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2018.09.24

内痔核の術後の経過が悪くなる要因とリカバリーは?

 内痔核は第Ⅲ度(排便時に内痔核が脱出して押し込む程度)以上の内痔核は痔核根治術が必要となります。内痔核の性状によっては、ジオンという痔核硬化剤での四段階注射法での痔核硬化療法(ALTA療法とも言います。)や輪ゴム結紮法での治療が可能です。でもこれらは万能ではありません。どのような内痔核にも対応できる手術が痔核根治術です。
 前回2回に分けて、痔核根治術ではデザインが重要で、とくにドレナージが痔核根治術の治りに重要なポイントになることをお話しました。
 今回は、内痔核に対して痔核根治術をしても、いつまでも痛みが続いたり、出血が続き、予定通りに治っていかない場合が時にあります。この要因やリカバリーについてお話します。
 内痔核に対して痔核根治術を行った場合、だいたい手術をおこなってから約3週間から4週間で治っていきます。術後の痛みに関しては、排便時の痛みも術後7日間から10日間でスッと楽になります。出血に関しては傷が完全にふさがるまである程度出血は続きますが、怪我と同じように、傷が治っていくとともに、だんだん出血の量は減ってきます。
 このように痔核根治術を行った場合、術後7~10日で排便時の痛みがとれ、術後2週間で約80%治り、術後3~4週間で治っていきます。
 前回、ドレナージが大事といいましたが、どうしても排便時に肛門の中の傷に便が付着します。排便後、肛門の中まできれいに洗ったり、拭くことができません。そこで、排便時に肛門の中の傷に便が付着しないように、付着した便が具合よく外に出るようにドレナージを作ります。このドレナージが適切な大きさであると、予定通りに治っていきます。
さて、この術後3~4週間という期間ですが、これはドレナージの傷の幅から出した期間です。傷の幅で治る日にちは決まってきます。傷の幅をXmmとした場合、治るのにかかる期間は、次のような式で算出します。
治るまでの期間=(Xmm×1.19)+3.6日です。だいたいドレナージの傷の幅は15mm程度ですので、(15×1.19)+3.6日=21.45日となり、約3週間となります。
 さて、痔核根治術を行った後、具合よく治らない原因の多くが、このドレナージの傷が小さく、肛門内の傷が治るよりも先にドレナージの傷が治ってしまうことです。理想的な治り方は、肛門の中の傷が治った後も、ドレナージの傷が残っていて、肛門内の傷が治った後にドレナージの傷が治る。この順番で治ることが理想です。ドレナージの傷は肛門の外にあるので、直接便が通るところではありません。時間がたてば、必ず治っていきます。これに対して、肛門の中の傷は便が通るところなので、術後便が硬かったり、反対に下痢などが続いた時にはどうしても肛門の中の傷がこすれます。ですからしっかり肛門の中の傷が治ってからドレナージの傷が治るという傷の治り大切です。ドレナージの傷が先に治り、肛門の中の傷が残っていると、裂肛(切れ痔)のようになってしまいます。
肛門の中の傷が残っているので、排便時の痛みがあり、場合によっては排便後も痛みが続くなど、裂肛と同じような症状が出ます。また慢性の裂肛と同じように、傷の外側が硬く腫れ、皮垂が出来てきたりもします。一見ドレナージの傷がふさがっているので、傷が治った様に見えますが、肛門の中の傷が治っていないので、排便時の痛みや出血が続きます。
このような状態になった場合はどうするか。リカバリーの方法ですが、ドレナージの傷が先にふさがってしまい、肛門の中の傷が残っているため、しばらく、外用薬で保存的に治療して様子を診ることもありますが、もう一度、ドレナージをつくり治すことで、肛門の中に残った傷がスッと治っていきます。「もう一回手術か。」と思いますが、内痔核の手術をするわけではありまあせん。排便時に痛みがでる、肛門の中に新たに傷ができるわけではないので、ドレナージをつくり治すことで、痛みが強くなることはありません。ドレナージができることで、痛みも軽減していきます。このドレナージをつくる場合は入院の必要はありません。局所麻酔をしてだいたい5分程度で終わります。
また、どうしても排便時の痛みが続き、痛みが原因で内肛門括約筋の緊張が強くなってしまうこともあります。この場合は、裂肛の手術と同じように、内肛門括約筋の緊張をとる手術を加えることで、治りにくくなってしまった肛門の中の傷はスッと治っていきます。
 手術を受けた後、必ず痛いとか出血するなどの症状が出ます。この患者さんの症状、訴えがとても大切だと思います。ドレナージの傷が治ると、一見痔核根治術後の傷は治った様に見えます。でも肛門の中の傷が残っていると、必ず排便時の痛みや排便後の痛み。また排便時の出血などの症状が出ます。やはり、患者さんの症状や訴えはとても大事です。症状がある場合は、しっかりそのことを伝えていくことが必要ですし、医師もその声をしっかりきき、その訴えの原因をみきわめ、治していくことが大切です。
次回は裂肛の手術に関してお話しようと思います。

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