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2020.01.26

渡邉医院の2019年手術統計とその傾向(痔瘻編)

 今日は1月最後の日曜日。1月も後1週間やっと1月が終わります。2月に入るとあっという間に時間が過ぎていくと思います。先日、近畿肛門疾患懇談会の世話人会の新年会があり出席してきました。肛門疾患専門の世話人の先生方とお話ができ、有意義な一時を過ごすことができました。京都でも京都の肛門科のレベルアップのための勉強会が立ち上げられればいいなあと感じました。

 さて、今回は渡邉医院の2019年の手術統計とその傾向として最後の痔瘻に関して報告したいと思います。

痔瘻の手術件数

 2019年の痔瘻根治術の手術件数は64件。男性55件(85.9%)、女性9件(14.1%)と圧倒的に男性に多く、女性の約6倍でした。やはり痔瘻は男性に多く発生します。
 痔瘻の原因は肛門腺の感染から肛門周囲膿瘍へと広がり、切開排膿を行ったり、自然に自壊して膿が出るところから始まります。原因となったところと膿が出た部分との間に瘻管が出来ます。再度感染を起こしても膿が体に広がらないように硬い瘻管ができ、その瘻管を通って膿が出るようにしてくれます。
 でも、膿が出たり治まったりするのが嫌な症状になります。こういった症状が出た場合、痔瘻となります。痔瘻になるとスッキリ治すには痔瘻根治術が必要になります。

痔瘻が男性に多い理由

 痔瘻になる場合は、下痢などで肛門腺に細菌感染を起こすところから始まります。そしてどちらかと言うと、肛門の締まりが強い人、括約筋の緊張が強い人に起きやすい傾向があります。したがって、男性と女性を比べると、男性の方が括約筋の緊張が女性より強い傾向があるため、男性に痔瘻が発生する割合が高い傾向があります。
 ただ、痔瘻は肛門腺の感染だけでおきるわけではありません。裂肛が原因で、裂肛に細菌感染を起こし、そこから肛門周囲膿瘍になり、痔瘻へと進展していくこともあります。したがって、裂肛の頻度が高い女性にも裂肛が原因での痔瘻が起きる可能性があります。また、潰瘍性大腸炎やクローン病の肛門病変として痔瘻を認めることもあります。ただ、多くの場合が肛門腺の細菌感染で発生するので、男性に多いことになります。

 また肛門腺は男性により発達していると言われます。動物などが縄張りを示すためにマーキングをしますが、肛門腺もこのマーキングの役割をしているとしているものもあり、男性に発達していると言われることもあります。

年齢別手術件数

 次に年齢別の手術件数をみてみます。

 年齢別にみてみると男性では20歳代から40歳代にピークがあり、その後は段々減少しています。また、この傾向は女性でも認められます。このことも若年者の方が肛門の括約筋の緊張が強く痔瘻になりやすいことを示していると思います。また、裂肛も若年者に多いため、こういったこともあり、痔瘻は若い世代に多い傾向があります。
 ある程度年齢をいってから痔瘻根治術をおこなう方も、若いころに肛門周囲膿瘍になって痔瘻になった。特に症状がなかったので、今までそのままにしていた。症状がでてきたのと、この際しっかり治してしまおうと手術をされる方もいます。

 さて、以前もブログで紹介しましたが、肛門周囲膿瘍になったら必ず痔瘻になるわけではありません。肛門周囲膿瘍で切開して排膿した後、約70%の方はその後なんの症状もありません。肛門周囲膿瘍になったら、必ず痔瘻になって痔瘻根治術をしなければならないではありません。
 また排膿があって嫌な症状ですが、考え方を変えてみると、炎症を起こして膿が出来ても体に広がらないように体の外に出してくれている。ちゃんと瘻管によって膿が広がらないようにしてくれていると考えると、自分が自分の体を守るために作った瘻管が機能しているということです。
 膿が出ている間は痔瘻は悪くなっていきません。慌てることなく、でもしっかり痔瘻は治していきましょう。

 

 

 

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