渡邉医院

抗がん剤と腸内細菌

 皆さんこんにちは。今日は一日中雨ですね。やっと梅雨といった感じですね。
 さて、悪性リンパ腫の寛解に向けての5クールが終わり、いよいよ「完治」に向けた治療に向けて、明日から再度入院します。
 入院中は、抗がん剤の影響や環境の変化、そしてストレス等でやはりマグミットなどの緩下剤を内服して排便を調節していました。もともと調子よく出る快便なので、一旦退院した際はマグミットをやめて、具合よく便が出るように調整しています。なかなかこの調整が難しいです。

 最初は、そこまで便が来ているのに出ない。そこから、食事をしたり何か食べると、直ぐにお腹が張ってきて、それと同時にお腹周りや顔に痺れが来る。何とか出ると、お腹の張やお腹周りや顔の痺れが取れるといった感じの日が続きました。ようやく退院して1週間経ってスッキリ出るようになってきましたが、まだまだ本調子ではありません。
 こんなこともあって、抗がん剤が腸に与える影響、例えば腸内細菌へ与える影響、腸内環境に与える影響があるのではないかと、少し調べてみました。

 私が使った抗がん剤の中のオンコビンこれはブログでも紹介しましたが、自律神経障害を起こし、腸管の蠕動運動を抑制して便秘になりました。この障害が治まっていくのに私の場合は1週間、投与から2週間で回復してきたということでしょう。
 ただ、こういった直接の原因だけでなく、腸内細菌や腸内環境にも影響を与えるのではないかと思い調べました。
 こんな記事がありました。
 「薬も人によって良く効いたりあまり聞かなかったと個人差があります。この個人差という理由の一つが腸内細菌の違いだということが最近分かってきました。
 抗がん剤で例を挙げますと、ノーベル賞を受賞したオプジーボという薬がありますが、これはがん細胞が免疫系の攻撃を逃れる仕組みを持っているので、その仕組みを壊して自分の免疫に癌をやっつけさせるという薬です。この薬の効果の良しあしが、その患者さんの腸内細菌によって差があるということが言われてきています。
 まだまだこの分野は研究中ではありますが、この菌がいると効いて、この菌がいないと効かないなど、善玉悪玉などをクリアカットにどの菌の責任というような問題では表現できないということは分かっています。おそらくは細菌叢の多様性(いろいろな種類の菌がバランスよく存在していること)が大事で、多様性がある人には薬も良く効くという結論になりそうですが、この多様性を保つというのはなかなか難しい問題です。」という記事です。
 さらに、「がん治療の方は抗がん剤のみならず、抗生剤や胃薬その他たくさんの薬を飲まれていることが多く、必然的にその薬に対して弱い菌は減少し、生命力の強い菌は比率が多くなっていきます。そのような状態のところに、先ほどのオプジーボが投与されたとすると、腸内細菌がよりダメージをうけていない、偏りのない細菌叢を持っているひとには効き目が出やすいという事になると思われます。しかし長期の治療中の方はどうしても薬剤投与も多く長くなり、偏りが出てきてしまうのは否めません。できるだけ多様性を保つには、食物繊維などを積極的に摂るなどの食事療法も大事ですが、それでも失われる多様性のために、腸内細菌サプリメントをお勧めしております。」です。やはり、腸内細菌のバランス、腸内環境が良く保たれている。このことが薬の効きを良くしたり、免疫能を高めることに大切だということですね。この「多様性」とは、様々な腸内細菌がいて、腸内環境を良くするということです。
 さらに抗がん剤による治療は腸の粘膜を傷害しますが、抗がん剤の副作用で、血液中の白血球の数が減少してそれによって細菌感染を起こすことがあります。その場合、抗生剤の投与をするのですが、その抗生剤によって腸内の細菌が死滅したり減少します。そして腸内細菌叢のバランスが崩れ、腸内の環境が悪くなることもあります。
 こんな論文もありました。
 抗がん剤投与を中止した後の菌叢の変化を診た論文で、抗がん剤の投与を中止してから腸内の菌量の変化を診た論文です。抗がん剤を投与を中止すると、中止後23週間の間に徐々にもとの腸内細菌叢に戻る傾向がみられた。という内容です。私のお腹の具合と一致しています。私も2週間経ってようやく元の排便状態に戻ってきています。私の腸内細菌の状況が2週間経って元の状態に戻ってきたと行くことでしょう。
 さらにこんなことも書いてありました。
 一旦何らかの因子によって常住腸内細菌のバランスが崩れた時、病原性大腸菌が増加したり、外来菌の定着増殖が促進されるであろうと。そして、外来菌の定着には、その金の菌量、感染力、また、宿主側の因子としては腸内のpHや常在菌叢、その他免疫学的状態等が関与し、癌患者においては感染にかかりやすい状態にあり、さらに、各種抗がん剤によって生体の免疫能が低下し、この論文での研究のように、腸管内の錠剤腸内細菌叢の変化をきたすことが認められたと。
 癌患者の死因は感染症が多く、特にE. coli, によるものが多いという報告もなるとのことです。これらの感染症の原因菌と腸案内細菌の変動については興味のある問題と考えていると。そして最後に、抗がん剤投与時において、常住腸内細菌叢に変化をきたし、二次的病態を作ることを認め、また、副作用として消化管症状の出現令には腸内細菌叢のバランスの乱れがある点が考えられると締めています。

 なかなか、難しいですが、やはり食物繊維をしっかり摂り、善玉菌を増やして腸内環境を良くする。そして乱れ、バランスが崩れた場合にはそれを早く元の状態に戻していくことが大切なんだなあと、再確認しました。