今回、悪性リンパ腫になり入院して抗がん剤による化学療法での治療をするにあたり、様々な「決断」を迫られる場面が多かった。しかも「決断」を考える時間が本当に短い時間で「決断」しなければならないことが多かった。
現在渡邉医院は休止しています。今の状況では9月1日に再開を予定し目指しています。
さて、「決断」ですが、入院するということに関しては、これはどうすることもできないし、私自身決断するもなく、必然的に入院となりました。その時の私を見ていたスタッフ、そして私自身、入院は必要であり、入院するかしないかを決断するまでもないほどの状態でした。ただ、入院してからが「決断」の嵐でした。大きくは五つ。まずは患者さんのこと、そして渡邉医院のスタッフのこと、そして渡邉医院のこと、家族のこと、そして私自身のことです。
患者さんに関しては、まずは手術の予定が決まっている方。やっとの思いで肛門科の敷居を超えて、仕事などの調整をして手術日を決めてもらったのにそれをキャンセルしてもらわなければならない。とても辛い決断です。しかも私はすでに入院してしまっているので、看護師さんや事務の方総出で患者さん皆さんに連絡していただいた。スタッフにとっても大変な作業だったと思います。これと反対のことは一度ありました。それは、私の父が脳梗塞で倒れ、急遽私が京都に帰ってきて診療を引き継いだ時です。この時は、父が倒れて手術ができなくなり、息子の私が手術をしても良いかということを手術予定の患者さん皆さんに連絡して聞いた時です。患者さんの中には「お父さんのDNAが流れているのでお任せします。」とおっしゃる方もいて、手術予定の患者さん、皆さんがキャンセルされることはなく、私の手術を受けて下さることになりました。後から考えると、このことはこれまで祖父や父が行ってきた治療、医療が本当に患者さんのための医療であったことの照明だったのだと思います。私も、祖父や父のように、しっかり患者さんに医療が提供できていたか、そのことが今後問われてくるのかなあと思います。
また、患者さんに関しては、手術をしたばかりの患者さん。そうでなくても、やはり術後3日間、その後は約1週間後、さらに1週間後そして2週間後と言った大事なポイント診察できなくなるといったこともあります。また、定期的に受診されている患者さんの治療等、多くの課題があります。こういったことをすべてクリアすることはできません。本当に患者さんにはご迷惑をかけたと思います。
次に渡邉医院のスタッフのことです。
3月29日に私が入院した後は、渡邉医院は休診としました。休診とは知らずに受診される患者さんや電話での問い合わせへの対応のため、交代で診療所に来てもらっています。
ただいつまでの休診のままではやっていけません。休診のままでスタッフを雇用し続けることはできません。収入も全くなくなり、一方ではスタッフの給与、健康保険料、厚生年金等出ていくものがあります。休診では1か月も持ちません。やはりスタッフには退職してもらい、いったん渡邉医院は休止にしなければなりません。代診の先生を探して診察を続けてもらおうかとも考えました。でも、肛門科という特殊な診療科。内科的な診察だけでなく、手術もあります。なかなか肛門科の代診の先生はいらっしゃいません。また無理して代診の先生に来ていただいたとしても、これまでもそんなに収入があったわけではありません。これまで以上に収入が減ると、やはり渡邉医院を続けていくことはできません。そこで思い切って休止にすることを決断しました。祖父の時代から私の時代まで。すでに95年は立っていると思います。再開すると入っても、これまでの95年の歴史を通じて初めてその歴史にいったん終止符を打つ。とても辛い、切ない思いがあります。必ず再開して新たな渡邉医院を作り上げていかなければならないと思っています。
そうゆうことでスタッフの方には入院中だったので電話で渡邉医院を休止して、スタッフの皆さんは退職ではなく、診療所の都合による解雇ということになるとお伝えしました。診療所の都合による解雇の方が早く休業補償を申請できるとのこともあるので。給与は払えなくなるのであればできるだけ早く休業補償を申請できるようにしたいというきもちがありました。スタッフ一人一人の生活があります。
幸いにも、抗がん剤による化学療法が1クール終わった時点で、いったん退院することができました。スタッフ皆さんに時間をとっていただき、電話ではなく、直接皆さんの顔を見てこれまでの経過、今後の治療の予定、そして渡邉医院の今後をお話しすることができて本当に良かったと思います。
今現在の目標は、9月1日に、新しくなった渡邉医院の再開です。新たなスタート、歴史を作っていきたいと思います。皆さんも見守って下さいね。
少し長くなったので、今回はここまでにして、次回私自身の決断についてお話ししたいと思います。