今日は日曜日。夜11時55分から「ミヤコが京都にやって来た!」の第5話が放映されます。ドラマも佳境に入ってきました。どう展開されるでしょうか、楽しみです。
今回、医療指導に関わりました。その時に台本をいただきました。余白が多いものでした。この余白にドラマを撮影していくときに、それぞれの担当で気が付いたこと、アイデア、注意しなければならないことなどを、スタッフの人たちはどんどん書き込んでいくんだろうなあと想像していました。
私も医療指導する部分には、この台本の状況での病名は何か。またその時の処置の仕方、診察の仕方はどうしていったらいいのかを書き込んでいきました。
また、その処置や医療行為が正しいものでなければならないので、もう一度、救急処置の本や、診断の仕方などの本を読み返したりしました。
以前、京都に帰ってくる前は、救命救急センターに勤務していましたが、それももう25年も前の事。診察の仕方などの基本は変わりませんが、もう一度確認をしました。
京都に帰ってきてから肛門科一筋。久しぶりに違う分野の勉強をしたなあと思いました。勉強もでき、いい経験をしたなあと思います。
その台本に書き込んだり、診察や処置の仕方を書いたものを、演出の方にお渡しして、撮影の時の参考にしていただきました
ドラマの中のシーンとしては、本の数分?数秒?のシーンですが、そのために私ももう一度勉強し直しました。きっと他のシーンでも同じ、数分、数秒のシーンを作り上げるのに、莫大な時間をかけているんだなあと感じました。
そのような撮影までの下準備をした後、それを現実の映像にするために、俳優さんや美術の方、照明の方、そして演出、監督。全ての方たちが、脚本家が思い描いたものを実際の映像にしていく。それに向けて一つになっていく。凄いなあと感心するばかりです。
以前お話しましたが、やはりこの過程は医療現場にとてもよく似ています。
私は大学の消化器外科に所属していました。患者さんを手術で治していく診療科です。ドラマを作っていくのと同じです。いきなり手術をして、手術が終わったらもうお終いというわけではありません。
直接手術予定の患者さんが外科の外来や病棟に来られるわけではありません。関連の医療機関からの紹介や、大学の内科などの他の診療科から外科に紹介されてきます。
関連の医療機関からの紹介患者さんでは、手術をするにあたっての追加の必要な検査は無いか、必要な検査があれば行い、その検査の情報をもとにまずは担当の医療チーム、そして医局全体でのカンファレンスをして、手術方法や治療方法を決めていきます。
また内科からの紹介では内科・外科カンファレンスを行って内科の先生方とも議論して手術方法や治療方法を決めていきます。手術が終わり、退院されていった患者さんについてもその経過や手術の結果など内科・外科カンファレンスをします。手術後も患者さんが回復され、退院までの術後の管理をしていきます。この術前術後のカンファレンスが今以上に医療をより良いものへとしていくのだと思います。
そして、医師だけでなく、看護師、検査技師など多くのスタッフがその専門性をフルに生かして患者さんの治療に当たっていきます。
ドラマの撮影と同じように、患者さんを治すという目標に向けて、全てのスタッフが一丸となって取り組んでいく。やはり似ています。
患者さんをどう治していくか?患者さんに最高の医療を提供するためには、まずはしっかりと患者さんの状態、そして病気の状態を把握しなければなりません。それまでには時間と、そして適切な判断力が必要です。手術ではそれぞれの専門職の能力をフルに発揮。皆の力が生かされます。
こう考えると、どんな職業も同じだなあと思います。自分一人では、やはりいい仕事はできません。
さて、撮影に関わり、放映されるドラマを観ると、少し不思議な感覚になります。
例えば、主人公の佐々木蔵之介さんと娘役の藤野涼子さんが二人で居間で会話をしているシーン。二人だけのシーンで、本当にそこには二人しかいない雰囲気が出ています。でもそのシーン、二人の周りには照明や音声の方、演出の方など、多くの人たちが取り囲んでの撮影です。第4話では、今映っている、その後ろには、私がいるのに。といった具合です。
ドラマを観られるときは、そんな状況で撮影されているんだなあと思いながら観ていただくと、また少しドラマの観方が変わるかもしれませんね。