渡邉医院

75回目の終戦記念日を迎えて。

 今日は75回目の終戦記念日です。新型コロナウイルスの感染拡大もあって、戦争のことを考える余裕がないかもしれません。でもこんな時だからこそ、戦争が残した傷跡。それがいまだに続いていることに思いを寄せ、二度と戦争が起こることのない平和な世界へ向けて私たちは確実に一歩づつ前を向いて進んでいかなければなりません。そのためには過去を振り返り、なぜこのような悲惨な戦争が起きてしまったのか。なでそれを止めることが出来なかったのかをしっかり検証して、反省することでようやく前に進むことが出来ます。このことなしでは、また同じことが繰り返されてしまうと思います。

 少し父のことをお話します。父は生前、反核平和の運動をしていました。そんな父は広島県の江田島にある海軍兵学校で終戦を迎えました。

 終戦を迎え、京都に帰ってきた父は旧制第三高等学校への編入試験をうけました。そのときの口頭試問の質問が「こんどの戦争は正しかったと思いますか?」でした。

 この質問は残酷な質問だと思います。軍国主義純粋培養の形で教育され、小学校、京都一中、そして海軍兵学校と、その教育の中で優等生として育ってきました。教練の教官からもかわいがられていたとのことです。日本のため軍国主義純粋培養してきた教育者からの質問です。どういう答えを求めていたのでしょう。「今でも正しいと思っている。」、「今からでも戦いに行く。」という答えを求めていたのでしょうか?これまで正しいと教えられてきたものを、「今回の戦争は間違っていた。」ときっぱりと答えることはできないはずだと思います。しかも17歳です。父の出した答えは、「貴方達教育者から正しいと教えられ、それを信じて今まで生きてきました。」です。この質問の答えを探すことがその時の父の生きるテーマでした。

 戦争は、いつの間にか、その実態を隠しながら私達に迫ってきます。そして教育という名の下、戦争を正しいものへと変え、私達もそのことを疑うことなく進んでいってしまいます。私たちはなぜこのような戦争が起きてしまったのか。なぜ防ぐことができなかったのかということをしっかり検証し、反省しなければなりません。このことがなければ、必ずまた同じことを繰り返していきます。

 教育によって戦争へと少しづつ変化させていきます。そして、その変化を気づかせないようにします。またその変化を正しいもの、正しい方向に進む変化だと教育していく。教育改革といった言葉がでたときは、どんなことが変わっていくのかに注意が必要だと思います。

 また、特定秘密保護法などは、この変化すら、見ることができないようにする。その変化に気づいて声を上げようとしたら罰せられてしまう。また、そのことについて問題意識をもって、反対しようと皆で相談すると、共謀罪でつかまる。そして報道への圧力や規制です。報道への圧力、規制によって正しいこと、本当に起きている真実が報道されなくなってしまいます。報道の自由度ランキングというものがあります。国際的なジャーナリストの団体「国境なき記者団」が発表するもので、180か国でそのランキングが決められています。日本の報道の自由度は、2009年は17位、2010年では11位でした。それが2016年のランキングは72位まで大きく後退してしまっています。2017年も72位、2018年、2019年には67位、2019年は66位になっていますがまだまだ低く、G7 では最下位です。

 新型コロナウイルス感染拡大の中、どうしても感染を防止するには人とのつながりが薄れていってしまいます。また、相手をそして自分をも疑ってしまう。そんな状況になってしまいます。見えないものへの恐怖を見えるものへとぶつけることで、自分の恐怖や不安を取り除こうとする、そんな人間の心が今、新型コロナウイルスの感染拡大の中、増幅されて言ってしまっています。人の「心を蝕むウイルス」の感染拡大です。新型コロナウイルス感染者への誹謗中傷。感染者のネットでの焙り出し。また、医療従事者やその家族、子どもたちへの差別。こういった「心を蝕むウイルス」が広がっているように思います。やはり今、私たちに大切なことは、相手を思いやる優しさ。それを最大限にすることだと思います。そういったことが今目の前にある新型コロナウイルスの感染拡大から、私たちの心の優しさを守り、打ち勝っていく方法だと思います。またそのことが、戦争のない平和な世界へと繋がっていくと思います。

 今、新型コロナウイルス感染が拡大している中、こういった時だからこそ、戦争に対して、二度と起こさない誓いを皆さんと共にしたいと思います。