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2020.07.02

患者さんにとって辛い術後出血

 今回は術後の出血に関してお話します。

 手術をする際にどうしても避けて通れないのが術後の出血です。術後の出血があった場合はどうしてももう一度麻酔をして止血処置をしなければなりません。

 簡単に止血できる場合もあれば、出血している場所によっては止血処置が難渋する場合もあります。でも、肛門の手術を行うにあたって、術後の出血は起きることがあり、それに対して十分に対応できるようにしておかなければなりません。

 術後の出血は患者さんだけでなく、私のとっても辛いことです。できればあって欲しくない。でも起きたときにはしっかりと対処しなければならない。そんな思いが常に手術をしているときにはあります。

 患者さんにとって、術後の出血に対して止血処置をすることはとても辛いことだと思います。
 例えばこれまで悩んできた肛門の病気をしっかり治そうするときは、「今回の手術で内痔核をしっかり治してしまおう!」「治すからには麻酔や手術は頑張ろう!」「手術をしたらスッキリ治るんだ!」などの思いを胸に、手術して治すということに納得して、決心して麻酔や手術を受けられます。このように覚悟の上での手術です。ですから手術が頑張れるのだと思います。
 その覚悟に対して私たちも、痛みが少ない、そして術後の出血などがない手術をしっかり行わなければならないと思っています。
 でも術後の出血はどうでしょう。患者さんには術後の出血があって止血処置をしなければならないことがあることや、痛みもそうですが、出血が一番困ることであることはお話します。でも術後の出血に対して止血処置をするところまで決心して覚悟している患者さんはいないと思います。ですから痔核根治術など、最初の手術は決心の上での手術。でも術後の出血に対しての止血処置は思ってもいなかったことになってしまうと思います。そうすると、自分の決心のなかになかったことをもう一度しなければならないことになります。
 このことはとても辛いことです。「手術が終わったのに、もう一度手術!」「また麻酔をしなければならないの!」「また痛いことをしなければならないの?」「出血は治まるの?」など一気に不安が押し寄せてくると思います。
 そういった時には冷静に、どこから出血しているのか、出血の具合はどうなのか、どうして出血したのか、止血処置が必要なのか、どうやって止血するのか、止血にかかる時間はどの程度か、また今回止血処置をしたら次に出血することはないのか、など患者さんにしっかりとお話することが大切だと思っています。

 さて、このように出血に対してどのようにしているかです。
 まずは手術が終わって1時間後に傷の具合を診ます。出血していないかどうか。また痛みの具合はどうかを診ます。1時間後に出血していなくても次は術後3時間後に傷の具合を診ます。止血処置をした後は処置後1時間後にもう一度傷の具合を診ます。そして、術後3時間後に診察をして出血がなければまずはその後の出血はありません。特に痔瘻や裂肛の手術の場合は手術の際に動脈を縛る部分がないので、動脈を縛ったところからの痔核根治術のような晩期出血はありません。内痔核の場合は、この動脈を縛ったところから術後710日後に1%ですが晩期出血が起きることがあります。このことを術後しっかりと術後の傷を診ながら患者さんにお話していくことが大事だと思います。

 術後の出血は起きて欲しくありません。でもどうしても避けては通れないことです。出血があった場合しっかりそのことを患者さんに話、そしてしっかりと止血処置ができるようにいつも心がけていくことが大切だといつも思っています。

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