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2021.09.08

新型コロナウイルス感染症をめぐる課題2

 「新型コロナウイルス感染症をめぐる課題」を引き続き紹介したいと思います。今回はポストコロナを見据えた医療政策の動向です。

 「ポストコロナを見据えた医療政策の動向」

さてもう一つのポストコロナを見据えた医療政策の動向について次にお話しします。

菅内閣が閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針では、新型コロナウイルス感染症が世界経済に与えたインパクトを「経済構造や競争関係に大きな影響を与える変化がダイナミックに発生」と指摘しています。

その上で国内にあっては「これまで進められなかった課題を一気に進めるチャンス」としています。

これまでの新自由主義化改革をさらに推し進める構想がされています。

こうした政府の構想の一方で、新型コロナウイルス感染症で人々の生活は極限状態にあります。生活、暮らしの崩壊がおきています。雇用においては、特に女性・非正規に影響が集中しています。

これは、これまでの雇用政策の変化がもたらした結果であり、旧来型の所得保障、社会保障制度の破綻がコロナ禍において顕在化されたものといえます。

生活保護制度も機能しておらず、コロナ禍に喘ぐ人々は事実上放置されている状況です。

こうした中にあっても、財政健全化目標は堅持され、202224年度の3年間、従来と同様の歳出改革努力を方針は求めています。

歳出改革の目玉となるのは社会保障制度です。医療制度も例外ではなく、これまで進められてきた「医療制度構造改革」がより一層、激しく進められていくでしょう。

国債残高が約1,000兆円にも達しようとする財政状況では、政権側が様々な医療改革を繰り出してくる可能性が高く、既に先の通常国会では、「全世代型社会保障制度改革」の一環として後期高齢者医療制度への窓口一部負担金の2割導入が強行されました。

しかしこういった個別制度の改悪に止まらず、従来から幾度も取り沙汰された「医療費総額管理」=「経済規模に対応した」医療給付費の目標を設定し、医療費を抑え込む仕組みの創設を財務省建議が再び示唆したことにも注目が必要です。

国は、新型コロナウイルス感染症の収束に目途が立つことを前提に、より大胆な制度改革を打ち出してくるのではないかと思われます。

財務省の一松主計官は、2022年診療報酬改定に向け、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」と述べ、新型コロナウイルス感染症における地域の医師への批判を込めてここに示すようにフリーアクセスの否定、患者の登録制、そして包括払いを語っています。

 

さらに、医療提供体制・医療提供者改革もこれまで通り進めていく方針です。

 新型コロナウイルス感染症によってあらためて脆弱さが明らかになった医療提供体制についても、国は感染症病床の増床や感染症専門医の養成などに取り組む姿勢は一切見せていません。

むしろ、地域医療構想のさらなる推進と2019年末に問題となった公立・公的病院の再編・統合方針も引き続き推進する構えです。そして、さらに改正医療法成立で2022年4月施行となる「外来医療の機能の明確化・連携」には最大限の警戒が必要と考えます。

その内容は、地域医療構想における病床機能報告の仕組みにならった「外来機能報告制度」の創設です。これは地域の外来医療の機能を「専門外来」(医療資源を集中的に活用する外来)と「かかりつけ医」に振り分けることがねらいと考えられます。

今のところ、外来機能報告が義務づけられる医療機関は病院と有床診療所のみですが、将来、すべての診療所が対象となることが予想されます。

この、「専門外来」と「かかりつけ医」とに分けることは、国民皆保険体制の下で医療を実践してきた医師の姿を大きく変えることにつながります。

日本の国民皆保険体制を支える原則は

 ① 保険証の全国民対象の無条件交付

 ② 全国統一給付保障

 ③ 必要充足型給付保障

で、③の必要充足型給付保障は

    療養の給付

    フリーアクセス

    自由開業制

の3つの原則で成り立っています。

 

これらの原則が日本の医師の姿を形成し、皆保険を支えてきました。

しかし、これらの原則は医療費を抑えたい国の思惑と大きく対立するものです。

 したがって国が目指すベクトルは、

 療養の給付         ➡     現金給付

 出来高払い          ➡     包括払い

 自由開業           ➡     計画配置

 フリーアクセス       ➡     登録制

となります。

今、国が目指しているのは、次のような仕組みだと考えます。

①専門医制度を活用して、「かかりつけ医」と「専門医」を医師養成段階から複線化する。

②外来機能報告を含む地域医療構想、医師偏在指標を活用して

地域における「かかりつけ医」と「専門医」の必要数を定めて、計画的に配置する

③「かかりつけ医」登録制を創設して、「専門医」にかかるには「かかりつけ医」を必ず通らなければならない仕組みをつくる

④「かかりつけ医」への報酬は「包括払い」にする

このような仕組みを今までもこれからも目指していくのだと考えます。

新型コロナウイルス感染症パンデミック前から、国は医師の在り方自体を変更する改革=医療提供者改革に着手してきました。そして、このコロナ禍をむしろ逆バネに、その推進を図ろうとしています。

 ここに、20161010日に京都アピール「開業医医療」の復権を求めてを発表しました。それは、

 日本の開業医は、地域の人々の生命と健康を守ってきました。新たな「かかりつけ医」のシステムではなく、開業医医療の復権こそが皆保険体制を活かす道である。

このことを実現していくために様々な手立て打ち、運動を進めていきたいと思います。

 

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