ゴールデンウイーク中に術後7日目の患者さんが受診されました。傷の治りが大丈夫か?具合よく治ってきているのかが心配で、電話をかけてこられました。内容は、「まだ出血する。痛みもあるので心配。」とのこと。何か心配なことがあったら連絡くださいねと術後の患者さんにはいつもお話ししています。心配なことをそのままにしていてもよくないので、診察に来てもらいました。
診察すると、特に術後の経過には問題なく、順調に治ってきていました。ただ、この術後7~10日目に診察に来てもらうことは、とても大事なことです。
肛門の手術をしたときはどのような手術でも術後7~10日目には受診してもらっています。
その理由のまず一つ目は、やはり手術をした後約1週間経った頃の傷がみておきたいということがあります。
もう一つの理由は、術後約1週間ぐらいの時期、患者さんが傷の治りに関してとても心配になる時期だからです。今回の患者さんと同じように、痛みや出血がまだあるけれど、具合よく治ってきているのか?術後の経過は良好なのか?とても気になる時期だからです。
これは、傷の治り方が影響します。
肛門の手術は、内痔核や皮垂など原則として切りっぱなしの開放創にします。それは便が通るところの手術だからです。便が通っても、使いながら治しても具合よく治すために、ある程度の大きさ、形のある開放創にします。
開放創の傷の治りは大きく三段階に分かれます。まず術後7~10日目までの「傷が治る準備期間」。そして7~10日目以降の「傷が収縮する収縮期」。そして3週目以降の「傷の治りの仕上げの時期」この三つの段階に分かれます。
この最初の準備期間の7~10日間。傷の治りにとってはとても大事な「準備をする期間」。でも傷の大きさは手術した時とほぼ変わりません。したがって、どうしても排便時に痛みがあったり、出血したりします。患者さんはなかなか肛門の手術をした傷の治りを自分自身が見て確認することができません。ですから手術をして7~10日も経つのに排便時はまだ痛いし、出血もする。ちゃんと治っているのか?順調なのかとても心配になる時期です。術後日に日に痛みや出血などが少なくなっていけば、「痛みも出血も日に日に少なくなってきた。よしよし治ってきている。」と実感してもらえるのですが、そうは行きません。7~10日経っても、手術した時と症状は一緒。患者さんにとってはとても心配になると思います。その時期に診察して、その不安を取り除くことも、術後7~10日目に受診してもらい、診察する大きな理由です。
術後7~10日目に受診された患者さんには次のようなことをお話しします。
一つ目は、「痛みや出血がまだあると思いますが、順調に治っていますよ。心配しないでくださいね。」です。
二つ目は、「手術して7~10日間は傷が治っていく準備をしている時期です。とても大事なことをしているのですが、傷の大きさは手術した時とほぼ同じです。ですから痛みや出血は術後と変わりません。」
三つめは、「7~10日間の準備期間が終わると、今度は一気に傷は治っていきます。加速度がついて治っていきます。ですから、今日までの治り方と、これからの治り方は全然違います。痛みもスッととれる時期になります。」と。
四つ目は、「痛み止めを出しておきますね。痛いのを我慢して治すよりは、楽に治した方が、治りはいいです。そしてこれから収縮という時期に入るので、痛みも急にスッと楽になります。今痛み止めを飲んでおかなければ、飲むときはなくなります。痛いときは我慢せずに、痛み止めをしっかり飲んでくださいね。」と。
最後に、「術後約3週間で傷はふさがります。次回は2週間後に治ったところを診せてくださいね。」とお話しします。
このようなことから、術後7~10日目に受診して診察するのは、傷の治りを診ておきたいということと同じかそれ以上、患者さんが心配になる時期に今までお話ししたようなことを、患者さんにお話しして、患者さんの心配を取り除きたいという目的があります。