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2018.08.15

73回目の終戦記念日を迎えて

戦争が終わって73年、終戦記念日を迎えました。

まだ73年、もう73年、感じ方はいろいろあると思います。でもこの73年間、日本は戦争をしなかったことは事実です。このことは私たちにとってとても大切なことだと感じます。

さて、私の父は、ヒロシマに原爆が投下されたとき、広島の江田島にある海軍兵学校にいました。そのすさまじい衝撃と原爆雲を体験しました。その後、広島の悲惨な状況を目の当たりにして京都に帰ってきました。

 京都に帰ってきて、旧制三高への編入試験の口頭試問の時、「今度の戦争は正しかったと思いますか?」という質問をされたそうです。父は、「貴方達教育者から正しいと教えられ、それを信じて今まで生きてきました。」と答えたそうです。父が17歳の時です。この質問の答えを探すことがその時の父の生きるテーマであり、この時に「戦争は間違っていた。」ときっぱり言えなかったことを悔やんでいたそうです。

戦争は、国の利益を守るという自衛の名のもとに、私達の知らないうちに私達の利益に関係なく進められてしまいます。私たちが平和だと感じている時代においても、私たちが戦争に対して少しでもすきをみせると、その隙間に入り込み、いつの間にか、その実態を隠しながら私達に迫り、私達を戦争へと巻き込んでいきます。そして、いつのまにか戦争を正しいものへと変えていってしまいます。戦争の恐ろしさは、そこにあります。時の為政者が、「戦争は絶対にしない」と言っても、一端戦争への扉を少しでも開くと、戦争は自分の思惑をこえて、始まり、広がっていきます。

戦後73年、私達がしなければならないのは、日本を戦争ができる国にするのではなく、なぜこのような戦争が起きてしまったのか、なぜ防ぐことができなかったのかをしっかりと検証することです。

私は戦争を経験することなく58年間生きてきました。これは祖父母や両親が戦争を経験して、今後日本では決して戦争を起こさせてはいけないという誓いのもと、平和憲法、9条を守り育ててきたからです。

戦争は、戦場で相手から銃口を向けられたとき、そして相手に銃口を向けた時、初めて戦争への真の恐怖、戦争の愚かさを感じるのだろうと思います。そして相手に向けた銃の引き金を引いたとき、その時、殺された人、殺した人、いずれもがその人たちがこれまで築き上げてきたものを全て失ってしまう。でもそれでは遅すぎます。

想像してみてください

愛する人、愛する子供、孫が戦争に行く姿を。そして戦場で人を殺し、そして殺される姿を。

想像してみてください

愛する人、愛する子供、孫が戦争で死に、棺に入って家に帰ってくる姿を。

その時の悲しみ、絶望感を。

想像してみて下さい

仮に戦争で命を落とさなくても、愛する人、愛する子供、孫が負った心の傷を。

そして、この心の傷は決して癒すことはできません。

  私達医師は、病気に対して早期に発見して、早期に治療をすることを目指しています。また、そういった病気が起きないように、社会の環境の改善を行ってきています。平和に関しても同じだと思います。戦争へ導く可能性のあるものは早期に発見し、早期に治療しなければなりません。また、戦争が起きない環境もつくっていかなければなりません。これが私たちの医療に従事するものの使命です。
 私たち医療に係るものは、誰もが健康で文化的な生活を営む権利を保障する憲法25条を実現させ、患者さんの健康を守ることを使命としています。健康とは肉体的、精神的に病んでいないといった状態だけでなく、社会的にも経済的にも満たされている状態のことをいいます。このことを考えると、健康を守ること、そして憲法25条を実現させることと、戦争は真逆のものです。戦争はその正体をみせることなく、私達にそっと忍び寄り、そしていつの間にか戦争へと巻き込んでいく。患者さんの健康を守るためには、戦争へと進む可能性のあることは、どんな些細なことでも、反対していかなければなりません。また、憲法25条を実現させるには、個人個人が尊重され、幸福を追求する権利が保障されなければならなりません。
 
このように、憲法25条を単独で守り実現させることはできません。日本が戦争をしない平和な国であること。このことを保障する憲法9条、そして、誰もが個人として尊重され、幸福を求める権利を保障する憲法13条。この憲法9条と13条があってこその憲法25条です。これらは深く結びついています。91325です。この91325という理念の下で患者さんの健康や命を守る取り組みを繰り広げていきたいと思います。

想像してみてください。

武力ではなく、平和憲法9条によって世界が平和になる姿を。そして心からの笑顔で幸せに暮らせる社会を。

私たちは今日の終戦記念日を、二度と戦争を起こすことなく、戦争へと導くすべてのものを排除し、世界を平和な社会にする、その誓いの日にしたい。

 

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