ようやく長かった1月が終わり2月になりました。これからはあっという間に時間が経過していくのだろうなあと思います。
新型コロナウイルスの流行がとても気になるところですが、手洗いうがいなど従来の対策をしっかり行って、適切に対応していきたいものです。
さて、今回は肛門の病気に関してはやはり男性と女性とでは違いがあります。内痔核でもその性状が男性と女性とではやはり違います。この内痔核の違いによって治療方法も違ってきます。そこで、今回は私が京都に帰ってきてから今日まで手術をしてきた患者について男性と女性との違いに関して検討してみました。
その第一弾として内痔核についてお話してご報告したいと思います。
内痔核に対しての外科的治療総数
これまでに内痔核に対して痔核根治術やジオンによる四段階注射法による痔核硬化療法(ALTA療法)を行った患者さんの総数は8458件です。男性は4422件、女性は4036件と男女差はあまりありませんでした。
痔核根治術、ALTA療法の男性と女性との違い
痔核根治術を行った件数は、男性では2645件に対して、女性では3311件と痔核根治術では女性の方が男性より多い傾向にありました。これに対してALTA療法は男性が1777件に対して女性では725件と、ALTA療法では男性の方が女性より多い傾向にありました。
やはりこのことは男性と女性では脱出してくる内痔核の性状が異なることが要因と思います。このことは男性と女性とでは内痔核の発生にちがいがあることにもつながるのかなあと思います。また男性と女性では解剖学的にも異なります。こういった男性と女性の差が内痔核の性状に違いが出て、さらにはその治療方法にも違いが出てくるのだと思います。
例えば内痔核に対してALTA療法の適応となる内痔核はどちらかと言うと静脈瘤型の内痔核が適応となります。外痔核成分や皮垂が大きく伴っている場合はALTA療法の適応になりません。症状でいうと、排便時の内痔核の脱出がありますが、しかも出血が伴う内痔核が適応となる傾向があります。男性の内痔核を診てみると、やはり静脈瘤としての内痔核が多い傾向にあります。
これに対して女性の内痔核では、皮垂を伴ったり、外痔核成分の多い内痔核であったり、粘膜脱型の場合が多い傾向にあります。あまり出血という症状はなく、脱出や痛みを伴うことが多いようです。また女性の内痔核を診てみると、肛門上皮部分の外痔核成分が多い内痔核が多い印象があります。肛門上皮の部分は痛みが伴います。こういった内痔核にはALTA療法の適応はありません。また粘膜の脱出とそれに伴った連続した皮垂が合併している症例が多い傾向もあります。
こういったことから男性ではALTA療法が、女性では痔核根治術が多い要因となると思います。こういったことからも男性と女性の内痔核の発生原因や発生の違いを検討する必要があると思います。
痔核根治術の年齢別による違い
次に痔核根治術を施行した患者さんの年齢別件数をみてみます。
男性では50歳代をピークにして増加、減少しています。これに対して女性では30歳代をピークに年齢と共に徐々に減少しています。この差は何だろうと考えてみました。内痔核ができる一番の原因は排便時の怒責の強さです。排便の時にグッと頑張っている時間が長いことが原因になります。そうするとやはり便秘などの排便障害が原因になります。男性の場合は50歳代、仕事をバリバリする時期、そして責任が出てくるころ、ストレスなどで便秘や下痢など排便の状態が悪くなるのではないかと思います。これに対して女性の場合は、30歳代と言うと妊娠出産が多い時期に一致します。また若い人はダイエットなどで排便の状態が悪くなるなどが内痔核の発生や症状の増悪につながるのではないかと思います。この差が男性、女性のそれぞれのピークの要因ではないかと思います。
ALTA療法の年齢別による違い
ALTA療法では男性では50歳代がやや減少する傾向がありますが、60歳代をピークに増加してそれ以降減少しています。痔核根治術よりも10歳ほど年齢が高くピークを認めます。
女性の場合は、もともとALTA療法の件数は少ないですが、60歳代をピークにしています。また、50歳代までは各年代にあまり差はありません。このことは高齢になると皮垂を伴わない粘膜脱型の内痔核が見られることがあります。粘膜脱型で、皮垂を伴わない場合もALTA療法が効く傾向があります。こういった女性でも年齢によって内痔核の性状が異なることがあり、これによって治療法に差が出てきます。
今後さらに、男性と女性とで内痔核の性状が異なる原因は何か、発生の仕方に差があるのか、また解剖学的要因が内痔核の性状に差が出てくるのかなど検討していく必要があると思います。