「周術期の疼痛管理について」-第117回近畿肛門疾患懇談会を終えてーPart2

前回は、三つの術後の疼痛の要因としての一つ目の手術を施行した後の傷の痛みに関してお話しました。今回は二つ目の排便による痛みについてお話したいと思います。
排便の状態が悪いことは、術後だけでなく、肛門の病気の根本的な問題になります。排便時の怒責(力み)が強いことが特に内痔核の原因になり、内痔核の原因はこのことだけだと言ってもいいと思っています。それだけ、排便の状態は肛門の病気に関係してきます。
また、術後も具合よく便が出ることで痛みも楽にそして具合よく治っていくのだと思います。ですから肛門の手術をした後の排便の調整が大切になってきます。
さて、少し想像してみて下さい。もし自分が肛門の手術をしたとしましょう。やはり一番心配なのが排便だと思います。例えば、「排便時に痛みがあるんだろうなあ?」とか、「排便した時に出血したらどうしよう。」などと考えると、排便するのが怖くなるのが当然だと思います。その恐怖を乗り越えて便を出さなければなりません。このことは肛門の手術をした患者さんにとって一番の大きな壁だと思います。
いつも具合よく便が出ている人でも、やっぱり術後の状況に置かれた場合は同じだと思います。便が行きたくなってもどうしても出すのが怖い。我慢してしまう。こんなことから便秘になって、便が硬くなってしまいます。またこの硬くなった便を出すときにもさらに苦労があります。できることなら、術後もスッと便が出て欲しい。誰もがそう思うはずです。
ですから、排便の調整は術前から行っていかなければならないと思います。
渡邉医院では、術後当日から便が行きたくなったら思いっきり出してもいいですと患者さんにお話しています。術前から便秘の患者さんには緩下剤を内服してもらいます。また、もともと便秘に患者さんは手術で治すときが便秘を治すいいきっかけになります。
通常は便秘ではなく、具合よく出ている患者さんには術後3日間の間に1回はスッキリ便が出て欲しいとお話しています。それは、食べたものが消化され吸収され、便になるまで早くて12時間、ゆっくりで3日間です。ですから今日食べたものが3日後に便として出ることがあります。このことから3日間の間に1回はスッキリ便が出るようにしてもらっています。
術後1日目はどうしても麻酔の痛みや手術での痛みがあったこと、昼ご飯が抜きになること、また枕が違うことなど日常の環境とは全く違った環境に置かれます。やはり、この環境の変化も便秘になる原因になります。
1日目に排便がなく、2日目も出なかったり、出にくいときは緩下剤を内服してもらっています。そして3日目までに1回スッキリ便を出してもらっています。
緩下剤を内服して具合よく便が出るようでしたら、しばらく排便時の痛みがなくなるまで、または緩下剤で便が緩くなるまでは続けてもらっています。でも、術後痛みがあっても1回排便があると、「痛いけどこんなものか。」と思うだけでも便の調子が良くなってきます。また排便時の痛みがあっても一度便が出ると安心感が出るようです。「排便時の痛みはこんなものか。」、排便時に出血があっても、「この程度の出血は大丈夫なんだ。」という経験が排便の調子を良くしてくれます。
また、排便の状態は、内痔核があるときと、切除して脱出してくる内痔核がなくなった場合では排便の状態は大きく変わります。
脱出してくる内痔核がある場合は排便時に内痔核が脱出しながら肛門が「脱肛」して、便が出てきます。手術をして内痔核を切除すると内痔核が脱出することなく便が出てきます。このことでスッキリ便が出るという患者さんもいますが、反対に出にくくなるという患者さんもいます。
出にくくなったという患者さんの場合は、おそらく脱出する内痔核はなくなりますが、その代わり肛門管内に傷が出来ます。本来気持ちよく便が出るときは、肛門管内の肛門上皮が怒責することで、肛門の外に出る、すなわち「脱肛」という状態で気持ちよく便が出てきます。しかし、肛門上皮に傷ができるとこの肛門上皮が外に出る「脱肛」と言う状態が正常通りに動かなくなることが原因だと思います。
どちらかと言うと、ただ単に肛門が広がって出る。具合よく「脱肛」することなく押し出すような、絞り出すような感じで便が出るのではないかと思います。肛門上皮の傷が治り、柔らかく肛門が広がり、具合よく「脱肛」するようになることで、気持ちよくスッキリ便が出るようになるのだと思います。
そうすると、便が硬くなってしまうと、術後は正常な肛門ではないので、手術をした奥の直腸に便が詰まってしまうことがあります。直腸に便が詰まってしまうことでも痛みが出てしまいます。スッキリ便を出すことで痛みが取り除かれます。
時々便が直腸に詰まった患者さんがお尻が痛くて痛くてたまらない。座ってもいられないと受診される患者さんがいます。こういった場合は、直腸内に詰まった便をスッキリ出してあげることで痛みがなくなります。このように術後の痛みの中には、直腸に便が残ったままになる、場合によっては詰まってしまうことも術後肛門の痛みに繋がっていきます。
やはり、術後の排便の状態を良くすることは、術後の痛みの軽減に大事な要因になります。
