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2021.06.02

裂肛の状態で手術法が決まる。LSIS?それともSSG?

6月になりました。梅雨の中休みか、ここ数日はとてもいい天気でした。日中は気温も上がり夏を思わせます。ただ、湿度は高くないのか、暑いですが、まだまだ不快感は少ないかなあと思います。朝夕は涼しく過ごしやすいです。まだまだ梅雨が終わったわけではなく、うっとうしい気候が続きます。マスクもしなければならない中、暑さ対策、熱中症対策もしながら、水分も十分に補給して体には気を付けて過ごしていきましょうね。

 最近、肛門狭窄の患者さんが受診されました。排便時の痛みと排便困難です。緩下剤を内服して便を緩くしなければ出ない。出ても排便時の痛みとその後の持続する痛み。とてもつらそうな症状でした。

 診察してみると、私の人差し指が全く入らないほどの狭さでした。どの程度指が挿入できるかゆっくりゆっくり挿入しても痛みが強いのと、狭窄が強く待ったか入らない程度の狭窄。おそらく、緩下剤で相当便を緩くしないと出ない、少しでも硬くなると詰まってしまうのではないかと思いました。

 ご本人には「肛門狭窄があります。手術をして狭窄を取り除いてスッキリ治しましょう。」とお伝えしました。

 今回の肛門狭窄になった原因は裂肛です。裂肛は最初は排便時に肛門上皮に傷がつく病気です。転んだ時のけがと最初は似ています。転んで怪我をしても転ばなければ治る。同じように、排便の具合で切れる。でも排便の状態が良ければ治っていく。ただ、切れたり治ったりを繰り返していくうちに裂肛は治り難くなってしまいます。その治り難くなる原因は、排便時に傷がつくことで痛みが出ます。痛いと肛門の内肛門括約筋の緊張が強くなります。痛みを繰り返すうちに、だんだん内肛門括約筋の緊張が強くなっていき、柔らかくて具合良い便が出ても切れてしまう。そんな状態になってしまいます。そのようなときは、緊張の強くなった内肛門括約筋の緊張を取り除き、柔らかく肛門が広がるように、もとの状態に戻すことで裂肛は治っていきます。このような状態の裂肛。内肛門括約筋の緊張が強くなった状態の裂肛に対して行う手術として、側方皮下内肛門括約筋切開術(LSIS)を施行することで裂肛は治っていきます。

 しかし今回の患者さんのように肛門狭窄になってしまうとLSISでは治すことができません。内肛門括約筋の緊張が強いだけであれば、その内肛門括約筋の緊張をとることで肛門はもとの状態に戻り、裂肛を治すことができます。しかし、切れたり治ったりしていくうちに今回の患者さんのように、瘢痕形成を起こしてしまい、肛門上皮、皮膚の部分が硬くなり、内肛門括約筋の緊張が強くなるだけでなく肛門内の皮膚が瘢痕で硬くなり広がらなくなった場合は括約筋の緊張をとるだけでは肛門は広がりません。瘢痕形成によって硬くなった皮膚の部分を取り除き、十分に肛門を広がるようにしなければなりません。でも瘢痕部分を取り除いただけでは、その傷が治っていくうちに再度瘢痕化してしまい、手術をする前のように肛門が狭くなってしまいます。そこで瘢痕形成した皮膚を取り除いた部分の外側の皮膚で皮膚弁をつくり、その皮膚と粘膜を縫合して肛門内に皮膚弁を移動させて肛門を広くする必要があります。これがSSG法(皮膚弁移動術)です。

 このように裂肛が悪化して手術をしなければならない場合、LSISで内肛門括約筋の緊張を取り除けばいいだけの状態なのか、瘢痕化して硬くなった肛門上皮の部分まで取り除き皮膚弁を移動させるSSG法までしなければならないのかをしっかり診断する必要があります。

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