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2020.06.04

裂肛のタイプで手術方法が決まる。

 今回は裂肛に対しての手術についてお話したいと思います。

 裂肛は便秘や下痢などで肛門上皮に傷がつく病気です。大抵は排便の状態をよくして軟膏をつけると治っていきます。ただ、切れたり治ったりを繰り返していくと、段々治り難く、また切れやすくなってしまいます。
 治り難くなってしまう原因は、肛門上皮に傷がつくことで痛みが出ます。痛いと肛門の緊張が強くなります。切れると痛い。痛いと肛門の緊張、内肛門括約筋の緊張が強くなります。これを繰り返すことで、段々内肛門括約筋の緊張が強くなっていきます。緊張が強くなると、今度は柔らかい便が出ても肛門の締まりが強いので切れる。また痛いから緊張が強くなるといったように悪循環に至ってしまいます。

 このように排便の状態が悪いことで肛門上皮に傷がつき、その時の痛みが原因で内肛門括約筋の緊張が強くなって裂肛が慢性化して、手術が必要になってしまうことになります。

内肛門括約筋の緊張が強くなるタイプ

 こういったタイプの裂肛の場合は、緊張が強くなった内肛門括約筋の緊張をとり、元の状態にしてあげると裂肛は治っていきます。治り難くなった状態を元の状態に戻すということです。この場合、裂肛が原因でできた皮垂(スキンタグ)や肛門ポリープも切除します。そうすることで裂肛は治っていきます。こういったタイプの内痔核に対して渡邉医院が行っている手術は側方皮下内肛門括約筋切開術です。肛門から少し離れたところからメスを入れ、内肛門括約筋の緊張をとる手術です。手術によって便が通る肛門上皮に新しく傷が出来ません。排便時の痛みが強かった人ほど、術後の排便時の痛みは楽になります。

肛門上皮の瘢痕化も加わり肛門が広がらないタイプ

 もう一つ別のタイプの裂肛があります。それは基本は先ほどの裂肛のタイプと同様の成因で裂肛は悪くなっていきます。ただ、切れたり治ったりを繰り返すことで、内肛門括約筋の緊張が強くなるだけではなく、肛門上皮が傷のため瘢痕形成して、肛門そのものが硬くなってしまうタイプの裂肛です。
 このタイプの裂肛の場合は、内肛門括約筋の緊張をとるだけでは治っていきません。内肛門括約筋の緊張をとり、そして硬く瘢痕化した肛門上皮の一部を切除して、十分に肛門が広がるようにします。しかしその肛門上皮を切除した部分をそのままにしておくと、またそこが瘢痕化して再度肛門が狭くなってしまいます。
 したがって、瘢痕化した部分を一部切除した部分に新しく皮膚弁を使って新しい肛門上皮を作ることが必要になってきます。渡邉医院ではそんなタイプの裂肛にはSSGSliding Skin Graft)という手術をしています。
 瘢痕化した肛門上皮を切除した後、その傷の外側の皮膚に皮膚弁を作ります。その皮膚弁と粘膜を数針縫合して、切除した肛門上皮に新しい皮膚を持っていくという手術です。皮膚弁を瘢痕を切除してできた欠損部分に滑り込ませるといった方法の手術です。こうすることで、緊張した内肛門括約筋の緊張は取れ、硬く瘢痕下肛門上皮をとりのぞき、新しい皮膚を移植する。このことで十分に肛門が広がるようになります。

 また、このSSGを施行する病気に、内痔核の手術後の肛門狭窄があります。内痔核に対して2箇所以上痔核根治術を受けた場合に、その手術の影響で肛門が狭くなってしまうことがあります。こういった場合にもSSGを用いて肛門を広げる手術を行います。

 このように裂肛によってもタイプが違います。その裂肛がどのような状態にあるのか。内肛門括約筋の緊張が強いだけなのか、それだけでなく肛門上皮の瘢痕化もあって肛門が狭くなっているのか。このことをしっかり診断して手術方法を決めていく必要があります。いずれの手術でも、患者さんにとっては肛門の緊張がとれ、そして肛門が十分に広がるようになるので、排便時の痛みや排便そのものが楽になります。

 

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