術前から便秘の人は排便の調整を、そして通常は具合よく便が出ている人も、術後はどうしても便秘になる可能性があるので、排便の調整のために便が出にくいときは迷うことなく緩下剤をしっかり内服して便の調整をしていくことが大切です。
「周術期の疼痛管理について」-第117回近畿肛門疾患懇談会を終えてーPart1

今日は朝から雪がちらつく寒い一日でした。温かいかと思ったら一気に厳しい寒さ。体が付いていけません。皆さんも、お体に気を付けて下さいね。
どうしてもこの寒い季節、乾燥しているのでどんどん体の外に水分が出ていってしまいます。でも、寒いので水分を十分に摂るのが難しいです。寒い中、温かい飲み物を摂って、十分に水分補給してくださいね。
さて、先週の土曜日、2月15日に大阪で近畿肛門疾患懇談会が開催されました。主題は「周術期の管理(疼痛管理を主にクリニカルパスがあれば)」でした。
今回は全部で9演題が発表されました。ほとんどが内痔核に対して痔核根治術などを行った後の痛みの管理に関する演題でした。
術後の痛みの原因としては、まずは手術を施行した後の傷の痛み。そして排便による痛み。そして術後の不安から生まれる痛み。大きくこの三つが術後の痛みの要因になると思います。
これらの三つに関して、今回の近畿肛門疾患懇談会での話をふまえて私の考えをお話したいと思います。
一つ目の手術を施行した後の傷の痛みです。
術後の傷で痛みが出る場所はどこかを考えてみます。
内痔核は直腸の粘膜の部分にできます。痔核根治術を施行する場合は、以前にも手術方法をお話したことがあると思いますが、肛門の少し離れた部分から皮膚を剥離していきます。そして肛門管内の肛門上皮を剥離して直腸粘膜の内痔核の根部まで剥離して内痔核の根部にある動脈を結紮して切除します。この痔核根治術で痛みの感じる部分はどこかです。粘膜部分は痛は感じない部分です。ですから十分に剥離でき、筋肉などを巻き込まずに根部を結紮した場合は、その部分の痛みは無いはずです。
ですから内痔核を根部まで剥離する際は十分に筋層などから剥離してできるだけ粘膜と内痔核の本体である静脈瘤だけにして根部を結紮することで、その部分による痛みはないのではないかと考えます。どうしても剥離が不十分で、粘膜や静脈瘤以外の筋肉組織などを一塊として結紮してしまうと、その部分に痛みが出るのだと思います
また根部結紮をする組織が多ければ術後の晩期出血の原因に繋がります。このようにまずは十分に内痔核を剥離して根部結紮をすることが痛みが出ないようにする一番の方法だと思います。
肛門管内の肛門上皮にできる傷、そして肛門の外側にドレナージとしてできる傷、これはどうしても擦れると痛みが出ます。ただ、この肛門の外側から肛門管内の手術の操作で、術後に腫脹をきたすと痛みが出てしまいます。ですから術後腫脹が出ないように手術をする必要があります。
でも、これがなかなか難しいところがあります。
術直後は腫れていなくても術後1時間後、3時間後と時間が経つと創が腫れてくることがあります。その多くは外痔核成分の部分が腫れてくることが原因となるようです。ですから外痔核成分がある内痔核の手術をする場合は、外痔核成分が術後に腫れてこないように、この部分も十分に剥離切除する必要があると思います。
また肛門管内の傷の痛みに関係するのが肛門の緊張の程度です。すなわち内肛門括約筋の緊張が強い人が痛みを強く感じます。肛門の締まりが強い、内肛門括約筋の緊張が強い人はやはり痛みが強い傾向にあります。ですからこういった理由で、男性の若い人ほど、どうしても痛みを強く感じる傾向があります。
こういった場合は内肛門括約筋の緊張をとるために、局所麻酔後に十分にストレッチングをして、緊張をとってから手術を始めます。
また痛みがあると内肛門括約筋の緊張が強くなるので、術後は痛みがあっても無くても術直後と術後3時間後に消炎鎮痛剤の座薬を挿入しています。また内服での消炎鎮痛剤も痛みの有無にかかわらず内服してもらっています。
「先取鎮痛」という言葉があります。これは、痛みを感じてから痛みをとるよりは、痛みが出る前に先手を打って痛みを取り除く方法です。やはり、痔核根治術の場合もこの「先取鎮痛」が有効だと思います。
痛いのを我慢して治すよりは、痛みをしっかり取り除いていく、できるならば痛みがなく治す方が術後の傷の治りはいいです。どうしても痛みなどのストレスがあると、アドレナリンの分泌が高まります。アドレナリンの分泌が高まっている状態は傷の治りを抑制してしまいます。また痛みが原因で傷の局所の血流も悪くなります。昔は「痛いのを我慢したほうが早く治る。我慢しなさい。」と言っていましたが、痛みを我慢する方が治りは悪くなってしまいます。しっかりと痛みをとることが傷の治りを早くそして良くすることに繋がります。
今回は一気に三つの術後の疼痛の要因についてお話しようと思いましたが、少し長くなってしまいました。今回はこの一つで終わりにして、一つづつお話していこうと思います。
「アジフライ(ヨーグルトタルタル)のレシピを紹介します。

今日、診察が終って帰るとき、京都マラソンで北山通を走っている人が大勢いました。沿道に雨の中、大勢の方が応援に来られていました。もうそろそろ皆さんゴールされたかな?
