼痛緩和の目的でニトログリセリンを投与し、副作用としての頭痛に対して消炎鎮痛剤の投与が必要であったとする報告もある5)。当院でも、0.5%GTN軟膏投与での副作用の出現率は15.6%であり、副作用により使用できなかったものは5.6%であった。副作用の中で最も多かったのが頭痛であり、52.4%であった。ニトログリセリン軟膏の投与量に比例して頭痛の発現頻度や頭痛の程度が重くなり、血漿中のニトログリセリン濃度との相関を認めるとの報告7)があることから、副作用の対策として1回に使用する0.5%GTN軟膏の投与量の工夫や投与する時期、例えば排便時の疼痛で内肛門括約筋の緊張や攣縮がおきる時にのみ投与するなどの工夫が必要と思われる。また、循環器疾患に使用する場合、頭痛発現が一つの至適用量決定のための指標とされている7)ことから、症状をみながら早期に患者個々の至適用量を決定することが必要と考える。また、ニトログリセリン軟膏の血管拡張作用で、術後出血の頻度が増えるのではないかの懸念があるが、今のところ術後出血が増えた印象はない。ただ全身に及ぼす副作用ばかりでなく、創部局所における副作用についても今後注意していく必要があると考える。
0.5%GTN 軟膏を投与することで、痔核根治術後の疼痛を緩和する可能性が示唆された。副作用としての頭痛等を軽減していく工夫は今後必要となるであろう。しかし、現時点においては、術前の最大肛門静止圧が100mmHg以上の高い症例で積極的に使用すべきと考える。
結論
0.5%GTN軟膏を投与することで、有意に最大肛門静止圧(特に100mmHg以上の症例で)を下げることができた。
このことから痔核根治術後の疼痛を緩和する目的で、0.5%GTN軟膏を投与することは有用であると考える。
ニトログリセリン軟膏の最大肛門静止圧に与える影響について検討した。対象:平成12年11月から平成13年4月までに、0.5%ニトログリセリン軟膏(以下0.5%GTN軟膏)を投与した90例を対象とした。方法:0.5%GTN軟膏を肛門部に塗布し、約30分後に最大肛門静止圧を測定。0.5%GTN軟膏投与前後の最大肛門静止圧を比較検討した。結果:①0.5%GTN軟膏投与前の最大肛門静止圧110.2±52.2mmHgに対し、投与後は90.7±41.1mmHgと有意に低下した(p<0.0001)。②0.5%GTN軟膏で低下した症例は最大肛門静止圧100mmHg以上で有意に多かった(p=0.0045)。③最大肛門静止圧が100mmHg以上の症例は、未満の症例より有意に圧の低下を認めた(p=0.0121)。以上より、0.5%GTN軟膏の投与は、内痔核患者において術前の最大肛門静止圧を下げるのに有効である。特に圧の高い症例ではより有効であると考える。
文献
1)辻 順行,高野正博,黒水丈次:痔核術後の疼痛の解析と対策.日本大腸肛門病会 誌 52:519ー523,1999
2)渡辺賢治,渡辺元治,増田英樹:痔核根治術後の疼痛についてー特に術前最大肛門静止圧による術後疼痛の比較検討ー.日本大腸肛門病学会誌 53:241ー243,2000
3)Lund JN,Scholefield JH:A randomised,prospective,double-blind, placebo-controlled trial of glyceryl trinitrate ointment in treatment of anal fissure.The Lancet 349:11-14,1997
4)岩垂純一:裂肛の病態と、その治療:最近の知見を中心に.日本大腸肛門病会誌 50:1089ー1095,1997
