あちらこちらの桜がたくさん咲き誇ってきています。桜の花の見ごろかなあと思います。
明日の日曜日は残念ながら雨の予報。桜の花を散らしてしまわなければいいなあと思います。もう少し美しい桜の花を楽しんでいたいなあと思います。やはり桜の花を見ると、心ウキウキしてきます。先日、夜桜を見に行きました。今年は、いつもなら大勢の人でにぎわう桜の木の下もひっそり。私たちだけでした。静かに花見。これもまたいいなあと思います。
さて、今回は肛門の痛みに関してお話したいと思います。
外来診療をしていると、「肛門が痛い。」という症状で受診される患者さんが最近多いかなあと思います。肛門が痛い病気には、血栓性外痔核などのように血栓が詰まって晴れていたくなる病気や、肛門周囲膿瘍のように化膿して腫れていたくなる病気もあります。また裂肛のように排便時に便が硬かったり、反対に下痢などで肛門上皮に傷がついたりして痛みがでる病気もあります。でもこれらの病気は痛みの原因がはっきりわかっている病気です。
血栓が詰まって腫れていたい場合は、消炎鎮痛剤の座薬などを使って、腫れをとることで痛みは軽減します。そして血栓は時間とともに溶けて、吸収して治っていきます。場合によっては痛みが強いときは、血栓を手術で摘出すれば痛みは楽になります。肛門周囲膿瘍のように膿がたまった場合は、切開して溜まっている膿を出すことでスッと痛みは楽になります。裂肛は言ってみればけがと一緒です。傷がついた肛門上皮は軟膏などをつけて手当てをして、傷がついてしまう排便の状態を良くすれば治っていきます。
ただ、肛門に痛みを感じる原因はこういった明らかにわかる病気があるだけではありません。ここが肛門の痛みを診察する難しいところです。
肛門に何の病気がなくても、肛門が痛くなることがあります。
その一つは、直腸に便が残ったままになっていたり、便が詰まっていたりする場合です。直腸は便があってはいけないところです。直腸と肛門とで便を出すところです。ですから、直腸に便が残っていたり、詰まったりしてしまっている場合、肛門が痛くなってしまいます。この場合は、スッキリ便を出して、緩下剤などで排便の状態を良くしていくと痛みで悩むことがなくなります。でもこれもある意味、肛門の病気です。
また、肛門の括約筋が強く締まる場合も痛みがでることがあります。
寒い時期に洗浄便座の洗浄を温水で洗うと何ともないのですが、冷たい水で洗うと、痛みが出ます。これは冷たい水が肛門にあたることで、括約筋が収縮して、この収縮が痛く感じたり、冷たい水が当たることで肛門の血液の流れが悪くなったり、肛門が収縮することでもさらに血流が悪くなります。このことが肛門の痛みの原因になります。
人間は寝ているとき以外は、常に肛門は心臓より下にあります。そうするとどうしても夜になると肛門の鬱血が起きてしまいます。このことは避けることはできません。人間が二足歩行をするようになった宿命です。こうした一日の鬱血を解消しようと肛門が収縮することがあります。この収縮が強いときに痛みが出ます。肛門の動きを痛みとして感じることとなります。そしてこの痛みはたいていが夜中、寝ているときにおきます。突然夜中に肛門の痛みを感じて起きてしまうことがあるという患者さんがいます。その原因はこの肛門の収縮です。温めてあげたり、軟膏をつけながら肛門の緊張をとるとよくなります。
さて、肛門とは全く関係なく、肛門が痛くなることがあります。例えば腰の具合が悪いと肛門に痛みが出ることがあります。腰の具合が悪いと、足がしびれたり、歩いていると足が痛くなったりすることがあります。これは腰から足へ行く神経が圧迫されたりすることが原因です。これと同じ理由で、肛門の神経もこしから来ます。腰の具合が悪く、肛門へ行く神経が圧迫されたりすると、痛みが出ます。この場合、立っているときよりも座っているときに肛門に痛みが出ます。これは立っているときよりも、座っているときのほうが腰への負担が大きいからです。こういったことが原因での痛みは、肛門の治療ではなく、腰の治療が必要になってきます。
さらにこれだけでなく、精神的なストレスが強いときも肛門が痛くなることがあるようです。ある肛門科の先生が、肛門が痛いという症状で受診された患者さんに、ストレステストをした際に、ストレスを強く感じている患者さんが多い傾向にあると言っておられました。日常のストレスを解消することも肛門の痛みをとる方法にもなるんだなあと思います。
このように肛門に痛みを感じる場合は、肛門の病気だけではありません。ですから、痛みを症状として受診された患者さんに関しては、いろんなことを想像しながら診察にあたる必要がありますし、痛みの治療はやはり難しい一面もあります。
医師の方も、肛門の痛みに関してはいろんな原因があることを頭に入れて診察する必要があります。そして患者さんの訴えをしっかり受け止めることも、患者さんの痛みの緩和につながるのだと思います。