渡邉医院

政府の新型コロナウイルス患者の「入院制限」方針の撤回を求める

 政府の新型コロナウィルス患者の「入院制限」方針の撤回を求める

  政府は、82日に新型コロナウイルス感染症の入院対象を「重症者」に限定する方針を決めた。肺炎などの中等症のうち重症化リスクが低い人は自宅療養とし、家庭内感染の恐れや自宅療養が困難な場合はホテルなどの宿泊療養を可能とするというものだ。

 突然のこの方針転換に、国民も、医療関係者も、自治体も驚愕している。

 これは、多くの国民がオリンピックの中止や延期を求める声を無視し、国民の間で危機感の共有を広げることが出来なくなった政府が、この間の感染症者の急増により、病床圧迫を懸念した結果だ。国は、これまで感染者が増えると非常事態宣言を発出し、減少すると解除。この同じことの繰り返しのみの政策に終始してきた。病床を増やしたり、入院のできない患者に対してどのように医療を提供していくかなど、感染者に対して十分な医療を保障する体制をとるにはどうしたらよいのかなどの根本的な政策を放置した結果である。そして今回の方針転換はこうした国の無策を認めたものであり、いつでもどこでも必要な医療を提供する医療制度の崩壊を政府が認めたことに他ならない。思い付きの責任のない方針転換では、救える命も救えなくなる。

 無症状、軽症者であってもいつ重症化して急変するかわからないのが、新型コロナウイルス感染症である。有効な治療法がまだ確立していない中、重症化に即座に対応できる体制が必要である。現在、感染者が急増している中、これまでも機能が逼迫している保健所においては、や無負えなく自宅療養になっている患者への医療ではない、「健康観察」すら十分に行えていない。そのような中、「自宅療養を基本とする」方針転換は、自宅療養者の命を切り捨てることにつながる。

 これまでも、自宅療養者が医療を受けられないままに死亡した事例が京都府内でも起こっている。「医療を受けることが出来ないままに亡くなる患者があってはならない。自宅療養ではなく、原則、入院できる体制を。療養施設への医療的整備を」と私たちは求めてきた。ベッドが確保できない、医師や看護師が不足しているが故の「緊急避難的施設」が療養施設ではないのか?自宅療養を拡大する方針は中止し、必要な医療を提供できる療養施設の拡充が必要ではないか。そして、施設には発熱外来等の外来機能も併設する必要があるのではないか。

 政府が行うべきことは、すべての国民が安心して「医療」を受けられるために病院の整備、医師・看護師などの増員、そしてやむなく自宅療養となっている患者に必要な医療を保障する体制の構築を緊急に進めることである。

「入院制限方針」を即刻撤回することを要求する。

令和3年8月5日

渡邉 賢治