今日は朝から雪がちらつく寒い一日でした。温かいかと思ったら一気に厳しい寒さ。体が付いていけません。皆さんも、お体に気を付けて下さいね。
どうしてもこの寒い季節、乾燥しているのでどんどん体の外に水分が出ていってしまいます。でも、寒いので水分を十分に摂るのが難しいです。寒い中、温かい飲み物を摂って、十分に水分補給してくださいね。
さて、先週の土曜日、2月15日に大阪で近畿肛門疾患懇談会が開催されました。主題は「周術期の管理(疼痛管理を主にクリニカルパスがあれば)」でした。
今回は全部で9演題が発表されました。ほとんどが内痔核に対して痔核根治術などを行った後の痛みの管理に関する演題でした。
術後の痛みの原因としては、まずは手術を施行した後の傷の痛み。そして排便による痛み。そして術後の不安から生まれる痛み。大きくこの三つが術後の痛みの要因になると思います。
これらの三つに関して、今回の近畿肛門疾患懇談会での話をふまえて私の考えをお話したいと思います。
一つ目の手術を施行した後の傷の痛みです。
術後の傷で痛みが出る場所はどこかを考えてみます。
内痔核は直腸の粘膜の部分にできます。痔核根治術を施行する場合は、以前にも手術方法をお話したことがあると思いますが、肛門の少し離れた部分から皮膚を剥離していきます。そして肛門管内の肛門上皮を剥離して直腸粘膜の内痔核の根部まで剥離して内痔核の根部にある動脈を結紮して切除します。この痔核根治術で痛みの感じる部分はどこかです。粘膜部分は痛は感じない部分です。ですから十分に剥離でき、筋肉などを巻き込まずに根部を結紮した場合は、その部分の痛みは無いはずです。
ですから内痔核を根部まで剥離する際は十分に筋層などから剥離してできるだけ粘膜と内痔核の本体である静脈瘤だけにして根部を結紮することで、その部分による痛みはないのではないかと考えます。どうしても剥離が不十分で、粘膜や静脈瘤以外の筋肉組織などを一塊として結紮してしまうと、その部分に痛みが出るのだと思います
また根部結紮をする組織が多ければ術後の晩期出血の原因に繋がります。このようにまずは十分に内痔核を剥離して根部結紮をすることが痛みが出ないようにする一番の方法だと思います。
肛門管内の肛門上皮にできる傷、そして肛門の外側にドレナージとしてできる傷、これはどうしても擦れると痛みが出ます。ただ、この肛門の外側から肛門管内の手術の操作で、術後に腫脹をきたすと痛みが出てしまいます。ですから術後腫脹が出ないように手術をする必要があります。
でも、これがなかなか難しいところがあります。
術直後は腫れていなくても術後1時間後、3時間後と時間が経つと創が腫れてくることがあります。その多くは外痔核成分の部分が腫れてくることが原因となるようです。ですから外痔核成分がある内痔核の手術をする場合は、外痔核成分が術後に腫れてこないように、この部分も十分に剥離切除する必要があると思います。
また肛門管内の傷の痛みに関係するのが肛門の緊張の程度です。すなわち内肛門括約筋の緊張が強い人が痛みを強く感じます。肛門の締まりが強い、内肛門括約筋の緊張が強い人はやはり痛みが強い傾向にあります。ですからこういった理由で、男性の若い人ほど、どうしても痛みを強く感じる傾向があります。
こういった場合は内肛門括約筋の緊張をとるために、局所麻酔後に十分にストレッチングをして、緊張をとってから手術を始めます。
また痛みがあると内肛門括約筋の緊張が強くなるので、術後は痛みがあっても無くても術直後と術後3時間後に消炎鎮痛剤の座薬を挿入しています。また内服での消炎鎮痛剤も痛みの有無にかかわらず内服してもらっています。
「先取鎮痛」という言葉があります。これは、痛みを感じてから痛みをとるよりは、痛みが出る前に先手を打って痛みを取り除く方法です。やはり、痔核根治術の場合もこの「先取鎮痛」が有効だと思います。
痛いのを我慢して治すよりは、痛みをしっかり取り除いていく、できるならば痛みがなく治す方が術後の傷の治りはいいです。どうしても痛みなどのストレスがあると、アドレナリンの分泌が高まります。アドレナリンの分泌が高まっている状態は傷の治りを抑制してしまいます。また痛みが原因で傷の局所の血流も悪くなります。昔は「痛いのを我慢したほうが早く治る。我慢しなさい。」と言っていましたが、痛みを我慢する方が治りは悪くなってしまいます。しっかりと痛みをとることが傷の治りを早くそして良くすることに繋がります。
今回は一気に三つの術後の疼痛の要因についてお話しようと思いましたが、少し長くなってしまいました。今回はこの一つで終わりにして、一つづつお話していこうと思います。