渡邉医院

介護保険制度を改悪しないで!

  皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。
 自家血幹移植が終わり、退院してから1か月過ぎました。まだまだ本調子ではありませんが、順調に来ています。自家血幹移植の際に主治医から「入院期間は1か月半から2か月ぐらいです。」と言われました。2か月だと11月に退院でもおかしくなかったと思うと、焦らずに、じっくりリハビリしながら渡邉医院の再開に向けて準備をしていきたいと思います。
 さて、今、介護保険に関しての見直しの議論がなされています。これまでの国の政策では、介護保険制度はどんどん改悪され、利用者が利用できない状況が進んでいます。今回の見直しでさらに介護保険制度が改悪されると困ります。今回はこの介護保険制度に関してお話ししたいと思います。

 介護保険は2000年に施行され、22年が経ちます。
 介護保険は、「介護の社会化」ということで、「家庭内・家族が担っていた介護を広く社会共通の課題として認識し、実際の介護、ケアを担う社会資源(サービス)を、税と保険料を中心に拠出された財源によって、社会全体が担っていくもの」とされていました。しかし、この22年間の介護保険制度の改悪で、必要とする介護サービスを利用できない状況が広がってきています。医療保険は現物給付なのに対して、介護保険はサービスを「お金で買う」という制度設計になっています。ですから、経済的理由によって、本当は必要な介護やケアを受けられなくなってしまいます。

 また、家族を介護しなければならないという理由での「介護離職」も増えています。さらに介護事業所においても、介護の担い手となる人材不足が深刻なのと、低い介護報酬から、経営が難しくなっています。20221月から9月までの老人福祉・介護事業の倒産は100件。介護保険法が施行された2000年以降で最多となりました。

そして現在のコロナ禍において、こういった事態はさらに深刻になっています。

このような状況の中、政府は2023年の通常国会に向けて介護保険の見直しの検討をしています。これまでの政府の政策をみると、良い方向に改正されるという期待は持てません。必ず改悪に進んでいきます。

 さて、今政府が検討している介護保険の見直しの内容ですが、次の7点があげられると思います。

1)要介護12の訪問介護・通所介護を総合事業へ移⾏

2)利⽤者負担の引き上げ(原則2割化、23割の対象拡⼤)

3)ケアマネジメントに利⽤者負担の導⼊ (ケアプラン作成の有料化)

4)福祉⽤具を貸与から購⼊へ

5)⽼健施設などの多床室(相部屋)の室料有料化

6ICT・ロボット等活⽤で⼈員配置基準の切り下げ

7)「科学的介護」の名の下で「⾃⽴」促進

です。

このように、今検討している内容は、介護保険利用者への負担増と給付の削減です。

要介護12の方が本当に軽度者なのか?また総合事業に移行することで地域差が出てこないかも心配です。また、利用者負担の引き上げが行われると、今ですら多くの介護サービスはあるものの、経済的な理由で、その「サービスを買う」ことが難しくなっている中、さらに必要な介護・ケアを受けられなくなる人たちが増えてしまいます。

 ケアプラン作成の有料化では、独居の高齢者にとって社会とのつながりであったケアマネージャーとの関係がなくなりかねず、さらに孤立化が進んでしまうのではないかと心配です。

 ICT・ロボット等活⽤で⼈員配置基準の切り下げにおいては、国は良くAIを用いて効率化を図ると言います。でもこの効率化を図った先にあるものは何か。国は効率化を図り、孤立化された分、人員を削減するといった方向に向きます。本来ならば効率化を図り余裕のできた時間は、その人員を利用者との触れ合いなど、人にしかできない介護・ケアを充実させる方向に進めていかなければならないのではないかと思います。

 来年の通常国会に向けての介護保険の見直しにおいては、今、利用者や介護事業所、介護従事者が直面している困難をしっかり聞いて、見て、利用者が必要とする介護・ケアを経済的な心配をせずに十分に提供できるような制度に介護保険を見直して欲しいと思います。

 そして私たちは、来年1月に開かれる通常国会までに介護保険制度をよりよくするように求める声を大きくしていかなければなりません。