私はなかなか長距離を走るのが苦手です。昨日も近畿肛門疾患懇談会に大阪に行くのに、ゆっくり歩いていたら電車に乗り遅れてしまうと思い、久しぶりに走り、階段を駆け上りました。電車には間に合ったのですが、電車に乗ると心臓がバコバコ。落ち着くまでしばらくかかりました。還暦をもうすぐ迎える年のせいか、いやいや運動不足のせいですね。
小学校、中学校、高校と、短距離は得意でしたが、とりあえず私は長距離が苦手。中学の頃は部活のとき、内御所を走ったのですが、いつも一番最後でした。この時以来長距離は走ったことがありません。
マラソンする人は凄いと思います。
京都マラソン走り終えた人たち、今日は美味しいものでもしっかり食べて明日に備えて下さいね。
今回のレシピは「アジフライ」です。すぐ頭に浮かぶのが「アジフライ定食」。からっと揚がったアジフライ。サクッと食べる。白ご飯が進みます。
今回のソースは「ヨーグルトタルタル」ですが、皆さんはアジフライに何をかけて食べますか?ウースターソース、あるいは醤油。またタルタルソースではなく単にマヨネーズ。どれもいいかなあと思います。私はウースターソースが多いかなあと思います。タルタルソースもピクルスが入っていたり、美味しいですよね。
今回紹介するタルタルソースはヨーグルトのタルタルです。マヨネーズが入っていないのでエネルギー減にもなると管理栄養士さんから。是非ためしてくださいね。
では「アジフライ(ヨーグルトタルタル)」のレシピを紹介しますね。
「アジフライ(ヨーグルトタルタル)」
1人分 約280kcal、たんぱく質 17g、食物繊維 0.5g
材料(2人分)
鯵(3枚卸) 2枚
★卵 1/2個
★小麦粉 大さじ2
★水 大さじ2位
パン粉 大さじ2
サラダ油
《タルタルソース》
ゆで卵(みじん) 1/2個
ヨーグルト 大さじ3
玉ねぎ(みじん) 大さじ2
ハーブソルト(塩胡椒)適宜
作り方
- ①魚に塩をして10分置き、水気を取る。
- ②★を混ぜる。
- ③②に①をつけ、パン粉をつける。170℃で3分ほど揚げる。
《タルタルソース》
①玉ねぎのみじん切りに少量の塩をして水気を切る。
②全ての材料を混ぜる。
管理栄養士さんから一言
ヨーグルトタルタル
腸内環境を整えるには、善玉菌を増やすことと菌にえさを与えることが必要です。善玉菌の入っているヨーグルトと菌のえさになるオリゴ糖を含む玉ねぎで効果が期待できます。マヨネーズが入っていないのでエネルギーダウンにもなります。
「菜の花とアサリのアーリオオーリオ」のレシピを紹介します。

3月のレシピは「春の和食材で洋食」をテーマにレシピを紹介しています。
今回は、「菜の花とアサリのアーリオオーリオ」のレシピを紹介します。と紹介しようと思いましたが、またまた私にとって初めての言葉、「アーリオオーリオ」。「アーリオオーリオ」って何だろうということでまたまた少し調べてみました。
イタリア語で「アーリオ」はニンニクのこと、そして「オーリオ」はオリーブオイルのことを指すそうです。ですから「アーリオオーリオ」はニンニクとオリーブオイルを使ったソースのことを指すそうです。
ニンニクとオリーブオイルを使った炒め物などを「アーリオオーリオ」と言われるそうです。
この「アーリオオーリオ」に唐辛子とスバゲッティを入れたものが「ペペロンチーノ」だそうです。
そうすると今回のレシピをスパゲッティに絡めるのも美味しいのではと思います。
菜の花も、菜の花のお浸しや菜の花のお漬物もありますね。菜の花を具にしたスパゲッティもありますね。菜の花を見るとやっぱり春を感じますね。
ではそろそろ「菜の花とアサリのアーリオオーリオ」のレシピを紹介しますね。
「菜の花とアサリのアーリオオーリオ」
1人分 約100kcal、たんぱく質 8g、食物繊維 5g
材料(2人分)
菜の花 1束
アサリ 1パック
にんにく 1かけ
鷹の爪 1本
オリーブオイル 大さじ1
塩胡椒
作り方
- ①菜の花を固めにゆでる。
3cmの長さに切り軸の太いほうから順番に入れ、つぼみがきれいな緑色になったらザルに上げる。(水にさらさない)
②フライパンにオリーブオイル・にんにくを入れ弱火にかけ香りを出す。
③アサリと鷹の爪を入れふたをして強めの中火でふたが開くまで炒める。
④菜の花をいれて合わせる。
⑤塩胡椒で味を整える。
管理栄養士さんから一言
菜の花
野菜の中でもたんぱく質・食物繊維が豊富で、βカロテン・ビタミンC・K・
葉酸などのビタミンや、カルシウム・リン・カリウムなどのミネラルも多く、
抗酸化作用・筋肉や骨・心肺機能などにも効果が期待できます。
「おからポテトサラダ」のレシピを紹介します。

今日は朝からしっかり雨が降っています。今日2月16日は京都マラソン。雨の中、そして新型コロナウイルスの感染の不安のなか、頑張って下さいね。
昨日は大阪で第117回近畿肛門疾患懇談会が開催され、出席してきました。
テーマは「周術期の管理」で、特に術後の疼痛管理に関して9題の演題と討論がありました。白熱した面白い懇談会でした。この時の内容や私の意見などはまた後日報告しますね。
今回は「おからポテトサラダ」のレシピを紹介します。以前にもポテトサラダのレシピを紹介してきました。今回はおからを使ったポテトサラダです。後で管理栄養士さんからの一言で紹介しますが、おからは腸内の環境を良くしてくれます。便秘などの排便障害もよくしてくれます。是非作ってみて下さいね。
さて、私は以前にもお話しましたが、ポテトサラダが大好きです。飲み屋さんに行ったときは必ずと言っていいほど、そのお店のポテトサラダを注文します。
お店お店でいろんなポテトサラダがあります。ホタテが入っていたり、ワサビを刻んだものが入っていたり、また、ポテトサラダの中に温泉卵が入っていたり、そのお店でいろんなアイデアでつくったポテトサラダが出てきます。とても楽しみです。また、ポテトサラダのコロッケなどいろいろレシピが広がっていきます。ポテトサラダをパンにはさんでポテトサラダサンドも美味しいですし、私としては、ご飯のおかずにもなります。
おからもいろんな具が入っていると美味しいですし、きっとおからのコロッケなんかも美味しいんじゃないかなあと思います。
そんな私の大好物のポテトサラダのレシピを紹介しますね。
「おからポテトサラダ」
1人分 約150kcal、たんぱく質 3g、食物繊維 3g
材料(2人分)
おからパウダー 6g
じゃがいも 1個
人参(いちょう切り) 3cm
きゃべつ(1口大)1枚
牛乳(又は水) 大さじ2
マヨネーズ 大さじ2
レモン汁
塩胡椒
フライドオニオン
作り方
- ①おからパウダーに牛乳を混ぜる。
- ②じゃがいもは軟らかくしつぶす
- ③人参、きゃべつはゆでる。
- ④①②③をマヨネーズであえ、レモン汁・塩胡椒で味を整える。
- ⑤盛り付けてフライドオニオンをトッピングする。
管理栄養士さんから一言
おから・おからパウダー
おからは食物繊維が豊富で、たんぱく質・ビタミンB1・E・Kも多く含み、
腸内環境を整え美肌効果もあるとされています。
おからパウダーはおからを乾燥微粒子化したもので常温保存でき独特のにおいや癖がないので、ヨーグルト・味噌汁・和え物・パスタ・アイスクリームにかけるだけでおいしく食物繊維がとれます。
「ひじきピラフ」のレシピを紹介します。

春の陽気のように温かくなったり、また急に寒くなったり、変な天候が続いていますね。新型コロナウイルスの感染が広がっていますが、一番は体調の管理かなあと思います。しっかり食べてしっかり睡眠をとって、体調が崩れるこの季節を乗り越えていきましょう。
さて今日は2月14日。バレンタインデイ。チョコレートをあげたりもらったり、チョット気持ちがウキウキする日ですね。皆さんはどうでしたか?