5)HJ Wasvary,J Hain,M Mosed-Vogel,et al:Randomized,prospective,double-blind, placebo-controlled trial of effect of nitroglycerin ointment on pain after hemorrhoidectomy.Dis Colon Rectum 44:1069-1073,2001
6)服部和伸,中島久幸:ニトログリセリン軟膏による裂肛の治療. 臨外 52:521ー523, 1997
7)岡島智志,菱田 仁,萩原和光ほか:ニトログリセリン軟膏の臨床薬理学的研究.基礎 と臨床 18:2489ー2504,1984
8)大平政人,麻柄達夫,能登 佐ほか:ニトログリセリン軟膏の血行動態に及ぼす影響
〜主に開心術後における応用〜.ICUとCCU 4:223ー230,1980
結紮切除術術前と治癒時における最大肛門静止圧の差についての検討(日本大腸肛門病学会雑誌 第57巻 第3号 2004)
今回は、内痔核に対して結紮切除術を行う前と治癒したときの最大肛門静止圧の差について検討した論文を紹介します。
手術を行ったあと、どうしても排便時に痛みを伴います。この痛みが原因で内肛門括約筋の緊張が強まり、このことも痛みの強さに影響してきます。裂肛が排便時の痛みを繰り返すことで、内肛門括約筋の緊張が強くなり、慢性化していくのと同じ理由です。いかに術後の痛みをとって、内肛門括約筋の緊張が強くならないようにしていくか。このことが、内痔核に対して結紮切除術を行った後、重要になってきます。この論文では、0.5%ニトログリセリン軟膏が出てきますが、ニトログリセリンは内肛門括約筋の緊張をとる作用があります。このニトログリセリン軟膏の使用による影響も検討しています。
次回はこのニトログリセリン軟膏についての論文を紹介しようと思います。
「結紮切除術術前と治癒時における最大肛門静止圧の差についての検討」
日本大腸肛門病学会雑誌 第57巻 第3号 169-173 2004
抄録
結紮切除術(以下LE)の治癒時の最大肛門静止圧について検討した。対象:H10年8月〜H14年2月までにLE施行した581例。(0.5%GTN軟膏使用群455例、不使用群126例)方法:術前と治癒時の最大肛門静止圧を測定。①術後疼痛の程度②静止圧の差についてLE施行個数で比較。結果:①術後疼痛は1箇所LE施行例で軽度であった。②0.5%GTN軟膏使用例では、1箇所LE施行例で治癒時の最大肛門静止圧が有意に低下し、不使用例では有意差を認めなかった。0.5%GTN使用例では2、3個所施行群で治癒時の内圧が術前より有意に高かった。0.5%GTN軟膏使用例で1個所LE施行群で有意にA群が多かった。結論:臨床症状上の治癒時に最大肛門静止圧が高いのは、術後疼痛の影響などで、内肛門括約筋の緊張が高いためである。術後は0.5%GTN軟膏などで疼痛を十分に取り除き、内肛門括約筋の緊張を緩和することが必要であると考える。
論文
はじめに
内痔核に対して結紮切除術(以下LEとする)を施行した際に、どの時点で治癒と判断するかについてはとても難しい問題である。治癒に関しては、浸出液が消失し、全ての創が上皮形成されたときとする報告1)があるが、LE術後の治癒について、明白な定義を記述している報告はない。現時点で、我々は、排便時の痛みや出血がなくなり、創が閉鎖し、患者側の自覚症状がなくなった時点を「治癒」と判断し、診療を終了している。しかし、一端「治癒」したと思っても排便の具合などで再度排便時痛が出現してきたり、場合によっては裂肛様になってしまうことも経験される。また、「治癒」と判断した時点で器質的な狭窄を認めないにもかかわらず肛門の緊張が強いと感じ、実際に最大肛門静止圧が高くなっている症例もある。このような経験から、術後の疼痛が臨床症状的に治癒と判断した時点での最大肛門静止圧にどのように影響するかについて検討した。
対象および方法
