前回、「局所麻酔での手術」についてお話しました。今回は、渡邉医院で行っている局所麻酔の実際の方法をお話したいと思います。
局所麻酔の目的
局所麻酔の目的は、手術の際の痛みをとるだけでなく、肛門の筋肉の緊張を麻酔でとり、しっかりと肛門を広げ、内痔核の状態や痔瘻の原発口の一の確認や瘻管の走行など、痛みだけでなく、手術を行う際に十分な視野を確保して、肛門の病気の状態をしっかりと確認して、適切なデザインのもとで手術を行えるようにすることです。十分にそして、しっかり麻酔をかけることが手術にとってとても大切なことになります。麻酔の効きの良し悪しが手術ががしっかり行えるかどうかに影響をあたえます。
私の父がまだ現役でバリバリ手術をしていた頃に行っていた局所麻酔方法をみて、それを私も同じように京都に帰ってきたころは行っていました。それをさらに十分に麻酔が効かせるのはどうしたらいいかを考えていき、今の麻酔方法になりました。
現在、渡邉医院で行っている局所麻酔法を図を見てもらいながら、お話したいと思います。
局所麻酔の方法
渡邉医院では局所麻酔薬は1%プロカインを使って麻酔しています。
表面の麻酔
肛門の麻酔ですが、肛門の表面の麻酔から行っていきます。まず、肛門の前方(12時の方向)から右側を後方(6時の方向)まで麻酔をしていきます。
前方(12時)―右側-後方(6時)
次は前方(12時の方向)から左を後方(6時の方向)まで麻酔をしていきます。
前方(12時)-左側―後方(6時)
筋肉への麻酔
表面の麻酔が終わると今度は肛門を締める筋肉の緊張をとるための麻酔をしていきます。麻酔の針を刺す場所ですが、内肛門括約筋と外肛門括約筋との境目、内外肛門括約筋構のあたりに麻酔の針を刺し、麻酔していきます。
今度は、まずは後方(6時の方向)から右側を前方(12時の方向)、そして左側から後方(6時の方向)まで時計回りに約1mlづつだいたい10か所に麻酔していきます。針を刺す深さですが25Gの針が根元まで入るまで刺して針を抜きながら麻酔薬を注入していきます。
次は同じように、時計回りに2周目の麻酔をします。今度は約0.5mlづつ同様に麻酔をしていきます。このように筋肉には3周から4周麻酔をしていきます。
手術をする部分の麻酔
最後に手術をする場所に麻酔をしていきます。内痔核であればドレナージを作る部分と切除する内内痔核部分の筋肉に、痔瘻であれば二次口の周囲と瘻管に沿って麻酔を足していきます。だいたい最初から5分程度、1%プロカインの量でいうと20ml~30mlを使かって麻酔します。これで痛みだけでなく、十分に筋肉の緊張がとれ、渡邉医院ではアイゼンハンマー氏型肛門鏡を手術の際に使うのですが、この肛門鏡が十分広げられるまでに筋肉の緊張がとれ、十分な手術の視野を確保することが出来ます。手術中に十分に麻酔が浸潤してなく、痛みがある場合は随時その部分だけ1%プロカインを足していきます。
このように麻酔をすることで、今のところ局所麻酔で手術が出来なかった患者さんはいません。
今後の検討項目
どうしても局所麻酔では最初痛みを伴います、麻酔をしたところに麻酔を足していくので、麻酔中ずっと痛い訳ではなく、途中からは痛みがなくなります。ただどうしても最初の痛みがあり、この痛みをさらに緩和していく方法は今後検討が必要と考えています。