3月は「春の和食材で洋食」と言うことで3月のレシピを紹介していきたいと思います。
まず第一弾は「ひじきピラフ」のレシピを紹介します。
便秘の解消には便の中に程よく水分が含まれ、便の量があることが大切です。そして便の量を増やしてくれるのが食物繊維です。でもこれまでもお話してきましたが、生野菜は量があっても食物繊維としてはあまり摂れません。便の量を増やすには海藻類やキノコ類がいいです。ひじきも海藻類。便秘にもいいかなあと思います。今回のレシピにはキノコ類は入っていませんが、シメジなどのキノコ類も具に足してもいいかもしれませんね。また、おにぎりにしてもいいかもしれません。
では「ひじきピラフ」のレシピを紹介しますね。
「ひじきピラフ」
1人分 約280kcal、たんぱく質 9g、食物繊維 3g
材料(2人分)
温かいご飯 200g
ひじき(生) 50g
卵 1個
ハム(1cm角) 2枚
人参(1cm角) 3cm
三度豆(1cm角) 5本
コンソメ 小さじ1/2
バター 10g
塩胡椒
作り方
- ①鍋にひじき・コンソメを入れひたひたの水で水分がなくなるまで煮る。
- ②人参・三度豆をゆでる。
- ③卵はマグカップに溶き電子レンジ600wで1分チンし箸で混ぜ細かくする。
- ④ボールで①②③とすべての材料を混ぜる。
- ⑤塩胡椒で味を整える。
管理栄養士さんから一言
ひじき
ひじきの旬は3~5月で生のひじきが出回ります。乾燥ひじきを使用する時は
水(又はお湯)で8~10倍に戻して使います。
栄養成分ではカルシウムが牛乳の12倍、食物繊維がごぼうの7倍、
βカロテン・カリウム・マグネシウムも多く含まれています。
煮物のイメージが強いですがいろいろな料理に使えます。
10月3日(土曜日)第36回医療のうたごえ全国祭典in京都

今日はいい天気でした。雪がちらついていたここ二日間と違い少し穏やかな一日でした。
今年の10月3日(土曜日)に第36回医療のうたごえ全国祭典in京都が開催されます。そして今日はその祭典にむけてのプレ企画があり、参加してきました。
実は医療のうたごえ全国祭典の実行委員長をさせていただくことになりました。
8年前にも京都で医療のうたごえ全国祭典が開催されました。この時も実行委員長をさせていただきました。前回に引き続いての実行委員長です。
前回の時は京都府保険医協会から実行委員として実行委員会に出席したのですが、その時にひょんなことから実行委員長になってしまいました。
実行委員会で会議をしてその後、歌の練習。いろんな歌を教えていただきました。本番では、皆さんと一緒に舞台に立って歌を歌い、最後の曲の間奏の時に実行委員長としてもメッセージを届け、そして最後は会場に来られた皆さんと一緒に「故郷」を歌う時は指揮までさせていただきました。
実行委員会での会議、そして歌の練習。また本番に向けての練習。この過程がすべて楽しく、充実した時を過ごさせていただきました。とても感動しました。その時感じたことですが、「私たちには歌がある。そして、私たちが歌を歌い続ける限り、私たちの夢は現実になる。」と言うことでした。今回もこのときの感動をもう一度味わいたと思い、実行委員長を引き受けました。
10月3日の祭典は是非成功させたいと思います。そして参加された皆さんと一緒に同じ感動を味わいたいと思います。
最近、涙腺が弱くなったのか、涙もろくなりました。今日のプレ企画でも、皆さんの歌声を聞いたり、一緒に歌うことで、何か心の底から込み上げてくるものがあり、涙してしまいました。この気持ちは何だろうと思います。
歌を聴きながら、そして歌いながら、いろんなことが間たまに浮かんできます。母のこと、家族のことなど。歌、音楽はやはり感性を研ぎ澄ましてくれるんだなあ、そして気持ちを穏やかに、そして優しくしてくれるんだなあと感じました。いまからこんなに涙していて、本番まで持つかなあとチョット心配になりました。
今回の第36回医療のうたごえ全国祭典のテーマは「“いのち輝き”~笑顔につつまれて~」です。このテーマを皆さんに感じてもらえるような祭典にしたいと思います。
私の母も認知症が進んでいます。私のこともはっきり分かっているかは疑問です。でも時々コンサートに一緒に行ったり、食事をしたりするとき、とても素敵な穏やかな笑顔を見せてくれます。また時にはこんなに笑うかと思うほど、顔をクチャクチャにして笑います。そんな母の笑顔が私は大好きです。そんな笑顔をずっと見続けていたい。そして、そんな母の笑顔を見続けることができる社会にしていきたい。そんな社会にするために、私たちのうたごえが力になればと思います。
「肛門が緩んでしまった!?」

今日は朝から京都は雪が降っていました。積もることはありませんでしたが、一日中雪は降ったりやんだりしていました。渡邉医院も薄っすら雪化粧をしていました。
最近、患者さんの中で「肛門が緩んでしまった。」と心配されて受診される患者さんが少し多くなってきたのかなあと思います。「肛門が緩んでしまった。」と心配される患者さんに、「どうして肛門が緩んでしまったと思うのですか?」と聞いてみると、「いつの間にか便が出ていて、下着が汚れてします。」とか、「排便後、ちゃんと洗浄して拭いているのに、下着が汚れてしまう。」とか、「便がしたいという感じがしない。排尿するときに一緒に便が出てしまう。」などの症状を訴える患者さんが多いです。
このような症状を訴える患者さんは高齢者の女性や高齢者の男性に多いかなあと思いますが、若い方でもこのような悩みで受診されるかたもいらっしゃいます。なかなかこのような症状は他の人に相談することができず、一人悩んでおられる方が多いと思います。
さて、こういった「肛門が緩んでしまった。」という訴えで受診された患者さんを診察してみると、その多くの方は実際には肛門は緩んでおらず、しっかり肛門が締まっている患者さんがほとんどです。実際は肛門の締まりは悪くないが、勝手に便が出てきたり、汚れてしまうという症状が出ているようです。
ではなぜこのようなことが起こってしまうのかです。
便意を感じで便が出るまでの経過を少しお話します。まず直腸は便をためておくところではありません。直腸と肛門とで便を出すところです。正常では直腸は常に空っぽになっていて、便があってはいけないところです。
