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2020.07.14

内痔核が急に痛くなる時

 さて、今回は内痔核(いぼ痔)がどんな時に痛くなってしまうかについて少しお話したいと思います。
 最近、今まで持っていた内痔核が急に痛くなって受診される患者さんが何人かおられました。内痔核が痛くなると、本当に辛いです。こんな場合は早く肛門科を受診して治療することが大事で、そのことで楽になります。なかなか肛門科の受診は診察や治療、そして手術等不安が多く、こわいと感じている患者さんが多いと思います。でも痛いときは思い切って受診して下さい、そのことで今ある痛みを楽にすることができます。

 さて、内痔核は肛門の外側から約23㎝奥の肛門と直腸との境目、歯状線の直腸側にできる静脈瘤のことを言います。時間が経つにつれて、静脈瘤というよりは粘膜脱状になることもあります。通常、内痔核は直腸粘膜の痛みの感じない部分にできるため痛みを伴わない病気です。排便時に内痔核から出血しても、痛みはありません。また内痔核が悪化して、排便時に肛門の外に出てくる、脱出するようになっても、また、脱出したままの状態になっても、内痔核だけだと痛みはありません。内痔核、いぼ痔は痛いもんだと思っている方も多いと思いますが、内痔核だけですと手術をしなければならないほど悪くなっても痛みがありません。

 なかなか痛みがなく、排便時の出血や、場合によっては排便時に内痔核が脱出するようになっても、痛みはなく、押し込むことで通常の生活には支障はありません。内示アックの程度が悪くなると、排便時だけでなく、お腹に力が入った時や、歩いていても内痔核が脱出するようになることもあります。でも基本的には排便時に出血したり、脱出してきてもその時だけの症状です。
 こういうことも理由で、なかなか肛門科に受診できないのではないかと思っています。内痔核の症状が強くなって、例えば出血が頻回になったり、出血の量が増えてきたり、また排便時以外にも内痔核が脱出してくるようになると「そろそろ肛門科に行ってみてもらい、治さなければ。」と思うのではないかと思います。でも私はこういったことがきっかけで肛門科を受診するでいいと思います。治そうと思った時が肛門科を受診するベストタイミングだと思います。

 でも、内痔核が悪化して肛門科を受診する理由で一番の理由は痛みが強くなった時だと思います。出血も心配だとは思いますが、内痔核が痛くなると、本当に痛くて辛いです。痛くて寝てもいられない、何もできない。仕事どころではない。内痔核が痛くなると何も手につかなくなってしまいます。

 では、手術をしなければならないほど悪くなっても痛くない内痔核が、どんな時に痛みが強くなってくるかをお話します。

内痔核に血栓が詰まった時

 一つ目は、内痔核に血栓が詰まってしまった時です。内痔核に血栓が詰まって脱出したままになり、しかも血流障害を起こした状態を嵌頓痔核と言います。血流障害が続くと、脱出したままの内痔核が壊死に至ることもあります。また脱出したままにならなくても肛門内に内痔核があっても、そこに血栓が詰まってしまうと脱出していなくてもとても痛いです。またそこを排便時便が通るので、排便時の痛みも伴います。

 嵌頓痔核の場合は、消炎鎮痛剤の座薬などを使って、痛みをとり、ある程度落ち着いてから痔核根治術をすることもありますが、嵌頓痔核で痛みが強い時に、直ぐに痔核根治術をすることもあります。直ぐに痔核根治術をする場合は、入院や術後の外来通院などもあり、ある程度仕事などの日程が付くときに行います。ただ、嵌頓痔核は常時痛みがあります。痛みが原因で、手術をしなくても痛みのため、仕事どころではないため、直ぐに手術をされる患者さんが多いです。でも先にお話したように消炎鎮痛剤を使いながら、仕事などの予定をたててから待機的に痔核根治術をすることも可能です。今の痛みの状態や仕事などの予定などを考えながら医師と相談して手術を決めたらいいと思います。

内痔核に裂肛を合併した時

 二つ目に、内痔核が痛くなる原因は、排便時に内痔核が脱出したり押し込んで戻したりしているうちに肛門に傷がつき、裂肛を合併することがあります。脱出する内痔核に裂肛が合併してしまうと、排便時も痛いですが、押し込むときも痛い。そして痛みのため、内肛門括約筋の緊張が強くなると、押し込んだ後も痛みが持続するようになります。
 この脱出する内痔核に裂肛が合併した時も痛みが強くなります。脱出する内痔核に裂肛が合併すると内痔核が出たり戻したりするため、裂肛そのものも徐々に悪化して、痛みも段々強くなっていってしまいます。

 こういった裂肛が合併して痛く内痔核の特徴は、肛門上皮の部分の腫脹が強いタイプの内痔核に起きやすい印象があります。粘膜部分だけの静脈瘤が脱出する内痔核の場合は、出血は多いですが、あまり裂肛を合併しないように思います。肛門上皮に腫脹が強いタイプの内痔核はあまり出血はしませんが、裂肛を合併したり、血栓が詰まったりして、出血よりは痛みが出るタイプの内痔核だと思います。

 この裂肛が合併した内痔核もやはり手術をしてスッキリ治す必要があります。脱出する内痔核に裂肛が合併すると、裂肛も治っていいきません。

 ただ、血栓が詰まった嵌頓痔核も、裂肛が合併した内痔核も手術をすることで常の痛みはグッと楽になります。嵌頓痔核の様に常に痛みが続くということは術後はありません。排便時の痛みはありますが、これも710日ほど経つとスッと楽になります。
 また裂肛が合併した内痔核は術後の排便時の痛みも楽になります。手術で肛門に傷はできますが脱出する内痔核に裂肛があるよりはずっと痛みは楽です。

 このように通常痛みがない内痔核も血栓が詰まったり、裂肛を合併すると急に痛みが出る辛い内痔核になってしまいます。このような状態になった時は迷わず肛門科を受診して、どのように治していくかを知師としっかり相談してくださいね。

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