渡邉医院

退院後、2か月経って思うこと。

 皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。

 105日に退院してもう2か月?まだ2か月?が経ちました。
 入院していた時とは違い、いろんな思いを起こさせてくれます。

 私が入院した時は、目の前の治療に取り組むことで頭の中がいっぱいでした。悪性リンパ腫という病名に驚くというよりは、今の状態をどう治していくのかを考えるのみでした。入院した時は、まったく食事もとれない状態でした。何日か経ってようやく食事が摂れるようになった朝食に、トマトスープが出ました。そのトマトスープを飲んだ時、「なんて美味しいんだ!」と、その時は個室に入院していたので、声を出して号泣しながら飲みました。泣きながら食事をしたのはその時が初めてでした。食事が美味しく食べれることがなんて幸せなこと感じました。このときからトマトスープのことを「命のトマトスープ」と呼ぶようにしました。この「命のトマトスープ」は以前のブログにも書きましたが、治療の節目節目に出てきました。忘れることのできないものとなりました。

 寛解導入のための抗がん剤治療が5クール終わって下垂体近傍の腫瘍が消失して、完全寛解した時に初めて、「やっぱり悪性リンパ腫にはなりたくなかった。どうしてなってしまったんだろう。」と思うようになりました。少し気持ちに余裕ができたことと、あらためて悪性リンパ腫という病気に対してへの不安が出てきました。

 こんな時に支えになったのが、ホームページへの記事のアップで、その時の自分の感じていること、自分の思いを書くことでした。書くことで、気持ちの整理が出来たり、不安が少しは解消できるような気がしました。また、TwitterYouTubeでの全く知らない方からの相談も支えになりました。相談に答え、患者さんとのやり取りをしていることが、患者さんと自分自身が繋がっているんだという実感を持つことが出来ました。大げさに言うと生きている価値を見出せたような気がしました。

 入院当初は、このコロナ禍もあり、自分一人で治療を受け治していかなければならないと思っていましたが、これは間違っていました。
 目の前に誰もいなくても、近くで寄り添ってくれる人がいなくても、私を支えてくれる人がいるから頑張れたんだと思います。

 また入退院繰り返しながらの治療でしたが、退院した時に、コーヒーを入れたり、朝ご飯の準備をする。食後の食器洗いやお風呂や家の掃除。また買い物に行く等、本当に何気ない日常の生活を送れることがとても幸せに感じました。そして、その何気ない日常生活を送ることがどんなに体力がいって大変なことも知りました。

 退院してからは、入院の時の方が楽だったなあと感じます。入院中は目の前にある治療をしっかりこなしていくことだけを考えればよかったです。今、腫瘍は消え、血液検査的にも正常に近づいて、治癒の状態。悪性リンパ腫にならないための予防的な治療はありません。そうすると、その日その日の体調に一喜一憂してしまいます。目の調子が悪かったり、少し体調が悪いと再発してしまったのか?と考えたり、調子がいいときは治ってきたと喜んだり。退院にしてからの方が精神的な起伏が大きいです。こういった心の起伏も、また診療所を再開すると違ってくるのかなあと思います。

 また今回の治療を通じて、「死」というものが今までとは違って、物事を考えるときに前面に出てきます。
 「お正月を迎えることが出来るね。」とか、「誕生日はどうかなあ?」とか「息子や娘の結婚式には出たいね」なんて妻と話をしたりするようになりました。

 やはり、悪性リンパ腫に罹患して、そしてその治療を通じて価値観や世界観が変わって来たと思います。

 今しなければならないこと、やりたいことを後回しにすると、もうできなくなるかもしれない。今しっかりやっておかないといけないと感じます。

 1125日に39℃の熱が出て、気を付けていたのですが、コロナに感染しました。自家血幹移植後間もないので、重症化しないかと心配しましたが、4日後には解熱して症状も軽快していきました。本当にほっとしました。
 ただ、2週間、自宅の部屋で隔離状態。退院した時以上に体力は落ちてしまいました。
 110日から渡邉医院の再開しようと準備を進めてきましたが、少しその目標は無理かなあと思います。ただ116日の週には再開したいと思っています。再開の日にちなどはまたホームページ等でご報告いたします。

 もうしばらくご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。