便は通常、直腸より奥の大腸、S状結腸に待機しています。朝起きてご飯を食べたりして大腸が動く、蠕動運動が始まると初めて便は直腸に降りてきます。何もない直腸に便が来ると便がしたいという便意を感じます。そうすると脳が命令して、自分の意志とは関係なく、内肛門括約筋を緩めて便が出やすいようにします。そこに腹圧をかけると直腸にある便が排出されます。直腸のなかにあった便がすべてスッキリ出てしまうと、また肛門の内肛門括約筋は締まります。
この内肛門括約筋の動きは自分の意志ではどうすることもできません。便意を感じてトイレまで我慢するために絞める筋肉は外肛門括約筋です。
例えば直腸に便が無いときに肛門が100で締まっていたとしましょう。直腸に便が来ることで脳が内肛門括約筋を緩めて50まで緩んだとしましょう。そうすると50以上の腹圧をかけると便は排出されます。直腸にある便がスッキリ出てしまうとまた肛門は100で締まるという具合です。
そうすると、「肛門が緩んでしまった。」と言う患者さんはやはり直腸にある便がスッキリ出ずに残っている場合が多いです。どうしても直腸に便が残っていると、便を出さなければならないので、内肛門括約筋は緩んでくれています。そんな状態で何らかの腹圧がかかった時に便が勝手に出てしまいます。
直腸にちょっとしか便が無いと、便がしたいという便意もしっかり出ません。こういったことが勝手に便が出てしまう原因の一つになります。こういった患者さんに「便の状態はどうですか?」と聞くと「毎日出ています。」とおっしゃる患者さんがいます。でも、毎日便が出ていというよりも、直腸に便が残らずスッキリ出ていることが大事です。
直腸に便が残ったままになっていると、便がしたいという感覚も鈍くなってしまいますし、残ったままになっているとだらだら一日中便が出てくることもあります。
また、直腸に来る便の量が少ない場合も同様のことが起きます。こういった場合にはまずは便の量を増やして、直腸に着た便をスッキリ出すようにしていくことが大事です。そのためには便の量を増やすポリフルなどの内服薬や、コロコロで硬い便の時は酸化マグネシウムのような便を柔らかく内服薬をのみながら、直腸に着た便をスッキリ出すところから治療をしていきます。
また、洗浄便座の洗浄が原因で肛門が汚れてしまうこともあります。
排便後、洗浄便座の洗浄をされている方は多いと思います。洗浄そのものは悪くないと思います。でも洗浄の水圧が強かったり、一生懸命に洗うと、肛門のあたった水は、肛門から直腸の中に入っていってしまいます。入って水はどうなるかです。直腸に水が入ると、入った水をださなければいけないので肛門の内肛門括約筋は緩んでくれます。そして入った水が後から出てきて下着が汚れてしまうこともあります。排便後きれいにしなければということであまり強い水圧で一生懸命洗うことが汚れの原因にもなります。排便後は軽く洗って軽く様にしていくといいと思います。
なかなか、便がいつの間にか知らないうちに出てきて下着が汚れたり、ちゃんと洗浄したのに汚れてしまう。どうしても肛門が緩んでしまったと思ってしまうかもしれませんが、便がスッキリ出ていないことが原因になることがほとんどです。相談し難い症状ですが、一人で悩まず相談してくださいね。
医師偏在対策に名を借りた医師コントロール

今回は、今国が進めている医師偏在対策とかかりつけ医登録制に関して、私たち保険医が問題としている点をお話したいと思います。
今、京都府の地区医師会の先生方との懇談会を開催しています。そこで私たちがプレゼンしている内容を紹介したいと思います。少し長くなりますが、一度読んでいただいて、今進められている国の改革の問題点を知っていただければと思います。
「医師偏在対策とかかりつけ医登録制について」
国がやっているのは医師偏在対策に名を借りた医師コントロール
国は「三位一体改革」と称して、「地域医療構想」「医師偏在対策」「医師の働き方改革」 を進めています。この改革は医療費の地域差縮減目標(医療費適正化)の達成のために組み 立てられたものです。中でも「医師偏在対策」は、医師不足地域への医師配置を進めるより も、医師の配置・就業を国のコントロール下に置くことに重点が置かれています。これを押 し返すことは、保険医の医療を守り、国民皆保険制度を発展させるための最重要課題となっ ています。以下、三位一体改革の内容とねらいを解説し、協会の考えを報告します。
1.都道府県による医師偏在指標を用いた医師確保計画策定
〇2018 年7月成立の改定医療法・医師法により、都道府県は 2019 年度中に医師確保計画 と外来医療計画を策定します。これまでの「人口10 万人対医師数」は、状況を十分に反 映した指標ではないとして、国は新たに「医師偏在指標」を示してきました。都 道府県はこれを用いて医師多数区域・医師少数区域を設定、三次、二次医療圏ごとに確 保すべき医師数の 目標を算出し、確保 方針と共に医師確 保計画を策定しな ければなりません。
○都道府県は医師少数区域において、2036 年を目標に医師を確保します。当面3年~4年 の計画期間で確保すべき人数は、「下位 33.3%を脱するために要する医師数」です。そ して、京都府のように医師多数三次医療圏(≒都道府県)に、医師少数区域がある場合 であっても、他の三次医療圏からは医師の確保を行わないこととするとしています。
〇この「医師偏在指標」は、2月公表後に4月と11 月に改定データが内示されましたが、 京都府の場合、とても地域の実態を反映したものとはなっていませんし、改定のたびに 変動して混乱を生じさせています。しかも、この指標を検証できるデータも公表されて いません。このため京都府は、医師の仕事量、患者受療率、地理的要因を加味した独自 の医師偏在指標を設定した上で、「京都府医師確保計画」の策定作業を進めており、12 月 に中間案が公表されました。
①医療需要(ニーズ)及び人口・人口構成とその変化②患者の流出入 等③へき地等の地理的条件④医師の性別・年齢分布⑤医師偏在の種別 (区域、診療科、入院/外来)―の5要素を考慮したものと説明。
