渡邉医院

病気への決断、「二人の渡邉賢治」

 さて、今日は今回の悪性リンパ腫に罹患し、治療に至るまでの私自身の「決断」に関してお話ししたいと思います。

 少し2クール目の経過をお話しします。426日火曜日に一番メインになる抗がん剤、メソトレキセートの大量投与とオンコビンの投与を行いました。メソトレキセートによる副作用が出ないようにしっかり利尿を図ることが大切で、十分な輸液と口からも水分を摂り利尿剤も×必要があります。しっかり利尿もあり、特にいまのところ副作用もなくまずまずかなあと思っています。72時間後のメソトレキセートの血中濃度を測り基準値以下ならもう一つの抗がん剤、リツキサンを投与する予定で、それが終わると2クール目が終了します。

 さて、話は戻って今回の悪性リンパ腫に関しての私の「決断」です。そこには一つキーワードがあります。それは「二人の渡邉賢治」です。一人は一般人としての渡邉賢治、そうしてもう一人が医師としての渡邉賢治。この二人の「渡邉賢治」が微妙に「決断」に絡み合ってきます。

今回の確定診断までの経過です。329日に緊急で入院をしました。入院時は本当に全身がぼろぼろの状態でした。ホロ門のバランス、電解質のバランスが全てばらばらでした。入院当日外来から直ぐに造影でのMRIを撮影しました。そうすると、36日に症状が出て7日のMRIでは明らかにわからなかった腫瘍が脳の下垂体の近くに病室されました。これが今回の原因ということがわかりました。ただ原因がわかってその腫瘍がなんであるかは確定できません。

 臨床症状やMRIに描出された主要、そしてその場所からリンパ腫というある程度の診断がつきました。でも確定診断ではありません。そこで、血液内科の先生と脳外科の先生とで相談され47日に脳外科による腫瘍の生検検査を予定することになりました。ただ、右目の動眼神経麻痺(瞼が開かなくなる。眼球の動きが悪くなる)の症状が有ること、そして、左目も何かモロモロとしたものが浮遊していて見えにくいなどという症状が有り、眼科にも受診していました。その眼科の先生が、この左目の浮遊物も今回の病気のリンパ腫にもみられる所見と診断され、脳外科での政権の日までに浮遊物の検査結果が出るようにとのことで44日に硝子体手術で浮遊物を取り除き、硝子体手術をすると白内障の悪化が起きることがあるため白内障手術を一緒にすることになりました。この手術に関しては二人の渡邉賢治の意見は一致していました。浮遊物がなくなること、また白内障手術をすることで今よりも良く見えるようになること、そしてその浮遊物の検査で確定診断ができることこの理由で直ぐにお願いすることに「決心」しました。脳外の生検手術までに結果が出るように手術を組んでいただいたがんかの先生には本当に感謝です。

 母児手術が終わり、そしていよいよ浮遊物の検査結果です。血液内科の先生からのお話しでした。まずは予想していた以上に浮遊物から細胞が採取できたということでした。そしてその細胞の構成がBリンパ球であり、そしてある一部の特定されたBリンパ球がクローン的(同じものがどんどん増える)に増えているとのことでBリンパ球の悪性リンパ腫との診断とのことでした。悪性リンパ腫は血液の癌です。ですから脳の下垂体の近くに限局して腫瘍として現れた悪性リンパ腫という診断になります。

