12月も2週目に入りました。ひょんなことから医療指導を引き受けた、佐々木蔵之介さんが町医者の役として主演する「ミヤコが京都にやって来た!」の撮影もクランクアップ。ホッとしているところです。1月からの放映を楽しみにしています。
さて、今日は妊娠中の肛門の病気にに関してお話したいと思います。
まず最初に、妊娠中は何も治療できないと思っている方が多いと思いますが、妊娠中も大抵の治療が出来ます。外用薬だけでなく、手術も可能です。その時の肛門の病状などによって、妊娠中もしっかり治療することが出来ます。まずはこの点は安心してくださいね。
妊娠中に急に痛くなる病気があります。大きく三つです。それは、血栓性外痔核と内痔核に血栓が詰まって脱出したままになる嵌頓痔核、そして裂肛です。
裂肛に関しては、やはり妊娠中はどうしても便秘になりやすい傾向にあります。お腹の中の赤ちゃんが大きくなって腸管などを圧迫することや、妊娠中の女性ホルモンの関係などが原因で便秘傾向になります。これに関しては以前お話したので、そちらを参考にしていただければと思います。裂肛の原因はやはり便秘になって、便が硬くなることにあります。これに対しては酸化マグネシウムなどの緩下剤を内服して柔らかく便が出るように調整すると裂肛は良くなっていきます。緩下剤も妊娠中は飲まない方がいい下剤もありますが、酸化マグネシウムは、妊娠中も問題なく内服することが出来ます。心配することなく酸化マグネシウムを内服して便を柔らかくすることで裂肛は良くなります。
血栓性外痔核と嵌頓痔核ですが、妊娠中はどうしても血栓ができやすくなります。これも女性ホルモンの影響もあります。出産時の出血に対して血が止まりやすいように体が対応していきます。血が止まりやすいようになるということは、血小板がくっ付き易くなって血栓ができやすくなるということに繋がります。また妊娠中は便秘傾向になりやすいというこの二つの要因が重なって血栓性外痔核や嵌頓痔核になりやすくなります。というのも、血栓ができやすい状態の中、便秘で強く排便時に頑張る。このことで血栓が詰まりやすくなります。肛門の外側の静脈叢に血栓が詰まると血栓性外痔核に、内痔核に血栓が詰まると嵌頓痔核になります。いずれも急に痛みがでる病気です。
ただ、血栓性外痔核も嵌頓痔核も妊娠中も手術が可能です。ただ、嵌頓痔核の場合は基本的には内痔核の手術です。内痔核の根部の動脈を縛って切除しなければなりません。ここから動脈の出血を起こすことが嵌頓痔核の場合はあります。そのことをしっかり認識しておく必要があります。
血栓性外痔核の場合は詰まっている血栓を取り除くだけです。したがって動脈を縛る部分がありません。ですから、手術中にしっかり止血処置を行っておけば、術後の出血はまずありません。もし出血があったとしても、血栓性外痔核の手術でできる傷のほとんどは肛門の外側にできます。ですから、内痔核の手術の術後に起きることがある動脈からの出血はありません。また術後は1時間程度病室で休んでもらってからもう一度傷を診てから帰宅してもらっています。
この1時間後の出血が無ければ、まずは術後止血処置が必要な出血はしません。こういった意味から血栓性外痔核は妊娠中でも手術が可能です。
嵌頓痔核の場合は内痔核の根元の動脈からの出血があります。これまで渡邉医院で痔核根治術をした際役1%ですが動脈からの出血があり、止血術をしています。ただ、これまで妊娠中に痔核根治術を行った患者さんの中には、この1%の動脈からの出血は起きたことは有りません。
この理由として考えられるのは、まずは妊娠中ということで血が止まりやすい状態になっているということが考えられます。血小板がくっ付き易くなって血栓ができやすくなるということはやはり術後の出血も抑えてくれるのだと思います。また血栓がつまり炎症を起こしているため、より止血しやすい状態になっている。このようなことが内痔核の根部を縛った動脈からの出血が無い要因だと考えています。
でも動脈からの出血が起きる可能性もあります。そのことを患者さんにもしっかり理解してしていただき、出血があった場合は早急に連絡してもらい診察できる体制をとってもらうようにしています。私を含め、スタッフは皆このことを理解しています。内痔核の手術を行っている以上、何時動脈からの出血が起きるかわかりません。常にその場合に対応できる体制をとっています。その点は安心していただければと思います。
血栓性外痔核や嵌頓痔核。急に痛みが出るとても辛い病気です。妊娠中も我慢することなく、受診して下さい。そしてその時の状況に応じて手術などをしてしっかり治していきましょう。