〇国の指標では、京都・乙訓が医師多数区域、丹後、山城南が医師少数区域とされました。 この間の指標の変化は下記の通りで、丹後、南丹、山城南が変動しています。 4月の変化は、患者の流出入を反映したためとされており、医療機関が少ないために他 の医療圏に患者が流れている場合、医師数は充足となったのです。11 月の変化要因は明 らかにされていませんが、山城南のように「多数」から「少数」に振れるような指数に 合理性があるのでしょうか。
〇京都府の中間案で出された京都式の指標は、医師確保の重点順位を①丹後②南 丹③山城南④中丹⑤山城北⑥京都・乙訓とし、京都・乙訓は「府内の他の圏域に対し医 師派遣等の支援に努める」とされました。加えて二次医療圏よりも小さな単位で「医師 少数スポット」を定め、中丹、南丹のへき地診療所周辺の地域を指定しました。
〇協会は、中間案に対するパブリックコメントで京都府の姿勢について4点を評価しまし た。
①医師偏在指標について「京都式」を作ったこと
②医師確保計画策定に係る診療科別医師数調査を独自に実施したこと
③上記調査や独自指標で使用した医療機関へのアクセス状況を用いて、重点領域の設定 とその医療を確保する計画を策定したこと
④国が求めた外来医師多数区域での開業規制策を盛り込んでいないこと
その上で、そもそも二次医療圏単位で医療状況を捉え、施策を考えること自体に限界 があることを指摘し、より小さな地域で分析・検討する必要性を訴えています。
2.外来医師多数区域の問題
〇外来医療についても偏在指標が設けられ、外来医療計画が策定されます。京都・乙訓医 療圏と山城南医療圏が「外来医師多数区域」とされました。
〇これも2月データでは中 丹医療圏が多数区域とさ れていましたが、4月デー タでは多数区域から外れ、 山城南医療圏が多数区域 とされました。11 月データ はまだ示されていません。
○多数区域における新規開 業希望者は、①在宅医療、 初期救急、公衆衛生等、地 域に必要とされる医療機 能を担うよう求められ、② この方針に従わない場合、協議の場への出席が要請され、③協議内容は公表する―とさ れています。
○国は、これにより在宅医療の担い手確保など、地域医療の必要性の充足と医師少数区域 への開業誘導を考えているのだと思いますが、協会は、「医師少数区域」とされる地域が 発生・拡大しつつある根本原因(人口流出)に対する実効性のある対策が打たれないま ま、新規開業者を含めた開業医の犠牲によって問題を解決しようという政策手法には、 その実効性と権利侵害の両面から問題があると考えています。
○このため協会は、こうした危惧を厚生労働省医政局に直接質すとともに、会員署名「医 師偏在解決には〈開業規制〉ではなく地域再生と公的な医療提供体制再建が必要」150 筆及び要請書「医師偏在指標に基づく医師偏在対策は中止すべき」を5月 23 日に提出 して、再検討を促してきました。
○京都府に対しても再三働きかけを行ってきました。このたび京都府は京都府医師確保計 画(中間案)において、外来医師多数区域における新規開業者に求める事項として①診 療所の偏在・不足状況等の情報が容易に入手できるよう提供を図る②地域で在宅医療の 機能を担っていただけるよう、医師会や関係団体等と連携の上で、在宅医療に係る研修 への参加を促す③京都府内における病院、診療所の所在地や提供する医療機能の詳細情 報については、「京都健康医療よろずネット」に掲載―することと記載し、前述のように 国が求めた外来医師多数区域での開業規制策を盛り込んでいません。
3.京都府の 2036 年の必要医師数
○2036 年の必要医師数についても示されています。厚労省は必要医師数の定義を 「将来時点(2036 年時点)において」、国が「医療圏ごとに、医師偏在指標が全国値と 等しい値になる医師数」と定義しており、その考え方で出された数字です。
〇2036 年の京都府における必要医師数は丹後253 人、中丹483 人、南丹332 人、京都・乙 訓4375 人、山城北1105 人、山城南265 人で合計6807 人とされています。これに対し、 上位供給推計で 4006 人、下位供給推計で 1291 人の医師が過剰となるとしています。
4.診療科別必要医師数も公表
○厚労省は「診療科ごとの 2036 年の必要医師数」も示しています(2月27 日、医師需給 分科会)。都道府県ごとの2036 年の診療科別必要医師数では、京都府は各診療科が軒並 み「過剰」と推計されています。全体としては不足と推計される内科ですら448 人過剰 とされ、臨床検査・脳神経外科以外はすべて過剰とされています。
5.専門医シーリングの問題
○日本専門医機構は、医師需 給分科会の必要医師数推 計が出されたのを受け、診 療科別シーリングを各基 本領域学会理事長に通知 しました。9割の医師が取 得する専門医制度の都道 府県別・診療科別定員と は、事実上、都道府県別・ 診療科別の医師定数にな り得るのです。京都府は東 京都よりも多い 12 診療科 (シーリング対象 13 診療 科中)がシーリング対象と され、地域における医師確 保が更に困難になると懸 念されます。
※京都府のシーリング対象 科は、内科、小児科、皮膚 科、精神科、整形外科、眼 科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、 放射線科、麻酔科、形成外 科、リハビリテーション科
6.再編求める公的・公立病院名指し、民間病院でも
○厚労省は地域医療構想実現のために再編・統合を検証すべきとして 424 の公立・公的病院名の公表に踏み切りました(9月26 日)。が んなどの「診療実績が少ない」こと、「類似かつ近接」する医療機 関があることを理由として、府内では舞鶴赤十 字病院、市立福知山 市民病院大江分院、 国保京丹波町病院、国立病院機構宇多野 病院の4病院があげられています。
○協会は、「撤回」を求める副理事長談話を発出。指摘した 問題点は4点。
①公立・公的病院に限らず民間医療機関でも対象が挙げられるなど他に波及する懸念