対象は、平成10年8月から平成14年2月までにLEを施行し、術前と臨床的治癒時の2回で最大肛門静止圧を測定した581例(男性336例、女性245例、平均年令55.9才)である。このうち、術後に0.5%ニトログリセリン軟膏(以下0.5%GTN軟膏)を使用した症例は455例(男性284例、女性171例、平均年令53.5才)、0.5%GTN軟膏を使用しなかった症例は126例(男性52例、女性74例、平均年令50.9才)であった。0.5%GTN軟膏を使用しなかった症例は、日帰り手術の症例と0.5%GTN軟膏の副作用で使用できなかった症例である。0.5%GTN軟膏の使用は、排便時の疼痛がとれてくる術後7日から10日間とした。
方法は、術前と治癒時の2回で最大肛門静止圧を測定。以下の3項目について検討した。
臨床的治癒時の定義は、排便時の疼痛や出血がなくなり、ドレナージ創が閉鎖し、患者側の自覚症状がとれた時点とした。
1)術後3時間後の疼痛を以前の報告2)にしたがい「痛くない」、「少し痛い」、「痛い」、「とても痛い」の4段階に分類し、さらにLE施行個数と痛みの程度を比較した。
2)LE施行個数で術前と臨床的治癒時の最大肛門静止圧を比較した。
3)術前と比較して、臨床的治癒時の最大肛門静止圧が術前以下に低下した群(以後A群)と術前より上昇した群(以下B群)に分類し、LE施行した内痔核の個数との関連性を比較検討した。
肛門内圧検査にはコニスバーグ社のカテーテル型圧力トランスデューサー(Model No.P31)を用い、被験者を左側臥位にして肛門縁よりトランスデユーサーを挿入し、引き抜きで内圧を測定した。手術は同一術者が行い、術式は半閉鎖術式で行った。
なお、対象とした症例のなかに、臨床的治癒と判断した時点で術後の肛門狭窄をきたした症例は認めなかった。
統計学的処理については、χ2検定、t検定、で行い、p<0.05を有意とした。
結果
1)LE施行個数と術後3時間後の疼痛の比較。
①0.5%GTN軟膏使用症例
LE施行個数と術後3時間後の疼痛の関係は、「痛くない」、「少し痛い」、「痛い」、「とても痛い」の順に、1箇所ではそれぞれ102例、18例、12例、0例、2箇所では、116例、39例、26例、2例、3箇所では82例、33例、20例、5例であった。1箇所切除群は3箇所切除群と比較して有意に痛みの程度が軽度であった。(p=0.0039)また、1箇所と2箇所の間では、p=0.0517と、1箇所で痛みが軽度である傾向を認めた。
②0.5%GTN軟膏不使用例
「痛くない」、「少し痛い」、「痛い」、「とても痛い」の順に、1箇所ではそれぞれ54例、13例、2例、0例、2箇所では、20例、13例、3例、2例、3箇所では9例、4例、6例、0例であった。1箇所切除群は、2箇所および3箇所切除群と比較して有意に痛みの程度が軽度であった。(p=0.0218、p=0.0004)
2)LE施行個数と術前と臨床的治癒時の最大肛門静止圧の比較。
①0.5%GTN軟膏使用症例
術前と臨床的治癒時の最大肛門静止圧は、1箇所では106.9±52.1mmH、98.3±48.7mmHg。2箇所では104.8±51.9mmHg、116.6±53.1mmHg。3箇所では101.2±42.3mmHg、109.8±49.9mHgであった。1箇所では臨床的治癒時の最大肛門静止圧が有意に低下した(p=0.0399)。これに対して、2箇所と3箇所ではいずれも臨床的治癒時の最大肛門静止圧が有意に高くなっていた。(p=0.0030、p=0.0136)
②0.5%GTN軟膏不使用例
術前と臨床的治癒時の最大肛門静止圧は、1箇所では105.1±51.6mmH、107.4±50.8mmHg。2箇所では109.8±58.5mmHg、112.5±48.3mmHg。3箇所では95.3±40.4mmHg、92.8±36.2mHgであった。いづれの群も術前と臨床的治癒時の最大肛門静止圧には有意差を認めなかった。