 ですが、今回はここで終わりませんでした。ここから二人の「渡邉賢治」が意見を交わしあいます。

 血液内科の先生のお話が続きます、確定診断は悪性リンパ腫でいいです。ですが採取できた細胞が少ないです。例えば、悪性リンパ腫の治療を行い、その効果があまりなかった時にしっかり採取できた組織があると、もう一度見直すことができる。そういった意味で47日の脳外科の生検手術の意味はある。といった内容のものです。もう一度血液内科の上の先生や脳外科の先生とで、生検検査をするかどうか検討すると出私にも考えておいてくださいとのことでした。しばらくたって、血液内科の先生が難しい判断です。原価の手術で確定診断は悪性連覇種でいいと思います。そこに脳外科による比較的侵襲のある生検手術をするメリットをどう考えるかです。しっかり組織を採取することはできることはメリットです。しかし一方頭の骨に穴をあけ、硬膜を切除して腫瘍を生検してくる。このリスクがデメリットです。侵襲があること、術後に髄液瘻ができてしまうとその治療もあり、悪性リンパ腫への治療が遅れるデメリット。脳外の手術はあくまで生検検査が主で腫瘍の摘出が目的ではないこと。あくまで悪性リンパ腫は血液の癌なので抗がん剤投与による化学療法で治療することが必要であること。この話を聞いた後、二人の渡邉賢治は話会います。やはり一般人の渡邉賢治は、脳外科による全身麻酔での生検検査は怖い。眼科の手術で悪性リンパ腫と確定できているのであれば、脳外の生検手術はせずに直ぐに悪性リンパ腫の治療に移ったらいいのではと。医師としての渡邉賢治はやはり治療によって効果が出なかったときに十分な組織があればその後の治療に役に立つ。また摘出手術ではなく、一部生検によって組織を摂ってくるだけなので摘出手術よりもリスクが低いのではないか。しっかり組織が手元にあることが必用ではないかという意見。血液内科の先生も脳外科の先生も迷ってられるということはやはり生検の必要性を感じておられるということ。私自身が「生検しましょう。」と言って皆さんが同じ方向を見て進まれた方がいいのではないかとも考え、その時は医師としての渡邉賢治の意見で、生検するという「決断」をしました。でもこの「決断」は覆ることになりました。生検手術を行う前日の水曜日に私は脳外科の病棟に移りました。この時は生検するという「決断」の元です。その日の午後最後にもう一度脳外科の先生が確認に来られました。「明日の生検手術を行っていいですか?」の質問をされました。脳外科の先生からもこれまでと同様のお話、メリットデメリットをお聞きしました。そしてそれとは別のお話をされました。「今は脳外科で悪性リンパ腫かどうかを生検手術で確定診断をしています。今日もお一人その生検手術がありました。でもこれからはどんどん変わっていくと思います。今回のように硝子体内の浮遊物や髄液などをフローサイトメトリーで調べ確定診断に至るようになっていきます。そういった意味で脳外科の出番は少なくなっていくでしょう。また、入院時のホルモンのバランスが崩れていたので、少量のステロイドを内服されています。そのことで症状がどんどん良くなってきています。腫瘍も入院時よりちいさくなっている可能性もあります。」というお話でした。またここで二人の渡邉賢治は迷いました。「どのくらい待っていただけますか?」の質問に「手術室の準備もありますから、1時間後に来ます。」と。ここでまた二人の渡邉賢治の葛藤です。特に医師としての渡邉賢治が大きく揺れました。その原因は、「今回のような硝子体の浮遊物や髄液のフローサイトメトリーによる確定診断が主流になる。」ということばです。1時間というとても短い時間。いらっしゃった先生の科をを観ながら、「手術室、先生方の準備などしいぇいただいていましたが、申し訳ありませんが、生検手術はやめ、悪性リンパ腫の治療に入ります。:」と。先生はにっこり笑って「わかりました。」と。生検手術を押し付けることなくあっさり私の意見を受け入れて下さいました。

 翌日、今度は血液内科の病棟に移り、血液内科の主治医の先生から、「早期に悪性リンパ腫の治療が始められるようになりました。頑張りましょう。」と。1クール目が終わった後「とても良いスタートが切れました。」と。まだ2クール完全に終わっていませんが私自身の実感としていまのところ激しい副作用もなく、どんどん良くなっていると思います。今後治療効果を観ながら5クール進め、最後に自家血移植。まだもう少しかかりますがとても期待しています。私の「決断」が正しかったかどうかはまだまだ先にわかります。でもきっと正しかったと思います。復帰の際は、また皆さん落ちおからをかして下さいね。よろしくお願いいたします。今後の経過もブログでアップしていきたいと思います。

少し長くなりましたが、終わりにしたいと思います。