「最近はあまり手術は行わないとネットに書いてありますが、どうなんですか?」という質問を受けました。
やはり患者さんにとっては手術をしなくても軟膏や座薬、また内服薬などで治ればいいなあと思う気持ちはとてもよくわかります。私も、なるべく肛門には傷を付けない方がいいと思っています。
肛門は柔らかく広がり、排便時に具合よく脱肛してスッキリ便が出る。そういった状態にあることが一番だと思います。
例えば裂肛が繰り返すことで、内肛門括約筋の緊張が強くなったり、傷が出来たり治ったりすることを繰り返すことで瘢痕化して、肛門が内肛門括約筋の緊張が強くなるだけでなく、硬く広がりが悪くなってしまうことがあります。
また痔瘻などでも、炎症を繰り返すことで肛門が硬くなり、広がりが悪くなってしまうことがあります。
このように肛門の柔らかさが失われてしまうと、どうしても具合よく排便が出来ないようなってしまいます。ですからできれば手術をしなくても治る方法があればそちらを選択することがいいと思っています。
内痔核の場合も痔核根治術ではなく、ジオンなどの痔核硬化剤での痔核硬化療法で治るのであれば肛門に傷を付けないで治すことが出来る痔核硬化療法を選択して勧めます。でもどうしても手術が必要な場合も、できるだけ術後の肛門が柔らかく治っていくように心がけています。
さて質問された「最近はあまり手術は行わないとネットに書いてありますが、どうですか?」です。
この質問の答えですが、肛門の病気には、手術をしなくても治す方法があるものと、手術をしなければスッキリ治らないものがあります。そこをしっかり分けて考える必要があります。
例えば内痔核の場合、今までは痔核根治術をしなければならなかった内痔核が、ジオンという痔核硬化剤による四段階注射法(ALTA療法)で内痔核の性状によっては治すことが可能になりました。ALTA療法の適応がある内痔核であれば、やはりALTA療法を選択します。痔核硬化療法と言っても肛門が硬くなってなおるのではなく、内痔核を一端硬化させて最終的には柔らかく治っていきます。
また、外痔核に関しては血栓性外痔核は血栓が詰まって腫れて痛い病気ですが、腫れは必ず自然に引いて、痛みが楽になり、血栓も自然に溶けて治っていきます。ただ痛みがあるので、この痛みを取り除くために例えば消炎鎮痛剤の座薬を使って腫れを取り、痛みをとり、血栓が自然に溶けて吸収するのを待つことで治ります。ただ、痛みが強かったり、血栓が大きかったりした場合は手術で血栓を取り除くと痛みもすぐにとれ楽になります。
病気によって手術をしなくても治るももあれば、手術をしなければ治らないものがあります。またネットで書かれていることが必ず正しいとは限りません。ネットで調べている病気が本当に自分の病気なのか。この点も大事な点です。
やはり、自分が何の病気であるのか。そしてその病気をスッキリ治すのには手術が必要なのかどうか。他に治す方法はないのか。手術が必要な場合、どのような手術があるのか。自分の病気を治すのに一番適切な手術方法は何か。などを考えなければなりません。でも、やはり自分一人では決めることはできないと思います。医師と一緒に相談しながら最適な治療を受けることが大事だと思います。そして一番大切なことは、自分はどうしたいかです。ネットなどの情報に流されることなく、今自分が一番気になっている症状は何か、自分がどうしたいのかをしっかり医師に伝え、相談して治療を進めていってください。