渡邉医院

保険証廃止の先にある医療DXの企て

皆さんこんにちは。渡邉です。

今日は、保険証廃止の先にある「医療DX」と社会保障の後退についてお話しします

さて、122日の保険証の廃止を政府は手段を択ばず強引に進めています。なぜ政府がこんなにも頑なに保険証廃止にこだわるのでしょうか?それを読み解くには保険証廃止の先にある「医療DX」が鍵となります。

去年の4月から原則すべての医療機関にオンライン資格確認が義務づけられました。そしてカードリーダーにマイナ保険証をかざして「資格確認」をする「オンライン資格確認」が、医療DXの入口となります。

この仕組みで、医師は他の病院・診療所の医師と患者の情報を共有出来るようになります。患者も、あらかじめ自分の情報を知ってもらうことで診断・治療に役立ちます。医療界が医療DXを評価するのはこうした点です。

しかし、国の進める「医療DX」はデジタル技術を医療に活用して、患者の治療に役立てることを目的としたものではありません。国民の医療情報を収集し、その情報の活用が第一の目的にあります。

国は、このシステムを医療以外の介護や自治体の保有するデータも含めた「全国医療情報プラットフォーム」に発展させようと考えています。そのために共有できる医療情報の範囲も拡大させることが目指されています。そして情報を拡大するために電子処方箋や全医療機関共通の電子カルテの導入も予定されています。
 プラットフォームに集積された情報は個々の診療の段階で共有・活用されます。これが「一次利用」といいます。そして問題になるのは「二次利用」です。患者の情報を製薬企業や健康産業等に提供し、活用させることです。そしてそのことが公益のためと正当化されてしまうこと。ここに問題があります。

プラットフォームを通じて集められた医療・介護データと様々に紐づけられた電子証明書のデータとあわせて、個人別にデータを統合して、AIを使って分析すれば「どのような生活をしてきた人か」そして「どんな病気になり」「その結果どのような医療・介護が必要になるのか」を研究することが出来てしまいます。
さらに「この人はどういう消費欲求があるのか」ということを予測し、商品を売りつけることも出来てしまいます。
国が悪用すれば「不健康な暮らしをしているから」病気になると自己責任として、公的サービスから排除することもできてしまいます。
国がめざしているのは、民間事業者が個人個人の医療・健康データを活用して、儲ける仕組みづくりを国ぐるみで進めることにあります。

保険証廃止は、それ自体が国民皆保険体制を後退させてしまいます。
なぜなら保険証廃止によって、マインナンバーカードを保険証として使用するにも、資格確認書の交付を受けるにも、本人の求め、申請が必要になります。そして、いずれも有効期限が切れると自らが申請しなければなりません。求めに応じて交付された資格確認書の有効期限は1年とされています。
でもこのことは医療保障という人権保障が「申請に基づくもの」「希望によるもの」になってしまい、「いつでも・どこでも・誰でも」の国民皆保険制度が大きく後退してしまいます。

保険証の廃止を止めるだけでなく、法律自体を元に戻す必要があります。

国民健康保険における「短期被保険者証」がなくなることにも警戒が必要です。

公的医療保険制度は単なる保険制度ではありません。社会保障であり、生存権保障の仕組みです。お金のあるなし、保険料の納付のあるなしには関係なく、全ての人が必要な医療サービスを受けることが出来るということが大原則です。これまで短期被保険者証が果たしてきた役割の一つに、保険料を滞納している患者さんが資格証明書に移行するまでの間、医療保障につなぎ止めるという役割りがあります。マイナ保険証の原則化で短期被保険者証がなくなってしまうと、支援者や自治体が滞納している人を医療につなぎ止める手段がなくなってしまうといった危険性があります。
保険者である自治体は、被保険者が医療を奪われることがないように、どうして行くかが問われています。
保険証廃止に反対する私たちの運動は、今かなりのところまで政府を追い込んでいます。
明日の選挙の結果でどう変わっていくかはわかりません。

 でも、国は122日に向けて手段を択ばず保険証廃止に突き進んでいくでしょう。
私たちは、それらに負けることなく、さらに大きく「保険証を残せ」の世論を広げていくこと必要です。「保険証廃止の撤回を求めることが一番の目標です。ただ、合わせて「資格確認書の無条件交付」を要求して誰一人からも医療を奪われないようにしなければなりません。

DXの名のもとにすすめられている国家ぐるみの人権侵害に対しては「自己情報コントロール権」を法制化させる運動も必要です。自分の意思を無視して自分の情報が国家や企業のたくらみに開放されることを決して許してはいけません。
保険証廃止に反対する運動は、私たちの人権を守ることに繋がります。