渡邉医院では、手術をして入院された患者さんにアンケートをお願いしたいます。手術を決める際に悩んだこと、不安に感じたこと。また、麻酔の痛みや、手術中の痛み。術後の痛み、や排便時の痛みなどの項目に答えていただいています。またアンケートには自由記載欄もあり、手術、入院、そして渡邉医院の提供している医療内容、また改善欲しい点など自由に書いていただいています。これらのアンケートの結果を集計して、患者さんが感じている局所麻酔の時の痛み、手術中の痛み、そして手術後の痛みについてや、いつ手術後何日目頃から排便時の痛みは取れてくるのかのデータをとって、これらの患者さんのアンケートをもとに、これから手術を決める患者さんや、手術後の患者さんの不安を取り除く大切な資料として使わせてもらっています。
以前に術後な痛みのアンケート結果を紹介しました。またご覧いただければと思いますが、これらの患者さんのアンケートはとても大切な資料となります。
またアンケートは患者さんのためだけでなく、私たちとってもとても勉強になるものです。
私自身が気が付かなかったことを指摘して下さる患者さんもいます。
例えば、内痔核の治療に関して、治療方法をしっかり説明して、手術で治す方法、痔核硬化療法で治す方法など選択肢を示しているつもりでしたが、「結果的にこの治療法にしてよかったが、治療方法の選択が出来なかった。」というアンケートがありました。どうしても内痔核の性状などで、ジオンによる四段階注射法の適応でない内痔核の場合は痔核根治術が必要ですし、ジオンによる治療が可能な内痔核であれば、痔核根治術と違い、傷もできずに痛みが少なく楽に治していけるので、どうしてもそちらの治療へと誘導してしまう傾向があるなと思っています。特にジオンによる四段階注射法でも痔核根治術でもどちらでも治すことができる内痔核の場合は、しっかりと選択肢を示して、患者さんに選択してもらうようにしていく必要があると感じます。ただ、この際、患者さんと私たち医師との間では、絶対的な内痔核の治療に関しての知識量が違います。私たち医師は、やはり、患者さんにとって一番適した最善の治療方法を示して提供していかなければならない面が強いと思います。
ただ、私たちがしっかり考えなければならないのは、私が最善と思っている治療方法ではない治療方法を患者さんが選んだ時です。そうした場合は、患者さんが選んだ治療方法で改善する部分と、改善しない部分をしっかり説明したうえで、納得してもらって患者さんが選んだ治療方法を提供しなければならないと思います。
例えば、内痔核の場合、外痔核成分の多い内痔核であったり、皮垂を伴った内痔核や、器質化して硬くなった内痔核などは、やはりジオンによる四段階注射法の適応にはなりません。そういった場合、ジオンによる痔核硬化療法で、内痔核部分は良くなりますが、皮垂は残りますし、外痔核成分も一時的には良くなることもありますが、どうしてもその外痔核部分の腫脹が出てくる可能性が高いです。そういったことをしっかり話して、皮垂が気になるようでしたら、改めて切除したり、外痔核部分の腫脹が残ったり、外痔核部分が再発した場合など手術で切除する必要がおきることがあるということをしっかり納得してもらってからの治療が必要になると思います。患者さんの中には、「とりあえず出血が多いので、その出血を今は何とかしてほしい。」とか、「皮垂は気にならないので、内痔核が脱出してこないようにして欲しい。」と望まれる方もいます。そのことは患者さんにとってはとても大事なことだと思います。そういった患者さんの思いをしっかり受け止め、その後に起きるであろうことや、起きたときにどのように対処したらいいのかをしっかり説明して納得してもらってから治療を進めていくことが大切だと思います。どうしても、医師は自分の考えている方へ患者さんを誘導してしまう傾向があると思います。患者さんとって最良の、そして正しい方向への誘導は良しとしても、間違ったほうへの誘導にならないように、日々、診察、診断、治療の技術を学び、進化させていかなければなりません。