3月も残すところ後6日間。京都も桜の開花宣言が出た後、あっという間に桜の胃花が開いてきています。今日も朝は冷え込んでいましたが、昼からは温かくなってきました。今週が桜の見ごろなのかなあと思います。残念ながら、今年は新型コロナウイルスの感染拡大でいつものような花見はできませんが、いつもとは違ったかたちになりますが花見をしたいなあと思います。
第14回内痔核治療法研究会総会
さて、今年の6月28日に東京で第14回内痔核治療法研究会総会が開催されます。その頃、新型コロナウイルスの状況がどうなっているかは解りません。中止になってしまう可能性もあります。
テーマはALTA療法に関してのインフォームドコンセント
今回のテーマは「ALTA療法(単独療法、併用療法)を施行する際のインフォームドコンセント」で、二つの主題で検討されます。ALTA療法とはジオンという痔核硬化剤を用いて四段階注射法という方法で行う痔核硬化療法のことです。
主題の一つ目は「ALTA療法選択のインフォームドコンセント(適応、手技、成績など)」で、ALTA療法を施行する際にどのようにその適応や痔核硬化療法の仕方、そしてその成績を患者さんに説明して同意してもらっているか。
主題の二つ目は「ALTA療法有害事象のインフォームドコンセント」で、ALTA療法を施行することで起きうる有害事象に関してどのように説明をしているか。
この二つの主題で全国から参加される肛門科を専門とする医師たちが検討します。
今回、私のところにも演題発表の依頼がありました。私は二つ目のALTA療法を施行するにあたっての有害事象に関しての主題で発表することにしました。
演題の抄録を作りながら感じた私の考えを少しお話したいと思います。
ALTA療法出現までの内痔核の治療
ALTA療法が出現するまでは、第Ⅲ度以上の内痔核(排便時に出血したり、内痔核が脱出して押し込む)に対して痔核根治術など、切除という方法で治療を行ってきました。したがって、患者に外科的侵襲を加えることで傷ができることになります。そのことによってどうしても排便時の出血や痛みのなどの苦痛が伴ってしまいます。
そのため、私たちは、手術後いかに出血しないように、そして術後の痛みをどうしたら最小限にすることができるかなど工夫をしてきました。例えば痔核根治術を行う時に、開放創だったものを肛門上皮の部分を縫合する半閉鎖式にすることで痛みや出血を軽減を図るなどがあります。また、渡邉医院では内痔核の根部を結紮する糸の太さで痛みに差があるか。また、術前の内肛門括約筋の緊張を反映する最大肛門静止圧の強さと術後の痛みを検討したりしてきました。また内痔核を十分に剥離することで痛みが軽減することからどこまでどのように内痔核を剥離して根部を結紮したらいいかなど検討してきました。このような様々な工夫によって、痔核根治術も随分術後の痛みが軽減されてきました。
ALTA療法の出現で内痔核の治療は一変
そういった状況のなかで、ALTA療法の出現したことで内痔核の治療は一変しました。ALTA療法は、適応をしっかりと見極め、四段階注射法という注射手技をしっかりマスターすることで比較的簡便で、しかも治療効果を得ることができる治療方法です。そしてALTA療法の一番のメリットは患者さんが痛みを感じることなく治療できることにあります。そのため、渡邉医院では肛門に傷を付けないALTA単独療法を基本に治療を勧めています。
ALTA療法は本当に低侵襲?
さて、ALTA療法は低侵襲の治療方法だと言われています。しかし、手術で切除していたものをALTA療法で治すということは、ALTAを局注した部分では手術と同様に激しい反応がおきているということです。
患者が痛みを感じないということでALTA療法が低侵襲の治療法と言っていいのかは疑問があります。
ALTA療法によって脱出や出血が早期に取り除かれ、患者のQOLは比較的早期に改善されます。そして早期に社会復帰して日常の生活が送れるようになります。しかしこのことが、ALTA療法を施行する医師や、また受ける患者さん側もALTA療法を安易に考える危険性があるのではないかと思います。
ALTA療法による有害事象に関してのインフォームドコンセント
ALTA療法に伴う局所での反応は激しく、それによる有害事象が発生する可能性もあります。このことをしっかりと患者に説明して同意してもらうことが必要だと考えます。
渡邉医院ではALTA単独療法で血圧低下や徐脈の発生頻度は約1%、熱発の発生頻度は約4%である。また症状が無くても潰瘍形成など発生することもあります。こういった有害事象は一過性のものではあります。その時の適切な処置や保存的に治療することで治っていきます。でもそういった有害事象に関して、どの時点でどの範囲まで患者に説明するかは難しい問題です。
一時に全てのことを患者さんに説明しても、患者さんがそのことを全て完全に理解することはとても難しいことだと思います。また、一回説明をしたからといってそれだけで十分ではありません。必要な時に必要な説明をしていく。また患者が不安に思うであろう症状を先手先手で説明していくことが必要と考ええます。こういったことをふまえて、渡邉医院でのALTA療法やそれに伴う有害事象の患者への説明時期やその内容をまとめて報告していきたいと思います。
またその内容については次回お話したいと思います。