②診療実績として出された基準は、地域で医療機関が担っている役割の限られた側面を 表すものに過ぎない。また、類似かつ近接する医療機関も対象とされているが、移動 手段が自動車か公共交通機関しかないうえに、それ自体が失われつつある地方の暮ら しの実態を無視するもの
③国が病床削減や医師配置を強制的手法でコントロールしつつも、地域医療構想や地域 医療対策協議会など都道府県での協議による結果だとして責任は取らない仕組み
④今回の措置は、地方の医師確保・偏在是正にも逆行し、政策に一貫性がないと指摘す べき医療界が、ワーキンググループで迎合ともとれる発言を行った問題
○全国からの批判の声に、厚労省は全国7会場で意見交換会を開催。唐突なデータ公表だ ったことなどを詫び、機械的に当てはめたデータであることを認め、このデータをもって再編統合を強制するつもりはないと説明するも、より地域医療の実態に即したものと なるようデータを活用し各自治体で議論を進めてほしいとしました。さらに、民間医療 機関でも同様のデータ公表の準備を進めると明言しました。
〇2020 年1月 17 日、厚労省は名指しした病院に対し、再編・統合を含む再検証を求める 通知を都道府県に発出しました。これは、混乱を招いた反省もなく、当初方針を貫こう とするものです。尚、厚労省は通知にあたり424 病院から東京都の済生会病院をはじめ 7医療機関を除外、代わって新たに約20医療機関を追加した新たなリスト(現在非公開) と、公立・公的と同様の指標で分析したと思しき約 3200 医療機関の民間医療機関デー タと「公立・公的と競合すると考えられる」約370 の民間医療機関リスト(公表可否は都 道府県に委ねるとされる。現在非公開)も送付した。
7.「かかりつけ医」登録制の問題
○「かかりつけ医」登録制を厚生労働省が検討していると6月に日本経済新聞が報道しました。 同紙によると国は、医療費抑制のために、患者が任意でかかりつけ医を登録し、診療料を月 単位の定額として過剰な医療の提供を抑えたり、かかりつけ医以外を受診する場合は負担を 上乗せして大病院や複数医療機関の受診を減らす案を検討する―としています。
○これは、まさに医療費総額抑制と同時に人頭登録払いを実現し、患者数に見合った医師数(開 業医数)を割り出して管理するための仕組みづくりとなるものです。患者側からはフリーア クセスの制限になります。協会は、「断じて容認できない」と理事会声明を公表。
〇「かかりつけ医」の登録制を求める動きが、野党の超党派議連からもあがってきています。 これに対して理事会声明を公表し、議員への働きかけを行っているところです。
○指摘した問題は、4点。
①「いつでもどこでも誰でも保険証一枚で必要な医療を必要なだけ保険で提供する」という 国民皆保険の理念による患者の権利保障と相容れない。フリーアクセス制限、医師のプロ フェッショナルフリーダムに基づく診察・治療の制限、患者登録によって導き出される「必 要医師数」に基づく自由開業制規制も危惧される
②医師・医療機関間に無用な競争が持ち込まれる。各医師が専門分野を持ち、患者を中心と して互いに協力・連携しあう状態も崩れる
③「予防医療」に対する過度な期待は、政権の発想とも符合する。予防は必要だが、それによ る医療費削減効果は認められないと指摘する識者は多く、患者の健康自己責任論の増長に 用いられたりすることも予想される
④想定されている「かかりつけ医」像は結局のところ内科系の医師だが、にもかかわらずなお、家庭医療専門医や総合診療専門医との混乱が見られる。既にかかりつけ医として診療 にしている開業医の実態に目を向け、再検証してほしい
※歴史的にみれば、1980年代の旧厚生省「家庭医構想」に対して、日本医師会は医師の分断、人頭登録払い(患 者に実際に提供した医療サービスに関わりなく、医療機関に登録された患者数に応じた定額の報酬を支払う 方式)につながるとして反発し、構想は頓挫。しかし、この考えは脈々と受け継がれてきたといえます。
8.国の狙い=医療提供者改革―医師配置の適正化
○2016 年10 月21 日、当時の塩崎恭久厚生労働大臣が経済財政諮問会議の場で、都道府県 別一人当たり医療費の地域差について、入院医療費は病床数・医師数が、外来医療費は 医師数が主な増加要因であると指摘。「医療費の地域差半減に向けて、医療費適正化を推進」すると述べていました。
○医療費の地域差半減は、「新経済・財政再生計画改革工程表」(以下、工程表)の政策目 標にも位置付けられています。このうち、病床配置の適正化については地域医療構想が 2017 年に策定されており、次は医師配置の適正化へ、国が本腰を入れているのです。
○医療提供者改革を通じて、国がやろうとしていることは次の3つ。
①医師の人数を地域 別・専門科別に管理できるようにすること
②医師の専門性に介入し、国のルールに則っ て素直に医療を提供する医師を育てること
③医師の仕事の生産性を向上させる=経済 活動の活性化につながり、富を生み出し、経済成長に資するような医師を育てること―。
9. 私たちの対案-医師偏在を生み出す構造問題を越えるための―
〇そもそも、医師偏在指標や診療科別必要医師数の計算に用いたデータや途中式などは一 切公表されておらず、検証・再現し得るだけの情報が公開されていない問題があります。
○「医師多数区域」での開業や医師確保を規制しても、少数区域での開業や就業が進むこ とにはつながりません。医師偏在の理由について、国は根本的な議論を避けたまま、私 たち医師の「自由」にすべての責任を負わせようとしています。医療制度は社会保障で あり、国が人々の生命と健康を守る義務を果たす仕組みです。強制的に都市部の医師を 地方へ赴任させるようなやり方は間違っています。
○医師偏在が起こる最大の理由は医療保険制度の限界です。日本の医療保険制度は、経済 が疲弊し、人口減少している地域では患者が確保できず、採算がとれないため、開業で きません。したがって今の仕組みのまま医師偏在を是正する方法は唯一、地域経済を再 生させることです。それまでの間は、公立医療機関を配置し、行政の責任で医師を確保 するしかありません。にもかかわらず、未だに国は公立医療機関を縮小する政策ばかり 進めています。国保直営診療所はじめ、公的な医療機関がその地域の医療保障をカバー できるようにするべきです。