3)A群とB群について、LE施行個数との関連性を検討した。
①0.5%GTN軟膏使用症例
1箇所ではA群85例、B群42例。2箇所ではA群73例、B群110例。3箇所ではA群69例、B群71例であった。LE施行個数でA群とB群を比較すると、1箇所LE施行群では、2箇所3箇所LE施行群より有意に最大肛門静止圧が低下・不変である症例が多かった(p<0.0001、p=0.0193)。LE施行箇所が2箇所と3箇所では有意差は認めなかった。
②0.5%GTN軟膏不使用例
1箇所ではA群34例、B群34例。2箇所ではA群13例、B群25例。3箇所ではA群10例、B群9例であった。LE施行個数でA群とB群を比較すると、それぞれの群間に有意差は認めなかった。
考察
術前と臨床的治癒時の最大肛門静止圧を比較すると、0.5%GTN軟膏使用例では、術後の疼痛が2箇所および3箇所LE施行群より軽度であった1箇所LE施行群で、術前より臨床的治癒時の最大肛門静止圧が有意に低下していた。他の2群では、臨床的治癒時で有意に最大肛門静止圧が高くなっていた。また、1箇所LE施行群は2個所および3箇所LE施行群より有意にA群が多かった。このことは、1箇所LE施行例は他の群と比較して、術後の疼痛が軽度であり、疼痛による内肛門括約筋の緊張が軽度であること。また、臨床的治癒時の肛門管内の瘢痕の硬さが、1箇所LE施行例では最大肛門静止圧に与える影響が少なかったこと。さらに、0.5%GTN軟膏を使用することで術前の最大肛門静止圧を下げることを報告したが3)、0.5%GTN軟膏が臨床的治癒時の最大肛門静止圧の低下にある程度効果を示したことが考えられる。これに対して2箇所、3箇所LE施行例で、臨床的治癒時の最大肛門静止圧が上昇を認めた原因として、術後の疼痛の影響で臨床的治癒の時点においても内肛門括約筋の緊張が高まった状態が続いていること。また手術創の上皮化完成直後は、その瘢痕組織はまだ充分な弾力をもたず硬く、充分な軟化、弾力の回復をもって治癒とすべきである4)との報告もあることから、臨床的治癒時の肛門管内の瘢痕の硬さが、1箇所LE施行例と比べて最大肛門静止圧の上昇に影響を与えたと考える。さらに、0.5%GTN軟膏の使用期間が排便時の疼痛がとれてくる術後7日〜10日間であり、0.5%GTN軟膏の効果が十分に得られなかったことが考えられる。
0.5%GTN軟膏不使用例の中で、1箇所LE施行例をみてみると、術前と術後の最大肛門静止圧には有意な圧の低下は認められなかった。これに対して、0.5%GTN軟膏を使用した1箇所LE施行症例では術後の最大肛門静止圧が有意に低下した。このことから、術後の疼痛による内肛門括約筋の緊張を緩和する目的で、0.5%GTN軟膏の術後投与は有用であると考える。しかしながら、0.5%GTN軟膏不使用例で2箇所、3箇所LE施行例がまだ少ないので、今後症例を増やして検討する必要があると考える。
また、内痔核に対してLEを施行した際に、現時点で我々は、排便時の痛みや出血などの自覚症状がなくなり、創が閉鎖した時点を「治癒」としている。しかし、「治癒」と判断した時点でも術後の疼痛などの影響で内肛門括約筋の緊張が高まった状態などが続いている症例もあり、本当の意味での治癒ではないと考える。したがって、術後の最大肛門静止圧が、術前以下になるまではフローアップが必要と考える。このことからも術後の最大肛門静止圧の測定は治癒の判断に有用であると考える。
文献
1)丸山 亨, 中野眼一, 野口 剛ほか:痔核手術における半閉鎖術式と全閉鎖術式の 臨床的検討. 日本大腸肛門病学会誌 54:105-108, 2001
