新型コロナウイルスの感染拡大によって、東京オリンピックの延期が決まりました。このことによってさまざまな分野に大きな影響がこれから出てくると思います。私たちはこれらのことに関して、冷静に対応していかなければならないと思います。
私たちの本質が今試されているときです。
さて、京都府保険医協会は新型コロナウイルスの感染が広がっていく中、それに対してしっかり対応できる医療提供体制の構築が重要であると考え、京都府に「新型コロナウイルス感染症対策への緊急提言 京都府内における医療提供体制の確保について」という提言を京都府に示しました。
その内容を紹介します。
「新型コロナウイルス感染症対策への緊急提言
京都府内における医療提供体制の確保について」
はじめに
厚生労働省の事務連絡「新型コロナウイルスの患者数が大幅に増えたときに備えた医療提供体制 等の検討について(依頼)」(R2年3月6日)に示された数式によれば、京都府保健医療計画の基準 病床数に定められた現状の感染症病床数(38 床)では到底対応できないのは明白である。入院・外 来において、医療機関は通常の診療業務を果たしながら、COVID-19 に対応することが求められる。
京都府においては、地域包括ケア構想をオール京都で推進することを掲げている。COVID-19 への 対応についても、ハイリスクの高齢者が多いことにも留意し、同様の姿勢で臨むことが求められよ う。 またイギリス公衆衛生当局は「CoviD-19 outbreak could last until spring 2021 and see 7.9 million hospitalised in the UK」と見込んでいる。わが国においても、こうしたレンジの対策を 念頭に置く必要があると考える。 当協会は府内における COVID-19 患者数の大幅増加を見込んだ医療提供体制の確保について、下 記のとおり、緊急に意見を取りまとめた。施策に活かしていただくよう、お願いする。
記
1. COVID-19 に対応する医療提供体制確立の目的は、「死亡者を減らすこと」、同時に人々の不安感を軽減することとする。
2. 診療報酬における「感染防止対策加算Ⅰ」を届出る入院医療機関(33 ヵ所)で構成する「COVID19 医療ネットワーク(仮称)(略称:COVID-19 ネット)」を構築する(なお、事態の推移によって同加算Ⅱを算定する医療機関(66 ヵ所)も加えることを想定する)。あわせて、感染防止 対策加算Ⅰを算定する入院医療機関と、数カ所の同加算Ⅱを届出る医療機関によるグループを 立ち上げ、地域ごとのカバー体制を構築する。
3. COVID-19 ネットは以下を実現する。 (1) 医師が感染を疑ったとき、患者に対する検査(PCR のみならず近く明らかにされる新たなキットによる検査法も含む)について、迅速に実施する。同時に、京都府保健環境研究所、京都 市衛生環境研究所出張所を保健所単位に仮設し、検査実施可能数を拡大する。 (2) 感染が確認された患者について、重症者のトリアージならびにハイリスク患者の判定を行う。
(3) 重症者は原則、各地域の感染防止対策加算Ⅰ算定病院が受入れることとし、必要に応じて COVID-19 ネット全体で対応する。想定される病床は、主に感染症病床もしくは集中治療病床とする。
(4) ハイリスク患者については、各々の疾患特性に応じて COVID-19 ネットが協議し、入院先を決定する。
4. 重症者以外の入院は急性期病床、地域包括ケア病床など病態に応じた適切な施設で対応する。
(1) 重症以外の患者については、環境感染学会 GL に準拠し、一般病床における「診療の手引き」 を作成した上で、一般病床における病室もしくは病棟でのコホート対応とする。 (2) 不顕性者は自宅だけでなく、ホテル、民泊等への入所も可能となるよう検討する。また、(1) の病床が不足する場合には、軽症者についても臨時的に受け入れることも想定する。こうした 際には、施設内に医師・医療スタッフが不在であるため、プライマリケア連合学会の手引きに 準拠する形で、外部から医療を提供できるよう、地域内において担当する医療者の体制を確保する。
(3) 上記対応により COVID-19 ネットを構成する医療機関は重症の感染患者を受け入れるため、通常の患者の入院先を別に確保することが必要になる。その役割は感染防止対策加算届出以外 の医療機関が担うこととする。さらに休止中の病床の活用、活用されていない有床診療所の病 床においての対応が考えられるが、その際はマンパワーの手当てが必要となる。
5. 対応医療機関や施設に対するバックアップ 対応するすべての医療機関は、空床確保、診療縮小や休止など経済的な困難に直面することが予 想される。国・自治体による経済的なバックアップ、そして施設基準の弾力的な運用等が必要とな る。
6. 医療者の健康保護、モチベーション維持、医療提供体制維持のために リスクを軽減する体制構築や感染防護のための装備は必須である。これは新型インフルエンザ時 の調査結果を参考に対処する。とりわけ今、医療現場で不足するN95 マスクや消毒液等の確保が緊 急に必要である。
7. 提供体制整備とともに急がれるワクチンや治療薬の開発感染拡大に備えた医療提供体制の構築とともに急がれるのがワクチンや治療薬・治療法の開発で ある。報道では、アメリカでワクチンの治験や治療薬の開発が始まっている。速やかに認可、保険 収載などの対応を行い、供給されるよう、国に対して求める。
8.感染症拡大防止策を進める中で起こり得る差別・人権侵害の防止 COVID-19 に感染者、感染が発生した店舗や事業所、その周辺の人々に対するいわれなき差別やいじめが起こり得る事態がある。また、社会混乱は社会的マイノリティへの差別を引き起こしかねない。国とともに差別禁止の法制化、条例化も含め、人権擁護のための施策を強める。
以 上