○加えて、医師不足地域での医業を可能とする仕組み=当該地域における医業の採算ライ ンを明らかにし、採算点に達しない分の費用は全額国費で賄う制度を創設すべきです。 国の「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」(2017 年)でも、44%の医師が 地方で勤務する意思を示しています。こうした医師の思いを前向きに支える政策こそが 必要と考えます。
○そもそも、医師の働き方改革における 1860 時間という「上限規制」などというとんでも ない提案がされてしまう背景には、医師たるもの国民の医療のために犠牲になって当た り前という考えがあり、医師は規制され、自由を制限されて当然の存在と国は考えてい るのかもしれません。とりわけ、開業医については、「働かせすぎの勤務医」に対し、「決 まった時間だけ働いて往診をしない開業医は多い」などと揶揄し、勤務医の働きすぎも、 医師偏在が解消しないのも、まるで開業医が悪いかのような論調が作られつつあります。
○あらためて訴えたいのは、医師の自由の大切さです。医師・医療機関は原理的には公的 な存在です。生存権保障の担い手であり、社会保険制度を通じて公費が投入され、それ によって医業を営んでいます。
○今後、医師をコントロールしたい国と地域の医療者の間でのせめぎあいはもっと激しく なると考えられます。協会は、開業医・勤務医の現場から反論するとともに、地域の患 者さんの声から、今回の医療提供者改革を徹底的に批判し、対案の提案を行い続けます。
今、母と関わるなかで

京都に帰ってきたのは私が34歳の時。父が病に倒れて急遽京都に帰ってきた。それからもう26年。今年の2月で私は60歳。還暦を迎えた。
京都に帰ってきたころはまだまだ私は若かった。長男が生まれ、5か月の頃。父が脳梗塞で倒れたが、父の看病は母が見てくれていた。診療所での診察や手術で目いっぱいと言うこともあったが、父や母の生活にはあまり関心を持つことはなく、自分たちの家族のことだけを考えていた。その頃はそのことに何の疑いも持たなかった。
今、母は認知症が進むなか一人で暮らしている。デイサービスやショートステイを使いながら暮らしている。ショートステイの日以外は、私は診療所に仕事に行く前に、毎日朝6時半ごろに母の家に行き面倒をみている。
そういう生活をしている中、ふと母のこれまでの人生を顧みることがある。母は自分がしたいことが本当にできていたのだろうか?と。
母は父と結婚して松本で暮らしていた。その頃私が生まれた。父の移動で私が3歳の頃に山梨県の甲府市に住むことになった。京都に帰ってきたのは私が小学5年生のころ、大阪万博が開催されていた夏の頃だった。父型の祖母が癌でなくなったあと、祖父が一人で生活し、渡邉医院を守ていた。そんな祖父を支えるために父が京都に帰り、肛門科渡邉医院を継ぐことを決心したからだ。
京都に帰ったきた後は、母は祖父の面倒をみたり、自分の親をみたり、また親戚の叔父や叔母の面倒も見ていた。そんな生活の中、時々冗談で「私の人生は看病の人生だ。」と言って父を困らせ、父は「そんなこと言わないでくれ。」と。
父が脳梗塞で倒れた時、祖父も心筋梗塞で入院。父と祖父の面倒を見るために二つの病院を駆け回り、そして、京都に帰ってきたばかりで、何もわからずにいる私を助けるために渡邉医院にも仕事に来ていた。
私も京都に帰ってきたばかりで、渡邉医院のことでいっぱいだったこともあって、母の生活に目を配る余裕はなかった。
祖父が亡くなった後は、父をみるだけになり、毎日父と一緒に渡邉医院に来ていた。食事は父と母と二人で。たまに私も加わることはあったが、あまり父と母の生活に寄り添うことはなかった。
そんな生活も父が亡くなってからは母一人の生活になった。たまに母と一緒に食事をしたりはしたが、母を一人っきりにすることの方が多かった。
そんな生活が数年たったころから母は認知症になっていった。はじめの頃は、まだ一人で診療所に来て受付をしていたが、段々一人では診療所に来れなくなり、また受付の業務もできなくなっていった。
認知症は始まると一気に進んでいくんだなあと感じた。今は、私のことがどこまでわかっているかわからない。でもいつも合うと笑顔で迎えてくれる。
そんな母と関わるようになって、最初の頃は、母を私の世界に引き戻そうとしていた。「認知症が進んでいく母」という現実を受け入れるだけの気持ちの余裕がなかったのだと思う。そうすると、「それはダメ」、「それはしてはいけない」、「それは違うでしょ」と母を自分の世界に戻そうとするとすればするほど、母を否定することになってしまった。またそのことで私自身もイライラしたり、気持ちがマイナスに向いていってしまった。そんな時ふと、「私自身が母の世界に入っていけばいいのでは。」と思い、そうすることに決めた。そうすると、今までは母の否定であったのが、「そうだね」、「そうしよう」と母の肯定にすべてが変わり、ガラッと生活が変化した。そのことで、「認知症が進む母」という事実を受け入れることが出来るようになり、私の心は優しさを取り戻すことができた。
母は、可愛らしく、そして素敵に認知症になっていると思う。
認知症が進む母と関わることで、私自身すごく心穏やかに、そして優しくなれたと感じる。
一緒に食事をしたり、時々コンサートに行ったりもする。コンサートでは、体を少し揺らしながら、手でリズムをとりながら楽しそうに演奏を聴いている。
また遊んでいる子供たちを優しい眼差しで、そして優しい笑顔で見つめている。時々こんなにも笑うかと思うほど顔をクチャクチャにしながら笑っている。そんな母の笑顔が私は大好きです。
微笑みながら私を見る母。その微笑みはいつも、そしてどんな時でも母親として私を見守ってくれている。
そんな母の笑顔をこれから先も見続け、そして守るために私たちは何をしなければならないのか。自分の意思を示せず、そして自分自身の権利を自分で守ることが出来ない母の権利をどう守っていかなければならないのか。私たちはしっかり考えていかなければならない。そのことが、これまで、そしてここまで私を育ててくれた母へ私がしなければならないことだと思う。