これまで、内痔核に対して痔核根治術をしなければ治らなかった内痔核もジオンという痔核硬化剤での痔核硬化療法(ALTA療法)で痛みなく治すことが出来ます。全ての内痔核を治すことはできませんが、ALTA療法で治すことが出来れば、傷もできず、痛みなく治すことが出来ます。
痔核硬化療法を行いう際に使う痔核硬化剤には2種類あります。
痔核硬化療法に使用する痔核硬化剤には前回紹介した、パオスクレ―といってアーモンドのオイルの中に5%の割合でフェノールが入っている痔核硬化剤と、今回紹介するジオンといって硫酸アルミニウムの水溶液の中にタンニン酸が入っている痔核硬化剤の2種類が今、健康保険での保険適応の治療薬になっています。
痔核硬化療法は内痔核の治療薬です。渡邉医院では、内痔核の程度によってそれぞれの痔核硬化剤を使い分けています。
内痔核はその程度で4段階に分類されます。
第1度の内痔核は排便時に出血したり、違和感がありますが、内痔核が肛門の外に出てくる脱出という症状がないもの。
第2度の内痔核は排便の出血だけでなく、排便時に内痔核が肛門の外に出てくる脱出という症状が出てきます。ただ、直ぐに自然に戻る程度の内痔核です。
第3度の内痔核は排便時に出血し、脱出もしてきます。しかも自然に戻らないので、指で押し込む程度の内痔核です。
第4度の内痔核は、常に肛門の外に内痔核が脱出し、戻すことが出来ない程度の内痔核です。
渡邉医院では、第1度、第2度までの内痔核に対しては、パオスクレ―による痔核硬化療法を、第3度の内痔核に対してはジオンによる痔核硬化療法を基本的な治療方針にしています。
パオスクレ―は特に出血を抑えるのに有効で、ジオンは脱出する内痔核の治療に有効です。
さて、今回はジオンによる痔核硬化療法について紹介します。
ジオンという痔核硬化剤で、四段階注射法という方法で痔核硬化療法、注射での治療方法をALTA療法といいます。
ALTAは、ジオンの有効成分である「硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸」の英名ALuminum potassium sulfate hydrate・Tannic Acidの頭文字をとってALTAと略しています。
四段階注射法と呼ぶのは、1カ所の内痔核に対して、四段階に分けて4か所注射していくので、四段階注射法といいます。しっかりと四カ所にジオンを注射していくことがALTA療法では重要です。ですから3箇所内痔核がある場合は全部で12ヶ所注射して治していきます。注射する部位は粘膜や粘膜下層に注射します。この部分は痛みの感じない部分なので、注射しても痛みはありません。したがって、もし痔核硬化療法をしている際に、痛みが出た場合は、注射の針先が少し深く粘膜下層を超えて筋肉の層まで針が刺さって注射をした場合か、肛門の皮膚の部分、肛門上皮に注射した場合です。この痛みの感じる部分に注射してはいけないので、ALTA療法を受けている時に、痛みを感じたらすぐに「痛い」ということが大切です。
さて、ジオンによるALTA療法の一番の特徴は、傷ができないことです。このことがジオンの最大の売りだと思います。この一番の利点を最大限に生かして治療することが大切だと思います。
最近、手術とALTA療法の併用療法が行われています。併用療法を行う場合は、内外痔核といって、肛門の出口から2~3㎝奥の粘膜の部分に内痔核ができますが、この部分が腫れるだけでなく、この2~3㎝の皮膚の部分を肛門上皮と言いますが、この肛門上皮の部分が腫れてくるのを外痔核といいます。この内痔核と外痔核が共に腫れているのを内外痔核といいます。ALTA療法は内痔核には有効ですが、外痔核には効き目が悪いです。どうしても外痔核部分の腫れが強い場合は、この部分がしっかり治らない場合があります。ALTA療法と手術の併用はこの外痔核部分を手術で切除して内痔核部分をALTA療法をするという方法です。
ただ、外痔核部分の腫れがある程度あっても、内痔核部分の腫れが大きいものなど、内外痔核に対してもALTA療法だけで十分に治ることが多いと思います。したがって、内痔核の性状をしっかり観察して、ALTA療法が有効かどうかを的確に判断する必要があります。
また手術との併用ですが、外痔核部分を切除するとやはり、排便に痛みや出血があります。そうすると、ALTA療法の一番の売りである、傷が出来ずに痛みがないといった特徴を生かすことができません。また外痔核部分を切除するのと、内痔核まで手術するのでは手術手技的にもあまり差はありません。
やはりジオンによるALTA療法で治せる内痔核はALTA療法で、外痔核部分の腫れが強く、この部分の切除がどうしても必要と判断した場合は、しっかりと痔核根治術で切除することが大切ではないかと思います。
ジオンによる痔核硬化療法は、全ての内痔核に対応できる、オールマイティの治療方法ではありません。ジオンで治る内痔核には条件があります。内痔核の性状をしっかり観察して、ALTA療法が有効であるかどうかをしっかり見極めることが必要です。
ジオンによるALTA療法は傷が出来ず、痛みがなくとても楽な治療方法です。でも適応を間違えると、治らないばかりか、副作用などがでてしまうこともあります。内痔核の性状によっては、痔核根治術による手術が必要な内痔核もあります。今悩んでいる内痔核をしっかり治すということを考えると、自分の内痔核がどんな内痔核なのかをしっかり診断してもらって、最良の治療方法を決める必要があります。
2018.02.04