今回は、「症状からみるお尻の病気ー痛み編ー」についてお話します。
肛門の痛みはとてもつらい症状です。痛みのために眠れなかったり、動けなくなってしまうこともあります。急に痛みが出て、徐々に痛みが強くなってきたり。反対に徐々に痛みが軽減していくこともあります。でも、今ある痛みが早く治まって欲しい!!
今回は、「痛み」の症状からみる肛門の病気についてお話します。
まずは、排便時に痛みがあり、その痛みが排便後もしばらく続く場合は、裂肛(切れ痔)のことが多いです。それに対して、排便に関わらず常に痛みがある場合は、血栓性外痔核、肛門周囲膿瘍、内痔核に血栓が詰まって脱出したままになった嵌頓痔核、肛囲皮膚炎などが肛門の病気ではあります。場合によっては進行した直腸癌や肛門癌の場合がまれにあります。また直腸肛門痛という痛みの病気であったり、腰の具合が悪かったり、坐骨神経痛などがある場合も、肛門に痛みが出ることがあります。腰の具合が悪くて肛門に痛みを感じる場合は、立っている時よりも座っているときに痛みが出ることが多いです。
さて、まずは「排便時に痛い。排便後もしばらく痛みが続く」裂肛についてお話します。
裂肛は、便が硬かったり、また反対に下痢の時に肛門に傷がついて、痛みを伴って出血する病気です。出血の程度は、ポタポタ落ちることもあるが大抵は拭いたら血がついたり、便に血が着いていることが多く、場合によっては痛みだけで出血しないこともあります。裂肛は最初のうちは、排便時に痛みを感じますが、切れたり治ったりしているうちに、肛門の筋肉の緊張(内肛門括約筋の緊張)が強くなって、肛門のしまりが強くなっていくことがあります。肛門の緊張が強くなってくると、最初は排便時の痛みだけだったのが、排便した後も痛みが持続するようになります。病状が進むと、痛みの持続時間がだんだん長くなっていきます。場合によっては、排便すると、1日中痛みが続いてしまうこともあります。そうすると、排便するのが怖くなり、ますます便秘も悪化して悪循環になってしまいます。急性の裂肛の場合は軟膏をつけ、便秘などの排便の状態を改善するとよくなっていきます。ただ、肛門ポリープや皮垂を伴い、肛門の緊張が強くなってしまった場合は手術で直す必要があります。でも裂肛の手術は、痛みをとることが目的です。排便時の痛みが強い人ほど、裂肛の手術後の排便は楽になります。
次に「排便に関わらず常に痛い」病気についてお話します。
まずは血栓性外痔核です。
肛門の外側の静脈に血栓(血豆)が詰まって腫れて痛い病気です。でも血栓が詰まって腫れて痛いので、例えば、どこかをぶつけて内出血して腫れて痛いとか、指を挟んで血豆が出来て痛いと同じで、自然に腫れが引いて、血栓は溶けて体に吸収されて治っていきます。痛みをとるために、消炎鎮痛剤の坐薬などを使うと腫れは引き楽になっていきます。血栓は時間がかかっても、自然に溶けて吸収されて治っていきます。極端なことを言うと、何もしなくても必ず治っていきます。ただ、手術して血栓をとることもあります。それは、血栓が詰まって腫れが強く、痛みが強い場合です。この場合は自然に治るものをわざわざ麻酔してとるので、血栓をとって痛みが強くなることはありません。痛みが強い場合は、血栓を摘出することで、痛みはすっととれます。でも逆に言うと、どんなに大きくても、どんなに痛くても、血栓性外痔核は手術をしなくても必ず治っていきます。
血栓性外痔核に似たような症状で、内痔核に血栓が詰まって肛門の外に出たままになってしまうことがあります。この状態を嵌頓痔核といいます。この場合は、痛みが強い場合は、すぐに痔核根治術をする場合があります。血栓性外痔核と同じように、まずは、消炎鎮痛剤の座薬を使って、痛みの症状をとってから治療を改めて考えることもあります。ただ、嵌頓痔核になった場合は、いずれ内痔核をしっかり手術などで直す必要があります。ただ、内痔核の性状によっては、ALTA療法と言って、ジオンという硬化剤で痔核効果療法、注射で治すこともできます。
次は肛門周囲膿瘍です。
肛門周囲膿瘍は肛門腺に細菌が感染して化膿していく病気です。膿は、組織の弱いところ弱いところにどんどん広がっていくので、早急に診察を受け、切開して膿を出す必要があります。肛門周囲膿瘍の場合は、痛みはどんどん強くなり、楽になることはありません。膿が奥深くに広がっていくと38度以上の熱が出ることもあります。
肛門周囲膿瘍に対して切開排膿を行った後、痔瘻になることがあります。でも切開排膿をした後、100%の人が痔瘻になるわけではりません。70%の人は、その後何の症状もでません。痛みがなくても膿が出たり治まったりしたり、また、腫れたり治まったりするなどの症状が続く場合は痔瘻根治術が必要になります。
最後に肛囲皮膚炎についてお話します。
皮膚炎も最初は痒いとかじくじくするなどの症状が出ます。でも皮膚炎が悪化していくと、痛みを感じるようになります。常に痛かったり、洗浄時にしみるなどの症状が出るようになります。肛囲皮膚炎の原因の多いものには1)入浴時に石鹸でタオルでごしごし洗う。洗っているときは気持ちがいいのですが、石鹸で激しく擦って洗うと、皮膚の状態は悪くなってしまいます。2)排便後に強くトイレットペーパーで拭く。あまり強くトイレットペーパーで拭くと、やはり肛門に傷がつき、皮膚炎の原因になってしまいます。最近多いのが3)洗浄便座の洗浄が強く長く洗ってしまうことです。あまり強い水圧で洗浄すると肛門に傷がついてしまうことがあります。また傷がつかなくても、直接肛門に洗浄の水があたると、肛門の中に入ってしまいます。入ったお水は後から出てきて、反対に肛門が汚れてしまったり、ただれてしまい、皮膚炎の原因にもなってしまいます。軽く洗ってトイレットペーパーで軽く拭くがいいと思います。最後に4)消毒液やアルコール綿で拭く。一生懸命洗ったり、一生懸命に洗浄しても症状が良くならないと、もっと清潔にと消毒してしまう方がいます。消毒すると、皮膚炎だけでなく、皮膚そのものが悪くなってしまいます。お湯やお水で軽く洗うようにしましょう。
今回は痛みという症状からみたお尻の病気についてお話しました。今日紹介した病気以外で肛門が痛くなることもあります。またの機会でお話できればと思います。今回は少し長くなってしまいました。
さて次の第3弾は、「脱出」。肛門の外に出てくる、もしくは出たままになっているという症状についてお話したいと思います。
2018.08.02