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2022.05.07

痔核硬化療法と戦争ー祖父の原稿よりー

「痔核硬化療法と戦争―祖父の原稿よりー」

  さて今日は土曜日。仕事の方もいらっしゃると思いますが、いよいよゴールデンウイークも今日と明日を残すのみ。皆さん楽しい思い出作れましたか?

 私もいよいよ、週明けの月曜日に再入院。3クール目の抗がん剤投与に入ります。

このゴールデンウイーク中、妹が実家に帰ってきて、実家の大掃除をしてくれました。その時に出てきた祖父の原稿。とても興味深く、そして面白いので、少し解説を入れながら紹介したいと思います。

今回のブログの題名ですが「痔核硬化療法と戦争―祖父の原稿よりー」と少しショッキングな題名になっています。祖父の現行の中に、戦争とかかわる内容があり、これに関しては後程紹介します。

祖父の原稿のタイトルは「痔核の非手術療法」です。その中身は二つの治療方法について書かれていました。一つは「痔核硬化療法」。もう一つは「痔核の塗布腐食療法」の二つの治療方法に関して、祖父が独自に開発した内容です。

 今日は、その中で「j比較硬化療法」に関して紹介します。「痔核の塗布腐食療法」は次回に回したいと思います。

 さて痔核硬化療法についてお話しする前に、今までわからなかったことが判明したことがあります。それは渡邉医院の開設のj引きでした。これまで、いつ渡邉医院を解説したのかを明確に記載してあるものを見つけることができませんでした。今回この祖父の原稿に開設時期が明記されていました。それは「S64月開業」と明記してありました。今年の4月で91年が経ったということです。そうすると、今回私の病気療養のために41日から渡邉医院を休止したので、渡邉医院91年の歴史に、一旦休止符を打ったことになります。9月の再開。渡邉医院100年を目指して治療したいと思います。

 さて「痔核硬化療法」ですが、祖父は大正145月から昭和64月までの6年間、大阪の肛門科、加藤医院で手術による治療と痔核硬化療法を主とした治療法について指導を受けたようです。

この原稿の中に「輪ゴム結紮法」に関しての記載がありました。そこには、やはり輪ゴム結紮法の適応になる内痔核の患者さんが少ないと記載してありました。このことに関しては私も同じ意見です。良く患者さんから「診察を受けたら直ぐに、輪ゴム結紮法をされた。」と聞くことがあります。しかし、そんなに輪ゴム結紮法の適応となる内痔核は少ないです。「輪ゴム結紮しましょう。」と言われた際は、直ぐに和語目結紮はせずにほかの肛門科医にセカンドオピニオンすることが大切かなあと思います。

 さて、昭和6年の開業以来祖父は第Ⅰ度及び第Ⅱドの内痔核に対して痔核硬化剤としてマグネシンを使っていました。今は痔核硬化剤としてジオンとパオシクレ―がありますが、その当時は、各肛門科独自の痔核硬化剤を使っていました。

 マグネシンはマグネシウム粉末4gを100mlのグリセリンに懸濁させた懸濁液です。しかし、戦争が始まって、マグネシウムの入手が困難になってきました。そこで昭和7年にその当時まだ入手できた第2燐酸カルシウムのグリセリン懸濁液を祖父が独自に開発して試みると、マグネシンと同等の結果を得ることができたとのことです。現在は使っていませんが、この渡邉医院独自の痔核硬化剤、第2燐酸カルシウム・グリセリン懸濁液に関しては、戦後、昭和28年第8回日本直腸肛門病学会で報告しました。

 その当時使用していた痔核硬化剤は4%第2燐酸カルシウム・グリセリン懸濁液で、グリセリン100mlに第2リン酸カルシウムを4gを懸濁させたものです。適応としては、現在のパオスクレ―とほぼ同様で第Ⅰ度及び第Ⅱ度の内痔核で、手術適応の第Ⅲ度の内痔核に対しても基礎疾患等があったり、根治術が難しいと判断した患者さんにも使用していたようです。痔核硬化療法の投与方法は、現在の痔核硬化療法と同様で、左側臥位で行い、内痔核周囲の粘膜下に1回につき1か所約0.3mlを3か所、計約1mlを使用。隔日に3回施行していた。氷河あれば追加投与をしていた。局注した部位の組織変化としてはパオスクレ―と同様に、硬化剤を投与した静脈周囲の線維性結合織の増生が強く、静脈は圧迫されたようになっていたとのこと。

このように、祖父は渡邉医院独自の痔核硬化剤を開発し内痔核の治療を行っていました。

 さてタイトルの「痔核硬化朗報と戦争」ですが、祖父の原稿の中にこんな記載がありました。戦争の時期です。

 「私は昭和204月に召集をうけ、孤島の陸軍病院に勤務した。」これは、昭和16年に医療関係者徴用令が発せられました。医師や看護師らが軍需工場、無医村などに強制的に勤務させる方針で、医師が軍医として戦地へ行く召集が広がっていった時期です。

 祖父の原稿はこう続いて書かれています。「戦争が激化していく中、次第に隊員で痔核で入院し加療する患者が増加してきた。しかし戦局は苛烈となり、全員手術をすれば戦力の低下を期すことを憂い、痔核硬化療法を試みたいと考えたがマグネシウムが入手できず・・・」と。そして、「入手できた第2燐酸カルシウムを用いた第2燐酸カルシウム・グリセリン懸濁液を作り使用してみると、マグネシン注射同様の結果を得、患者を早期に原隊に復帰させることができた。」と

 内痔核に対しての痔核硬化療法にも戦争の影響、戦争の影が見え隠れします。

 今回は「痔核硬化療法」に関しての祖父の原稿を紹介しました。次回は「痔核の塗布腐食療法」に関してお話ししますね。

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