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2018.05.27

適切な診断と適切な治療方法の選択が重要。

 肛門の病気を治す際に、一番重要なことは、適切に肛門の病気が」診断できているかです。適切な診断なしでは、治療することはできません。適切な診断があってこそ、次の治療へとつないでいくことができます。
 例えば内痔核(いぼ痔)についてお話しします。
患者さんの症状としての訴えは、「排便時に出血した。」「排便時に、いぼ痔が出てきて押し込んでいる。」「いぼ痔が出たままになっている。」「排便後も便が残ったような違和感がある。」「なにかいつも肛門にものが挟まったような違和感がある。」「痛みがある。」「肛門がいつもジクジクしたかんじがある。」「出血はしないが、粘液のようなものがでてくる。」などなど様々な症状を訴えられます。
 内痔核の診断において、大きく二点について注目します。
 まず一つ目は、排便時の出血です。内痔核は痛みの感じない部分にできます。したがって出血も排便時に痛みなく出血を認めます。出血の量は、拭いたらつく程度の出血から、排便時に飛び散るような出血など、内痔核の程度で出血の具合は変わってきます。でも、裂肛(切れ痔)などの内痔核以外の病気がなく、内痔核だけの場合は、排便時に痛みなく出血します。
 もう一つは、排便時に内痔核が脱出する(出てくる)かどうかということです。
 出血だけの場合は、出血の程度がよっぽどひどい場合を除いては、手術による治療にはなりません。手術をするかどうかを決める目安が、排便時に内痔核が脱出してくるかどうか。また脱出した内痔核が、自然に戻るのか、押し込まなければ戻らないのか、さらに押し込むことができないのか。この排便時の内痔核の脱出の有無、程度が手術をするかどうかを決める、重要なポインとになってきます。
 排便時に内痔核が脱出してこなければ(第Ⅰ度の内痔核)、手術による治療の必要はありません。軟膏や座薬などの外用薬による治療や、出血が多かったり、外用薬で症状がとれなかったりした場合は、パオスクレーという痔核硬化剤による痔核硬化療法で治療します。
 排便時に内痔核が脱出するも自然に戻る程度の内痔核(第Ⅱ度の内痔核)の場合は、外用薬だけでは十分に症状がとれません。この場合は、痔核硬化療法や内痔核の性状によっては、輪ゴム結紮法を行います。
 排便時に内痔核が脱出して、押し込まなければならない程度の内痔核(第Ⅲ度の内痔核)の場合は、痔核根治術やジオンという痔核硬化剤を使っての四段階注射法での痔核硬化療法を行います。内痔核の大きさや、性状によっては輪ゴム結紮法で治すこともできます。
 脱出したままになっている内痔核(第Ⅳ度の内痔核)の場合も第Ⅲ度の内痔核と同様に、痔核根治術、四段階注射法による痔核硬化療法、場合によっては輪ゴム結紮法などで治療していきます。
 手術が必要な内痔核に対してどんな内痔核でも治療できるオールマイティーな治療方法は痔核根治術です。
 ジオンによる四段階注射法による痔核硬化療法や輪ゴム結紮法はいずれも万能な治療方法ではありません。適応を間違えると、内痔核が治らないばかりか、症状が悪化してしまうことがあります。
 しっかり内痔核の状態、性状を診断して、その内痔核に対してどのような治療法が最適な治療法なのかを決めていかなければなりません。
 そのためには、内痔核に対してのさまざまな治療法を修得していなければなりませんし、最低限、どんな内痔核も治療できるオールマイティーな手術法である痔核根治術はできるようにならなければなりません。

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