2)渡辺賢治,渡辺元治,増田英樹:痔核根治術後の疼痛について–特に術前最大肛門 静止圧による術後疼痛の比較検討.日本大腸肛門病学会誌 53:241-243,2000
3)渡辺賢治,渡辺元治,増田英樹:内痔核患者におけるニトログリセリン軟膏の最大 肛門静止圧に対する影響にといて.日本大腸肛門病学会誌 56:36-40,2003
4)三枝純郎:肛門手術創遷延治癒の原因と対策. 日本大腸肛門病学会誌 29: 528-535, 1976
索引用語:創傷治癒、最大肛門静止圧、術後疼痛
痔核根治術後の疼痛についてー特に術前最大静止圧による術後疼痛の比較検討ー日本大腸肛門病学会雑誌 第53巻 第4号 2000)
今回は痔核根治術後の痛みに関して、日本大腸肛門病学会雑誌に投稿し掲載された論文を紹介します。
以前、このことに関しての学会発表の内容を紹介しましたが、今回はそれを論文にしたものを紹介します。
以前から、肛門の診察の際の指診で肛門のしまりが強い患者さんほど術後の痛みが強いのではないかという、手術をする際の経験的な感触がありました。このことを科学的に証明しようと、肛門のしまり、内肛門括約筋のしまりを反映する最大肛門静止圧を測定して。その値と術後の痛みにつて比較して検討した論文です。結果は、やはり最大肛門静止圧が高い患者さん、つまり肛門のしまりが強い患者さんほど痛みが強いという結果です。肛門のしまりが強い患者さんは、肛門の緊張をとってあげる処置を加えることで、術後の痛みが楽になるという内容です。2000年の論文で少し古い論文ですが、今の手術の後の痛みをとる基本となる内容を書いた論文です。参考になればと思います。
痔核根治術後の疼痛についてー特に術前最大肛門静止圧による術後疼痛の比較検討ー
日本大腸肛門病学会雑誌 第53巻第4号 241-243 2000
抄録
痔核根治術後の疼痛について、術前最大肛門静止圧との関係を検討した。[対象]平成10年9月から平成11年3月までに痔核根治術を施行した146例を対象とした。[方法]術後3時間後の疼痛の程度を「痛くない」、「少し痛い」、「痛い」、「とても痛い」に分類し、疼痛の程度と最大肛門静止圧との関係を比較検討した。[結果]①術前の最大肛門静止圧について、「痛くない」群(88.5±36.5mmHg)と「痛い」群(118.9±38.0mmHg)との間で有意差を認めた(p=0.016)。②術前最大肛門静止圧が100mmHg未満の群と以上の群との間で、術後3時間後の疼痛に有意差を認めた(p=0.012)。以上より術前最大肛門静止圧が高い症例では、術後疼痛の出現する可能性が高く、内圧を下げる工夫で、さらに術後の疼痛を緩和できると考える。
論文
はじめに
内痔核に対する痔核根治術術後の疼痛は、手術を受ける患者にとって一番の不安であったり、また手術に迷う最も大きな原因である。当院のアンケートでも手術にふみきれない一番の原因は「術後の疼痛が心配」(70.5%)であった。最近、手術術式の進歩や、術後の処置などでその痛みは緩和されてきているが、避けては通れない問題である。同じ術式を同一術者で施行しても患者個々で、疼痛の程度は一定していない。肛門内圧(静止圧)が正常より高い症例のなかに術後強度疼痛の発生頻度が有意に高かった1)との報告があるが、術前から術後の疼痛について簡単に、しかも客観的に予想できる方法があるかどうかについて注目し、術前の最大肛門静止圧と術後の疼痛との関係を詳細に検討した。
対象および方法
