渡邉医院

痔核硬化療法と戦争

 皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。

 現在、内痔核の治療法に痔核硬化療法があります。パオスクレ―とジオンという痔核硬化剤での痔核硬化療法です。使っている先生方は、内痔核を切除することなく治療できて、内痔核の治療法の一つとしてとても有効だと感じ使っておられると思います。

 でも痔核硬化療法が開発された要因の一つに戦争が関与しています。

 祖父が書いた原稿の中に、痔核硬化療法に関連したものがあります。そこには、 
「私は昭和204月に召集をうけ、孤島の陸軍病院に勤務した。」とあります。
 これは、昭和16年に医療関係者徴用令が発せられました。医師や看護師らが軍需工場、無医村などに強制的に勤務させる方針で、医師が軍医として戦地へ行く召集が広がっていった時期です。
 祖父の原稿はこう続いて書かれています。「戦争が激化していく中、次第に隊員で痔核で入院し加療する患者が増加してきた。しかし戦局は苛烈となり、全員手術をすれば戦力の低下を期すことを憂い、痔核硬化療法を試みたいと考えたがマグネシウムが入手できず・・・」と。そして、「入手できた第2燐酸カルシウムを用いた第2燐酸カルシウム・グリセリン懸濁液という痔核硬化剤を作り使用してみると、マグネシン注射(マグネシウム粉末をグリセリンに懸濁させた懸濁液。痔核硬化剤)同様の結果を得、患者を早期に原隊に復帰させることができた。」と。

 内痔核に対しての痔核硬化療法にも戦争の影響、戦争の影が見え隠れします。