皆さんこんにちは。今回は前回の続き、第15回内痔核治療法研究会総会の報告をしたいと思います。
前回のパネルディスカッションのテーマは「併用療法の必要性と適応」でした。今回報告するテーマは「併用療法の手術手技と工夫」です。
今回の報告する前に、確認しておかなければならないことがあります。それは治療方法の記載の仕方です。
少し見えにくいですがALTA併用療法の名称記載の写真を張り付けています。
まず
- 1.治療法の部位が異なる併用療法。
それぞれ別の内痔核に結紮切除術とALTA療法を行う方法。
結紮切除術:LE(Ligation & Excision) ALTA療法:A
結紮切除術とALTA療法を行うと、LE+Aと記載します。
- 2.同一部位の内痔核と外痔核の治療方法が異なる併用療法
切除:E(Excision)
①外痔核切除術(E)が先行の場合 E・A
②ALTA療法(A)が先行の場合 A・E
2-2.外痔核切除(E)の分類
E1:外痔核の切除が肛門縁より外側まで
E2:外痔核の切除が歯状線に及ばないもの
E3:外痔核切除・剥離が歯状線を超えるもの(歯状線まで含む)
3 Anal cushion lifting(ACL)との併用
ACL・AまたはA・ACL
4 分離結紮(DL)との併用(行為が分割なので分割結紮と呼ぶのが好ましい)
DLはLとする。
L・AまたはA・L
まずは、これをみていただいて話を進めますね。
午後からのパネルディスカッションの議論の中心は、一つが「Eの切除範囲」。そしてもう一つが「Aが先か、Eが先か」。この二つが焦点でした。
「Eの切除範囲」ですが、やはり外痔核の切除範囲がE1からE2、E3と進むにつれて根治度は高くなっていきますが反対に痛みや出血が増えてきます。また、不必要な外痔核切除はしない方がよいとするパネリストの先生や、根治性を求めるのであればやはりE3まで行った方がいいという先生もいました。なか難しく、今後の検討課題です。でも私としたら、ALTA療法の効果も期待して、E2までにとどめて、後はしっかりALTA療法で治すことでいのではないかと思います。それは、やはりALTA療法の一番の売りは「痛みなく治す」ですから。
もう一つの論点が「Aが先か、Eが先か」です。
これもなかなか難しい問題です。パネリストの先生は7人いらっしゃったのですが、一致した意見はなく、A先行の先生もいれば、E先行の先生もいらっしゃって、これもまた今後の検討課題です。
A先行の先生の理由は、口側から流れ込んでくる血流量を減らすことで、Eの手術の際の出血量を減らすことができるとか、ALTA療法の効果を期待してAから始めるといった先生もいらっしゃいました。
Eが先行の先生の理由は、外痔核部分が大きくて十分に内痔核を観察できずにALTAをしっかり四段階で局注することができないことがある。先に外痔核成分を切除すると視野が良くなり、Aがしやすくなるといった意見や、ALTAの総量を減らすことができるという理由でした。またAを先行すると、注射によって浮須が出て手術がしにくいのではないかと言った意見もありました。
なかなかどちらが良いとは言い難いですが、その時の内痔核や外痔核の状態に合わせて臨機応変に対処したらいいのではないかと、私は思います。
今後はこの「Eの範囲をどこまでにするか」と「Aが先かEが先か」が研究課題となると思います。
以上で第15回内痔核治療法研究会総会の報告を終わります。