対象は、平成10年9月から平成11年3月までに術前に最大肛門静止圧を測定し、痔核根治術を施行した146例(男性76例、女性70例、平均年令48.3才)である。方法は、術前に最大肛門静止圧を測定、術後3時間後に疼痛の有無を「痛くない」、「少し痛い」、「痛む」、「とても痛い」の4段階に分類し、疼痛の程度と最大肛門静止圧との関係を比較検討した。当院では全例1%プロカインによる局所麻酔下に手術を施行しており、麻酔の影響がなくなった時点で比較する必要があること。また、術直後と術後3時間後に疼痛の有無にかかわらず「先取り鎮痛」及び術後の疼痛緩和の目的で全例インドメタシン座薬50mgを挿入している。また鎮痛剤の内服は術後3時間後以降に、疼痛の有無によって内服をしてもいらっている。したがって、比較する際に条件を同じにする意味で、術後3時間後の疼痛を比較検討した。
痔核根治術施行部位数と術後の疼痛との関係についても検討した。肛門内圧検査にはコニスバーグ社のカテーテル型圧力トランスデューサー(Model No.P31)を用い、被験者を左側臥位にして肛門縁よりトランスデユーサーを挿入し、引き抜きで内圧を測定した。手術は同一術者がおこない、術式は半閉鎖術式で行った。
結果
術後3時間後の疼痛の程度はそれぞれ、「痛くない」が85例(58.2%)、「少し痛い」40例(27.4%)、「痛む」20例(13.7%)、「とても痛い」1例(0.7%)であった。
1)痔核根治術施行部位数と術後3時間後の疼痛
痔核根治術施行部位数と術後疼痛の関係は、「痛くない」、「少し痛い」、「痛む」、「とても痛い」の順に1箇所ではそれぞれ31例、14例、3例、0例。2箇所では、35例、17例、10例、1例。3箇所では、19例、9例、7例、0例であり、それぞれの群の間にはχ検定で有意差は認められなかった。
2)術前最大肛門静止圧と術後3時間後の疼痛
疼痛の程度と術前最大肛門静止圧との関係は、「痛くない」と答えた患者の術前最大静止圧のは88.5±36.5mmHgで、「少し痛い」100.9±38.0mmHg、「痛む」118.9±38.0mmHg、「とても痛い」160mmHgであった。統計学的検討(t検定)では、「痛くない」と「少し痛い」および、「少し痛い」と「痛む」との間には有意差を認めなかったが、「痛くない」と「痛む」との間には有意差を認めた(p=0.016)。
また、最大肛門静止圧が100mmHg未満(85例)と100mmHg以上(61例)とで比較すると、100mmHg未満では、「痛くない」57例(67.1%)、「少し痛い」22例(25.9%)、「痛む」6例(7.0%)、「とても痛い」0例(0%)に対し、100mmHg以上では、「痛くない」28例(45.9%)、「少し痛い」18例(29.5%)、「痛む」14例(23.0%)、「とても痛い」1例(1.6%)で、100mmHg未満の群のほうが100mmHg以上の群より有意に術後の疼痛が軽度であった。(χ検定、p=0.0126)
考察
痔核根治術後の疼痛は、手術術式の進歩や術後の創処置、管理の発達などで緩和されてきている。しかしながら、この術後の疼痛対策は痔核根治術を施行する上でさけてはとおれない問題である。同じ術者が同じように手術を施行しても、術後の疼痛は患者個々でまちまちである。また手術を施行するうえで、患者が一番心配しているのもこの術後の疼痛である。実際当院で、「手術をするにあたってなにが一番迷った原因でしたか?」のアンケートをとったが、回答のうち70.1%はやはり術後の疼痛であった。このことからも術前から、術後の疼痛の程度を客観的に把握できる指標が存在するか否かについては注目すべきである。術前の肛門最大静止圧が正常より高い症例に、術後強度疼痛を認めることが多いと報告しているものもあり1)、今回術前の肛門最大静止圧と術後疼痛、特に術後3時間後の疼痛について比較検討した。また、痔核根治術施行部位数と術後の疼痛との間に最大肛門静止圧以外に関連があるかについても検討した。
