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2020.07.23

古典的治療法から新しい治療法へ。そのベストミックス!

 医学の世界は日進月歩で、どんどん新しい技術や治療方法、そして手術方法などが開発され、またそのことが一般的な技術や治療法、また手術方法になっていっています。

 でもこの新しい技術、治療方法、手術方法は、いきなり出てくるものではありません。古典的な治療方法を元に、歴史と共に進歩していきます。やはり、私たちはその進歩の歴史も勉強することが必要だと思います。そして、古典的な治療法と最新の治療法方が上手くミックスされることで、より良い治療を患者さんに提供できるのだと思います。
 また、新しい手術方法や治療方法があっても、そのもとになった基礎的な手術手技や治療方法はしっかりマスターして、何かの時には行えるようにしておく必要もあると思います。

 新型コロナウイルスの感染拡大で学会や研究会などが軒並み中止や延期になっています。肛門科の分野も同じです。私が京都に帰ってきて、一番勉強になり、大切に思っているのが年3回開催される近畿肛門疾患懇談会です。そこで、古典的な治療法を学ばれ、実践しておられる先生に初めてお会いしました。

 最初のお出会いしたきっかけは、今は亡き父と一緒に近畿肛門疾患懇談会に初めて出席したときだったと思います。その後も、何かと声をかけていただき、いつも顔を合わすと、「しっかり勉強しろよ。しないと親父さんに言いつけるぞ」とはっぱをかけてくださっていました。また、「自分だけでなく、これから肛門科を目指そうとする人のためにも勉強して、そのことをしっかり教えなければならない使命があるんだぞ。」とも言われました。

 さて、この先生は、古典的な治療法を勉強されている先生で、華岡青洲の時代の治療法などを調べ、実際に現在の医療に使えるようにしています。ちなみに華岡青洲は麻酔薬「通仙散(つうせんさん)」を発明し、世界で初めての全身麻酔による乳癌摘出手術に成功した外科医です。

 たとえば、文献をもとに様々な軟膏を調合したり、内痔核の手術では分離結紮法といって、内痔核を糸で縛って治していく方法を紹介し、実際この方法を使って治療されています。また痔瘻の治療でも、いまでは学会等で一般的になっていますが、シートン法といって、痔瘻の瘻管に輪ゴムを通して治していく方法ですが、もとは薬のついた糸(薬線)を痔瘻の瘻管に通して、痔瘻に状態に合わせてアルカリや酸の薬を糸にしみこませ痔瘻を治していく方法など、古典的な治療を紹介しています。
 痔瘻に関して、日本でも1823年文政6年に「要術知新」で杉田玄白と親交のあった大槻玄澤の子、玄幹が痔瘻を切開する痔漏刀の使い方を説明しています。この時代から、痔瘻の病態を知り、治療する手術道具が作られていました。

 以前に紹介した内痔核の治療法でジオンという痔核硬化剤を用いて四段階注射法という方法で治していく痔核硬化療法も画期的な新しい治療法というわけではありません。
 痔核硬化療法という治療法は私の祖父の時代からもうすでにあり、少なくても80年以上前から実際に行われてきた治療法です。
 また、ジオンという硬化剤も、もともと消痔霊という薬剤があり、これが内痔核の治療によく効くので、どういった成分がどのように効いて治っていくのか、副作用はなど臨床の試験をうけてできた薬剤です。もともとの薬剤があったのです。
 渡邉医院にも以前は第二リン酸カルシウムグリセリン懸濁液という痔核硬化剤がありました。主に内痔核からの出血を抑えるために使っていたようです。この薬剤も父が言うには、以前は卵の殻を磨り潰して粉にしたものをグリセリンに混ぜて使っていたのをヒントに祖父がつくったとのことでした。昔から代々肛門科の治療をしているところには、それぞれ秘伝の門外不出の薬があったようです。

 新しい治療法、新しい手術方法などどうしても目が行きがちですが、西洋医学だけでなく、東洋の、そして日本の古来からある古典的な治療法も、もっと見直していくことも大事だと思います。場合によっては、昔の医療のレベルで行っていて、現在にも応用できるものであれば、より安全な治療法かもしれません。

 こんなことを書いているうちに、少し思い出したことがあります。それは、蟻の顎を使って傷を縫合するという話です。以前に医学系の新聞で読んだことがあるのですが、とても面白く、昔の人はよく考えたなと感心しました。
 ちょっと調べてみると、この蟻の顎で傷を縫合する方法は、世界的に古くから行われていたようです。
 切った傷をぴったりと合わせて、合わせた傷にそって蟻に咬ませます。蟻は一端咬みついたら死んでも離さないので、咬ませた後、蟻の胴体をもぎ取って咬みついた頭だけにし、傷が治るのをまったようです。
 記録では紀元前1千年ごろから行われていて、ごく最近までアジア、アフリカ、南米の一部で実際に行われていたようです。実に面白い発想だと思います。
 この発想は今では皮膚縫合用ステープラといって医療用のホッチキスで傷を縫合する際に実際に応用されています。また皮膚の縫合だけでなく、腸と腸を吻合したり、切除した胃と腸を吻合したりする際に用いられている自動吻合器にも応用されています。私が大学病院にいたころ、17年前ではまだ手縫いでも縫合していましたが、いまではおそらく自動吻合器が主流だと思います。昔も今も発想は同じなんだなと感心します。
 でも、やはり機械は壊れたりしますし、具合よくできるとは限りません。
 大学にいた時、ずいぶん前ですが、胃癌の手術をする際に中山式ペッツといって、胃を切除する際に使う約30㎝程度の大きなホッチキスのような機械があります。これを使って胃を切除したときに、ステープラ(ホッチキスの針のようなもの)がうまく装着されていなく、使えなかった時があります。この時は切除した胃を全て手縫いで縫合していきました。

 やはり、何らかのトラブルがあった場合にもそれに適切に対応できる手技はしっかりと身に付けるという基本的なところはしっかりおさえておかなければなりません。このことは全てのことに言えると思います。

 昔からの方法、歴史をしっかり学び、そのうえで新しい方法を使い開発していく。また昔ながらの方法でも今に生かせるものがあれば生かしていくことが必要だと感じます。

 

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