今日明日は連休ですね。少し天気が悪いですが、皆さんどうお過ごしでしょうか?
私は、入院の患者さんや手術をしたばかりの患者さんがいらっしゃるので、朝は診療所に行っています。
渡邉医院の玄関前の通りにはや、中庭の木々は青々と生い茂っています。少し茂りすぎかなあとも思いますが。今出川通りから少し入っただけですが、すごく静かです。井戸から流れる井戸水の音、これから梅雨が終わり、夏本番に向かって暑くなっていきますが、涼しさを与えてくれると思います。
さて今回は内痔核、痔瘻に続いて三大肛門疾患の裂肛の手術について渡邉医院で行っている基本的な手術方法をお話します。
裂肛の手術は渡邉医院では基本は側方皮下内肛門括約筋切開術(LSIS lateral subcutaneous internal sphincterotomy)を行っています。肛門の狭窄が強かったり、瘢痕が強く、肛門が硬く広がりが悪いときは皮膚弁移動術(SSG sliding skin graft)を行っています。
今回は、LSISについてお話したいと思います。
裂肛は排便の際に切れたり治ったりする間に、内肛門括約筋の緊張が強くなっていくことで慢性の裂肛になっていきます。この緊張をとることが裂肛の治療になります。LSISは、外科的に内肛門括約筋の緊張をとる手術です。内肛門括約筋の緊張をとることで、裂肛が治っていき、術後の排便の痛みも楽になっていきます。
では実際の手術の方法をお話していきます。
渡邉医院では手術はすべて左を下にして横になる、左側臥位で行います。したがって、手術で内肛門括約筋を切開する部位は左で行います。
手術の際にアイゼンハンマー氏型肛門鏡を使っています。
1)局所麻酔後、アイゼンハンマー氏型肛門鏡を挿入します。
緊張が強くてアイゼンハンマー氏型肛門鏡が挿入できないこともあります。挿入できても十分に広げることが出来ないこともあります。その場合は診察用の小さなストランゲ型肛門鏡を挿入して少しずつ緊張をとっていきます。
肛門縁から約1cmほど外側にメスが入る程度の皮膚切開を入れます。皮膚切開を入れた後、いきなりメスを入れるのではなく、まずは曲がりのペアンを挿入して皮膚とその下の組織との間十分に剥離します。
2) 皮膚切開した部分からメスを挿入します。肛門小窩を傷つけないようにメスの先端は肛門小窩と肛門小窩の間を狙って挿入していきます。
3) メスの刃を内肛門括約筋の方に向けて括約筋を切開していきます。
4) メスで括約筋を切断するというよりは、メスで一部切開して、その後示指を挿入して圧迫して、この圧迫することで括約筋を離断していくような要領です。バッサリメスで切るのではなく、一部切開して指での圧迫で筋肉を裂いていくような感じです。示指を圧迫して段差を感じるように筋肉を裂いていきます。肛門を広げる度合いですが、LSIS後私の指が2本挿入できる程度の広がりにすることを目安にしています。
以前LSISを施行する前後の内肛門括約筋の緊張の程度を反映する最大肛門静止圧を測定した結果を学会発表しました。その内容は、「学会・論文」のところに紹介してありますので、ご覧になっていただければと思います。その結果、LSISを同様に施行した際、緊張の強い患者さんの最大肛門静止圧はしっかり下がり、それほど強くない患者さんはそれほど大きな低下はなく、それぞれ同じように手術をした場合、適度に最大肛門静止圧が下がる結果でした。
5) 括約筋を切開した後、指で切開部分を2分程度圧迫して止血します。以前は皮膚切開をした部分は縫合していたのですが、感染の可能性もあるため、今は縫合せずに開放創としています。
6) 肛門ポリープや皮垂(skin tag)を合併している場合は、ポリープは切除して、皮垂も切除して十分なドレナージを作っておきます。皮垂を切除した部分はバイポーラにて出血部位は凝固止血します。
麻酔から手術終了まで約10分程度で終わります。
渡邉医院での裂肛の手術はこのようにLSISを基本としています。
次回はSSG法についてお話したいと思います。