まず、術後3時間後の疼痛と、痔核根治術施行部位との関係をみると、1箇所、2箇所、3箇所のいずれも痛みの程度の分布は同じで、それぞれの群の間に有意差は認めなかった。当初術手術施行部位が少ないほど術後の痛みが軽度であると考えていたが、術後3時間後の痛みは、施行部位数とは関係がないことが判明した。ただ排便時の痛みに関しては、手術施行部位数が少ないほうが軽度である印象はあり、今後の検討が必要である。
術後3時間後の疼痛の程度と術前最大肛門静止圧との関係をみてみると、「痛くない」と答えた患者の術前最大肛門静止圧は88.5±36.5mmHgであるのに対して、「痛む」と答えた患者の術前最大肛門静止圧は118.9±38.0mmHgで、それぞれの群の間では有意差を認めた。したがって、肛門の緊張も術後の疼痛に影響を及ぼす一つの要因と考えられる。
次に術前の最大肛門静止圧が100mmHg未満の群と100以上の群との間で術後3時間後の疼痛について比較した。これは術前に術後の疼痛の程度を予測するために比較した。内圧を100mmHgで分けたのは、最大肛門静止圧の正常値は各施設によって多少異なるが、正常値の上限が100mmHg以下が多いので、2),3),4)これをもとに2群に分けて比較した。結果は、100mmHg未満では、「痛くない」と答えた症例が多かった。このことから術前の最大肛門静止圧が100mmHgより高い症例では術後の痛みが出現する可能性が高いことが示唆される。
以上より、術後3時間後の疼痛は痔核根治術を施行した部位の数ではなく、最大肛門静止圧が深くかかわっていることが考えられた。肛門内圧の高低ですべて痛みの程度が解るわけではないが、術前に最大肛門静止圧を測定することで、ある程度術後の疼痛を予測することができることは明らかである。術前の最大肛門静止圧が、正常より高い症例(100mmHg以上)では、術後の疼痛の出現する可能性が高いので、内圧の高い症例に対してどう対処していくかが今後の問題となる。このような症例に対して、消炎鎮痛剤などによる「先取り鎮痛」を考慮したり、術前のストレッチングを十分に行い、術後の過度の括約筋の緊張を予防する必要があると考える。また最近、裂肛に対してニトログリセリン軟膏を使用することで、内肛門括約筋の緊張をとり、内圧を下げることで治療する方法や5)、ボツリヌス毒素を肛門部に局注することで、これもまた内肛門括約筋の緊張をとり裂肛を治療する方法が行われてきている。6)これらはいずれも内肛門括約筋の緊張をとる作用があり、術前の最大肛門静止圧を下げる効果がある。今回の我々の結果を考慮すると、最大肛門静止圧が術前に高い症例では、これらの方法を用いることが有効と考えられる。
文献
1)辻 順行,高野正博,黒水丈次:痔核術後の疼痛の解析と対策.日本大腸肛門病会 誌 52:519ー523,1999
2)河 一京:直腸肛門内圧同調 Videodefecography による排便障害の検討ー Rectoceleを中心に.日本大腸肛門病会誌 48:289ー300,1995
3)Jen-Kou Lin:Anal Manometric Studies in Hemorrhoids and Anal Fissures.Dis Colon Rectum 32 :839-842,1989
4)M.Pescatori,G.Maria,G.Anastasio,et al:Anal Manometry Improves the Outocome of Surgery For Fistula-in-Ano.Dis Colon Rectum 32:588-592,1989
5)岩垂純一:裂肛の病態と、その治療:最近の知見を中心に.日本大腸肛門病会誌 50:1089ー1095,1997
6)D.Gui,E.Cassetta,G.Anastasio,et al:Botulinum toxin for chronic anal fissure.THE LANCET 344:1127-1128,1994
索引用語:内痔核、術後疼痛、最大肛門静止圧