渡邉医院

「命のトマトスープ」

 今日もとてもいい天気です。入院して病棟にいると、エアコンも効いていてとても快適な環境にいます。329日に緊急入院してから、私にとっては全く季節の移り変わりはありません。一旦退院した際に朝体力アップのために散歩をするのですが、これまでの退院ではあまり変化はありません。今退院して散歩すると全く違うのでしょう。

 梅雨も度超え逝ってしまったのか、あまり雨も降らずに梅雨明けしてしまいました。少し水不足など心配です。

 さていよいよ今日から準備万端で「地固療法」と「造血幹細胞採取」の治療に入ります。昨日そのための準備として、中心静脈カテーテルを挿入しました。

 今日から2日間にわたって12時間ごとに計4回の大量のキロサイトを投与します。副作用を軽減するために、キロサイト投与前にソル・メドロール(ステロイド)を投与します。
 そんな治療開始の日に「命のトマトスープ」が朝食に出てきました。

 今回はどうして「命のトマトスープ」なのかをお話ししたいと思います。

 さて、私は329日に緊急入院しました。本当に全身の状態も悪い状態でした。今回のことの発端は、36日に急にものが二重に見える複視になりました。診察を受けると原因がわからない「突発性右動眼神経麻痺」という診断でしばらく経過を診ることになりました。

 しかしその後もどんどん全身状態が悪化。複視だけでなく、食事もあまり食べれない。少し食べたら直ぐにソファーに横になって休む。そんな日が続きました。私も「動眼神経麻痺ってこんなに辛いんだ。」と思いました。
 しかし全身状態はさらに悪くなり、渡邉医院を休診にしたり、診察時間を短くしたり。またせっかく手術の予約を取り予定を立ててもらっていた患者さんにキャンセルの連絡をしたりしました。診療所に行っているときも、診察が終わると病室で横になって休んでいたり、院長室で休んだりしていました。最後の方では、患者さんが来られたら、院長室などに休んでいる私をスタッフに呼びに来てもらっての診察でした。
 あとから聞いたのですが、そのころはスタッフもいつ救急車を呼ぼうかと思いながら仕事をしていたとのことでした。

 329日が予約をしていた再診日でした。しかし、328日の夜中、もうどうしてもだめだと思い、夜中で申し訳なかったのですが救急車を呼び搬送してもらいました。頭部CTをとっても特に問題なしと言うことで点滴をして、一旦自宅に帰宅しました。今から思うと、この時点ではある程度脳浮腫が来ていたのではないかと思います。
 329日も午前中、何んとかと言うか無理やり診察を行い、昼から受診しました。血液検査の結果で電解質もホルモンもばらばらな状態。よく働いていたもんだと思いました。造影MRIを行うと、下垂体近傍に腫瘍を認めました。この腫瘍が今回の原因。そしてその腫瘍は悪性リンパ腫が下垂体近傍に腫瘍として現れた中枢限局性の悪性リンパ腫でした。緊急入院をし、治療が始まりました。悪性リンパ腫は血液の癌です。

 腫瘍を摘出すればいいというものではありません。したがって抗がん剤による化学療法を行うことになり、今に至っています。これまでの治療、抗がん剤が本当によく効き、私にもあっていたようで、本当に良くなり、今は「完全寛解」の状態にまで回復しました。

 さて、「命のトマトスープ」ですが、入院して12日はほとんど食事はとれませんでした。そして三日目の朝、朝食の献立の中にトマトスープがありました。

 スープなら飲めるかと一口飲んでみると、とても美味しかった。体に、そして心にしみ込んでくるようでした。そして生まれて初めて食事をしているときに泣いてしまいました。それも涙が流れるだけでなく、声を出してご応急しながらそのトマトスープをいただきました。

 その時に「こんなに美味しく食べれるんだ。食事を美味しく食べれるってことは、こんなに幸せなことなんだ。」と感じ、感謝しました。本当に何気ないトマトスープです。でもそのトマトスープ、私にとっては「命のトマトスープ」です。トマトスープが出てくると、いつもそのことを思い出し、今でも目頭が熱くなります。

  本当に何気ない日常の生活、その生活を送れること、そして美味しく食事がとれることに感謝しています。
  このような経験して、「命のトマトスープ」と私は読んでいます。

 その「命のトマトスープ」が治療の節目節目に出てきます。とても不思議です。そして今回地固療法が始まる当日にも「命のトマトスープ」が。何かあるのでしょうか?でも本当にここまで治して下さった主治医の先生方、また私を支えて下さっている皆さんに本当に感謝の気持ちでいっぱいです。もう一息で「完治」。一番大事なところでもあります。頑張っていきたいと思います。