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2020.12.06

新型コロナウイルス感染拡大で見直しが迫られる医療政策Part4

 今回は4回目です。

無効化した地域医療構想と医療計画における基準病床数

 2019 年秋、医療界を騒然とさせたのは厚生労働省による再編・統合を求める 424の公立・公的医療機関名の公表問題でした。これは全都道府県が策定した地域医療構想 (2016 年)の達成に向け、まずは公がコントロールしやすい公立・公的病院に「身の振り方」を決めさせようとするものでした。
 このことに対して、医療界や自治体は厳しく批判しました。しかし、それにもかかわらず、国は今日に至るまで方針撤回することは有りませんでした。それどころか、2020 1 17日に「公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」という通知を都道府県知事宛に発出しました。。精査した再編統合を求める公立・公的医療機関リストと民間医療機関リストまで添えて、都道府県に対し、対象医療機関に対する再編・統合への働きかけを迫りました。
 しかし、地域医療構想における「必要病床数」は、国が過去のレセプトデータから取り出した数字を使い、一律の計算式で弾き出した「医療需要推計」に基づくものに過ぎません。即ちパンデミックを想定しない病床数です。コロナ以後の世界において、もはや地域医療構想は無効化したといえます。さらに地域医療構想の本体である都道府県が6年に一度策定する医療計画も見直しが必要です。
 全国一律の計算式で算出させられる基準病床数においては、感染症病床についても人口比に応じて、一律に病床数が定められています。
 京都府の感染症病床は38 床、結核と合わせても188 床に過ぎません。一方の感染症法は、指定感染症に感染した患者の例外なき隔離を定めています。
 そのため不足は当然起こるべくして起こりました。その結果、本来は感染症患者の受け入れを想定していなかった一般病床における患者受け入れがなし崩し的に行われました。 今や、コロナ以前の医療需要推計、必要病床数、基準病床数はすべて無効になったと指摘しなければなりません。少なくとも医療計画上の感染症病床の配置基準や一般病床の指定基準の見直しは急務です。

  医療提供者改革も白紙にすべき

  医師政策も同様です。国は全都道府県に医師確保計画を策定させました。 同計画は医師偏在指標、診療所医師については外来医師偏在指標を用いて、全ての都道府県と二次医療圏を「医師多数区域」「医師少数区域」「どちらでもない区域」に色分けし、多数区域における他区域からの医師確保や開業の規制を行うことで、地域間の医師数を「フラット化」し、一人当たり医療費の地域差を解消する仕組みづくりです。
 医師の数が多いから医療費がかさむという発想です。しかし、偏在指標に使われた医療需要も地域医療構想と同様の手法で導き出されており、その点だけでも無効であると言えます。 新型コロナウイルス感染症は医療現場のマンパワー不足を露呈させました。
 感染拡大で危惧される「医療崩壊」とは、陽性者の増加に対し、受け入れる病院・病床、そして医師・看護師ら医療スタッフが不足し、対応不能となる事態を指します。 新興感染症の危機と隣あわせであるにもかかわらず、それが現実となったときの備えがなされていなかった。そればかりか効率性だけを重視し、一貫して病床数・医療スタッフ数を抑制し続けてきたことの結果が医療崩壊の危機をもたらしました。
 感染症病床を持たない病院でも、勤務医やスタッフが未知の診療に従事してきました。地域の開業医も防御する具体的手段を何ら与えられることもないまま、新型コロナウイルス感染症疑いの患者を受け入れ、PCR 検査につなぐ役割を担ってきました。その一方で通常の入院・外来患者が激減して、経営危機がおこりました。
 2020年上半期(1月~6月)までの医療機関の倒産件数は12件です。2011年以降の10年間では2016年上半期の11件に次ぐ少なさです。ただ、これに関しては医療機関に対しての国からの支援金等で何とか持ちこたえているにすぎず、いよいよ病院など医療機関のコロナ倒産が大量に起きる可能性が高まっていると言われています。
 これまでの診療報酬の改定、医療制度改革などによって、医療機関はこれまでぎりぎりの状態で経営をしてきました。そこに今回の新型コロナウイルス感染拡大。これまでの国の政策でボディーブローを受け続けている中での今回の新型コロナウイルス感染症の一撃。医療機関には厳しい状況。いつ倒れてもおかしくない現状です。
 病院を始め医療機関の経営破綻は地域医療の崩壊に直結してしまいます。

 国が想定していなかった感染症の流行は傲慢な医療需要推計に基づく医師数抑制策の過ちを告発するものとなりました。

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