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2022.05.07

腐食療法ー祖父の原稿よりー

 前回、祖父が書いていた原稿の中の「痔核硬化療法」と「痔核の塗布腐食療法」のうち、「痔核硬化療法」に関してお話ししました。今回はもう一つの「痔核の塗布腐食療法」に関してお話ししたいと思います。

 最近はもう腐食療法は行われなくなりました。渡邉医院でも行っていません。その理由の一つは、やはり腐食剤がどこまで広がるのか、腐食させたいところのみにうまく塗布できるか。また腐食剤で内痔核を壊死脱落させる方法なので、やはり壊死脱落する際に大量の出血を起こす可能性があること。また、腐食療法によって肛門に狭窄を起こす可能性もやはりあります。こういった理由で腐食療法は行われなくなってきました。ただ、痔核根治術やジオンによる痔核硬化療法などとうまく併用していくことで、より十分な治療を望むことができるのではないかとも思います。様々な治療方法を持ち、その中で患者さんにとって一番適しているものを使う。このことはとても大切なことですし、後で話しますが、祖父もこのことの大切さを強調しています。

 腐食療法に関しては、その適応について祖父はこのように書いています。「第Ⅲ度の内痔核に対して、私(祖父)は手術による治療を原則として行っている。しかしながら、患者が他疾患を合併していたり、糧にの事情、あるいは安全な手術方法であるとはいえ、高齢者に対しては第一線開業医としては手術に踏み切れない場合にまま遭遇するものである。しかも患者の苦痛が痔核を取り除かなければとれぬ場合、特に痔核が広東只、還納しても再び脱出し疼痛を訴え、医学的に診ても根治療法が適応となり、患者もそれを希望するものに、私は次善の策として塗布腐食療法を行っている。」と適応を限定しています。

 祖父がこの「塗布腐食療法」に関心を持ったのは、祖父が勤務していた加藤医院で、「来院する患者の中に時々腐食療法を以前に受け、その局部があたかも手術を受けたもののように見事に治癒しているものがあったため。」としている。

 当初、腐食療法に使用する薬剤は、秘法とか家伝とかでその内容を知ることができなかったと記している。やはりその時代、肛門科にはその先生が持つ「秘薬」があり、それを表に公表することがなかったようです。

ただ祖父は、様々な文献等を参考にして以下のような腐食剤を作成した。 

 成分内容は

 亜ヒ酸 4g  水酸化第2銅 1グラム  硫黄  0.3g   

アネステジン  1g    グリセリン  適量

 以上を混合研磨し泥状にする。なお水酸化第2銅は、硫酸銅と苛性ソーダを反応させて作ると記載している。

 使用方法は、

  • 脱脂綿で作った紐で脱出した痔核の根部をはちまきをするように軽く締め付ける。
  • ゾンデの平らな面の部分を使って痔核全体に腐食剤を塗布する。
  • 痔核周囲の皮膚を適量の脱脂綿で保護。痔核の上も脱脂綿で覆い絆創膏で固定。
  • 皿のその上からカット綿、T字帯で固定する。

経過中、分泌液などで腐食剤が付着しにくい場合には、硝酸銀を痔核表面に塗布すると良い。と記載してありました。

 腐食療法施行後ですが、3日目頃には患部は暗褐色に変色し、6日目頃には痔核も縮小、疼痛も軽減。約9日目には一部壊死脱落する。約14日目には痔核はすべて脱落した。との記載がありました。

 このような経過をたどって、腐食療法内痔核、特に嵌頓痔核は治っていくようです。

 最後に祖父のまとめの部分の文章です。このことに関して私も同感です。このように書いてありました。

「肛門疾患の治療に際しては、保存的療法、非手術療法、手術療法にいたるまで、できるだけ多くの武器(治療方法)を持つよう努力すべきである。この多くの武器(治療方法)の中から、個々の患者に最も適した療法を選び治療するところに、現段階での肛門病専門医の使命があると考える。」と。

 この言葉は、今も大切な言葉だと思います。

 今回妹の大掃除のおかげで、貴重な資料がでてきたと思います。私も治療が落ち着いたら、ほかにもきっと貴重な資料が多く残されていると思います。見つけ出して、9月渡邉医院再開に向け参考にしていきたいと思います。

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